243話:突入から汚部屋が始まりそうです
ペネムエ、グミ、ユリアは悠奈の家を飛び出し当てもなく、行方不明もとい迷子になった翔矢を探し出す為の話し合いをで続けていた。
「というか翔矢と連絡は取れないのニャ?」
「それが通信用の魔法石は通じないのです」
「まぁ、そこまで通信範囲が広い訳じゃ無いからニャ」
「そう言えば、ユリア様は翔矢様とスマホで連絡が取れますよね?」
「それが……スマホ置いて来ちゃったみたいなのよね」
その一言に、グミとペネムエが疑いの目を向けた。
「現代人が服を着るのを忘れても、持ち歩くのを忘れないと噂のスマホをニャ?」
「それでは悠奈様が、服を忘れてスマホを持ち歩いたように聞こえますよ?」
「さすがに、そこまでうっかりは……してないニャ!!」
「今の間は何ですか!?」
「その件に関しましては、黙秘致します!!」
「グミ様、いつもの“ニャ”はどうしました?」
「あのぉ……2人とも? 翔矢君がピンチなのよね?」
ユリアの一言で2人は我に返る。
「申し訳ございません、現代人がスマホを忘れたという事実が衝撃的でして」
「右に同じニャ!!」
「で? グミちゃん翔矢君は探せそうなの?」
「居場所を知るだけなら大丈夫ニャ」
グミは右の腰に着いている魔法のポーチから、禍々しさを感じる黒い本を取り出した。
「うわっ……何コレ、キモっ!!」
そのビジュアルにユリアは目を引き釣らせている。
「悪魔族の帳簿ニャ!! ビジュアルに関してはニャーもアレだと思うけど。
これには対価の踏み倒しを対策する為に、契約者の居場所を特定する効果があるのニャ」
グミは、鋭い目線をペネムエに送った。
「ゴホン……翔矢様に未払いの対価は無いと思うのですが?」
「一度でも契約した事があれば追跡は可能ニャ。
本来は押し売り……ゲフンゲフン、セールスの時なんかに使うのニャ」
「プライバシーも何もありませんね」
「もっもちろん、色々制限はあるニャ。
けど今回は、翔矢の居場所を見られるハズニャ」
禍々しい本をペラリと捲るグミ、そのままジッと本を見つめる。
その横から、ペネムエはチラリと覗き見したが、異世界のほとんどの言語を習得し天界図書館の全てを頭に叩き込んだ彼女も、理解できない文字だった。
「この本は持ち主の悪魔にしか読めないニャ。
悪魔族は決まった世界に住んでニャイ、つまり母国語が無いからニャ」
「世界を移動すると自動でその土地の原語を習得するのでしたね」
「話言葉だけニャ、識字は出来なくて悪魔族的には不自由ないからニャ」
「この世界で魔法は使えないのに姿も変えれるし、悪魔族って本当に不思議ねぇ」
ユリアも興味深そうに、本を眺めたが「ほえ~」という表情をするだけで理解するつもりもないようだ。
「見つけたニャ……え? 今、東京にいるらしいニャ!!」
「東京ですか!?」
「迷子にする子と一緒って聞いたけど、迷子ってレベルじゃ無いわね……」
「細かい位置までは、近くのに行かないと分からないけどニャ。
でも今から東京に行くなんて、お金も時間も……」
グミが話を続けている内に、ユリアは自信のカバンをガサゴソと漁っている。
「あったあった、奥の方に隠れてたわ!!」
【インスタントゲート・オープン】
「ニャニャニャ!?」
グミの目の前には空間の裂け目のようなモノが出現しているが、これを出現させたであろうユリアはもちろん、ペネムエも動じる様子はない。
「グミ様は、ご覧になった事がありませんでしたね」
「これで東京……まぁ私の部屋までひとっ飛びよ!!」
「誰かに見られる前に向かいましょう!!」
2人は何の躊躇いも無く、空間の裂け目の中へと突入した。
「あの鍵対価で……流石に貰えないよニャぁ」
少し遅れながらもグミも空間の裂け目へ、恐る恐る入って行く。
通り抜けた瞬間に、別の場所に移動したのは明らかだった。
ユリアの部屋に行くとは聞いていたが、本当に部屋なのかグミは疑問を抱いた。
「何ニャ!? 身動きが取れニャイ……布? それに変な匂いもするニャ」
「ちょっとグミちゃん、変な匂いはショックなんだけど……でも翔矢君いなくて良かったぁ」
「ユリア様、ここが出入り口なのは分かっているのですから、片付けるか、せめてクローゼットのドアは開けておいて下さいよ!!」
珍しく不満を漏らすペネムエをよそに、ユリアは手慣れた様子で、狭いクローゼットの中で体当たりを決め、3人はバランスを崩しながらも、部屋と言える場所へたどり着いた。
「グミちゃん!! これで東京までは来れたから、翔矢君の居場所の特定は任せたわ!!」
先ほどグミに言われたことが気になったのか、消臭剤をこれでもかとクローゼットに向かってスプレーしながら話している。
「ちょっと待ってニャ、本の内容は、すぐに書き換わるからページを探すのが大変ニャ」
グミは人間態のまま、ネコのようにソファーで丸くなりながら、本をペラペラと捲っている。
「まだ少し時間が掛かりそうですね……それはそうとユリア様、失礼ながら前にお邪魔した時は、部屋は綺麗だったと記憶しているのですが」
ペネムエはユリアの部屋を呆然と見渡し呆れと疑問を抱いていた。
ゴミらしいゴミが見当たらないという意味では汚部屋とまでは言わないかもしれないが、脱ぎっぱなしの服やら化粧道具やらがが散らかり、少し油断すると踏んでしまいそうだ。
「いやぁ……最近お仕事が忙しくて片付けが億劫になりまして……」
「お仕事に余裕が出来たから六香穂に来たと言ってませんでしたっけ?」
ペネムエは単純に、頭に過った疑問を口に出しただけだった。
しかしユリアは、何か核心に迫る事を言われたかのように冷や汗を流している。
「えっとぉ、グミちゃんは、もう少し時間が掛かりそうかな?
じゃあちょっとテレビでも見てみようかなぁ!! 今の時間なにか面白い番組やってたかなぁ!!」
床に転がっていたリモコンを大慌てで手に取りテレビを付けた。
「ユリア様、すいません、人様の部屋の片付けにまで口出しをするつもりは無かったのですが……」
彼女の真意に気が付いていないペネムエは、戸惑いながらも謝罪したが、ユリアには聞こえなかったようだ。
たまたま付けられた報道番組の内容は、そんな話など、どうでも良く感じさせた。
『お伝えしておりますように、北風エネルギー本社で発生した爆発事故は……』
「おいペネムエ、北風エネルギーって、人工魔力やら作ってる怪しい企業よニャ?」
「えぇ、本社は工場と違い事務職が多いと聞いていますが」
「あのドクターとかヤバい人が集まってる会社よね。
ってそんな事より、本社に爆発するようなモノは無いって事は……」
「十中八九、翔矢様が東京に来ているのと関係しているでしょう」
「私も天使の端くれだし、魔法が関係した事件が、この世界で起きてるなら放って置けないわ!!」
「ユリア様、ここから北風エネルギーまで、どれくらいですか?」
「必死になれば、走りで行けるわ!!」
「了解です!!」
ユリアとペネムエは、目にも止まらぬ速度で玄関へ向かい、そのまま外へ飛び出して行き、グミは置いてけぼりにされてしまった。
「家で留守番には慣れてるけど……これは付いていった方がいいよニャ?
でも、その前に……ユリア!! 家の鍵しなくて大丈夫ニャ!?」
「オートロックだから平気!!」
玄関から顔を出し確認をすると、グミも2人の後を追うのだった。
***
その頃、同じく北風エネルギーへ向かっていた、翔矢とサクラは……
「なぁサクラ、ここ本当に東京か?」
「それ、ウチに聞いても意味ないよ?」
「分かってても聞きたくなる事はあるんだよ」
「人間って面倒なのね」
2人が到着したのは、暗く長い、洞窟のような場所だった。
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