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259話:復帰から準備が始まりそうです(改稿予定有り)

 ルーシィ・ザ・ワールドのサクラの迷子から始まった今回の騒動。

 それは、玲奈が六香穂へと続くザ・ホールを見つけた事で、あっけなく幕を閉じた。

 あれから数日、日常を取り戻した、ある日の放課後、翔矢は悠菜達クラスメイトと共に教室で文化祭の準備を進めていた。

 

 

 「えっほえっほ、飾り付けを皆で造らなきゃ♪」

 

 

 どこかで聞いたようなリズムに乗りながら看板を飾り付ける悠菜。

 そこには「2-B鉄板屋」と書かれている。

 

 

 「へぇ内のクラスは鉄板屋かぁ」


 「翔矢君、皆で話し合って決めたのに聞いてなかったな?」


 「あはは……」

 

 

 恐らくザ・ホールから帰還した数日の間で決まったのだろう。

 授業には全て参加していたが、疲労と心労が貯まり上の空だった。

 

 

 「もう!! 翔矢君は主役なんだからしっかりしてよ!!」

 

 

 そう言いながら悠菜は強く背中を叩く。

 

 

 「いってぇな……ん? 主役って!?」

 

 「翔矢、焼きそばは目玉焼き載せてくれ、もちろん半熟で」


 「おれお好み焼きは大阪のしか食べた事ないから広島風がいい、ふっくら焼いてな!!」


 「わっわたしは、もんじゃ焼き、食べてみたい」


 「鰹節たっぷりの、たこ焼きも!!」

 

 「……おい料理関係の仕事、全部俺にさせる気じゃないだろうな?」

 

 

 クラスメイト全員から暖かい視線が翔矢に送られる。

 

 

 「おい!! 誰か何とか言えや!! せめてメニューの数は減らしてくれ」

 

 

 焦る彼の肩を悠菜がポンと叩く。

 

 

 「安心して!! 翔矢君1人には背負わせないよ、私も手伝うから」

 

 

 この時、クラスメイト全員の脳裏に同じ光景が過る。


 

 「食中毒がおこるぞーーーー!!」

 

 「いやテロだーーーー!!」

 

 「衛生兵!! 衛生兵はいるかーーー!?」

 

 「ちょっと皆!! 最近は食べれるモノが出来るようになったよ?」


 「えっ……それなら」

 

 「おい落ち着け、食べれるのは大前提だ。

 クッキーを作ろうとして煎餅が出来たという逸話があるぞ」

 

 

 翔矢の言葉に凍り付く教室。

 

 

 「いっ一ノ瀬さんには配膳とかやってもらおう」


 「そうそう、調理には一切手を触れない出禁の感じで」


 「料理が苦手な方なのは認めるけど、なんか言い方がショックだなぁ~」

 

 「悠菜ちゃん、社会は色々な人の仕事で回っているのよ。

 調理だけが料理屋の全てじゃないわ!!」

 


 「そうだけどぉ、花形の部署ってどうしてもあるじゃん?」


 

 リールの必死のフォローにも悠菜は納得行かない様子。

 

 

 「お店の花形って、どっちかって言うとホールじゃないかな?

 人目にも触れるしさ、私も喫茶店でバイトしてるけど、メイドの格好って可愛くて好きよ?」

  

 

 メイドというワードに、教室中の男子の耳がピクピクと動く。 


 

 「メイド!? そうだ!! 女子にはメイドをやってもらおう」


 「ナイスアイディア!! まぁ男子の総意だがな」


 「じゃあ男子は執事でもやるか?」


 「いやいや鉄板屋なんだから、男子がキッチンで良いだろ?」


 「いまの時代“男子が”とか強調しない方が良いぞぉ」

 

 

 とは言ったものの、女子もメイドをやる事への抵抗は無いらしく、話しはトントン拍子に進んでいった。

 

 

 「ってか鉄板料理にメイドって似合わなくないか?」

 

 

 翔矢の一言でクラスの空気が固まってしまった。

 話しに水を差してしまったかと肝が冷えたが、1人の声が、この空気を打ち破った。

 

 

 「まぁ、ここは専門家の意見を聞こうじゃないか?」


 「専門家?」

 

 

 何人かのクラスメイトは首を傾げたが、任せろとばかりに、大久保卓夫がスッと立ち上がった。

 

 

 「ゴホン、近年は人手不足と働き方改革により……」


 「何の話しだ!! 本題を述べろ」

 

 

 ほぼ反射的に翔矢の拳が卓夫の頭上に振り下ろされる。

 

 

 「いで!! 分かったでゴザルよ……

 まぁ学園祭の出し物なんて、細かいこと考えず、やりたいもんやったもん勝ち青春なら、というのがソレガシの意見でゴザル」


 「最初からそう言えや」

 

 

 再び翔矢の鉄拳が卓夫の頭上に振り下ろされると、教室は爆笑の渦に包まれるのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 同時刻、翔矢達が先日激闘を繰り広げた採石場。

 その一角の洞窟のようになっている場所には、ルーシィとアルネブがいた。

 

 

 「アルネブって言ったかしら? お腹が空いたわ、焼き芋ってもう無いの?」


 「さっき食ったばかりじゃろうが!! マスタが心を込めて作って下さったモノを数秒で平らげよって!!」


 「だって美味しかったから……私は数千年も牢獄でくらしていたのよ?

 まともに食事が出来たのが嬉し“食って”」


 「おい!! どさくさに紛れて我の分まで食うな!!」


 「私……ずっと牢獄暮らしで……」


 「会話の無限ループにでも突入する気か!?

 あと一応ここも牢獄だからな?」

 

 

 アルネブは洞窟の出入り口を指刺した。

 そこは彼女の能力で操られた蔓や枝が張り巡らされ、厳重に塞がれている。

 

 

 「あなた異世界の魔王って言ってたものね」


 「左様!!」


 

 能力を褒められたと思ったのだろう。

 アルネブは自身満々に胸を張った。

 

 

 「討伐されなかっただけ有りがたいと思いなさい」


 「……いや投獄されてるのは、お前じゃい!!

 我は自由自裁に出入りできるわい」


 「へぇ……見せて頂戴、ハネル大陸を支配したという能力を」


 「ふむ良かろう!!」

 

 

 アルネブは出入り口を塞いでいる蔓や枝に右手をかざす。

 その真後ろでは、ルーシィがピタッと待機していた。 

 

 

 「どうしたの?」


 「お主、我にここを開けた瞬間逃げる気じゃろう?」


 「そんなまさかぁ、魔法も使えない世界で魔王様から逃げるなんて無理ゲーよ」


 「そうじゃよな?」


 「「アハハハハハハ」」

 

 

 何故か声を合わせて高笑いする2人。

 その声は採石場中に響き渡ったのだが、同時にピタリと止んだ。

 

 

 「じゃあ、この腕の超高速の腕輪はなんじゃ!!」

 

 

 ルーシィの左手首をガシッと掴むアルネブ。

 彼女は冷や汗を流しながら目を反らした。

 

 

 「あららぁ……オシャレで着けていた腕輪にそんな効果がぁ?」


 「ウソ下手くそか!?」


 「あはは、結構レアなアイテムな筈なんだけど、一目見ただけで気がつかれると思わなかったわ」


 「油断も隙もない奴じゃ、貴様を逃がしては我に大役を任せて下さったマスターへ合わせる顔が無いのだ」


 「分かったわよ、大天界祭まで時間はあるし、大人しくしておくわ」


 「全く、何を企んでおるのか、不気味な奴じゃわい」

 

 

 アルネブは彼女に不信感を抱きながら、任務を続けるのだった。

 


 

 *** 

 

 

 

 さらに同時刻、北風エネルギー東京本社。

 謹慎が解けたドクターは仕事へ復帰し、何やら研究を進めていた。

 その様子を、蓮と鈴は背後からジッと監視していた。

 

 

 「ヘイヘイ、2人とも、そんなに見られていたら落ち着かないんだけどねぇ」

   

 「貴様は見張ってないと何をしでかすか分からないからな」


 「この前のワープについても、何も説明がないし」

 

 

 2人の視線を浴びたまま、ドクターはキーボードをカタカタと高速で打ち続ける。


 

 「そのお陰で窮地を脱したんだし多めに見てくれたまえ。

 それに説明は散々したけど、君たちが理解出来てないだけだからね」


 「説明とは、相手に伝わらなければ、したことにならない!!」

 

 

 蓮の迫真の一言に、ドクターは呆れたように大きな溜め息をつく。

 

 

 「ワープと言えば、君たちが帰ってくるのに使ったザ・ホールについても研究が必要だねぇ。

 異世界の何かかと思ったけど、この世界同士で繋がってる場所もあるって事は、もしかすると……」


 「「もしかすると!?」」

 

 

 蓮と鈴は声を揃えてズズズイとモニターに詰め寄る。

 

 

 「いやいや、ここの表示は別の研究なんだけど……もしかして、何かも分からずにずっと見つめていたのかい?」

 

 

 2人は顔を赤く染めながらその場を離れ、自分の仕事に戻っていった。


 

 「やれやれ、これで僕の研究に集中が出来るよ」

 

 

 その言葉は、仕事に戻った彼らには聞こえていないようだった。

 

 

 ~大天界祭開幕まで、地球時間で残り2週間~

  

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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