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28話:警戒から試合が始まりそうです

 グラウンドに入ってきた『凶悪高校』の面々に翔矢たち全員がが圧倒されていたが渡辺健吾だけは気にした様子を見せていなかった。


 「いやーーー。バット持ってるし普通に野球部だろ」


 「確かに持ってますけど……殴り込みに来たようにしか見えません……」


 高校のグラウンドにバットを持った人間がいれば大抵はスポーツをやるようにしか見えないはずだが、翔矢の目には不思議とそうは見えなかった。


 いや翔矢だけでなくここにいる全員が殴り込みにしか見えていないだろう。


 「まっまぁ人を見かけで判断するのは良くないかな」


 野球部キャプテンの泉も凶悪高校のメンバーを見て圧倒されながらも爽やかに注視している。


 泉の言うように恐ろしいのは見た目と高校名だけの可能性もあった。


 しかし凶悪高校の円陣が始まるとそのわずかな可能性も消え去る事になった。



 「「「「親父に勝利をーーー」」」


 「「「1人1殺ぅぅぅぅぅ」」」


 「「「立ちはだかるもの皆殺しーーー」」」


 「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」


 凶悪高校の円陣は離れた位置で行われていたが、大きな声で行われたもでその内容は一言一句漏れることなく翔矢たちに聞こえていた。


 「……俺帰ってもいいっすか?」


 流石の翔矢も恐怖感じ、半分本気で申し出をしてみた。


 「人数足りないんだってぇ。それに翔矢が本気になればワンパンだろ!! ワンパン!!」


 「いや……まさか俺を用心棒代わりに誘ったんじゃないっすよね……」


 「はっはっはぁーーー!! 考えすぎ考えすぎ。

 そんな事する意味なっしーーーんぐ」


 凶悪高校に圧倒されていない健吾を少し不振に思った翔矢は思わず訊ねたが本気で疑っている訳ではない。


 何となく聞いてみただけだ。


 「翔矢様。ご安心ください。ここにいる方々は、わたくしが命に変えて御守りいたします。」


 「あぁその手があった!! ペネちゃん、頼む!!」


 「はい!! 頼まれました!!」


 今日はマキシムへのゲートは閉じているので異世界転生の心配は無いのだが、この世界の文化の調査も行なっているペネムエは見学に来ていた。


 ブレスレットの効果で翔矢以外に姿は見えていないが、人に触れる事は可能なので他の人間に触れたりしないように、グラウンドのベンチの隅っこで見学していた。


 「いやぁ、ペネちゃんがいてくれて助かったーーー」


 翔矢の凶悪高校への不安はペネムエの申し出で解消された。


 「翔矢君? さっきから誰と話してるの?」


 ベンチの端に向かってブツブツと話す翔矢を見た悠菜は、キョトンとした顔をして訪ねてきた。


 「いっいやぁ……なんでもない……ちょっと試合前に気合いれてただけぇ」


 「そうなの? 気合って昔みたいに危ない事したら私嫌だよ……?」


 「そういう気合じゃないから大丈夫大丈夫」


 最近は近くにペネムエがいるのが当たり前になっていたので気が抜けてしまい、通信魔法石や心の声を使わずに話してしまっていた。


 ペネムエの声はブレスレットで他の人間には聞こえないが翔矢の声はもちろん全員に聞こえる。


 バァン


 翔矢と悠菜が話していると何かが壁に何かがぶつかる音がした。


 その方向を向くとペネムエのいる方に向かってボールが飛んできたようだった。


 (ペッペネちゃん大丈夫?)


 「はい。あれくらいでしたら回避は容易ですので……」


 今度は怪しまれないように魔法石を使って話しかける。


 飛んできたボールは天使のペネムエにとっては、交わすことは造作もなかったようで安心した。


 「悪い悪い。ウォーミングアップで投げてたらすっぽ抜けっちまって」


 ボールを投げたのは健吾だった。両手を合わせて謝ってきた。


 「大丈夫ですけど、危ないんでちょっと離れてやってくださいよ!!」


 ボールの方向的には誰もいなかった方向なのでペネムエ以外には当たる心配は無かったのだが、翔矢の口調は先輩相手でも少し強めになってしまう。


 「いやぁ、本当に悪かった悪かった」


 健吾はペコペコと謝ると、この場を後にしようと翔矢に背を向けた。


 すると、すぐに小型の羅針盤をポケットから取り出し、眺めた。


 (やっぱり、何かいるなぁ。登山の時のエロエロの格好の女か? いや他にも魔力を持つ生命体はいるかも……ん?)


 それまで1方向を刺していた羅針盤が一瞬だけ方向を変えたことに気付いた。


 その方向を確認するとグミを抱いている悠菜の方を指していた。


 (んーーー。まぁ生物なら移動はするか?)


 しかし羅針盤の針はすぐに元の位置に戻ったので気にしないことにした。


 羅針盤は強い魔力の方向を指すものだが、人数などは特定できないのだ。






 *****






 両チームウォーミングアップが終わりいよいよ試合が始まる。


 「こっこれより『六香穂高校』と『凶悪高校』の練習試合を取り行います!!」


 「「「おねがいしまーーーす!!」」」


 六香穂高校の本郷監督の掛け声と両高のあいさつと共にプレイボール。


 先攻は六香穂高校。1番バッターはセンター前にヒットを打った。2塁に進むことはできなかったがノーアウト1塁と、幸先のいいスタートになった。


 「いやぁ普通の試合っぽくてよかったなぁイズミン!!」


 「なんで野球部が普通の試合ができそうで安心しなきゃいけないのさ……」


 健吾が泉に機嫌よさそうに話しかけているが泉は呆れた様子だ。


 「次のバッターは俺っす!! 翔矢の兄貴!! 悠菜の姉さん!! かっ飛ばすんで見ていてください!!」


 「いや……だからモヒカン先輩の方が先輩なのに……まぁいいや」


 打席に入ったのはモヒカン。翔矢も悠菜も登山で一緒になっていたので顔なじみだ。


 その時に野球部というのは聞いていたが、正直この瞬間までは信じていなかった。


 「翔矢君!! 大変だよ!! モヒカン先輩のモヒカンが消滅してるよ!!」


 「うわっ本当だ……ヘルメットの中どうなってるんだよ……」


 モヒカンはその名の通りモヒカンヘアーがトレードマークなのだがヘルメットを被ると、モヒカンが消えておりどうなっているのかわからない。


 翔矢と悠菜は目を丸くしてモヒカンのモヒカンに注目していた。


 「それは野球部でも解明できてないんだよなぁ……」


 しかしその答えはマネージャーをしている真理にも分からなかった。






 *****






 全員がモヒカンのモヒカンに注目している内にカウントは1ストライク1ボール。


 そして第3球、ピッチャーが投げたボールをモヒカンは鮮やかにバントをした。


 「モヒカン先輩……かっ飛ばすって言ってたのに……」


 「まぁノーアウト1塁で2番だしなぁ」


 悠菜も翔矢も少し残念そうな顔をしたが、モヒカンは猛ダッシュで1塁に向かう。


 大抵の人間なら間に合わずアウトになってしまうところだが足に自信のあるモヒカンは、凶悪高校の守備より1歩早く1塁に到着する。


 そう思われたが、凶悪高校の1塁手のスパイクがモヒカンの右足を思いっきり踏みつけた。


 「ユアッショォーーーーーク」


 痛みのあまりその場に倒れこむモヒカン。


 その姿に凶悪高校の全員が笑みを浮かべていた。


 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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