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27話:待ちからセクハラが始まりそうです

 待ちに待った野球の試合当日。翔矢はユニフォームを着て学校のグランドのベンチに座っていた。


 張り切って早く来すぎたのか、到着した時は、ほとんど人がいなかったが時間が経つにつれ徐々に人が集まってきた。


 「君が宮本君か。引き受けてくれて助かったよ。ありがとう!!」


 ベンチに座っていた翔矢に話しかけてきた爽やかな雰囲気の人物は3年で野球部キャプテンの泉。

 

 今回剣道部に助っ人依頼を出してきた張本人だ。


 「いえ、俺も楽しみにしてたので!!」


 翔矢はベンチから立ち上がって泉とあいさつを交わした。


 他の野球部ともあいさつなどしていると、また誰かがグラウンドに入ってきた。


 「翔矢君やっほっほーーー」


 声の主は幼馴染の一ノ瀬悠菜。黒猫を抱いてやってきた。


 「おう。ってなんで悠菜がいるんだよ?」


 思わず普通にあいさつしたが、悠菜はソフトテニス部。


 この場にいるはずはないので翔矢は、不思議に思った。


 「真理ちゃんがイベントあるから付き添いフゴファガーーーー」


 何かを話そうとした悠菜の口を鬼の形相をした真理がふさぐ。


 「悠菜は黒猫のグミちゃんを見せたくて来たんだよなーーー」


 「そっそっそうなんだよーーー。かわいいでしょーーー」


 「ニャーーー」


 悠菜の声に合わせるかのように黒猫が鳴いた。


 まるで本当に挨拶をしているかのようだ。


 「俺もその猫気になってたけど……野球部の練習試合に連れてくるなよ……」


 「いい子だから大丈夫だよ!!」


 悠菜からグミとの出会いなどを聞かされていると今度は剣道部の先輩の渡辺健吾がやってきた。


 「へぇ。かわいいなぁ!!」


 「ありがとうございます!!」


 翔矢の知る限り、2人は初対面のはずだが、人見知りしない性格の悠菜は元気よく受け答えをしている。


 「いやぁ。本当に可愛い!! 君Dカップくらい?」


 「はい!! はいっ?」


 そう、元気に受け答えした悠菜だったがその質問にまで元気に答えてしまった。


 流石に自分の言ったことに気づき動揺している。


 「悠菜……あんた何答えてるのよ……」

 「先輩……何聞いてるんですか!!」


 翔矢と真理が、ほぼ同じタイミングで2人を注意した。


 「サラッと聞かれたのでつい……」

 「可愛かったのでつい……」


 今度は悠菜と健吾が同じタイミングで受け答えをする。


 「……もっもちろん猫ちゃんんも可愛いよ。

 撫でていいかい?」


 「どっどうぞぉ」


 悠菜は警戒しつつもグミを抱いている手を健吾に向ける。


 「いやぁ~可愛い可愛い」


 向けられたグミを撫でようとした健吾の身にこの後悲劇が起こる。


 「フニャーーーーー!!」


 さっきまでぬいぐるみのように大人しかったグミが、すごい勢いで乱れひっかきをかましたのだ。


 「うわぁー」


 驚いた健吾は尻もちをついて倒れてしまった。


 「こらぁ、変態先輩にも攻撃しちゃだめーーー

 変態先輩すいません」


 悠菜は声だけは申し訳なさそうにしているが顔はニヤニヤしている。


 変態先輩呼びの地点で申し訳ないとは思ってないのだろう。


 「悠菜にセクハラしようとしたから怒ったんじゃないですか?」


 翔矢も釣られて半笑いで話す。


 「猫にセクハラなんてわかるかよーーー!!

 試しに翔矢も撫でてみろよ。」


 「まぁいいですけど……」


 一応セクハラの自覚はあったらしい健吾に促され翔矢もグミを撫でてみることにした。


 動物は、好きなのだが雰囲気が雰囲気なので渋々承諾したような返事になってしまった。


 「ニャー」


 だがグミは特に嫌がる様子など見せる事なく翔矢に撫でられる。


 その後に何人かの野球部員がグミを撫でたが誰にも嫌がる様子は見せなかった。


 「マジでセクハラが原因だったんじゃ……」


 「まっさかぁ……ってかイズミン!! 猫と部外者を入れていいのかよ!!」


 グミの態度が気に入らなかったのか健吾は野球部部長の泉に向かって今更なことを言い出す。


 「いやぁ、かわいい猫だし女子も多いほうが皆やる気出るだろうしいいんじゃないかな?」


 「ニャー」


 泉はグミを撫で顔の筋肉が完全に緩んでしまっている。


 「泉先輩。ありがとうございます。

 あっクッキー作ろうとしたら煎餅できたので良かったらどうぞ」


 悠菜はバックから箱を取り出すと中には、どこからどう見ても煎餅が入っていた。


 「ありが……えっ? クッキー作ろうとしたらこれが……?」


 差し出された煎餅がクッキーを作ろうとしてできた物と聞き戸惑う泉だったが恐る恐る1つ口にする。


 「あっ、しょっぱいけど普通に煎餅だね」


 煎餅としては普通においしかったのか泉は安心した様子で何枚かを食べた。


 「なんか俺の時と態度が違いすぎるんだが……」


 健吾は、かなり不満そうな顔で悠菜と泉のやり取りを見ている。


 「いや、あんたがセクハラしたからでしょうが」


 「ですです。もちろん翔矢君にはクッキーあげるよ!!」


 悠菜は翔矢にクッキー煎餅の入った箱を差し出す。


 「ついにちゃんと食えるものが作れるようになったか……」


 悠菜の料理の腕を知っている翔矢は、かなり不安を感じたが泉の様子を見る限り大丈夫だろうと思った。

 一口食べるとやはりまごう事なき煎餅だった。


 「どう?」


 悠菜が期待の眼差しで感想を求める。


 「煎餅として考えれば普通にうまいな」


 「やったーーー!! 一歩前進したよぉ」


 感想を聞いた悠菜は両手を挙げて喜ぶ。


 「たくさんあるから、いっぱい食べてね!!」


 「あぁ……ありがたいけど運動前だから後でもらうわ」


 「だよねぇ」


 少し申し訳ないと思ったが、今は野球の試合前なので後で頂くことにした。


 運動前に、しょっぱい物を食べるのは、喉が渇きあまりふさわしくない。


 「じゃあ俺にもくださいよぉ!!」


 「仕方ないですねぇ……」


 セクハラしたせいで毛嫌いされたにも関わらず煎餅クッキーを要求する健吾。


 悠菜はしぶしぶ了承したが、取り出したのは煎餅が入っていたのとは別の箱だった。


 「なにこれ……」


 その箱の中身は翔矢には見覚えのあるものだった健吾は初見だったので絶句している。


 差し出されたのは悠菜のいつものおどろおどろしい見た目の料理だった。


 「ちょっと失敗したクッキーでございます。ご賞味くださいませ」


 「いや……ちょっとじゃないでしょ。

 これ食べ物なのかよ……」


 「悠菜は料理苦手なんすよ」


 動揺している健吾とは違い悠菜の料理を見慣れている翔矢は冷静に対応する。


 「そういえば瑠々ちゃんは来てないの?」


 「いや……先輩に物体X食わせようとしといて話変えるなよ。

 瑠々はバイトで来れないってさ。」


 「あら残念。登山の時は失敗した料理見せちゃったから、クッキー食べて欲しかったのに」


 悠菜はガクッと肩を落とす。


 「クッキー作ろうとして煎餅になってる地点で成功とは言えないけどな……」






 *****






 「チーーーーーッス!!」


 煎餅やらセクハラやら変な事で頭がいっぱいになっていたが、ようやく練習相手の高校がグラウンドに入ってきた。


 「おっ。『凶悪高校』のみなさんが到着なさったぞー」


 「凶悪高校ってそんな名前の高校あるわけ……」


 凶悪高校という名前が健吾のいつもの悪乗りと思い軽くツッコミを入れようとした翔矢だったが、現れたのは目に切り傷があったりスキンヘットだったり到底高校球児とは思えない……というより高校生に見えない。反社会組織的風貌の集団だった。


 「……まじかよ。怖いな……」



 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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