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231話:昼休みから争奪戦が始まりそうです

 ひょんな事から学校に迷い込んでしまったゼウを、外に逃がす事に成功した翔矢たち。

 その後は、何事もなく学校生活を送り、今は昼休みを迎えている。

 生徒たちは机を移動させ、おのおのいつもの場所へと移動するが、今日は少し様子が違った。

 

 

 「リールさん、俺と一緒にお昼食べてください!!」


 「はっ!! おまえ何言ってるんだよ!?

 リールさん、こんな奴とより、俺と食べよう?」


 「ちょっと!! 名前も覚えてないような男子と、いきなり昼食とか食べれる訳ないでしょ」!!

 

 

 リールの席は、翔矢のすぐ隣り、否が応でも話が聞こえてくるが、特に気にする様子もなく、いつものように自作の弁当を広げだした。

 

 

 「翔矢殿、相変わらずクオリティの高い弁当でゴザルな」


 「まぁ趣味も兼ねてるからな……卓夫、なんか久しぶりだな?」


 「はて? まぁ夏休み中は会ってないでゴザルからな」


 

 夏休み中は、いろいろな事件に巻き込まれ、翔矢はこういう風景そのものが久しぶりに感じられた。

 

 

 「そうだ、昨日は学校が午前で終わった上にバタバタしていて、渡しそびれてたでゴザル」


 「ん?」

 

 

 卓夫は何処からともなく巨大な紙袋を取り出し翔矢に手渡してくる。


 

 「うわっ!! 今どっから出したのそれ!? 収納魔法!?」


 「ははは、そのようなワードが出てくるとは翔矢殿も、拙者の布教したアニメに染まって来たようでゴザルな」


 「そういう訳じゃ……いや、そういう訳でいいや」

 

 

 教室の後ろの隅では、姿を隠しているペネムエが翔矢とお揃いの弁当を食べている。

 2人の話は聞こえていないようだが、何となく目が合い、翔矢は苦笑いを浮かべた。

 

 

 「翔矢殿!?」


 「あぁ悪い!! 開けていいか?」


 「もちろんでゴザル!!」

 

 

 翔矢にとって今までの人生で見たことのないようなサイズの紙袋。

 中身の想像すら出来ないまま、中身を確認する。

 

 

 「これは……なんだ!?」


 「拙者は夏休み中コミケに行ってきてな、布教がてらお土産でゴザル」


 「ありが……とう!? コミケってあの東京でやってる同人誌だかのイベント?」


 「うぬ、いやぁ拙者が六香穂に戻ってすぐ転生教の事件が起こって驚いたでゴザル。

 大きな事件だった故、コミケが中止にならなくて良かったなどと手放しには喜べぬが……

 そんな事より、気に入って頂けましたかな?」


 「う~ん……分からん!!」

 

 

 紙袋に入っていたのは、無数の細かいパーツ。

 プラモデルだと思うが、何が出来上がるのか予想も困難で、お土産は有りがたいのだが、感情を表に出し喜ぶという反応は翔矢には出来なかった。

 

 

 「それは“無敵要塞オシロキング”という昭和のマイナーなロボットアニメのプラモでゴザル。

 そのマイナーさの余り公式のグッツ販売が当時から今まで無に等しくてな、それを熱狂的なファンが完全再現してプラモデル化しただけでなく~」

 

 

 卓夫に何やらスイッチが入ったようで、長々と語り出した。

 このまま話させては、昼休みが終わってしまうと翔矢は焦りを見せる。

 

 

 「まっまぁ……コミケって薄い本しか売ってないと思ったけど色々あるんだな!!」

 

 「ん? 翔矢殿は、そっちの方が好みでござったか?

 18歳未満はダメでゴザルよ!?」

 

 「妙な所は、しっかりしてるなぁ……

 って別にそういうのが欲しかった訳じゃねぇよ!!

 なんで俺に、知ってる訳ないようなアニメのプラモなのか疑問だっただけだよ。

 結構細かくて上手に作れるか分からないけど、やってみるよ、ありがとうな!!」

 

 「翔矢殿はプラモの経験が無くとも、料理など手先が器用なのは明白でゴザルからな。

 完成の報告を首を長くして待っているでゴザルよ」


 「おう……って分かったぞ!!

 卓夫、自分じゃ作れる自信ないから、俺にお土産って事で買ってきただろ?」


 「ははは、心配しなくとも完成した物を奪おうとは考えていないでゴザル」

 

 

 一足先に昼食を食べ終えたペネムエは少し前からプラモの入った紙袋をマジマジと見ながら2人の会話を聞いていた。

 翔矢は、その様子をチラリと見ながらも、周りのクラスメイトには気がつかれないように振る舞っている。

 翔矢と卓夫も話が弾みながら、昼食を食べ終えたのだが、そこにリールが寄ってきた。


 「おっふ!! リール殿、どうしたでゴザルか!?」

 

 「おう、急にどうし……」

 

 

 卓夫は気が動転しているのか慌ただしい動きをしながら話し、翔矢はうっかりいつものトーンで話しそうになったのを自分の口を塞ぎ止めた。

 

 

 「一緒に昼ご飯食べてもいい!?」


 「今なんと!?」


 「え?」


 

 天井に突き刺さる勢いで驚く卓夫と、思わず固まってしまう翔矢。

 そんな2人にクラスメイトたちは、殺意に限りなく近い視線を向けた。

 

 

 「リールさん、なんでそんな奴らと?」


 「そのデブの方は、とんでもないオタクだよ?」


 「今時、流行らぬでゴザルよ? オタク差別など」

 

 「そっちは、今はおとなしいけど、中学時代はヤバいヤンキーだよ?」

 

 「おい……人の黒歴史をサラッと掘り起こすなよ……」

 

 

 卓夫は毅然とした態度だが、翔矢はガクッと肩を落とし落ち込んでしまった。

 しかし気合いを入れるように頬を叩き何とか持ち直す。

 

 

 「ってお前ら!! 今までずっと揉めてたのかよ!!

 悠奈と真理はどうした!?」

 

 「2人とも文化祭の準備の打ち合わせしながら、ご飯食べるって……」


 

 急に大きな声を出した翔矢に圧倒されながらも質問に答えるクラスメイト。

 しかし翔矢の勢いは収まらなかった。

 

 

 「おめぇらいい加減にしろよ!!

 休み時間、残り10分切ってるぞ!?

 転校早々昼ご飯を食わせないつもりか!?」

 

 

 クラス中が静まりかえった数秒後、生徒達は揃った動きで、スマホや掛け時計で時間を確認する。

 そして全員が席に着くと、男女問わず無言で昼食を掻き込み始めた。

 

 

 「えっと……私はどうすれば……」


 「固まってないで、ここ座れよ。

 俺らは、食べ終わったから気まずいかもだけどな」


 「そんなに気にしないわよ、ありがと」

 

 

 リールは弁当を広げ、ようやく食事を始めた。


 

 「なんか治安悪い学校って感じになって悪かったな。

 普段は気のいい奴らなんだけど、ってか、その弁当手作りだよな?

 リール、料理できたのか?」


 「ふぁいふぉ、ふぁきの、ふぁすたーが~」


 「悪い……時間ないもんな、落ち着いて食ってくれ」


 「ふぁなふぃふぁ、ふぁとでね!!」


 「おっおう」


 「美人で近寄り難い子かと思ったが、なかなか接しやすそうな子でゴザルな」


 「まぁ、堅い奴じゃないよ」


 「およ? 翔矢殿は、リール殿と知り合いで?」


 「あっえっとリールのバイト先の喫茶店でな……

 アレ? あの時って卓夫いなかったっけ?」


 「バイト先でしか会わないと、服装で別人に見えたりもするからね!!」


 「なるほど……ってリール、食い終わるの早いな!?」


 「女子にそんなこと言うんじゃ無いわよ!!」


 「いてっ!!」


 

 顔を赤く染めながら照れたリールは、翔矢にデコピンをお見舞いした。

 その威力は、想像を絶するもので、翔矢は額を押さえながら、しゃがみ込んでしまう。

 

 

 「えっと……大久保卓夫君……だったわよね?

 改めてこらからよろしくね?」

 

 

 そんな翔矢を気にする様子も無く、リールは卓夫に手を伸ばした。

 

 

 「こちらこそヨロシクでゴザル!!」

 

 

 2人は堅く握手を交わした。

 

 

 「「「「「えーーーー!!!!」」」」」

 

 

 クラスメイトは、その様子に男女問わず悲鳴を挙げるのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 その頃、東京上空では黒く禍々しい2つの雲が浮かんでいた。

 人々は見慣れない黒い雲を見上げ、スマホで写真を撮り始める者もチラホラと現れた。

 下の人間の様子など、気にする様子もなく黒い雲は、明らかに雲とは思えない速度で、どこかに向かっていた。

 

 

 「六香穂で何処かにある何かを探してたラナンキュラス達……見つからなかったってぇ……って事はウチらも探さなきゃダメだよね? 働きたくないなぁ……」


 「まぁ競争ではありませんし、ゆっくり探すと致しますわ」


 「じゃあウチ、有給使っていい?」


 「得たいの知れない世界で、単独行動はオススメしませんわね」


 「はーい」

 

 

 2つの漆黒の雲は、北風エネルギー本社のビルが見えると、その速度を更に上げるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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