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248話:落下から忠誠が始まりそうです

 黒いウサギへと変身したアルネブの生み出した木々の枝に捕らえられてしまった、ペネムエ・鈴・グミ。

 彼女たちの生命力は、みるみる内に吸い取られ、体に力が入らなくなっていく。

 

 

 「くっ……まさかブリューナクの氷を貫通して来るなんて……」


 「時間がかかるほど、脱出は難しくなるニャ、こんなもの!!」

 

 

 ペネムエとグミは脱出を試みるが、木々はビクともしない。

 抵抗を続ける2人の耳に、ドスンと重い何かが落ちた音が聞こえた。

 鈴が力尽き、クラッシュダマーを地に落としてしまったのだ。


 

 「鈴様!!」

 

 「しっかりするニャ!!」

 

 

 2人の呼びかけに鈴は反応しない。

 

 

 「心配するな、これは命を奪う技ではない、その寿命尽きるまで生命力を吸い尽くす技だ。

 そっちの銀髪は天使か? 魔法を使えぬならば悪魔族程の脅威ではないだろうが、まだ意識があるとは流石だ」

 

 「……あなたは、わたくし達の動きを封じてから、その場を動いていない。

 この木々のように、足に根を張っているのですね」


 「一瞬で、それに気がつくとはな」


 「ウサギと言えば素早い動きと跳躍力が特徴ですが、動けなくなるとは不便な技ですね」


 「魔王とは基本的に城で戦士を迎え撃つスタンスなのでな、動けなる術に対して不便は感じぬな」

 

 

 穏やかに話を続けているが、3人の生命力は限界を迎えようとしていた。

 

 

 (命は奪われないという話ですが、ここで気を失う訳には……)

 

 

 必死に意識を保とうとするペネムエと、藻掻き続けるグミ。

 そんな中、天井に明らかに人工的と思われる丸い穴が開いた事に気がつき、一斉に上を見上げる。

 

 

 「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 その穴から悲鳴を上げながら落下してきた男が誰か、ペネムエは逸早く気がついた。

 

 

 「翔矢様!?」

 

 

 今の状況も忘れ、思わず表情が緩むペネムエ。

 落下した翔矢は、そのままアルネブにヒップドロップを喰らわせる形となった。

 

 

 「いってぇぇぇぇぇぇ!! ドクターのおっさんメチャクチャやりやがって!!

 ……通話切れてやがる、かけ直して文句言って……番号知らねぇや」

  

 

 高い所から落下したはずだが、モフモフしたウサギに乗っており痛みはない。

 等の本人はそれどころか、ペネムエ達が拘束されている今の状況にも気がついていないようだ。

 

 

 「翔矢様!! そこから離れてください!!」


 「あっ、ペネちゃん!! ここに来てたんだ!! ってそれ誰にやられたの?」


 

 ようやくペネムエ達が拘束されている状況が目に入ったが、その言葉までは届かなかった。

 アルネブの生み出した木々の枝は、すでに翔矢の目前まで迫っており、それに気がつく間もなく拘束されてしまった。

 

 

 「うわっ!! なんだこれ!? ってウサギ!?」


 「翔矢様!!」


 「……あいつ何しに来たニャ?」


 

 純粋に心配するペネムエをよそに、グミは呆れ果て頭を抱えている。

 

 

 「愚かな人間め!! 我の上に乗り気がつかぬとは!! こんな屈辱は初めてだ、死すら生ぬるい苦痛を与えてくれる」

 

 

 翔矢を拘束している木々の枝が、黒いオーラを放つ。

 

 

 「なんだこれ、キモッ!?」


 「くっ……早くしないと翔矢様が!!」


 「ペネムエ、落ち着くニャ」


 「これは落ちついていられません!!」


 

 ペネムエは何とか力を振り絞り、枝を破壊しようとするがピクリとも動かない。

 

 

 「翔矢の奴、何で枝に捕まってピンピンしてるのニャ?」


 「え?」

 

 

 その疑問にペネムエも思わず動きを止めた。

 

 

 「なかなか骨のある人間……こっこれは……」

 

 

 自身の異変に気がついた時には、アルネブは人間の姿に戻っていた。

 今まで大きなウサギであった、その背中に乗っていた翔矢は再び落下してしまう。


 

 「えっ? なんでぇ!?」


 

 受け身を取る間もなく、今度は人間態のアルネブを押し倒す体勢となってしまった。

 “その姿”に翔矢は思わず顔を赤く染め、慌てて立ち上がった。

 


 「ごっごめん!! 大丈夫だった!? でも君が急に人間になるから……」


 「うっうっうぅ……」

 

 

 アルネブが今の姿になっているからか、ペネムエ達の拘束は既に解け、生命力も少し回復していた。

 しかし今はアルネブの姿に驚き、固まるばかりだった。

 アルネブは、角の生えた幼女の姿になっていたのだ。

 服装などは、勇ましい男の時と変わらないが、今にも泣き出しそうな瞳からは、その威厳は感じられない。

 

 

 「ちょっちょっと、泣かないで!! 悪かった悪かった!! 俺が悪かった!!

 そうだ飴があったんだ、コレでも舐める?」

 

 

 制服のポケットから取り出された棒付きの飴、アルネブの目元は一瞬落ち着いたように見えたが、数秒の沈黙の後で大声を出し泣き出してしまった。

 

 

 「ごめんなさーーーーい!! 命ばかりはご勘弁をーーーー!!」

 

 

 アルネブは土下座をし、何度も床に頭を打ち付ける。 


 

 「急にどうした? さっきまで俺に苦痛与えるって言ってたのに?

 絵図ら的にもアレだし、頭を上げて!!」

 

 

 しかしアルネブは、翔矢に怯えきっているようで頭を上げようとしない。

 そこに、ようやくペネムエとグミが近づいてきた。


 

 「ペネちゃん、色々と話したい事はあるんだけど、この子を何とかできる?」


 「アルネブ……様? 男性からウサギの姿になり今は幼い子の姿。

 どれがあなたの、本当の姿なのでしょうか?」


 「え? この子、男の子だったの?」

 

 

 ペネムエの質問に、アルネブはようやく顔を上げた。


 

 「ふん!! 小娘が!! 誰が貴様の質問何かに答えるか!!」


 

 見た目の年相応にアッカンベーをしてみせるアルネブ。

 だが翔矢と目が合った途端、再び泣き出しそうになる。


 

 「ちょいちょい、泣くと話が進まなくなる。

 とりあえず、今はペネちゃんの質問に答えて!!」


 「はい!! 今の姿が我の真の姿です!!

 我はハネル大陸で魔王を務めているのですが、他の冒険者や魔族に舐められないよう、常に勇ましい男へ姿を変えておりました」


 

 まるで面接のように、ハキハキと受け答えをするアルネブ。

 ひとまず会話が進み、涙が止まった事に翔矢は安堵した。


 

 「次の質問は……俺ってそんなに怖い?」


 「はい!! それはもう、今にも漏らしそうで逃げ出したいです」


 「ペネちゃん……俺ってそんなに怖いかな?」


 「恐らく彼女が言っているのは翔矢様の想像するような、怖いではないかと思います」


 「その天使娘の言うとおりじゃ!! まるで……上位互換」


 「何の事かわからないけど、そっちが何もして来ないなら、こっちも何もしないから、怯えないでくれると楽なんだけど……」


 「御意!! 我はこの世界で行く当てがありません、ハネル大陸に戻れず部下も来ていない以上、魔王としての立場も無いようなモノ、貴方様に忠誠を誓いましょう」

 

 

 アルネブは翔矢の前で膝を着いた。

 

 

 「異世界の魔王が仲間になってくれるなら、俺としても頼もしいけど……」


 「翔矢様、本当によろしいのですか!?」


 「野放しにしといても危ないし、訳分からんけど、本当に仲間になってくれるなら頼もしいんじゃない?」


 「あざます!! サビ残上等で働きます!! 我のことはアルネブと呼んで頂ければと」


 「いや、コキ使う気は無いけど……ドクターのおっさん、ここを爆破した奴から聞いたんだけど、君ってバーベナって人に召喚されたんでしょ? そっちはいいの?」


 「あぁ、その爆破で逸れたので、我1人でここから出ようとしていたのです。

 今は、マスターに忠誠を誓った身、そもそも無理矢理呼び出した者に従う道理はありません」


 「それも……そうか」

 

 

 翔矢の頭は、状況を整理仕切れていなかった。

 ただ1つ理解できる、魔王が自分に忠誠を誓ったという事実を今は頼もしく思うことにした。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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