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230話:凝視から制裁が始まりそうです

 翔矢とペネムエはリールが再会の喜びの余韻を残したままだが、今は校内で起こっている事件の出所を探ることが優先だと、感情を表に出すのもそこそくに階段を下っていく。



 「ペネムエ、本当に鬼が出たって!?」

 

 「まだ生徒の話している噂を聞いただけですが」


 「そのタイミングで、あの放送だったからな。

 何かが出たのは間違いないと思うぜぇ!!」


 「……」

 

 「おいリールちゃん、何で俺と目を合わせてくれないんだい?」


 「健吾先輩が、リールの背中を凝視してるからじゃないっすかね?」


 「ほら、女子の夏の制服って濃い色の下着を着けてると透けて見えるだろ?

 でもリールちゃんは髪が長いから、こうやって見張って無いとチャンスを逃すんだよ!!」

 

 

 健吾はその体勢を変えないまま、リールの背中に視線を送り続けていた。


 

 「翔矢、この男殴っていいかしら?」


 「一応先輩だからな……3発までにしておけよ」


 「了解!!」

 

 

 リールは勢いよく後ろを振り向き、拳を振りかざした。

 健吾はその速度に反応できず、目を瞑る事しかできない。

 今にも直撃するかという、その時だった。

 

 

 「誰かいるのか!?」


 

 廊下の曲がりの角の翔矢達から死角になっていた場所から大人の声が聞こえた。

 恐らく教師だろうが、教室に待機するよう指示があった状況で見つかるのは非常にマズい。

 リールは教師の声に驚き手が止まり、健吾はホッとため息を吐いた。

 

 

 「君たち、教室にいるよう指示があっただろ!?」


 

 隠れる場所も暇もなく、簡単に教師に見つかってしまい翔矢は言い訳が出て来なくフリーズしてしまった。

 

 

 (健吾先輩……ここは上級生らしくキリッと後輩を救って下さい!!)

 

 

 今し方、殴られても仕方なしという扱いをしていた健吾に、翔矢は期待のまなざしを送った。

 しかし健吾は、その視線にすら気がつく事はなく、リールの背中に視線を送り続けている。

 その姿に翔矢は頭を抱えるしかなかった。

 

 

 「あっあのぉ先生? 私転校してきたばかりで……なのに急にあんな放送があって気が動転して、道が分からなくなった所で翔矢君と、セクハ……先輩に助けてもらっていたんです」


 「君は……そうか、転校生がいると話しは聞いていた。

 だが放送では、何処でも良いから近くの教室に入るよう言っていたはずだが?」


 「わたしぃ、まだ学校どころか日本に慣れて無くて……

 知らない教室に入るの怖いです」


 

 リールは潤んだ瞳で、教師に上目遣いで訴え始める。



 「ゴホン……そこの空き教室は誰もいない、使うといい」

 

 「「「「ありがとうございます」」」」


 「いいから早くしなさい」


 

 教師の指示に従い、4人はゾロゾロと、指さされた教室に入っていく。


 

 「あれ? 生徒は3人だったのに、4人分の声が聞こえた気が……

 まだ、校長先生の取った牡蠣があたった影響が残っているのかな?」


 

 教師は、軽く自らの腹に手を当て、この場を後にした。 



 

 ***

 

 

 教師に指示された教室に入った4人は、神経をすり減らしたせいか、そろって息を切らしている。

 


 「はぁ……はぁ……」


 「ビックリしたわね、超天才の私の猫かぶり演技で誤魔化せたけど!!」


 「天使って人間より体力あるって思ってたけど熱い中走るとちゃんと汗かくんだ……ゴハッ!!」


 

 少し汗ばんでしまったリールの背中を凝視する健吾。

 一瞬だけ濃い赤の下着が確認出来たのも束の間。

 彼の顔面に衝撃が走り、その視界は、赤い下着から赤い液体へと変わっていく。


 

 「あのぉ……先生に指示された教室に入るのに、あそこまで慌てる必要は無かったのでは!?」


 「「「姿隠してるのに、大きな声で返事するからだろうが!!!!」」」

 

 

 ペネムエを指さし、3人はアニメなら顔が巨大化するような勢いで、彼女に指摘する。


 

 「あっ……申し訳ありません」


 「まぁ流石に怪しまれないと思うけどね」


 「先生も、あのままどっかに言ったしな」


 「でも、何が起こってるのか情報は聞きそびれたわね」

 

 

 教室の窓から、廊下の様子を覗うが、先ほどとは他の教師の姿がチラホラと見える。

 誰にも見つからずに、この教室から出るのは厳しそうだ。


 

 「わたくしだけで様子を見て来ましょうか?」


 「それしかないか、ペネちゃんよろしく!!」


 「うっかり喋らないようにな」


 「健吾先輩、ペネちゃんはコッチです」


 「おぉ、俺にはさっきから見えて無いんだよな……

 ペネムエちゃん!! かわいい顔見せてよ!!」

 

 

 健吾は教室中をキョロキョロしながらペネムエを探している。

 そんな彼を無視して、彼女は教室を後にしようと扉に手をかけた、まさにその時だった。

 

 

 「その声は……翔矢? ペネムエもいるのか?」

 

 

 教室の隅に置かれた掃除用具入れのロッカーから声がした。

 4人の視線が、そこを向いた瞬間、ロッカーがバンッと音を立てて開き声の主が姿を現した。


 

 「おぉ!! ゼウ!!」


 「なぜ学校に?」

 

 「翔矢、ペネムエ、のんきすぎないか?

 昨日何があったか、自分の胸に手を当てながら思い出してみろ!!」

 

 

 鬼の形相で2人を睨み付けるゼウ、なぜ彼が怒っているのかピンと来ず、目を見合わせる。 

 


 「昨日は……翔矢様がライオン仮面の方と戦って」

 

 「校舎が壊れちまったんだよな」


 「その後にルーシィ・ザ・ワールドのサクラと名乗る方が現れ、理由は不明ですが学校は、この通り元通りになった訳ですが」


 「敵かもしれないけど、そこは助かったよね」

 

 

 清々しい笑顔で会話を続ける2人を、ゼウはバチバチと睨み付ける。

 だが健吾も含めて、その視線に気がついていない。

 

 

 「おいおい、そんな事があったのか?

 後でちゃんと聞かせろよ!!」


 「話すと長いっすよ?」


 「わたくしの書いている天界への報告書が出来たらお見せしますよ」


 「それって、俺にも読めるの?」

 

 「天界で日本語はメジャーな言語ですからね。

 最近は勉強も兼ねて、報告書は全て日本語で書いております」


 「へぇー立派なこってぇ」


 

 終始穏やかなムードでの会話だったが、この場に1人だけ心穏やかでない者がいた。

 

 

 「おまえらぁ!! いい加減にしろよ!!」


 「ゼウ……さっきから何をそんなに怒ってるんだよ」


 「そもそも何故、この教室のロッカーに……」


 

 話しの途中で、2人はようやく昨日の事を思い出し、再び目を見合わせた。

 

 

 「待てよ!? ゼウってライオン王子の奴に気絶させられて……」


 「その間に校舎は崩壊、そしてサクラ様の能力らしい何かにより校舎は再生」


 「って事は……」


 「そうだよ!! 目が覚めたら先生とかいうのに騒がれて、まるで不審者扱い!!

 やっと隙をついて、ここに隠れたんだ!!」


 「こんな逃げ場のない所に隠れんでも……」


 「生徒の方々の言っていた鬼が出たとは、ゼウ様の事だったのですね」


 「鬼っぽいの右手だけなのに、ピンポイントで広まったんだな」


 「人間は特徴的な部分に目が行くと言いますからね」

 

 

 翔矢とペネムエが2人で状況を飲み込んでいる間、ゼウの視線は健吾に向けられ、2人はバチバチと火花を散らしていた。

 

 

 「2人とも知り合いだったんすか?」


 「俺って北風エネルギーに協力してるだろ?

 魔力を探知してたら、コイツを見つけてな、ちょっと手合わせした事があるんだ」


 「健吾先輩、色々とやってたんすね」


 「あの時の決着を着けようと思ったんだが……翔矢の先輩なら辞めておくか」

 

 

 ゼウはバチバチと電撃を流していた右手を引っ込めた。


 

 「いや……天使って人間に攻撃しようとするんだっけ!?」


 「転生教の件もある、先手必勝だ」


 「おい翔矢、この物騒な奴、本当にお前の仲間か!?」

 

 

 健吾はゼウをビシッと指差した。

 

 

 「はい、仲間っていうか友達っすね」


 

 その言葉にゼウは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

 

 「まっまぁ、今回は事件じゃなかったなら俺は良いけどさ」


 「でも先生の指示があるまで教室からは出れないとして、ゼウはどうしよう?」


 「この教室に窓でもあれば、雷になって脱出出来たんだがな」


 「わたくしのブレスレットも1つしかありませんし……」


 「仕方ないわね、私のローブ使いなさい!! 性能なら結構高いわよ!!」

 

 

 ゼウは手渡されたローブを数秒見つめたが、受け取ろうとはしなかった。


 

 「どうしたのよ!?」


 「これ、ちゃんと洗ってるのか?」


 

 その一言にリールは激怒し、ゼウは教室の端から端まで投げ飛ばされてしまうのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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