260話:帰宅から探し物が始まりそうです(改稿予定有り)
翔矢が学校に通っている間、ペネムエは部屋で書類の整理をしながら考え込んでいた。
「大天界祭……もう絶対に大事件が起こるじゃないですか……」
ここ1週間ほどで起こった出来事を見返しながら、イスを後ろに倒しグッと伸びをする。
「結局ルーシィ・ザ・ワールドの方々も目的知れずの行方知れず、大魔王デモンも現れ……天界に帰るというだけでも気が重いのですが」
さらに頭を抱えると、部屋の扉が開く音がした。
姿を見る前に、翔矢が帰って来たのだと分かり表情が明るくなる。
しかし、彼の状態を見るなり目が点になってしまった。
「翔矢様!! とリールも一緒でしたか」
「そう複雑そうな顔をされるとショックなんだけど」
「家に来るのは珍しいと思っただけですよ、そんな事より凄い荷物ですね?」
「実はウンヌンカンヌンで、たこ焼きと焼きそばとお好み焼きともんじゃ焼きを作らなきゃいけなくなって練習おば」
「祭りとは、何処の世界の行事でも大事なのですね」
リールはペネムエの広げていた資料を横目で確認した。
「あぁ大天界祭も近かったわね、色々あって忘れてたわ」
「リールはノーマジカルで起こった色々の3割ほどにしか参加して居ない気が」
「あはは、まぁ大天界祭で絶対事件が起こるだろうから、その時は役に立つわ!!」
「まぁ頼もしくはあるんですけどねぇ……」
めでたい祭りのようだが事件が起こる前提の会話。
詳しい事情までは知らない翔矢も苦笑いをしていた。
「でも祭りって、時期が被るもんだなぁ」
「と言いますと?」
首を傾げたペネムエの疑問に答えたのはリールだった。
「あぁ、六香穂高校も文化祭だとか言う祭りが近いのよ」
「んで、俺のクラスの出し物は鉄板屋……まぁ鉄板料理を何でもやるようになって。
それは良いんだけど、俺が料理全般の責任を負う事になった」
「それはそれは、翔矢様の料理の腕は、学校でも有名ですからね」
「自信はあるんだけど、もんじゃ焼きとかたこ焼きは、ほとんど作ったこと無いからな。
とりあえず練習しようと思って」
「熱心でございますね」
ペネムエの表情は、微笑んでいる。
しかし、リールはその表情の奥に、恐怖を覚えた。
(何? 「リールまで一緒に練習しなくても良いですよね?」
って言いたいの? 確かに私は接客担当だけど、そんなとこまで話してないわよね?)
リールは冷や汗を流しながら、空気を変えようと、必死に話題を探す。
「そうそう!! 練習するならフライパンで料理するのはアレよね?
鉄板なんて持ってるの? たこ焼きは専用の型が必用だと思うんだけど」
「あっ……あるはずだけど、しばらく使ってないな」
「わたくしも見た覚えはありませんね」
「ペネちゃん来てから……いや高校入ってから使ってないかも。
うわぁ、ペネちゃんとやれば絶対楽しかったのに、何で気がつかなかったんだろ?」
「えへへ……これからも機会はありますよ」
何気ない翔矢の一言だったがペネムエの表情は喜びで満ち溢れていた。
そんな彼女を余所に、鉄板を探しに部屋を出た翔矢、リールも後を追い1人取り残されたペネムエ。
しばらくしてから状況に気がつき、急いで部屋から出ると、すぐ横にある物置から様々なサイズのダンボールが放り投げられ、それをリールが受け止めては重ねて安全に置いていた。
「ちょいちょい、中身も確認せず雑に扱うんじゃないわよ!!
ってか人に向かって投げるんじゃない!!」
「悪い悪い、まぁ人間の俺がしゃがみながら投げれる重さだし、リールなら危なくないだろ」
翔矢は悪びれる様子も無くダンボールを投げ続ける。
「はぁ……妙な信用をされてるもんだわ」
そうは言いつつリールも危なげなく作業を続ける。
その息の合った共同作業に頬を膨らませるペネムエ。
2人の間に入って何かをキャッチしたが、感触がダンボールではない。
何かと見てみると竹の束だった。
「翔矢様、これは何……」
それを訪ねる前に眼前にはダンボールが迫っていた、
ペネムエは反射的に身を屈め、直撃を回避。
だがその後ろにいたリールの顔面にはクリーンヒット。
「あちょぱ!!」
妙な声を上げ倒れ込むと、ようやく翔矢の手が止まった。
「なした?」
「なした? じゃないわよーーーーー!!」
「まぁまぁリール、本人も反省している事ですし」
「これが反省してる奴の姿か!?」
「誠にゴメンナサイ」
頭を下げる翔矢の姿に、ため息を吐くリール。
彼女は自分の頭を直撃したダンボールをそっと持ち上げた。
「まぁぬいぐるみしか入ってないダンボールなら良しとするわ」
「っと、ペネちゃんの持ってるそれって……流しそうめんの竹だ!!
懐かしいなぁ、奥まで漁った甲斐があったぜ」
「流しそうめん?」
「母さんが元気だった頃は、夏休みのたびにやったんだよなぁ」
竹の束を手に取り懐かしそうに見つめる翔矢の姿。
ペネムエとリールは目を合わせ頷いた。
「翔矢様!! 流しそうめんとやら、是非やってみたいです!!」
「私も食べてみたいわ!!」
2人はズイズイと翔矢に迫り寄る。
「うぉ……2人とも急にどうした?
まだまだ残暑が厳しいし、やっても良いけど組み立てれるかな?」
「確認だけでもしてみましょうよ!!」
「ペネちゃんやる気満々だね、まぁ使えるかの確認くらいは出来るかな?」
それから約2時間半、翔矢の記憶よりも巨大で、組み立ては断念したが、問題なく使えそうだった。
「こりゃ3人っだけでやるのは勿体ないな、次の休みに、人を呼べるだけ呼んでみてパーティしよっか?」
ペネムエとリールは大賛成とばかりに首をブンブンと縦に振る。
「思ったより疲れたな、このセットは廊下に置いといても邪魔だし、少しバラして部屋に運ぶか」
「それでは寝床が狭くなってしまいますし、半分は組み立てているのにバラしてしまうのも非効率です、こうしましょう!!」
ペネムエは腰に掛けている魔法のポーチを口いっぱいに広げ、流しそうめんセットをしまい込んでしまった。
「おぉ、そのポーチ無限に入るの忘れてた、こういう使い方もあるんだね」
「流石に無限ではありませんが……何とか収まって良かったです」
その後3人は、大量のダンボールを再び物置にしまった。
「ふぅ~」と揃った動きで額の汗を拭うと、ペネムエがある事に気がついた。
「そういえば、鉄板を出すために物置を漁っていたのでわ?」
「「あっ!!!!」」
再び物置を漁ること1時間弱、無事にバーベキュー用の鉄板が見つかった。
しかしたこ焼き用の型は見つからないまま、時刻は既に夜8時を回っていた。
今日は諦め、もんじゃ焼きを練習し晩ご飯とすることにした。
「よし!! まずはもんじゃ焼き完成!!」
同時に焼き上がったもんじゃ焼きが、ペネムエとリールに取り分けられる。
「「いただきます」」
揃った動きで口に運ばれるもんじゃ焼き。
初めてな上に、夜遅くなってしまったので、作り方をゆっくり確認する間も無かったので、翔矢は出来映えに自信が無く緊張していた。
「どっどうだ?」
「「ううううう」」
「う?」
「「うまーーーーい」」
「お約束の反応ありがとよ!! どんどん焼くぞ!!」
「あっ翔矢様も食べませんと、わたくし焼いてみます!!」
3人にとって、流しそうめん前の楽しいパーティになったのだった。
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