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249話:雪崩から協力が始まりそうです

 翔矢は未だに状況が理解出来ていないが、見た目年齢で10歳くらいの魔王アルネブは、彼の腕にしがみ付き離れない。

 その姿を見かねたペネムエは彼女の服を引っ張り引き離そうとする。

 


 「アルネブ様!! 翔矢様から離れてくださいませ!!」


 「嫌じゃ!! 我はマスターに忠誠を誓ったのじゃ!!」


 「もう!! 翔矢様からも何とか言ってください!!」


 「うーん、とりあえず今は蓮のおっさんやらルーシィ・ザ・ワールドの奴らの状況を確認しないといけないから、話は後でね」


 「御意!! 蓮という者とは交戦したので、場所は案内出来るかと」


 「……さっきの話だと蓮を押していたって事だけど、無事なんでしょうね?」

 

 

 鈴はアルネブを睨みながら、クラッシュダマーを向ける。

 

  

 「少なくとも爆発するまではピンピンしておったでの、何かあっても我のせいではない」

 

 「はぁ……ドクターも面倒な事を」

 

 

 さっきから鈴はドクターと連絡を取ろうとしているのだが、電話は繋がらない。

 

 

 「とりあえずアルネブに、蓮のおっさんの場所まで案内してもらうか。

 ここには、ペネちゃんとグミだけで来たの? 東京までどうやって?」


 「ユリア様に、インスタントゲートで連れて来てもらったのです。

 戦いの最中に、その辺に隠れていたのですが……」

 

 

 ペネムエが柱の方を見つめると、大きな魚が跳ねているような音が聞こえた。

 そこには木の蔓でグルグルに巻かれ拘束されたユリアが涙目で飛び跳ねていた。


 

 「ユリア様、何故このようなことに?」

 

 

 慌てて駆け寄ったペネムエが、ユリアの口元の蔓を外す。

 

 

 「ぷはっ、その子にやられたに決まってるでしょうが!!」

 

 

 蔓と蔓の間からビシッとアルネブを指さす。

 

 

 「この姿に戻っても、影響が残る場合もあるからのぉ」


 「ドヤ顔決めてないで、君がやったなら、ほどいてあげなよ」


 「マスターの命令は絶対、しかしこの状態ではただの蔓にすぎぬので命令は受け付けないのだ、我は手先は器用な方ではないので手伝って頂ければと」


 「いやぁ、それはちょっと……」

 

 

 一般的な男子高校生である翔矢では、直視が難しいっような位置にうまいこと蔓が絡まっている。

 簡単に解けそうな太さでもないので、コレを手伝うのは色々な意味で難易度が高かった。


 

 「翔矢君、私は一向に構わないわ!! バッチコイ!!」

 

 

 目を輝かせていたユリアの体が、急に凍えて震え出す。

 ペネムエが蔓を凍らせ、そのまま破壊してしまったのだ。


 

 「ペネムエちゃん、よくもありがとうハクション!!」


 「ユリア様、感情を1つにまとめてから口にしてください」


 「えへへ」


 「手間が省けた、やるのぉ銀髪天使、我が郡に加えたい手段の選ばなさじゃ」


 「つい私怨が入ってしまいまして……それよりも蓮様と戦った場所に案内して下さいませ」


 「マスターも、同じ意見のようなので、貴様に言われずとも案内するわい」

 

 

 アルネブの案内の元、ようやく歩みを進めた一行、しかしすぐに瓦礫で道が塞がれ進行が不可能となってしまった。

 

 

 「こりゃ、かなり分厚そうそうだな」

 

 

 翔矢が瓦礫の山の隙間を除いてみると、ただただ暗闇で何も見えなかった。

 その横では、グミがブンブンと右腕を回している。

 

 

 「任せるニャ!! こんなのニャーのパンチで!!」


 「ちょっと待て!!」


 「グミ様、ステイです!!」


 

 そんな彼女を、翔矢とペネムエは必死に押さえ込む。

 

 

 「うわっ2人とも何するニャ!?」


 「蓮のおっさん達、どうなっているか分からないのに、瓦礫ごと吹っ飛ばすのはマズいって」


 「あっ……ゴメンニャ」


 「鈴様、この向こう側に通じる道は無いのですか?」


 「地下は基本一本道よ……」


 

 鈴の表情は不安を隠せていない。

 ペネムエは顎に手を当て数秒考えた後、瓦礫の隙間を覗き込む。


 

 「ではクラッシュダマーの玉を、ビー玉程度の大きさにする事は可能でしょうか?

 可能なら、向こう側まで飛ばして欲しいのですが」


 「その隙間さえ続いていれば大丈夫だと思うわ」

 

 

 指示通りに行動すると、途中でペネムエの作戦に気がついた鈴。

 今の状況も忘れ、即座にそれを実行してしまう。


 

 「ペネちゃん、何かミシミシ音が聞こえるんだけど?」

 

 「鈴様、まさかとは思いますが……」


 「えぇ、作戦は完全に理解したわ!!」


 「……全員反対側に走って下さい!!」

 

 

 血相を変えたペネムエの大声で、鈴は自分の失態に気がついた。

 翔矢・ユリア・アルネブは、状況を飲み込めていなかったが、ペネムエの指示に従い全力疾走する。

 次の瞬間、音を立て崩れた瓦礫が雪崩のように迫ってきた。

 

 

 「おい鈴!! 何やってんだ!!」


 「ペネムエがやれって言うから!!」


 「言ってません!! 安全を確保してから実行する予定でした!!」


 「ちょっとぉ置いて行かないでぇ~」

 

 

 この中でユリアの体力は、すぐに限界を迎えてしまい、今にも瓦礫に飲み込まれそうだった。

 

 

 「ユリアさん!!」


 「仕方ないニャ」


 「マスターの仲間ならば仕方ないか」


 「元々は私のせいだし」


 「わたくしの責任……とは思いませんが放ってはおけません!!」

 

 

 5人はユリアの悲鳴を聞くなり振り返り、各々が迫り来る瓦礫に強烈な一撃を加えた。

 翔矢・グミ・鈴の打撃が、瓦礫の流れを止め、その間にペネムエが凍らせる。

 それをアルネブが、目にも止まらぬ速度の斬撃で、雪の結晶に見えるまで切り裂いた。

 その美しさに、翔矢は見とれてしまった。

 

 

 「マスター!! 褒めて褒めて!!」

 

 

 アルネブは甘えるように翔矢に頭を向ける。

 

 

 「ありがとう、助かったよ」

 

 

 要求されるままに、撫でると、アルネブは幸せそうな表情を見せた。

 

 

 「ペネムエ、あれ良いの?」

 


 見かねた鈴はその光景を指さす。



 「わたくしが凍らせた段階では安全を確保出来ていませんでした。

 今回だけは、それに免じて目をつぶります」


 「だったら、そんな強く下唇を噛まない方がいい、血が出てる」


 「羨ましすぎるではありますので」

 

 

 一難を退け、安心する5人の耳に、ユリアの鳴き声が入ってくる。

 

 

 「そうでした、ユリア様!! ケガはありませんか?」


 「みんなありがとぉぉぉぉ!! 平気だけど腰抜かしちゃって」


 

 ひとまず安心し気が緩みかけたが、何者かの足音が聞こえ警戒を始める。

 

 

 「蓮のおっさんか?」


 「ううん、蓮の足音じゃないわ」


 「お主、足音で分かるとは、我が配下並みの忠誠心じゃの」


 「忠誠心というか、この足音は、女だと思うニャ」

 

 「敵だったら、私まだ動けないからね? 翔矢君守って!!

 それか魔王ちゃんに、私を守るようにお願いしてぇ!!」


 「元気そうっすね」


 「マスター、我はどうすれば?」


 「ユリアさんの護衛優先でお願い」


 「御意」

 

 

 そうこう話している内に、足音の主が姿を見せた。

 

 

 「道を塞いでいた瓦礫が、どけたと思ったら、見覚えが有るのも無いのもウジャウジャいらっしゃいますわね」


 「どかす面倒が省けたけど、まぁ勝手に道が出来る訳がないからね、そりゃ面倒でも遭遇する」

 

 

 見覚えの無い2人の姿に、翔矢とペネムエの警戒心はより一層強くなった。

 

 

 「鈴様、あの方々は?」


 「察しの通り、ルーシィ・ザ・ワールドから来って言う捉えていた2人よ」


 「ルーシィ・ザ・ワールド、首相代理バーベナですわ」


 「同じくサボり担当大臣トレニア」

 

 

 バーベナはキレのあるポーズを決めるが、トレニアは大あくびをして面倒くさそうにしている。

 

 

 「お前達が、アルネブを呼び出した奴だな!?」


 「あら、アルネブを知っていますの? せっかくコキ使ってやろうと思いましたのに逸れてしまいまして」


 「私も、面倒くさいこと全部お願いしようと思ってた」



 その言動にアルネブは怒りでプルプルと震えていた。


 

「お主ら……魔王たる我をそのように思っておったのかぁ!!」

 

 

 アニメなら顔が何倍も大きくなりながら怒っているだろう。

 しかしバーベナもトレニアも、目の前の幼女と、自分たちの知っているアルネブが一致しない。

 

 

 「このおチビちゃん、何ですの?」


 「お前達の言うアルネブじゃわい!!」

 

 

 その言葉の意味がピンとこないのか、2人はポカンと首を傾げるのだった。 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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