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35話:氷原から雪崩が始まりそうです

 翔矢は気が付くと氷原にいた。


 「あれ? 俺いつの間にこんな所に……」


 ここに来た前後の記憶があいまいで全く思い出せなかった。


 「部室棟の電気を消しに行ってそれで……」


 頭を抱えて数十秒考え込んだが、それ以上のことは何も思い出せなかった。


 あれこれ考えこんでいると強い突風が吹き荒れる。


 「うわっ」


 感じたことのないような強風に目をつぶった翔矢が目を開けると一瞬ではあったが空に巨大なドラゴンが見えた。


 「……マジかよ」


 まさかとは思っていいたが今までは、ただの氷原しか見えなかったので半信半疑だった。


 しかし今、自分は異世界に来ているのだと理解した。


 「そうだ。ペネちゃん!! リール!!」


 ポケットに入れていた通信用の魔法石を使い2人に交互に呼び掛けてみたが反応はない。


 「ダメか……確か異世界転生する場合、女神さまが『手違いで殺してしまいました(大嘘)』とかいうイベントがあるって言ってたけどなかったよな? 俺、会ってないよな?」


 そもそも今日は自分が転生させられる予定のマキシムという世界のゲートは開いていないはずだ。


 だとすれば、ここはマキシムではない他の世界だろうか?


 「しかし……寒いな」


 時間が経つにつれ少しづつ気持ちが落ち着いくと、この氷原はとてつもなく寒いことに気づいた。


 もちろん氷原なのだから寒いのは当然なのだが日本で感じられるような寒さではない。


 「ハックション!! まるでペネちゃんがブリューナク出したときみたいだな」


 歩き進んで暖を取れる場所を探したが、辺り一面銀世界で景色すら変わらなかった。


 それでも1時間くらいしたところで少し収穫があった。


 普通、寒い中1時間も休まず歩けば疲れを感じるはずだが、全く疲れない。


 この調子なら10時間以上も歩き続けれる自信があった。


 「そういえば異世界だと身体能力とかチートになるって言われてたっけ。

 魔法とか使えたりしないかな。チートとは行かないまでも、焚火とかできるくらいの火は出したいんだが」


 恐らく体が普段の数倍か数十倍は丈夫になっていると思われるが、それでもこの寒さは辛いものがあった。


 火の魔法のことをしばらく考えていると頭に呪文のようなものが浮かんできた。


 【プチファイヤーLv10】


 Lv10というのは、最大威力であり1から10までの間で好きな威力にできるというのが感覚的に感じることができた。


 「プチなら大した威力じゃないと思うけど、初めてだし温まれればいいからな……【プチファイヤーLv1】」


 手を前に出し軽い気持ちで呪文を唱えてみたのだが、現れたのは直径10メートル以上の巨大な火の玉だった。


 「……マジかよ」


 火の玉は辺りの雪や氷を一瞬で溶かした。しかし蒸発するには至らず、大規模な雪崩が発生してしまう。


 魔法が使えたとはいえ、細かい知識のない翔矢は雪崩に対応できずに飲み込まれてしまった。






 *****






 その頃、とある古城の玉座の間に、あわてた様子で背の低くヒゲの長い老人が入ってきた。


 「ベルゼブ様!! ベルゼブ様!!」


 「ワカルンデスか。どうした?」

 

 黒い鎧を身にまとった大魔王ベルゼブは落ち着いた口調で受け答えをする。


 「ワイハハにて強大な魔力を観測しました」


 「ワイハハか。あそこはサムイネの管轄だったな」


 「はい」


 「なら問題はないと思うが念のためブータックを向かわせろ。奴なら最悪の場合でも死ぬことはあるまい」


 「かしこまりました!!」


 ワカルンデスはベルゼブの指示通り、すぐに幹部のブータックに通信魔法で連絡をした。






 *****






 雪崩に巻き込まれてしまった翔矢が目を覚ますと葉っぱとワラで出来た布団の中にいた。


 起き上がり周りを見渡すと、ここは小さな洞穴の中のようだ。


 「ーーーーーーーーー?」


 恐らく自分を助けてくれた人だろうか。ボロボロの布切れのような服を着た青髪の自分より少し年上に見える女性が話しかけてきた。


 しかし、何を言っているのか全く分からない。当然ではあるが異世界は使われている言葉が違うようだ。


 (参ったな。礼を言いうことすらできないとは)


 ジェスチャーも国によっては解釈が違うと聞いたことがある。


 どうすればいいか迷ってしまいしばらく沈黙してしまうと、先ほどと同じように呪文が頭に浮かんできた。


 【翻訳Lv5】


 プチファイヤーで雪崩を起こすほど巨大な火炎球を出してしまった事を考え、一瞬使うのを躊躇したが、これは攻撃ではないので大丈夫だろうと思い唱える事にした。


 「おーーー!! 翻訳魔法か。すっごいなぁ。私はミーナ」


 「俺は宮本翔矢。助けてくれてありがとう」


 「いいってことよ!! あんなすっごい雪崩に巻き込まれて災難だったな」


 「そっそうなんだよぉー。ビックリしちまって」


 男勝りなミーナの勢いに若干飲まれはしたが、まさか雪崩が自分のせいだとも言えず話を合わせ事にした。


 「翻訳魔法が使えるってことは旅の人? その服じゃ寒いだろ。温かいものでも飲みなよ」


 そう言うとミーナは洞窟の奥から木でできたコップを持ってきてくれた。


 中には何か分からないがオレンジっぽい色のした飲み物が入っている。


 「何から何まで……本当にすいません」


 「悪い事してないのに謝るなんて変わったやつだなぁ。私も好きでやってるんだから気にするなって」


 差し出された飲み物の正体は不明だが飲んでると体の芯まで温まってくるのがわかる。


 時間が経つにつれ少し心に余裕ができ、この洞窟を見てみると生活感がある。


 どうやらただの洞穴ではないようだ。コップなど用意してくれた事からするとミーナの住処だろうか。


 「じゃあ服脱いでよ!!」


 「うん……はっ?」


 あまりにもの自然な言い方についつい普通に受け答えしてしまったが、異常な事を言われたのにすぐに気が付いた。


 翔矢が異世界に初めて恐怖した瞬間であった。



 数分後



 「どう? 気持ちいい?」


 「いいわぁー。最高だわーーー」


 「よかったぁ!! 私付与魔法は自信あるんだぁ」


 決して如何わしい事をしていた訳ではない。


 ミーナが服に着心地アップやら耐寒やら色々な魔法を付与してくれたのだ。


 「今のワイハハで耐寒魔法のない服を着てたら凍え死ぬはよ? よくここまで旅して来れたわね?」


 「まっまぁ飛ばされたといいますか気が付いたらここにいたもので……」


 「あぁ観光屋さんの移動魔法? 確かにワイハハはちょっと前まで南国で観光地だったからねぇ。知らなきゃしょうがないか」


 「南国? ここが?」


 日本には四季があって暑かったり寒かったりするが、この地の寒さは冬だからとかいうレベルではない。


 そこら中、氷の塊などがあり永年凍土のように見える。南国とは到底思えなかった。


 「あいつがこの地に来てから変わっちまったのさ……」


 小さな声でそう言ったミーナの拳は強く握られていた。


 「あいつ?」


 「大魔王ベルゼブ軍、幹部の『サムイネ』さ……」

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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