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234話:降参から投獄が始まりそうです

 「これは……オカリナ?」


 「バーベナ様、オカリナって何?」

 

 

 バーベナが手にしたマモンキューブはオカリナへと姿を変えた。

 2人ともマモンキューブの事は知らないようで、得体の知れないモノに驚いている様子だ。

 サクラに至っては、オカリナが何なのかすらも理解していないようだが興味を示している。

 

 

 「オカリナというのは……妾も初めて見ますが、まぁ楽器ですわね」


 「楽器? 聴きたい!! 演奏聴きたい!!」

 

 「えぇ……音くらいは出せると思いますけど、演奏は出来ませんわよ?」


 「それでいい!! 音楽なんて聴いたことないし!!」


 「ルーシィ・ザ・ワールドというのは本当に何も無い場所ですのね」

 

 

 サクラの言動に呆れつつ、バーベナはオカリナに口を付け演奏を始めた。

 その音色は、とても初心者のモノとは思えず、臨戦態勢だった蓮までも一瞬で心を奪われている。

 

 

 「いかん!!」

 

 

 蓮は一瞬だけ我に返り、自らの頬を殴り気合いを入れ体制を立て直した。

 バーベナは目を瞑り演奏しているため、今の状況に気がついていない。

 しかし蓮は目の前の光景で、この音色が心を奪うのは、力の一部でしかないと理解した。


 

 「嘘だろ……」

 

 

 空間に亀裂が入り、そこから3体のゴブリンと巨大なオークが出現したのだ。

 その唸り声に、バーベナは思わず演奏を止める。

 

 

 「何ですの? この醜い生き物は?」


 「バーベナ様、自分で呼んでおいて醜いは言い過ぎ……」


 「妾は来いなんて一言も言ってませんもの」


 「ほら緑の方々は、バーベナ様の指示を待ってるよ?」


 「サクラさん、この生き物の考えが分かりますの?」


 「いや、状況で何となく察せません?」


 「コホン、では僭越ながら戦闘の音頭を取らせて頂きますわ!!

 バーベナ・ラブリー軍団!! あの男を畳んでしまいなさいな!!」


 

 サクラの読みは当たっており、ゴブリンとオーク達は、一斉に蓮に向かって来た。

 

 

 「こいつら、ゴブリンやオークの存在すら知らないのか? 本当に何者なんだ?」

 

 

 侵入者の正体に迫るどころか、謎は深まってしまった。

 だが今は考える暇は無く、目の前の敵に応戦するしかない。

 蓮は3体のゴブリンの首を一瞬で切り落とし、残すはオークのみとなった。


 

 「キャーーー!! バーベナ・ラブリー軍団がぁ!!

 この人殺しぃぃぃ!!」

 

 「バーベナ様、その変な軍団名何なの? 後たぶん人じゃ無い」

 

 

 騒ぎ慌て蓋めくバーベナとは対照的に、サクラはボーっと戦いの様子を眺めていた。

 

 

 「こういうのは名前を付けた方が愛着が沸きますもの」


 「瞬殺されちゃったし、愛着は沸かない方が良いと思う」


 「たっ確かに心にモヤモヤが……しかしまだ大きい緑の方が残っていますわ!!」

 

 

 バーベナは、オークのいた方を指さしたが、その動作と同時に「ゴォォォォ」と野太い叫び声が響き渡った。

 

 

 「えっ!?」


 「あちゃー」

 

 

 オークは既に蓮に切り裂かれており、息絶えた巨体が2人に向かって倒れてきた。

 サクラはバーベナの服を引っ張り右に避けると同時に、ドスンと音を立て巨体は地についた。

 

 

 「もう終わりか?」

 

 

 下敷きにならずに済んだバーベナが安心したのも束の間。

 すでに目の前まで来ていた蓮の刃は彼女の眼前に向いていたのだ。

 その見幕に、思わず両手を挙げ冷や汗が止まらない。

 


 「ひっえ……ちょっとお待ちなさいな!!

 不法侵入は謝罪しますが、命を奪われるほどの悪事を働いた覚えはありませんわ!!

 ちょっと捜し物をしていただけですし!!」

 

 「何処かにある何かという、ふざけたモノだったか?」


 「妾たちも、それしか情報はありませんの、これ以上は説明のしようがありませんわ」


 「その言葉を信じるとして、お前達はソレをどうやって見つけるつもりだ?」


 「必ず見つけなければならず、必ず巡り会う、そして見つかれば必ず分かる。

 妾達の世界では、そう言われ続け、長年探し歩いておりますわ」


 「ソレを貴様らが手に入れると、どうなる?」


 「世界の再生……とだけ伝わっていますわ」


 「最後に……貴様らは、何処から来た?」


 「ルーシィ・ザ・ワールド」


 「それが何かと聞いている!!」


 

 蓮は、ソルを大きく振るい、バーベナの首元で寸止めした


 

 「ひぇ!! あなただって日本が何かって聞かれても答えようがないでしょう!?」


 「それもそうか」

 

 

 その指摘が蓮にはしっくり来たらしく、思わずソルを下ろしてしまった。


 

 「とっとにかく!! 探してるだけなら、誰にも迷惑はかけないはずですわ!!

 なんで一方的に攻撃されなきゃいけませんの? この国は不法侵入で死刑になりますの?」

 

 

 蓮が少し弱気になったのを、見るや否や、早口で畳みかけるバーベナ。

 これに返す言葉が無く、どんどん押されていく。

 それでも何とか言い返す言葉が見つかったようで、強気な表情が顔に現れていく。


 

 「だが、お前らが会社に侵入した途端、社員が全員やる気を無くして眠った者までいると報告が入っている!! これは立派な被害だ!!」


 「それは……」


 「異世界の存在が認知されていない以上、日本の法では裁けない。

 ならば安全を守るため、事情を知る我々が拘束する程度は許されるのではないか?」

 

 

 蓮の指摘でバーベナが押され黙りこんでしまい、彼女はシュンとしてしまう。

 ここで今まで会話に参加していなかったサクラが「はぁ」と溜め息を着いた後に口を開いた。

 

 

 「バーベナ様、もう話し合いは平行線だし、捕まっちゃいません?」


 「はいっ? サクラさんまでトレニアさんみたいに、探すのが面倒とか言い出しますの?」

  

 「このままウロウロしてても見つかる気がしないもん、策が浮かぶまで、ここでお世話になろうよ」


 「そう言われると……悪くない選択な気がしますわね」


 「おい!! 人の会社をホテル代わりに使うな!!」


 「もう!!……妾達に、どうしろって言いますの!?」


 「いや……ここで大人しく捕まるのは問題ない……納得感が薄れてしまっただけだ」

 

 

 蓮は、バーベナ・サクラそして眠ったままのトレニアを、開いている牢屋に案内することにした。

 

 

 「そういえば、さっきのハンマー振り回していた女の子は、いませんのね?」


 「鈴は、仕事中だ」


 「あなたは仕事をしていない様な言い方ですわね」


 「ゴホン、お前達は捕虜になる身という事を忘れるな!!」

 

 

 場の雰囲気を大声と勢いで誤魔化している内に、ちょうど良く開いている牢屋の前に到着し蓮は内心ホッとしていた。

 

 

 「入れ!!」


 「仕方ないですわね」


 「今になって入ろうか迷っちゃった……まぁ提案したのウチだから選択肢無いんだけど」

 

 

 2人は、足取りこそ重そうだが、素直に牢屋の中へと足を踏み入れる。

 そのとき、今まで何があってもスヤスヤと眠ってサクラにおぶられていたトレニアがムクリと起き上がり地に足を着けた。

 

 

 「ムニャムニャ……サクラちゃんバーベナ様おはよー」


 「マイペース極まりないですわね……」


 「トレニアちゃん、おはよ、ウンヌンカンヌンでウチらは牢屋に入る事になったの」


  

 サクラの言葉で、トレニアは今まで寝ていたのが嘘のように目をパチクリと見開き背筋をピンと伸ばした。

 

 

 「牢屋!? すなわち囚人!? 何もせず引きこもってるだけで3食ご飯が出てくる、貴族も羨む最上級の身分に!?」


 「トレニアちゃん、違わないけど間違ってると思う」


 「本来は、罪人に反省や更生を促す場所、ですが妾達は別に罪人ではありませんからね。

 食っちゃ寝させて頂こうではありませんか!! 朝食は高級食パンでお願い致しますわ!!」

 

 「高級食パンって、いつのブームだ? そんなモノは用意できん!!」


 「がっかりですわ」

 


 こうして牢屋に入る事となった3人、この選択は後に大きな事件の幕開けとなる。

 


 

 ***

 


 

 その頃、六香穂高校で渡辺健吾は、退屈そうに授業を受けていた。

 そんな彼の頭の中に、急にある情報が伝わり、不適な笑みを浮かべた。

 

 

 (マモンキューブの3つ目が形を成したか。

 飛び散った残りは、あと1つ、復活が待ち遠しいねぇ)

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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