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266話:服装から落し物が始まりそうです(改稿予定有り)

 六香穂高校文化祭前夜祭はラストのバンドで大きな盛り上がりを見せ幕を閉じた。

 そして今日は、地域や外部から様々な人が来る当日だ。

 

 地方の田舎高校ではあるが、六香穂市に高校は1つのみ。

 なので地元の注目度は高く、開催前からそれなりの行列が出来ていた。

 その中には北風エネルギー本社で働く蓮と鈴、それにドクターの姿があった。

 

 

 「田舎の文化祭に参加するくらいならザ・ホールの解析でも進めたかったんだが、いい息抜きになりそうだねぇ」

 

 

 10月が始まったばかりの肌寒い北国。

 にも関わらずドクターは半袖のアロハシャツ、それだけでも人目を集めるが、テンガロンハットというミスマッチな格好をしていた。

 

 

 「ドクター……今更だが何故いつもの白衣じゃないんだ?」


 「高校で白衣なんて、科学の教師か何かと勘違いされそうだったんでね。

 久しぶりに私服を引っ張って来たんだが変かな?」


 「変じゃないけど寒くないの?」


 「北国を舐めていたのは否定出来ないが、鈴君は着込みすぎじゃないかい?」

 

 「冷え性だから」

 

 

 鈴はニット帽に耳当てマフラーに手袋と、スキー場でも通用するようなフル装備。

 2人が並ぶと、今の気候が想像つかなくなってしまう。

 


 「お前ら、出かける時はちゃんと気温と天気を調べてだな~」

 

 

 大した事でも無いのに、蓮が長くなりそうな説教を始めようとしていた。

 だが2人のシラーっとした視線を感じ、すぐに中断される。

 

 

 「何か言いたいことでもあるのか」


 「蓮……服装が……」


 「ちょっとあり得ないねぇ」

 

 

 今まで見ないようにしていた蓮の服装が視界の入ると、鈴は視線をそらし、ドクターは腹を抱えて笑っていた。

 

 

 「高校に来るんなら“制服”で来るのは当然だろう?

 鈴はともかくテンガロンハットにアロハシャツの男に笑われる筋合いは無いぞ?」 

 

 「蓮、きみは教師も制服を着ていると思っているのかい?」


 「教師はスーツかジャージだろう?」

 

 

 蓮は何を言いたいか分かっていないとばかりに、キョトンと首を傾げている。

 これにはドクターも珍しく、得たいの知れない者も見ているような視線を送った。

 

 

 「ドクターの説明は回りくどい、ここは私が。

 蓮、大人が制服を着て高校に来るなんて正気の沙汰じゃない。

 30歳目前だし、何というか誤魔化しもきつい」

 

 

 ここでようやく蓮はショックを受け膝をついた。

 それがさらに列に並ぶ者の視線を集め、人が避けていく。

 

 

 「ママー、あのオジサンなんで制服で倒れてるの?」


 「しっ!! 見ちゃいけません!!」


 「警察呼ぶ?」


 「いやゲストで呼ばれた芸人さんかも」


 「あぁ、超ビックゲストが来るって書いてるもんね」


 

 などというヒソヒソ話しが蓮の耳に入り、彼の心の傷をさらに広げる。

 

 

 「こっこの変に服屋はないのか?」


 「田舎町に服屋なんてそうないよ、コンビニでもTシャツくらいはあるかもしれないけどね」

 

 

 ドクターは、ここに来る途中で見かけたコンビニの方向を指さす。

 


 「……行ってみる」


 「行ってらぁ」


 「気を付けてね」

 

 

 肩を落としながら振り返ると、目の前にボロボロのローブ姿という、自分と同じくらい不審者度が高い服装をしたゼウが立っていた。

 

 

 「貴様……何をしにここに!!」

 

 

 蓮は日本刀型の武器ソルを構えようとしたが、両腕をドクターと鈴に押さえられ、身動きを封じられる。

 

 

 「蓮、色んな人が見てるから」


 「武器なんて振り回したらいよいよ不審者だよ?

 彼は宮本翔矢の仲間だろう?」


 「北風エネルギー、お前らも来ていたのか!?」


 「母校の文化祭を見学に来て何が悪い?」


 「悪くないが、一般の参加者が制服は変だろ?」


 

 日本どころか地球に来て間もないゼウに言われたのが、よっぽどショックだったのか、蓮は再び膝から崩れ落ちた。

 

 

 「蓮の服装は、万国どころか異世界共通でヤバーイということだね。

 さっさとコンビニにでも行きたまえ」

 

 「そうだぞ」


 「ゼウって言ったっけ? あなたも人のこと言えない。

 ちょっとボロボロがすぎる、蓮と一緒にコンビニに行った方が良い」

 

 

 鈴はゼウがお金を持っていないと判断したらしく、財布を取り出した。

 

 

 「翔矢のお下がりを何着か貰ったが、まとめて洗濯してしまってな……

 だが俺は雷の速度で移動できる、人目には付かん」


 「ヘイヘイ、それじゃ文化祭は大して見学出来ないんじゃないかい?」

 

 「あっ……」

 

 

 ゼウも蓮と同じく肩を落とし、コンビニへ向かおうとした。

 だが、校門前でバザーが開かれていて、足がそちらに向か。

 

 

 「せっかくだ、現地調達も悪くない」


 「だな」

 

 

 のぞいてみると少しくたびれているが、丁度良いトレーナーが売られている。

 下はそのままでも誤魔化せると判断した2人は会計を済ませようとしたが、その店員を勤めていた生徒の姿にギョッとする。

 彼の頭は、どこぞの世紀末にでもいそうな緑のモヒカンだったのだ。

 

 

 「あいつは……」


 「ただ者ではなさそうだな」

 

 

 2人は懲りずに戦闘体勢に入ろうとしたが、後ろから鈴のゲンコツが炸裂し事なきを得る。

 

 「2人とも、ちょっとでも怪しげな所があったら敵扱いは辞めなさい。

 というか、今はあんた達の方が、よっぽど不審者だから。」 

 

 「「誠にゴメンなさい」」

 

 

 その後はモヒカンの「毎度アリー」という威勢の良い挨拶と共に無事に買い物を終えた。 ちなみにゼウは日本のお金を所持しており、鈴の財布は出番がなかった。

 

 


 ***

 

 

 

 北風エネルギーの面々が服装やらで揉めている時、横を3人の天使がすれ違っていた。

 以前翔矢の治療などをしてくれた医者のシフィン、大男のワルパ、小柄なグラビだ。

 3人は、それぞれ六香穂高校文化祭のお知らせのチラシを持っている。

 

 

 「翔矢っちに会うの楽しみ!!」


 「あぁ……久しぶりすぎる出番に気が重い」


 「グラビ殿、少しメタが見えた気が」


 「ゴメン、忘れて」

 

 

 気の抜けた会話をしている3人も、北風エネルギーの3人も、顔まで覚えていなかったのか、すれ違ってもお互いに気がつく事はなかった。

 

 

 「今日は楽しむぞーーー!!」

 

 

 財布を片手に持ち、両手を挙げ張り切るシフィン。

 その拍子に飴玉のようなモノが飛んでいったのだが、彼女は気がつかない。

 飴玉は運の悪い事に、籠いっぱいに飴玉を入れ、配り歩いている生徒の籠に紛れてしまった。

 

 

 「お菓子研究部、調理実習室で出来たてのケーキ用意してまぁす!!」

 

 

 宣伝しながら飴玉を配っている生徒。

 その前を大久保卓夫が通りかかる。 

 

 

 「あぁすまぬ、キッチリ宣伝しておくので、ソレガシのクラスメイトに配る分を貰えますかな?」


 「どうぞーーー!!」

 

 

 両手に持てるだけ持った卓夫は、そのまま教室へと戻っていった。

 

 

 「翔矢殿は、昨日今日と働きづめでゴザルからな。

 少しでも糖分を取って回復してもらわねば」

 


 

 ***

 

 

 

 教室に戻り厨房へ来た卓夫、彼の両腕には、学校中を周り集めて来たお菓子やフードが抱えられている。

 

 

 「皆のモノ大義でゴザル、色々と集めて来たので、各自エネルギー補給して欲しいでゴザル」

 

 「大久保サンキュー」


 「おい、男子は宮本以外ロクに働いて無いんだから、勝手に取るなよ」

 

 

 など軽い男女の言い争いが発生しながらも、バナナボートに林檎飴などが次々に取られていく。

 

 

 「あはは、文化祭というより夏祭りみたいなラインナップだな」


 「地元の協力で、どうしても食べ物が集まりやすいですからな。

 翔矢殿は我がクラスの出し物の要のでゴザルからな、しっかり食べてくだされ!!」


 「ありがたいけど、あんまし食うと動けなくなるからな……

 綿菓子と……飴玉1個貰って後で食うわ」


 

 翔矢は綿菓子をパクッと頬張り、飴玉をポケットに入れた。

 彼は気がついていない、これがシフィンの落とした魔法の飴玉だという事に。 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。

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