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233話:増援から引き返しが始まりそうです

 黒い雲へと姿を変えたバーベナは、トレニアをその中へと取り込み、北風エネルギー本社から去ろうとしていた。

 

 

 「トレニアさん!! 早く起きなさいな!! 重いですわ!!

 妾は、この姿に慣れておりませんの」


 「ムニャムニャ、バーベナちゃん後5分……」


 「親に起こされた子供じゃないのですから!!

 って、誰がバーベナちゃんですか!!」

  

 

 黒い雲の姿のバーベナの中で、トレニアは、人型のまま眠りについていた。

 

 

 「あぁもう!! 手が疲れましたわ!!」


 「ムニャムニャ、今のバーベナちゃんの手ってどこ?」


 「トレニア、絶対に起きてますわよね?」


 「ムニャムニャ、雲に戻るの面倒臭い、飛ぶのはもっと面倒くさい」


 「落としますわよ!! ……あっ!!」

 

 

 バーベナは大きな声を出した勢いで、トレニアを上空から落としてしまった。

 トレニアは人の姿のまま、多くの車が行き交う道路へと一直線に向かって行く。


 

 「本当に落としてしまいましたわ!! アレって寝たフリじゃありませんでしたの?」

 

 

 今まで会話をしていたトレニアが何の抵抗もなく落下していく姿に、バーベナは心配よりも驚きが勝り、その場から動けずにいた。

 助けようと動いた時には、バーベナの速度では間に合わない所まで、落下しており最悪の事態が脳裏に過り目を瞑ってしまう。

 だが数秒経っても“嫌な音”は聞こえて来なかった。

 バーベナが恐る恐る目を開けると、スヤスヤと気持ちよさそうに眠ったまま、黒い雲の上に眠るトレニアの姿があった。

 

 

 「あれは……ラナンキュラスさん? 東京から何百キロは離れている所で、何処かにある何かを探していたはずですのに、もうここに?」

 

 「バーベナ、ウチだよウチ、ラナンキュラスじゃない」


 「あぁ、シトラスさんですわね!!」


 「間違いを指摘していいのか迷っちゃうけどサクラよ」


 「失礼しましたわ!! 雲の状態では、みんな同じ姿なので見分けが付きませんで」


 「普通は分かるんだけど、まぁいいや。

 人を乗せて飛ぶようには出来てないから降りていい?」


 「えぇ、でも、この世界の人間に見られない場所にしてくださいまし」


 「それは……運次第かな?」

 

 

 サクラとバーベナは、ビルとビルの間の狭い路地に着地し、人の姿へと変わった。

 

 

 「ここなら誰にも……え?」


 「今回は運が良かった方かも」


  

 バーベナが慌て蓋めく中、サクラは安心したように胸を撫で下ろす。

 上空から路地へ入ったはずだが、2人がいるのは、牢屋がならぶ広い通路だった。

 

 

 「どういうことですの!?」


 「ウチは迷子担当大臣、決して目的地にたどり着く事は無いわ」


 「じゃあラナンキュラスやシトラスが一緒にいないのは?」


 「ウチが迷って、東京って場所まで来たから。

 バーベナ様やトレニアちゃんに会えたのは運が良かった」


 

 未だにスヤスヤと寝ているトレニアの髪を、サクラは優しく撫でた。

 

 

 「噂には聞いておりましたが、ここまでとは……

 物理法則さん、仕事してくださいまし!!」


 「物理法則って何?」

 

 「あなた方は本当に、こういう話しに疎いですわね」


 「ウチの迷子は、なんちゃら法則を貫通する、そのお陰でトレニアちゃんを助けられた」


 「まぁそれは事実……それより、ここはどこですの?」

 

 

 サクラに訪ねてはみたが、彼女の顔を見るなり、聞くだけ無駄だと察した。

 

 

 「まるで監獄……いいえ、間違いなく監獄ですわね」


 「地下に行けば行くほど凶悪な囚人が幽閉されていると噂の監獄!?」


 「日本の監獄は、そんな人権なさそうなシステムしてませんわ。

 ……まさか国外に出てしまいましたの?」


 「日本は島国って聞いた、さすがにそんなデタラメな距離は移動できないよ」


 「それでは、ここは本当に何処ですの?」

 

 

 今動けば、またサクラの権能に巻き込まれ迷子になるのではと警戒し、バーベナは一歩も動く事は出来なかった。 

 それを知ってか知らずか、サクラもトレニアを撫でてばかりで動こうとしない。

 そんな中、誰かがこちらへ向かってくる足音が聞こえた。

 

 

 「バーベナ様、この状況、どうすれば良いか迷っちゃう」


 「まぁこんな意味不明な場所に留まる理由もありませんし、迷子でも何でもなって差し上げましょう」

 

 

 バーベナはサクラの手を引き、当てもなく一目散に走り出した。

 

 

 「誰だ!! 止まれ!!」

 

 

 しかし一足遅く、足音の主に見つかり姿を見られ追いかけられてしまう。

 

 

 「ヒエッ!! サクラさん!! 早く迷子になってくださいな!!」


 「迷子は迷子、なる時もあれば、ならない時もある、エッヘン!!」

 

 

 サクラは誇らしげに胸を張っている。


 

 「褒めてませんわよ!! 肝心な時に役に立たない権能ですわね!! こうなったら!!」

 

 「ちょっと、ウチはトレニアちゃん抱えているんだけど!?」

 


 バーベナは黒い雲へと姿を変え、スピードを上げた。

 それに釣られ、サクラも姿を変え追いかけるが、上に人型のトレニアが乗っているので早歩き程度の速度しか出せなかった。

 

 

 「やはりさっきの奴らか!? 今度は逃がさん!!」 

 


 追いかけて来ていた男は、何処からか日本刀のような物を取り出し、斬撃を飛ばしてきた。 

 

 「えっ嘘でしょう?」

  

 

 バーベナは間一髪の所で、天井ギリギリまで高度を上げ、斬撃を回避した。

 しかし余所見をしている間に、柱と激突し、衝撃で人型へ戻り尻餅をついてしまった。

 

 

 「いててて……」


 「バーベナ様……大丈夫?」

 

 

 サクラは、見かねて人型で、バーベナの手を取り彼女を立たせた。

 

 

 「サクラさん、足を引っ張ってしまい申し訳ありませんわ」


 「ウチの権能が、発動してれば、とっくに脱出できたんだけど。

 にしても、この世界は、結構物騒な人が多いんだね」


 「そんな事は、無いと思うのですけど……」

 

 

 2人は改めて攻撃してきた追っ手の姿を確認すると、バーベナが先ほどまで対峙していた渡辺蓮だった。

 

 

 「金髪の奴は、バーベナとか言う、さっき会社に入って来た奴だな?

 ピンクな奴は見覚えが無い……仲間を引き連れ戻って来たという訳か?」

 

 

 トラウマを思い出すように震えながらフリーズしてしまったバーベナの代わりに、サクラが口を開いた。

 

 

 「ウチは、ルーシィ・ザ・ワールド迷子担当大臣サクラ。

 ここには迷い込んでしまっただけ、戦闘の意思は無いから逃がして欲しい」

 

 「迷い込んだ?」


 「うん、六香穂っていう所にいたんだけど、ウチは度を超した方向音痴だから」


 「六香穂から迷って東京に、そんなバカな話しがあるか!!」

 

 

 交渉決裂とばかりに、蓮は再び斬撃を飛ばしした。

 斬撃は、サクラへ一直線に向かって行くが、彼女は避けるどころか動こうともしない。

 

 

 「今日は権能の調子が悪いかなって思ったけど、避けるの慣れてないのよね」

 

 

 斬撃は、急激に機動を変え、天井の蛍光灯を破壊した。

 その破片が、サクラへ降り注ぐが、それすらも彼女に触れるのを避けるように、床へパラパラと散らばった。

 

 

 「どうなっている?」


 「ウチは迷子担当大臣、ウチに関わる事象は、全て迷子になる」


 「訳が分からんぞ!!」


 「良く言われるわ」

 

 

 サクラと蓮は、冷静に話しつつも、お互いに目を離さず警戒を強めている。

 

 

 「ナイスですわ!! サクラ!! その男を畳んじゃいなさいな!!」


 「いや……ウチは攻撃は無効にできても、攻撃手段はないし…… あくまで迷子になるだけ」


 「役立たず!! そんな権能捨ててしまいなさいな!!」


 「バーベナ様の方が、よっぽど役にたってないけど……

 そうだ、これ迷ってる途中に見つけたんだけど、何処かにある何かと関係ある?」

 

 

 サクラがバーベナに手渡したのは、歴史を感じるような古さのあるキューブを手渡した。

 

 

 「これは……妾達の探しているものではないな」


 「残念」

 

 

 そう言いつつ、手渡されたモノが気になり、バーベナがキューブを観察していると、金色に光り出した。

 

 

 「あれは……まさか、鈴や宮本翔矢と同じマモンキューブか!?」


 「マモン? 何それ?」


 「サクラさん!! このピカピカ爆発とかしませんの? 大丈夫ですの?」


 「さぁ?」


 「あなたが拾ってきたんでしょうがぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 バーベナの叫びと同時に、マモンキューブはオカリナのような形に姿を変えたのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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