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265話:闇から恐怖が始まりそうです

 何者かに引きずり込まれ、暗闇へと放り込まれたリールと瑠々。

 うっすらと見える一本道に沿って、無意識に手を繋ぎながら、ゆっくりと前へ進む。

 

 

 「この我が、こんな初歩的な罠にハマってしまうとは……

 恐らく、大魔王軍の仕業」


 「あなた、何か心当たりがあるの?」


 「この世界は言わば力そのもの、大魔王軍がそれを狙っていたとて不思議はない、むしろ自然な事だ」


 「なっなるほど」

 


 ゴクリと息を飲み、前へ進む足取りが、より一層慎重になる。

 そんな2人の目の前に、シクシクと泣く、お河童頭の少女が見えた。

 

 

 「こんな所に人が!?」


 「きっと私たちと同じで引きずり混まれたのよ、もう大丈夫よ!!」

 

 

 慌てて駆け寄り声を掛けるも反応がない。

 首を傾げながらも、リールは少女の肩にポンと手を乗せた。

 すると、その首は180度回転し、2人にニコッと微笑んだ。

 その目からは血の涙が溢れ、口は裂け、両目は向いてはいけない方向を向いていた。

 

 

 「「ぎゃおーーーーーん!!」」

 

 

 悲鳴をあげながら一目散に走り出す2人。

 この空間は見た目より狭いらしく、すぐに行き止まりになった。

 

 

 「なんなのよ……この空間は……」

 

 「あっあれしきで怯えるとは情けない奴め……」

 

 

 2人は壁に手を突き鼓動を落ち着かせるように胸を押さえている。


 

 (閻魔を抜けば一瞬で片が付いたでしょうけど、瑠々って子の事情が未知数。

 魔力は感じないけど北風エネルギーみたいなパターンもあるし警戒しないと。

 ……魔力を感じないと言えば、この空間も魔力は感じないわね)

 

 

 そう思考を巡らせているウチに、心臓の動きは落ち着いた。

 再び歩みを進めようとすると、今まで手を突いていた壁が、井戸だった事に気がつく。 

 

 

 「あら、現代日本に井戸なんて珍しいわね」


 「ここが現代日本なのか分からんがな」

 

 

 など口にする余裕が出来た2人だが、それは長くは持たなかった。

 ヒューーードロドロドロという耳に入るだけで涼しくなるような音と共に、井戸の中から長い髪で顔が隠れた白い装束の女が現れたのだ。

 

 

 「「あんぎゃーーーーーー!!」」

 

 

 再び悲鳴をあげながら走り出す2人。


 

 「どうなってるのよぉぉぉぉ!!」


 「おのれ魔王軍テラー・ファントム!!」


 「いつの間に敵の名前を!?」


 「我が今、仮に名付けた」


 「仮にの割に、随分と本気の名前だこと」

 

 

 冷静に話している様にも聞こえるが、その表情に余裕はなく、とても他人には見せられない顔になっていた。

 必死になり走ってる内に、光りが漏れている扉が目に入った。

 

 

 「あそこから外に出られそうよ!!」


 「ここも外に見えるがな!!」  

 

 

 軽口を叩いている様にも聞こえるが、2人の表情は必死そのもの。

 そのまま突っ切ると、外は、何事もないように文化祭で賑わう生徒達の姿があった。


 

 「何だったの……今の?」


 「おのれテラー・ファントム、姑息な幻術で我を惑わしよって」


 

 状況が飲み込めないまま呼吸を整えていると後方から「お疲れ様でしたー」という声。

 2人とも聞き覚えのある声だったので、振り返ると、そこにはゾンビの格好をした健吾が立っていた。

 健吾が実際にゾンビになってしまった訳では無いというのは一目見て感覚的に分かった。

 

 

 「ってリールちゃんに瑠々か? 珍しい組み合わせだな、文化祭楽しんでるか?」


 

 瑠々は1年で、リールは転校生。

 今の健吾は、六香穂高校文化祭初参加の2人を気遣う、良い先輩そのものだった。

 

 

 「「そんな事よりウンヌンカンヌン!!」」

 

 

 2人は今の出来事を必死に話した。

 すると健吾は嬉しそうに腹を抱えて笑い始める。


 

 「健吾先輩!! 笑ってる場合では無いのだ!!

 テラー・ファントムがぁ!!」


 「テラー何とかはともかく、瑠々ちゃんの言ってることは本当よ!!」

 

 

 まだ笑いが止まらない健吾に、ムスッとした表情を見せる2人、それに気がついたのか、無理矢理笑いを止め口を開いた。

 

 

 「お前ら、ここが何かも知らずに入ったのか!?」

 

 

 後ろを指さして居るので振り向くと、そこには「恐怖の井戸」と言う文字が。

 これで2人は、健吾のクラスの出し物だと気がつき、恥ずかしさから頬を赤く染める。

 

 

 「さっ最初からそんな事だろうと、勇者の魂を持つ我は気がついておったがな!!」


 「何を今更……テラー何とか言って騒いでたじゃない」


 「リールも、漏らしながら逃げ取ったでは無いか!!」


 「漏らしてないし、年頃の娘が、んな言葉使うな」


 「ははは、リールちゃんも年頃の娘とか言うの、女子高生らしくはねぇぞ?」

 

 

 ネタばらしを受け恐怖心が消えた2人。

 瑠々は背後から肩を叩かれたが特に驚いたりはせず振り向いた。

 そこには最初に見た首が回った少女が手に荷物を持ち立っている。


 

 「おぉお主か、先ほどはたいそう驚かされたぞ!!」


 「これ……落とし物……」

 


 瑠々は両手に荷物を抱え文化祭を満喫していたが、よく見ると両手は空。

 恐怖のあまり手放して来てしまったようだ。

 


 「おぉスマヌ」

 

 

 少女は何も言わず教室に戻っていった。

 

 

 「文化祭にしてはクオリティ高いわね、あの子って高校生に見えないけど外部の小学生にも頼んだの?」

 

 

 リールの問いに、健吾は青ざめ答える様子がない。

 

 

 「……じゃない」


 「え?」

 

 「俺ら3年は受験とかあるし、今年は井戸しか用意してねぇぞ?」


 

 顔から血の気が引き、目を見合わせる2人。

 

 

 「「あんぎゃーーーーーー!!」」

 

 

 その悲鳴は校内中に響き渡るのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 その頃、ルーシィ・ザ・ワールドの面々は、以前見つけた宇宙船内を探索していた。

 

 

 「ねぇコレ、まだ動かせないの?」


 「それを今占っている、後サクラはあちこち触らないで。

 それで部品が何個か行方不明になってるから」


 「ゴメン」


 「せっかく“何処かにある何か”を見つけましたのに、状況は停滞ですわね。

 まともに働いているのはシトラスくらいですし」

 

 

 バーベナはコクピットと思われるイスに座り優雅に紅茶を飲んでいる。

 

 

 「ムニャムニャ……バーベナちゃん、そういうのは働いている人が言うもんだよ」


 「ここに来てから寝てばかりのトレニアに言われましても」


 「うん、だから私は働いている人のは文句も意見も言ってな……」

 

 

 言葉を言い終える前にトレニアは、今日何度目かの眠りについてしまった。

  

 

 「働いてない人が働いてない人に文句言うのも納得いきませんわ!!」

 

 

 バーベナがコクピットのテーブルを思わず強く叩くと、ピョンとティーカップが宙に浮くと、その中身が操作パネルに溢れてしまった。

 

 

 「ムニャムニャ、バーベナちゃん、迷惑かけるのは働いてないより悪いと思う。

 お昼寝は誰にも迷惑をかけない最強の行動コマンド」

 

 「分かりましたわよー!! 大人しく一緒にお昼寝でもしてますわ!!」

 

 

 雑巾で操作パネルを一所懸命に拭き、そのままテーブルに伏せてふて寝しようとする。

 だがバタンと扉が開く音がし、それは叶わなかった。

 

 

 「ラナンキュラス今まで何処に行ってましたの?」


 「ワシがいては、この宇宙船に厄災が降りかかりかねんのでな」

 

 

 その言葉に、ルーシィ・ザ・ワールドの面々は情景反射のように納得する。

 

 

 「ウチの占いによると、ラナンキュラスは何か情報を持ってきた」


 「流石はシトラスちゃん、何でもお見通し、ムニャムニャ」

 

 「厄災が降りかからないように宇宙船から離れていたのに戻って来たのですから、占いの権能関係なく分かった事と思いますわ、っと何の情報を持って来ましたの?」

 

 

 バーベナはドライヤーで温風を操作パネルに当てながら話しを進めた。

 

 

 「宇宙船が動かせるまで暫く掛かるのであれば息抜きでもどうかと思ってな」

 

 

 ラナンキュラスは机の上に六香穂高校文化祭のお知らせと書かれたチラシを広げた。 

 

 

 「六香穂高校、私の占いによれば宮本翔矢の通う学校」


 「それは皆知ってますし」


 「行くかどうか迷うけど……翔矢君に会いたいな」

 

 

 5人は話しに夢中で、まだ気がついていなかった。

 バーベナがドライヤーを当て続けた操作パネルから少し煙が上がっている事。

 そして何故か電源が入り“天界行きと表示されている事に。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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