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36話:幹部から侵略が始まりそうです

 時はマキシムがまだ平和だった頃にさかのぼる。


 「長老様。何を読んでるんですか?」


 切り株に座り紙を読んでる老人に覗き込むようにしてミーナは話しかけた。


 「ミーナか……大魔王ベルゼブと名乗る者が最近あらわれての。東国の王都が壊滅したそうじゃ」


 「東国の王都が? うっそだぁー!! あそこの軍って確か古龍を犠牲者なしで討伐したって話しじゃん。

 きっと何かの間違いか、今流行のフェイク何とかってやつだよ!!」


 この話を深刻に考えていなかったミーナは聞いたことすら忘れたまま数日が過ぎた。






 *****






 ある日、他の島まで買い物に行っていたミーナが戻ると、南国であるワイハハ島が、まるで雪山か氷原のようになっていた。


 「えっ……」


 目の前の出来事に言葉を失ったが、足は自然と村の方へと向かう。


 「ミーナ!! 来てはいかん!!」


 村に着くと全身傷や凍傷で変わり果てた姿の長老が、和服で地面に付くほど長い銀髪の女性が対峙していた。

 

 しかし勝負の行方は誰の目で見ても明らかだった。長老もマキシムで5本の指に入るほどの実力者なのだが銀髪の女はダメージを負った様子すらない。


 「強い魔法使いがおるって聞いてやって来たんやけどもガッカリやわぁ。

 アーベルほどとは言わなくても、その仲間くらいの力はあると思ったんやけども」


 「アーベル様!! そうよ!! こんなことして勇者アーベル様が黙ってないわよ!!」


 寒さと恐怖で震えながらも、ミーナは大きな声で訴える。


 この世界には最強の勇者アーベルがいる。その希望があったからだ。


 「辺境の島は情報が遅いんですわなぁ。 アーベルなら死にましたわぁ」


 「……えっ?」


 「まぁうち程度じゃ手も足も出ませんでしたし、偉そうには言えまへんけどなぁ。

 それでもベルゼブ様には敵わんかったんよ」


 「嘘だ……アーベル様が負けるはずがない!!」


 「ミーナ!! こいつの言っている事は本当じゃ。分かったら逃げるんじゃ。

 老いぼれとて、お前が逃げる時間くらいは稼いでみせるわい」


 「いやだ……私だけ逃げるなんて」


 「お前だけではない。村の若いもんはほとんど逃げたわい」


 この言葉は嘘だとミーナはすぐに分かった。島であるワイハハが丸ごと凍っているのだ。


 逃げる場所などない。何人かは転移魔法で逃げたかもしれないが、10人逃げれるかどうかといった所だろう。


 「ミーナはんっていいましたか? 人の好意は受け取るもんですわぁ。

 ベルゼブ様から逆らわない者までは命を奪うな言われてますんで、逃げるんなら見逃してもええですよぉ。

 最も、ほとんどの村人はうちが来た冷気だけでポックリ逝ってしまいましたけどなぁ」


 「こいつーーーーー!!」


 怒り狂ったミーナは短剣を手に銀髪の女に斬りかかろうとした。


 「いかん!! 【強制転移Lv3】」


 長老がとっさに唱えた魔法で、ミーナは銀髪の女に攻撃する前にどこかに飛ばされてしまった。


 「あらあら。 急ごしらえの転移じゃ、島からは出せないでしょうに。

 まぁ村人思いの長老様に免じて、あの子は見逃してあげますわぁ。 あんたの命でね」


 サムイネが左手をかざすと、長老は一瞬で氷漬けになり、その氷はボロボロと砕け散ってしまった。






 *****





 「あれっ? ここって……」


 転移魔法により移動させられたミーナだったが、ここが村の外れの林だと気が付くとすぐに村へと戻る。


 しかし南国育ちで氷や雪の足場に慣れていないミーナは気の焦りも合わさり何度も何度も転んでしまい傷が増えていく。


 やっとのことで村にたどり付くと目に映ったのは、何者かが銀髪の女とにらみ合う姿だった。


 ほんの一瞬だけ長老が無事だったのかと安心したが、すぐに別人だと気が付いた。


 「君は……長老様から逃げろと言われなかったか?」


 「だって私だけ逃げるなんて……」


 その人物が振り向くとツンツンとした金髪で整った顔の男だった。


 見た目の歳はミーナの方が上だと思ったが、その独特の魔力からは不思議な雰囲気を感じる。


 普段は誰にでも強気に話せるミーナだが思わず言葉が詰まってしまう。


 「あぁ全く……天使に手を出すとベルゼブ様がお怒りになるから引いてくれませんやろか?」


 「天使としてそれはできないな。サムイネとか言ったか? 俺ごときじゃベルゼブには手も足も出ないだろうが幹部くらいは倒して見せるさ」


 金髪の男の右手にバリバリと雷が流れる。


 手が隠れるほどの袖の長い服を着ていたので最初は分からなかったが、右手は人とは違う黄色く爪の長い特異な物だった。


 「あらあら。天使の手とは思えませんなぁ」


 「……まぁ雷鬼の手だからなぁ」


 会話が終わった途端、サムイネの頭上に雷が落ちる。


 雷といっても自然発生する稲妻と違い、ミーナの目には光の柱のように見えた。


 「ゲフッ……」


 サムイネの体や服がは所々焦げ、そのまま地面に膝をついた。


 「……強い」


 金髪の男の攻撃にミーナは息を飲む。


 「どうやら、こいつは雷耐性は高くないらしい。分かったら君は早く逃げるんだ!!」


 「くっ」


 自分がいたところで村の人は、もう誰も生きてはいない。


 今は、この天使の邪魔にならないよう言われた通りにするしかない。


 しかしミーナの足は動かなかった。自分の足を見ると、両足がほとんど凍ってしまっていた。


 「天使ってぇのは人を護るのが使命なんやろ? 護ってみなさいなぁ」


 「しまった!!」


 金髪の男が叫んだのと同時に、ミーナの両足は足は氷ごと砕け散り、体はそのまま地面に落下してしまう。


 慌てて駆け寄るが、背中に違和感を感じ振り向くと針のように細い氷柱が無数に刺さっていた。


 「くっ……」


 「戦いは強い者が勝つとは限りませんのや。

 天使を始末するとベルゼブ様がうるさいんやけど……一生残る傷を残すくらいかまわんやろ」


 サムイネは地面に倒れたまま再び魔法を放っていた。


 氷の魔法が何発も当たっているが、それに構わず金髪の男はミーナの元にかけよる。


 「すまなかった……俺がもっと早く来ていれば村の人は救えただろう。

 君にも、辛い思いをさせずに済んだかもしれない……

 それでも……君には生きていてほしい」


 そう言うと、金髪の男の雷鬼の手から次元の裂け目が現れ中から光の球を取り出した。


 光の球がミーナに当たると砕けた足が元通りになった。


 「えっ……」


 聞いたこともない魔法にミーナは言葉を失う。


 「ノーマジカルという世界の義足というのを参考に作られた道具らしい。

 作り物の足に、上級の魔法を付与した物だ。慣れれば自分の足より速く動けるだろう。

 その力で生き延びてくれ」


 「てっ天使様は?」


 「油断してダメージは食らってしまったが、属性は有利なんだ。

 何とかなるだろう。あと天使様ってのは堅苦しくて好きじゃないな……


 俺の名前は『ゼウ』。運がよかったらまた会おう」


 ミーナはゼウのことを信じて再び村の外に逃げ出した。


 しかし彼と再び会うことはなく、ワイハハは未だに凍てつく寒さのままだ。


 それが何を意味するのか。ミーナは理解していた。


 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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