44話:不安から契約が始まりそうです
ペネムエがポリキュアグランドクロステッキを買いに行ったまま、帰ってくる事無く夕食の時間になってしまった。
翔矢は心配になってきていたが、父親が珍しく休みだったので2人で夕食は済ませた。しかし片付け終わってもペネムエは帰って来ない。
「ぺネちゃん……何かあったのかな?」
自室に戻ると、ペネムエの忘れて行ったポーチが目に入り一層不安が募る。
「やっぱりおかしい!! 俺が心配になる時間まで遊び歩くような子じゃない!!」
町まで行ったとはいえ、田舎町に変わりはない。ほとんどの店はもう閉まっている。遊び歩こうと思っても無理な時間だった。
「どうしよう……」
この世界の住人でないペネムエを警察に探してもらう訳にもいかない。力になってくれそうな人物を絞り出してみる。
「リール……」
最初に頭に思い浮かんだのは赤髪の天使リールだった。悪い奴ではないと思っているが一応は命を狙って来ているので保留にする事にした。
「後は頼れそうなのは」
考えながら学校に持って行っているカバンなどを漁っていると黒い石がコロンと転がって落ちてきた。
「あっ。悠菜の所の猫の」
それは悪魔族であり、今は悠菜に猫として飼われているグミからもらった物だった。
「悪魔族って対価を払えば、なんでもやってくれるんだっけ?」
対価が何を渡せばいいのか気になるが、グミはこの世界には客がいなくて困っていると言っていた。状況を話してみる価値はあるだろう。
「あの……グミ? ちょっと依頼というか聞いて欲しいことがあるんだけど」
通信用魔法石に念じながら小声で話してみた。しかし応答がない。
「留守かな? おーーーい!!」
今度は少し大きい声で話してみた。やはり反応は無かったが、微かに声が聞こえた。
「ちょっとグミちゃん!! お風呂入らなきゃダメだよ!!」
聞こえてきたのは悠菜の声だ。通信用魔法石は声に出して話しても、心の声でも通じるのだが周りの音も拾ってしまうらしい。
「フニャーーー!!」
声が聞こえるだけで映像などは見れないのだが、悠菜がグミを風呂に入れようとしていているのは分かった。
「猫って風呂嫌がるんじゃない? 悪魔だから関係ないのか?」
立て込んでいるようなので、このまま様子を見て待ってみることにした。
「ふっふっふーーー。グミちゃん。もう逃げられないよ!!」
「ニャニャニャ……」
このまま風呂に入られてしまうと30分くらいは連絡ができないだろうか。音声だけとはいえ流石に女子の入浴を覗き見。いや覗き聞きする訳にはいかないので一旦通信を切ろうとした。
「確保おーーーーー」
しかし切る寸前に悠菜の大きな声がした。と同時にザバーーーンという音も一緒に聞こえた。
「ん? いや何事?」
大きな音に驚いた翔矢は通信を切るのを忘れてしまった。
「翔矢かニャ? お待たせお待たせニャー」
「おっおう。何かすごい音したけど大丈夫?」
ようやく通信が通じたグミに翔矢は恐る恐る訊ねる。
「悠ニャが頭から風呂に突っ込んだけど大丈夫そうニャ」
「そっそうか」
「心配ニャら画像見せようか?」
「送らなくていい!! 送らなくていい!!」
一瞬、ずぶ濡れ姿の悠菜の姿を想像してしまった自分が恥ずかしくなり顔が赤くなる。
「冗談ニャ。 要件があるニャら今からそっちに行っていいかニャ? このまま家にいたら風呂に入れられてしまうのニャ」
「あっうん。その方が助かるかも」
人の姿になれるが、ここまで風呂を嫌がるという事は、生態はほぼ猫なんだろうなと思った。
*****
数分後、部屋の窓をコンコンと叩く音がした。
外を見ると、ゴスロリな衣装に身を包んだグミが空飛ぶホウキに跨りこちらをのぞき込んでいた。
「わざわざ来てもらって悪かったな。悠菜心配しないか?」
窓を開けてグミを部屋に入れながら話を進める。
「まぁ普段放し飼いにされてるから、朝までに戻れば平気だと思うニャ」
ホウキから降りたグミは、それをデコられたトランクケースに収納した。
「で、依頼というか要件なんだけど……」
翔矢は朝からの出来事を、できるだけ詳しくグミに説明した。
「なるほどニャー。とりあえずペネムエだっけ? あの銀髪の天使を見つけることが依頼っていう事でいいのかニャ?」
その問いに翔矢は頷き話を進めた。
「悪魔って依頼すれば対価次第でなんでも引き受けえてくれるんだよな?」
「なんでもって訳じゃニャイけど自分の良識の範囲でニャー」
「……具体的に何を渡せばいいの。寿命だと何年分?」
翔矢は顔色を少し悪くしながら訪ねた。
「どこの世界も、だいたいそうニャけど悪魔のイメージ悪すぎニャ。そんなの悪魔は受け取った事ないニャ」
「そうなの? じゃあ何を渡せばいいんだ?」
「まぁ価値が同じなら何でもいいんだけどニャー。あっでも現金は受け取らニャイよ」
「悪魔族の事、俺まだ全然分かってないからなぁ。なんでもって言われるのが一番困るんだけど」
「うーんそれじゃあ、悠ニャが言ってたけど確か翔矢は料理が得意だったよニャ?」
「まぁ結構自信はあるけど」
ニヤニヤしながらのグミの質問に、翔矢は何を要求されるか大方察しがついた。
「肉が腹いっぱい食べたいニャ!!」
「お安い御用だけどなんで肉?」
ほとんど予想通りだったが猫でもあるグミが肉を要求してくるのは予想外だった。
「悠ニャの所だとキャットフードってのとレタスと魚しか食べてないのニャ」
「まぁ猫として飼われたらそうなるよな」
「でも猫ってライオンとか虎の仲間ニャ!! 本当の好物は肉ニャ!!」
「なるほど。気が付かなかったな。ペネちゃん見つけてくれたら何かご馳走させてもらうよ」
「それじゃあ契約成立ニャ」
グミは紫の本に羽のペンで何かを書き出した。すると翔矢の体に一瞬悪寒が走った。
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