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250話:集合から脱獄者が始まりそうです

 目の前にいる幼女がアルネブと知らされ、唖然とするバーベナとトレニア。

 バーベナは自らの間の抜けた姿に気が付いたのか、ブルンブルンと首を横に振る。

 

 

 「何があったかは知りませんが、合流出来て良かったですわ。

 ほれ、飴ちゃんを上げるので戻って来なさいな」

 

 

 アルネブは、ゆっくりと歩み寄って来たので、自分の言うことを聞いているのだと油断しきってしまった。

 トレニアはというとウトウトとするばかりで、その動きに関心を示していない。


 

 「人を知らん世界に呼び出しといて、命令するなボケェ!!」

 

 

 何が起こったかも分からないまま、バーベナは腹部に強烈な痛みを感じ、しゃがみ込む。

 


 「くっ……何を……」


 「バーベナ様、そいつ攻撃してくる気だから危ないよ~」


 「トレニア、もっと早く言って欲しかったですわ」


 「注意するの面倒くさかったもんでぇ」


 「今、口に出しても手間暇は同じでしょうが!!」


 「あっ……」

 

 

 怒鳴ることで少し気が紛れたのか、バーベナは生まれたての馬のように、ゆっくりと起き上がった。

 

 

 「我は少し前に、マスターに忠誠を誓ったので、もうお主らと行動は共にせん」


 「さすがは魔王、身勝手な……こうなれば最後の手段ですわ」


 「バーベナ様、もう最後?」

 

 

 トレニアの言葉を無視し、オカリナに口を付ける。

 

 

 「みんな気をつけろ!! ドクターのおっさんの話だと、あれで魔物やらアルネブを召喚したみたいだ!!」


 「私や翔矢と同じ、マモンキューブの力みたいよ」

 

 

 鈴の口から出た言葉に警戒を強めるペネムエはブリューナクを構える。

 

 

 「なぁに、我より強いのを呼び出すなんてありえんわい!!

 ゴブリンが数体出てくるか、自我があってもマスターの顔を見るなり逃げ出すような奴だろう」


 「今はツッコんでる余裕ないからね?」

 

 

 そんな事を話している間に、バーベナの後ろに、次元の裂け目が生まれる。

 

 

 「来ます!!」


 

 息を飲み警戒を強めていたが、現れた魔物を見るなり、翔矢達はポカンとしてしまう。

 現れたのは、青いスライムが一体だけだった。

 

 

 「あっあれ? 今までで一番しょっぱいですわ」

 

 

 バーベナは慌てて何度もオカリナを演奏するが、それ以上何も現れなかった。

 

 

 「でも卓夫が教えてくれたアニメのスライムはメチャクチャ強かったし」


 「マスターお言葉ですが、このスライムは雑魚雑魚の雑魚ですな」


 

 アルネブが剣を構え一振りすると、スライムは消滅してしまった。


 

 「あぁ!! 危なくないなら、もっと見たかったのにぃ!!」


 「え? いけませんでしたか? すいません……腹を切ってお詫びを……」


 「ちょいちょいちょい!! ちょっと残念だっただけだから、そこまでしないで!!」


 「マスター……怒っておらぬか? 我を嫌いになっておらぬか?」


 「大丈夫、あのまま放ってもおけないし、倒すのも罪悪感だったかもだし助かったよ」


 「もったいなきお言葉」

 

 

 そんなやりとりが行われている最中、バーベナとトレニアはソロリソロリと、誰にも気がつかれないよう、この場を立ち去ろうとしていた。

 しかし彼女たちの希望は、ユリアによって砕かれてしまう。 

 

 

 「あなたたち、何処へ行くのかなぁ?」


 「あはは、お散歩でもしようかと思いましてぇ」

 

 

 嫌でも乾いた笑い声が漏れてしまうバーベナ、もう苦さないとばかりに翔矢達は、その周りを取り囲んだ。

 

 

 「あなた達、自分が何をしたか分かっているの?」

 

 

 クラッシュダマーのハンマー部分で、痛みがすら出ないレベルで軽く頭を叩く鈴。

 彼女がその気になれば、頭が砕かれてしまうと察したバーベナは恐怖から冷や汗が止まらなくなる。

 その恐怖が限界を超えたとき、バーベナの中で何かが切れた。


 

 「妾たちが何をしたと言いますのぉ!? サクラが消えたのは権能のせいで誰にも制御できなくて、それなのに剣を向けられ、おまけに爆破に巻き込まれる!! あの爆破は誰のせいですの!?」


 「あっ……」

 

 

 その弁明に鈴は武器を握る力が緩み、翔矢達の視線を浴びる。

 

 

 「えっ? これ私のせい? みんなこいつらが悪いみたいな流れでここまで来たよね?」


 「冤罪って、こうして生まれるんですね」


 「こんな狭い所で戦う事にならなくて良かったわぁ」


 「ユリアは狭くても広くても戦力外なのニャ」


 「えへへ、天使の血が半分流れてるだけの一般声優なもんで」


 「我は大きな戦闘で、もっとマスターの役に立ちたかったのだがな」


 「そのうち機会があるよ」

 

 

 今の状況は北風エネルギー、もといドクターに落ち度があるという事で話は落ち着き、改めて蓮を探すこととなった。

 しばらく歩くと、牢の中に入り瓦礫の下敷きになるのを免れた蓮、それに玲奈がいた。

 

 

 「蓮のおっさんと……ゼロ? そっかここに捕まってたから、一緒に戦ってたのか」


 「翔矢君久しぶりね、転生教はもうない、これからは玲奈と呼んで欲しいわ」


 「慣れなそうだなぁ、でも皆無事そうでよかったぁ」


 「まぁ我に感謝するのだな」

 

 

 翔矢の横で胸を張るアルネブ。

 見慣れない幼女の姿に、2人は首を傾げる。

 

 

 「その子には、見覚えが無いぞ?」


 「この世界の人間ではなさそうね」


 「我はアルネブ、これが真の姿じゃ」

 

 

 その名を聞いた瞬間、蓮と玲奈は臨戦態勢に入った。

 負傷している2人はアルネブにとって相手にならないのだが、彼女は翔矢の後ろに隠れた。

 

 「宮本翔矢、騙されるな!! その女は……」

 

 「だいたい分かってるよ、実はうんぬんかんぬんで」


 

 事情を聞いた蓮は、構えていたソルを下げた。

 

 

 「今は、マスターに忠誠を誓った身、マスターの敵でないなら手は出さん。

 それに、お前達が生きているのは我のおかげじゃぞ?」

 

 「……宮本翔矢、こんな小さい子を、銀髪天使と暮らしている地点で疑ってはいたが」


 「おっさん何考えてるんだ? さっきまでその小さい子に剣を向けてたの、何処の誰だよ」


 「この魔王アルネブを幼女扱いとはな」


 「舐められるの嫌で姿を変えてたんなら、仕方ないんじゃない?」


 「それもそうか、流石マスター」

 

 

 アルネブは納得とばかりに、手と手をポンっと叩く。



 「今の会話、わたくしもディスられていた気がしますが、とにかく皆さんご無事でよかったです」


 「それだ、あの爆発は一体何だったんだ?」

 

 

 蓮の一言に、何ともいえない雰囲気が場を包む。

 その沈黙を、やれやれとした表情を浮かべながら破ったのは鈴だ。


 

 「ドクターよ、あのまま蓮が戦っても、どうしようもない相手だって判断して爆破したみたい」


 「薄々そんな気はしていた……呆れはしても驚きはないな」

 

 

 口ではそう言っているが、頭を抱えている。

 

 

 「まぁ無事でよかったではないか、仲間ごと爆破するのは頭のネジ外れとるが、我をどうしようもない相手と判断したのは賢明な判断じゃ」


 

 うんうんと頷くアルネブ、彼女にそこまで非は無いはずだが、一同は納得いかない様子だ。

 


 「そういや蓮のおっさんが助かったのは、アルネブのお陰って言ってたけど、あれどういう意味だ?」


 「うぬ爆破があった後、この男にトドメを刺そうと思ったのだが、辞めたのだ」


 「……うん、気まぐれで見逃したってことな、それは助けたとは言わん」

 

 

 ここでアルネブは、翔矢に自分の言いたいことが伝わっていないと感じた。

 しかし子供のように扱われるばかりで、今は何を言っても無駄だろうと諦めてしまう。

 だがそんな事など、どうでも良いと思うような危険を彼女は感じ取る。

 

 

 「おいおい嘘だろ? “アレ”はてっきりマスターだと思ったのだが、同等のが他にもおったのか」

 

 

 恐怖に震える表情に、ただ事では無いと、全員が直感的に察した。

 

 

 「どうしたんだ?」


 「全員武器を構え……いや逃げるぞ!!」

 

 

 その大声を聞いた時には手遅れだった。

 長く地に着き色が抜けたように薄い金髪に、ボロボロに破れた白いドレス、不気味なほど痩せた女が目の前に迫っていた。

 

 

 「あんな奴、ここに収容した覚えは無いぞ?」


 「あぁ……魔法が使えないせいか、ちょっと醜い姿になっちゃってゴメンね。

 名前を言えば伝わる人もいるかしら? 私はルーシィ」

 

 

 彼女の名前を聞くと、翔矢達の視線は一斉にバーベナとトレニアに向く。

 

 

 「あんな女、ルーシィ・ザ・ワールドにはおりませんわ」


 「答えるの面倒だけど私も同じ意見」


 「前に話した時に、そんな気はしておりましたが、やはり天界の囚人ルーシィと彼女達は無関係……という事でしょうか?」

 

 

 首を傾げるペネムエだが、考え込む暇は無かった。

 

 

 「私はどうでもいいんだけど……あなた達は私の敵? 味方?」

 

 

 ルーシィが言葉を発した途端、体が重くなるほど強いプレッシャーが、辺りを包むのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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