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31話:天罰から鷲掴みが始まりそうです

 2回3回の攻撃は両校共にヒットも出ないまま4回表の六香穂高校の攻撃を迎えようとしていた。


 凶悪高校ベンチでは相変わらず不穏なミーティングが行われていた。


 「組長。本当にあのピッチャー潰しておかなくてよかったんですかい?」


 3回の攻撃で泉に何も仕掛けなかった事に疑問を持った選手の一人が監督に訪ねる。


 「組長言うなや……

 ピッチャーも面倒やが素人のくせに生意気にもブチかましてくれた宮本っちゅうガキに地獄見せてやらな。

 他の奴潰して試合棄権されてしもうたら叶わんからのぉ」


 「組……監督。その……俺のダチがこの辺出身なんですが宮本翔矢ちゅうガキ。

 紅の鉄拳ってえ言われてる相当やべぇ奴らしいです。

 今は大人しくしてるらしいですが、うかつに手を出すのは危険かもしれやせん」


 「だから何や? まさか組の仕置きより、あのガキが怖いなんて言うんやなかろうな?」


 監督は恐ろしい目で選手を睨みつける。


 「いえ……そういう意味では……」


 「まぁええわ。警戒に越したことはないからのぉ。おっと時間や。お前らとっとと守備につかんかい!!」


 「「「「「はいっ!!」」」」」





 *****





 試合が再開したが5番打者は一球目こそ空振りしたが、2球目以降はファールで粘りながらボールカウントを増やしていた。


 (助っ人にあんなバティングされて、野球部がこれ以上凡打の山を築けますかっての)


 5番打者が気合を入れて打席に立つ中、翔矢とペネムエはベンチの端で話していた。


 (え? 次の俺の代わりにペネちゃん打つの?)


 「はい。代打というのをさせて頂きたいです。あの者達の行いをこれ以上は見過ごせませんので」


 ペネムエはどこから持ってきたのか野球のルールブックをジッと見つめながら話している。


 (でもペネちゃんが試合に出るのは色々と問題が多いんじゃないかなぁ?)


 「その点はご心配なく。この『誤魔化せる草』を食べることでほとんどの事は何となく都合よく誤魔化せるのです。

 これで僭越ながら翔矢様のフリをさせていただきます。」


 そう言いながらペネムエはポーチからモミジのような形をした葉っぱを取り出した。


 (それ代打って言わないし。効果がざっくり過ぎて不安だけど……それで俺のフリができる訳ね)


 「嘘がバレにくくなる程度の効果ですが、まぁ魔法を作り話と認識しているノーマジカルの方が相手なら何とかなるでしょう」


 (不安だ……)


 思わず声が漏れそうになったがこの心の声はペネムエに聞かれない心の声で呟いた。


 「あと服装は……練習の時のように服の見た目をチェンジします」


 服が輝くと魔法少女の変身のような雰囲気でペネムエの服装は野球のユニフォームへと変わった。


 最もペネムエの普段の服装が魔法少女風なので変身の順番は逆だと思いながら翔矢は見ているのだが。


 「ヘルメットをお借りできますか? 服の色や形が変わるだけなので帽子などはどうもできないのです」


 (いいけど……)


 ヘルメットを受け取ったペネムエはそのまま被ったのだが、野球用のヘルメットは少し大きすぎたのか頭からズレて目元がツバで隠れてしまった。


 「後は翔矢様にこのブレスレットをはめていただければ完璧でございます」


 ペネムエは普段、自分の姿を消すために装着しているブレスレットを外して手渡した。


 確か天使みたいな上位の生命体や、使用者に命を救われた人には無効と聞いた記憶があった。


 翔矢の知る限りではこの場にその条件を満たす条件を満たすものはいないので大丈夫だろうと思い言われた通りにブレスレットを左手に填めた。


 (いつもぺネちゃんが教室いても誰も気にしないの見てるし効果は知ってるんだけど自分が付けて透明人間になってますって言うのは違和感あるなぁ……)


 そのような事を考えながら、効果が気になり人の周りをウロウロしていると、粘りに粘っていた5番打者がフォアボールで塁に出て、翔矢……のフリをしているペネムエの打順になった。


 しかし悠菜と何やら話し込んでいる。誤魔化せる草というのは効果があいまいだったのでやはり付き合いの長い悠菜などを相手にするのは厳しかったのかと翔矢は不安になり2人の会話が聞こえる位置まで近寄った。


 「翔矢君。なんで背が小さくなっちゃったの?」


 (やっぱり疑われてるじゃん……)


 「それは、ストライクゾーンを狭くするためでございます」


 「なんでそんな可愛い声になっちゃったの?」


 「お褒めにあずかり光栄でございます。それは相手の危険行為を躊躇させるためでございます」


 「どうしてそんなに言葉使いが丁寧になっちゃったの?」


 「それは、緊張のせいでございます」


 「おとぎ話の1シーンかよ!! 本当に誤魔化せてるのかこれぇ!?」


 ペネムエと悠菜の会話に思わず大きな声でツッコミをした翔矢。


 その声はブレスレットの効果で声も周りには聞こえていない。


 悠菜との話を終えるとペネムエがバッターボックスに向かう。


 魔法の道具の貴金属を大量に身に着けたので歩くたびにジャラジャラと音が鳴る。


 「ケッ!! ガキが待たせやがって!!」


 「申し訳ございません」


 不機嫌そうな凶悪高校の投手に対してペコリとお辞儀をして謝るペネムエ。


 (やっぱり初対面の人にはちゃんと効いてるみたいだなぁ)


 「くたばれガキがぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ピッチャーの第1球はいきなり顔面を狙ったストレート。


 「ペネちゃん!!」


 翔矢は思はず声を出し、悠菜や野球部員も身を乗り出し見守る。


 「そう来るのはお見通しでございます!!」


 ペネムエは自分の顔の前にバットを持っていき無理な体勢ながらそのままフルスイングした。


 打球はボールの存在が確認できるかどうかというくらい、とてつもないスピードでピッチャーの頬をかすった。


 「えっ?」


 ピッチャーがボールのかすった頬に左手で触れると手には赤い血が付いていた。


 そしてボールの行方は、人の頭ほどの高さをキープしたままスピードを落とすことなくセカンドとセンターの選手の真横を通過してフェンスに直撃した。


 翔矢を含むグラウンドの全員が唖然として数秒のタイムラグがあったが、フォアボールで出塁した選手はホームベースを踏み1点追加。


 ペネムエも3塁まで進むのだった。


 その後ピッチャーは、あまりものショックから調子を崩し六香穂高校はこの回さらに4点を追加。


 4回表が終わり7対0で大きくリードすることができた。


 全員がいったんベンチに集まると話題は翔矢のフリをしたペネムエの話題で持ちきりとなる。


 この回の攻撃だけですぐに翔矢と入れ替わるつもりでいたが皆に囲まれタイミングを逃していた。


 「翔矢の兄貴流石っす!! おれっちの敵を取ろうとしてくれたんすね!!」


 モヒカンは泣きながらペネムエの活躍を喜んでいる。


 「モヒカン様……そのつもりだったのですが外してしまいました……申し訳ありません」


 (天罰って言ってたけど、あんな打球を顔面直撃させるつもりだったのかよ……)


 モヒカンにぺこりと頭を下げたペネムエのセリフに翔矢は少し恐怖を感じた。


 「本当にすごいバッティングだったよ!! あれどうなってるの?」


 いつも爽やかな泉もかなりテンション高めで訪ねる。


 「持っているすべての肉体強化系の道具を使用し……いえ、たまたま当たり所が良かったのでしょう。

マグレでございます」


 もはやほとんど答えを話してしまっているが、マグレという事で誤魔化した。


 しかし魔法なんて本気にする人間は普通はいないので問題はないだろうと翔矢は対して気にもしなかった。


 状況が落ち着き、ようやく翔矢と入れ替わろうとしたペネムエだったが今度は健吾に捕まってしまう。


 「いやーーー。翔矢すごい。こんな才能があったなんてなぁ」


 「健吾先輩様。お褒めに預かり光栄でございま……ひゃん」


 ペネムエが健吾に礼を言おうとしたが言い終わる前に右の胸を思いっきり鷲掴みされ変な声が出てしまう。


 「うわぁ……変態先輩そっちの趣味まで……」


 (……マジかよ)


 「フニャーーーーーー!!」


 その様子を見た悠菜はドン引きし、姿を隠している翔矢も先輩の見てはいけない面を見た気がして言葉を失った。

 

 そしてなぜか再びグミの乱れひっかきが炸裂する。


 「いや……悠奈ちゃん!!これは違うんだ!!」


 健吾は必死に弁解しようとしたが、違うと言われても何が違うのかわからない。


 (……健吾先輩様の心の声が聞こえなかった?)


 しかしペネムエの疑問は胸を触られたことより他のところにあったのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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