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241話:サボりから爆発が始まりそうです

 剣と剣をぶつけ合う、蓮と魔王のような男。

 2人の剣技は互角のように見える。

 

 

 「あんな大げさな態度と風貌でも、人間と互角なんて、拍子抜けですわね」


 「権能で何とかなってる私達が偉そうな事、言えないけどね」


 「妾に権能はありませんし……ってトレニアが起きてる!?」


 「こんなに五月蠅かったら眠れないし、まぁ見てる分には面白いからね」

 

 

 2人が戦況を見守っていると、強い一撃同士がぶつかり、蓮と男の距離が離れた。

 

 

 「くっ……魔法に頼り切った奴が魔法を封じられたなら、楽に戦えると思ったのだがな」


 「人間ごとき、魔法など使わずとも楽に捻り潰せると思ったのだがな」

 

 

 お互いに呼吸を整えると、再び剣と剣のぶつかり合いが始まる。

 

 

 「よく考えたら、見ず知らずの男の戦いを眺める理由はありませんでしたわ、トレニア、ここを脱出しますわよ?」


 「えーお外出るの面倒くさい!! 私この戦いが終わったら、お昼寝するんだ!!」


 「この戦いが終わったらって、普通は戦ってる者のセリフですわよ?」


 「いやだーーー!! 行きたくないよーーー!!」

 

 

 バーベナは抵抗するトレニアの襟を掴みながら引きずり、外へと向かおうとした。

 

 

 「あら? 私を忘れてもらっては困るわ!!」

 

 

 そこに割り込んだ玲奈が、再び砂を投げつけ爆発させた。

 しかしバーベナは彼女の動きに気がついており、無数の闇の手で螺旋のように体を覆い、爆風から身を守った。

 

 

 「建物でドッカンドッカンと物騒な方ですわね」


 「元テロリストですからね」

  

 

 2人は睨み合い均衡を保っていた。

 その間に、トレニアは割って入った。

 

 

 「あら? サボり担当大臣のあなたが、珍しくやる気ですの?」

 

 

 その問いにトレニアは静かに頷いた。

 バーベナは、冗談と皮肉の意味で尋ねたのか、驚きの表情を見せた。

 

 

 「こんなドッカンドッカンしてたら寝れない……どんな世界そんな星でも、人の眠りを妨害する奴にロクなのはいない!!」

 

 

 トレニアは今までに無い、キリッとした表情をしていた。

 

 

 「テロリストって言ってましたし、投獄されているくらいですからね。

 ロクなのではないでしょう。」


 「私は、とっちが相手だろうと……いいえ? 2人同時でも構わないわよ?」

 

 

 玲奈は2人を巻き込むように砂を撒き散らした。

 

 

 「げほっげほっ」

 「ごほっごほっ」

 

 

 大量の砂を吸い込んでしまった2人は、涙ぐみ咳き込んでいる。

 結果的に相手の動きを封じてはいるが、玲奈には違和感が勝っていた。

 

 

 「どうして……爆発しないの?」

 

 

 ここで咳が治まったトレニアが息を整え、その質問に答えた。

 

 

 「私はサボり担当大臣、私に関わる事象は全てサボり出す。

 私の権能で、おばさんの能力はサボってしまった。

 ……説明するの面倒くさかったぁ」



 「さっきも言ってた権能、私のような能力者って事?」


 「能力って言うのが何を指すのか分からないけど……多分違う。

 私の行いと私に対する事象、その全てに付いて回るのが権能よ」

 

 「あのトレニアが、ここまで喋るなんて、本当にやる気ですのね」

 

 

 バーベナはトレニアが自ら行動するのを見るのが初めてだった。

 その姿は攻撃的な人格へと代わってしまっている彼女にも恐怖を感じさせた。

 

 

 「理解は出来なくとも、爆発が封じられてると分かれば、対処のしようはあるわ!!」

 

 

 玲奈はトレニアに向かい、跳び蹴りをお見舞いした。

 その一撃は確かに彼女の頬を捉えており、手応えもある。

 しかしトレニアは痛がるどころか、頭のむきすら変えずに平然と立っている。

 困惑を隠せない玲奈だったが跳び蹴りの力を利用し、後ろに飛び右手を着いて着地を決めた。

 

 

 「能力が発動しないと分かったら打撃って……おばさん結構脳筋なのね」


 「今は他に手段がないものでね……これでもダメージを受けないなんて少し焦るわ」


 「私はサボり担当大臣、ダメージを受けるのをサボる事だってできる」


 「いや……そうはならないと思うのだけど?」


 「それが権能というモノよ、そしてサボるのは私だけとも限らない?」

 

 

 トレニアが冷たく呟くと玲奈は左胸を押さえ苦しみ始めた。

 数秒の間に立っていることすら侭ならなくなり、両膝を地に着き倒れ込んでしまう。

 

 

 「かはっ……これは……」

 

 「狙い通り、おばさんの心臓の動きがサボり出したみたい。

 でも大丈夫、殺しはしない、私とバーベナは安全な外に出るだけ」

 

 

 トレニアは彼女にしては早足で歩き、バーベナはその後を、恐怖を隠しながら追った。

 

 

 「ゼロ!!」

 

 

 ただならぬ状況に男と交戦中の蓮も、玲奈を気にかける。

 しかし他人を気にかけて戦える程の余裕は彼には無かった。

 

 

 「オレ様も舐められたモノだ」

 

 

 今までで一番力の籠もった斬撃が、蓮のスーツを切り裂き、Yシャツには血が滲み出した。 蓮も玲奈も立ち上がる事が出来ない状況、バーベナとトレニアにトドメを刺す意思が無いのが幸いだが、男もそうであるとは限らない。

 

 

 「ええっと、あなた何と言いましたっけ?

 まぁそんな事より、ここまで痛ぶれば、これ以上しつこくは追って来ないでしょう。

 増援が来る前に脱出しますわよ?」

 

 

 しかし男はバーベナの指示に従う様子は無く、蓮と玲奈の方へゆっくりと向かって来る。

 

 

 「あなた!! どうしましたの?」


 「この場は協力するとは言ったが、細々とした指示まで聞く筋合いは無い。

 そしてオレ様の名は……アルネブ、ハネル大陸の魔王だ」

 

 

 アルネブは、心があるとは思えない目で2人を見下ろし、剣を蓮の喉に突きつけた。

 

 

 「くっ……」


 「人間1つ聞こう、この魔法が使えぬ珍妙な世界。

 お前はそこそこ戦えるようだが、それがこの世界では普通なのか?」


 「それを聞いてどうする?」


 「質問しているのはオレ様だ」

 

 

 アルネブは怒りから手に力が入り、蓮の喉からは血がタラリと流れ出した。

 この質問の真意は不明だが、回答がアルネブが満足するようなモノだろうと死までの時間を稼ぐのが限界だろう。

 玲奈の方も、もはや意識があるのかも定かで無い状態で、2人に打てる手はなかった。

 そのとき、スピーカーからチャイムが鳴り、蓮には聞き馴染みのある声がスピーカーから流れ始めた。

 

 

 『ヘイヘイヘイ!! ゼロを解放すれば楽勝だと思ったんだけど……

 権能とは、なかなか厄介なモノなんだねぇ』


 「何者だ!?」

 

 

 スピーカーという概念がないのだろう。

 アルネブは、音が流れるソレをギロリと睨み付けた。


 

 『これは失礼、自己紹介がまだだったねぇ、私はドクター。

 この世界の科学者だ、君が倒した男よりも、よっぽど質問に答えられるよ。

 ちなみに、さっきの質問の答えは、その男は上位数パーセントの強さって所かな?』


 「ほう、そういうお前は、上位数パーセントとやらに入っているのか?」

 

 

 アルネブはスピーカーに剣を向けた。

 

 

 『おう怖い怖い……私は科学者、開発においては世界トップの自信があるけど、戦闘は雑魚雑魚の雑魚だねぇ』


 「なるほど、この蓮とかいう男の武器も貴様が開発した訳か……」

 

 

 一瞬目を閉じたアルネブが剣を振るうと、10メートル近くは離れた位置のスピーカーが真っ二つに斬られてしまった。

 

 

 『なるほど、魔王を名乗るだけあって中々物騒だ』


 「ダメージを受けていない!? まさか本体は他にいるのか?」


 『突っ込まないからね? 急に呼び出された君に目的なんて聞いても仕方ないし、ゼロもダメなら現状の戦力で戦うのは厳しそうだ……って事で引き分けと行こうじゃないか?』

 

 「引き分け?」

 

 

 その言葉が気になったのか、バーベナとトレニアもキョロキョロと辺りを警戒し始めた。

 次の瞬間、廊下の端から次から次に爆発が巻き起こった。

 やがてその爆発は、蓮やバーベナのいるエリアを巻き込み、その振動はビルを大きく揺らすのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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