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262話:役割から気づきが始まりそうです(改稿予定有り)

 翔矢宅の庭で開催された流しそうめん大会。

 それは、予想だにしない方向で盛り上がりを見せていた。

 無駄に巨大なセットに囲まれ、庭狭しと戦いが繰り広げられている。

 

 

 「ペネムエと言ったか? さすがはマスターが認めた天使じゃ、我がここまで押されるとはのぉ」


 「そんなぁ~翔矢様から認められているなんてぇ~」

 

 

 アルネブの言葉で大きな隙を見せるペネムエ。

 彼女の箸に挟まれていたそうめんは、その間に姿を消す。

 

 

 「しまった!!」


 「ふん、ここが戦場であれば、貴様はとっくに命を落としている。

 流しそうめん大会であった事に感謝するのだな」


 

 奪った一口を味わい終えると、アルネブは目の前に流れてきたそうめんにも手を伸ばす。

 慣れない箸で掴み取った瞬間、その右手を冷気が遅う。

 

 

 「ひゃっ……」


 「魔王ともあろうお方が、随分と可愛い声を上げるのですね」


 「ふん!! 日本の夏というやたらに暑い気候、氷はむしろ感謝だわい!!」

  

 

 キンキンに冷やされたそうめんを口に運ぶアルネブ。

 彼女の頭にキーンと痛みが走り、頭を押さえ込んだ。


 

 「貴様!! 毒でも盛ったか!?」

 

 「食べ物にそんな罰当たりな事しませんよ。

 冷たいモノを一気に掻き込むからです」

 

 

 アルネブ行動不能の隙を突き、ペネムエはゆっくりとそうめんを味わうのだった。

 


 

 ***

 

 


 戦いを繰り広げているのはココだけではない。

 リールと蓮は、剣を交え、もはや流しそうめんそっち抜けだ。

 

 

 「はぁ……はぁ……その武器、確か閻魔と言ったな?

 この前は、間抜けにも貴様の背中が燃えていたが、使って平気か」


 「余計なお世話よ!! 私はこれでも天界では超超天才として通っているの。

 こんな武器、1周間もあれば使いこなせるわ!!」

 

 

 その言葉の通り、リールは閻魔の黒炎を自在に操っているように見える。

 だが“こんな武器”という表現にカチンと来たかのように閻魔の黒炎はリールの方へ飛び火した。

 

 

 「あっちゃーーーー!!」

 

 

 赤くサラリとした自慢の髪への引火。

 パニックになった彼女は右へ左へ、庭狭しと駆け回っている。

 そこに救いの神が現れたかのように、寒すぎる程の冷気が降りかかった。

 

 

 「ヘックシュン!!」

 

 

 寒さのあまり鼻をすすり、落ち着くと、隣にはペネムエが立っていた。

 

 

 「リール、申し訳ありません、こちらも立て込んでおりまして」

 

 

 ペネムエの方は息つく間もなく、襲いかかってきたアルネブの剣をブリューナクで受け止める。

 その後も激しい連撃が続き、ペネムエは裁ききれなくなっていた。

 

 

 「純粋な武器の腕は我の方が上のようじゃのぉ」


 「……性能の高い武器を使いこなすのも、武器の腕に含まれるかと」

 

 

 ブリューナクの冷気がアルネブの魔剣を包み込み、それを使い物にならなくしてしまう。


 

 「くっ……こしゃくな真似を!!」

 

 

 蓮とリールは手を止め。この戦いを傍観していた。

 その蓮の視線が、リールの方へ向く。

 

 

 「性能の高い武器の使いこなしも腕の内……だそうだ」


 「おい、誰が使いこなせてないって?」

 

 

 再び鍔迫り合いを始める2人。

 すぐ横ではペネムエとアルネブも戦闘中。

 その状況を気にする事無く、食事を続けている者もいる。

 ゼウは慣れない箸を何とか扱いながら、流しそうめんを食べていた。 

 

 

 「日本の文化には、それなりに慣れて来たつもりだったが……動く物は難易度が高いな」

 

 

 何度も箸を伸ばしているゼウだが成功率は6割ほど。

 この数値に彼は満足していない様子だ。

 

 

 「ゼウって言ったわよね? 中々上手だと思うけどコツとか教えてくれない?」

 

 「コツと言われてもな……正しい持ち方を意識するくらいしか」

 

 

 となりの人物からの問いに何気なく答えたゼウ。

 だが声の主の顔が目に入るなり、臨戦態勢になり、雷鬼の腕を構える。


 

 「貴様は……脱獄犯のルーシィだな!! なぜここに!?」

 

 「えっ? 今更!? ちゃんと招待されて最初から参加していたのだけど?」

 

 

 気にせず流しそうめんに箸を伸ばそうとする彼女の足下を雷が襲う。

 ルーシィは横に飛び何とか回避した。

 このとき「ドン」と何かにぶつかった感触があったのだが、それを気にしている余裕はない。

 

 

 「ちょっと!! 招待されたって言ってるでしょう!?」


 「脱獄犯が招待される訳がない!! それでも本当だと言い張るなら、招待状でも見せてみろ!!」


 「いや……招待状とか最初から無いでしょうが」

 

 

 会話の最中も雷が次々と襲いかかるが、彼女は紙一重で回避を続ける。

 これが偶然なのか実力なのかは定かで無い。

 しかしルーシィは、このままでは埒が明かないと感じたようだ。

 


 「翔矢君!! 私ってちゃんと招待されたわよね!?」


 「もちろん!! 遠慮無く食べてください!!」


 

 翔矢の返答が耳に入るなり、ゼウは攻撃の手を止める。

 

 

 「何か言うことは?」


 「誠にごめんなさい」

 

 

 深々と頭を下げるゼウ。

 この場は収まるかと思われた。

 だが彼に……いや2人に向けられる殺気が背後に迫っている。

 ゼウは、その気配に思わず雷鬼の腕を向けると、雑賀鈴がけん玉型の武器、クラッシュダマーを振りかざしていた。

 

 

 「どういうつもりだ!?」

 

 

 クラッシュダマーを掴み、鈴を睨み付ける。

 彼女の表情は怒りに満ちていたが、力勝負では勝てないと判断したのか、そのまま引き下がった。

 

 

 「……どういうつもりだって、これを見て言って欲しいわ」

 

 

 鈴は自信の頭を指さすと、茶色くぬれていた。

 ゼウは、それが麺汁だと気がつくと、状況を理解した。

 

 

 「誠に、ごめんなさい」

 

 

 深々と頭を下げながら、どこからか取り出したタオルを差し出す。

 

 

 「全く……せっかくなんだから大人しく食べればいいのに」


 「あはは、私は賑やかな食事、楽しいわよ?」

 

 

 そう口にしたのは、鈴が麺汁まみれとなる原因を作った要因のルーシィだ。

 一端は収まっていた鈴の怒りが、再び湧き上がって来る。


 

 「罪人……お前も少しは反省しなさい!!」

 

 

 クラッシュダマーの玉を勢いよく射出する鈴。

 しかしヒョイッと横に飛ばれ交わされてしまう。

 

 

 「くっ……ってあれ?」

 

 

 交わされたクラッシュダマーは、勢いを失わず進み続ける。

 その先では、蓮とリールが鍔迫り合いを続けていた。

 

 

 「あなた……中々の剣術ね、閻魔の炎を使ってないとはいえ超天才の私と互角なんて」


 「この程度、大したことはない、何なら閻魔の炎とやら、使っても良いんだぞ?」


 「はっ!? これくらいのハンデがないと、あんたが可愛そうだって話しよ?」


 「また使いこなせず、自分が熱い想いをするのが嫌なのか?」


 「言ってくれるじゃない!!」


 

 リールは眉にシワを寄せながら、閻魔の刀身に炎を纏わせる。

 そのまま大きく振りかぶった所で「2人共あぶない!!」という鈴の声が耳に入ってきた。 振り向いた時には何も出来ず、リールはクラッシュダマーの玉を腹に抱えたまま、庭中をグルグルと飛び回っている。

 あまりもの出来事に、全員の視線が彼女に釘付けになった。

 


 「誰か!! 見てないで止めなさいよーーーー!!」

  

 

 鈴は言われるまでも無く、玉の操作を試みているが、何故か言うことを聞かない。

 

 

 「こんな事……今までなかったのに……」

 

 

 この慌ただしい状況の中、黙々と流しそうめんを食べる事に集中している人物が2人いる。 1人は、自信に戦う力は無いと言い切っているドクター。

 もう1人は、翔矢からセクハラ行為を完璧に対策され、大人しくせざる終えない健吾だ。

 

 

 「ドクター、こんだけ色々な奴が戦ってるんだ。

 いつもみたいにデータを取ったりしなくていいのかい?」


 「僕なんか巻き混まれたら命は無いからね、こういう時は大人しくしているのが1番さ」


 「そうかい」


 

 健吾はドクターの視界に自分が入っていないのを確認すると、向かってくる玉に向かって手をかざした。

 すると急激に勢いを失い、バレーボール代のそれは、彼の手に収まった。


 

 「おいおい鈴ちゃん、ちょっとお転婆がすぎるんじゃないかい?」


 「ゴメン、何かいつもより調子が悪くて」


 

 玉を手渡しで受け取る鈴は、拳ほどの大きさに変化させ、カバンの中にしまう。

 まだ戦いが続く中、ドクターがようやく、いつものテンションで声を上げた。


 

 「ヘイヘイ!! みんなちょっと騒ぎすぎだよ!!

 黙々とそうめんを流し続ける宮本翔矢を少しは見習いたまえ!!」

  

 

 脚立に座る彼をビシッっと指さすドクター。

 そこには、今もそうめんを流す彼の姿があった。

 その様子に、戦っていた者達は手を止め、何とも言えない空気が流れる。 


 

 「あっ……翔矢様、申し訳ありません、わたくし達だけで」

 

 「みんなが楽しそうでなによりだよ」

 

 

 そう言いながら、翔矢はそうめんをズズズと啜った。

 その姿に、空気はさらに変なものになり、耐えかねたゼウが言いにくそうに口を開く。

 

 

 「翔矢は……その……流れたそうめんを食べないのか?」


 「賑やかに皆が食べてるの見てるのも楽しいし、別に味とかは変わらないからな」


 

 何事もなかったかのように、もう一口啜る翔矢に「おーーーい!!」というツッコミが炸裂すると共に、各々が必死にそうめんを奪い合う自らの姿がフラッシュバックし、顔を赤らめた。

 その後は会話が弾みつつも比較的大人しく、流しそうめん大会が続くのだった。

 

 


 「やはり流しそうめん程度で新しいデータは取れなかったが……もう“アレ”を完成させて問題ないかな」

 

 「ドクター、何か言った?」


 「いや? 流しそうめんは楽しいねぇ」

 

 

 大天界祭の開催と共に、ドクターの計画も実行が近い事を、今は誰も知るよしは無い。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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