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228話:登校から謎解きが始まりそうです

 ルーシィ・ザ・ワールドという、国なのか世界なのかも分からない場所から来た事を名乗る3人と接触した翌日。

 翔矢は他の人間に見えない状態のペネムエと共に恐る恐る登校していた。

 学校は、やはりというべきか、何事も無かったかのように日常そのものの姿だった。

 

 

 「ペネちゃん、昨日のあれって夢だったのかな?」

 

 「夢じゃなかったとしても、サクラ様が校舎は修復してくださいましたからね。

 これが自然と言えば自然な状態な訳ですが……」

 

 

 昨日は、あまりにも多くの事が起こった。

 日常が戻って来た事を喜ぶべきなのだろうが、なんだか心が着いて行かなかった。

 翔矢とペネムエは、何となく緊張しながら校門をくぐった。

 

 

 「翔矢君おはよー!!」

 

 「ゆゆゆの悠奈ぁぁぁ!!」

 

 

 背後からの挨拶、いつもなら驚かないのだが、気を引き締めたタイミングだったので、危うく腰を抜かしそうになってしまう。

 

 

 「そんなに驚く!?」


 「悪い悪い、少し考え事してたんだ。

 ゆっ悠奈、なんだか目の隈が凄くないか?」

 

 

 悠奈と言えば、元気の擬人化のような存在だと翔矢は思っていたが、今の悠奈の挨拶は、いつもよりテンションが低いように思えた。

 それでも、常人の朝と比べれば高い事に違いないのだが。

 

 

 「それが昨日さぁ……変な夢見ちゃってさぁ……

 学校で迷子になる夢だったの」

 

 「そっそれで寝不足か?」


 「うん、でも変なんだよねぇ~

 昨日は演劇部の手伝いで文化祭の衣装とか作ってたんだけど、その後の記憶がないんだぁ」


 「悠奈の事だから、本当に学校で迷子になったんだったりしてな」


 「もう!! 私そこまで天然じゃ無いよ!!」

 

 

 悠奈が何も覚えていないことに安心し、思わず本当のことを口にしてしまった翔矢。

 ペネムエと共に、一瞬だけヒヤリとした表情を見せたが、悠奈は単に小馬鹿にされただけと解釈したようで、それ以上に話を掘り下げられる事はなかった。

 

 

 「そう言えばグミは元気か?」


 「グミちゃん? それがさぁ、いつも朝は私を起こしてくれるんだけど、今日はグッスリ寝てて起こしてくれなかったんだよねぇ」


 「ペットが起こしてくれるのを毎朝あてにするなよ」


 「あははぁ、でもグミちゃん超賢くてね!! 毎朝本当に同じ時間に起こしてくれるの!!」


 「いや……それ自慢気に言う所か微妙だからな!!」

 

 

 鋭い突っ込みを入れながらも、いつも通りに戻った悠奈とグミの無事に翔矢は安堵したのだった。

 


 

 ***

 

 


 校門から校舎に入った後、翔矢は、すぐに教室には向かわず、校舎をグルグルと散策していた。 

 

 

 「翔矢様、教室には向かわれないのですか?」

 

 「今日は早めに家を出たからね、やっぱり昨日の今日だし気になるじゃん」

 

 「なるほど、夏休み明けの学校、わたくしにとっては久しぶりでしたので、ホームルームの開始時間までは失念しておりました」


 「ペネちゃんは、授業以外はフラフラしたりしてるからね」

 

 

 翔矢と話しながらハッとしたのか、ペネムエも校舎をキョロキョロと見渡す。

 とはいえ、この雰囲気であれば、異変や事件の名残など見つからないだろうと思っていた。

 しかし、廊下の掲示物が張ってあるスペースに何やら人だかりが見えてくる。

 

 

 「おっ瑠々、おはよっ!! 何かあったのか?」


 「しょしょしょの翔矢先輩!?」

 

 

 声の掛けやすい位置に見えた後輩の瑠々に挨拶がてら軽く話しかけたのだが、瑠々は飛び跳ねながら驚き、尻餅をついて倒れてしまった。

 

 

 「こんなに人たくさんいるのに驚く事ないだろ」


 「あはは、スマヌ、昨日の今日だったもので、つい気を張っていたのだ」

 

 

 差し出された翔矢の手を掴み、瑠々は、ヨッコイショと立ち上がる。

 少しばかり、周りの生徒の注目を集めたが、特に大事にはならなかった。

 

 

 「そういうや瑠々、昨日あの後、ちゃんと家に帰ったのか!?」


 「きっき昨日あの後とは!?」


 「いや……俺のこと生徒会にチクろうとして、校舎爆走してただろ?

 あの後、どこ探しても見つからないんだもん、心配したぞ」


 「あはは、我が不覚にも気絶してしまった間、我の中の勇者の魂に人格が変わったのでな、事情は軽く聞いただけだが、何事もなく我が家に帰ったぞ」


 「そりゃ良かった」

 

 

 瑠々の話を、いつもの厨二病として聞き流す翔矢。

 しかしペネムエは1つ疑念を抱いていた。

 

 

 (昨日現れた、ライオン仮面の方は自らを勇者と言っていた。

 前々から瑠々様の言動は、厨二病として聞き流すには、あまりにも一致している点が多い気がします、まさかとは思いますが……)

 

 

 ペネムエの深刻そうな表情に気がつかず、翔矢は瑠々と話を続けている。

 

 

 「翔矢先輩は、我とそんな事を話しに来たのか?

 2年生の教室に行くのに、ここは通らないであろう?」


 「あぁそうだった、何か人だかり出来てるなぁと思ってな、何かあったのか?」


 「そうなのだ、昨日、我も校舎を巡回していて見つけていたのだが、誰が掲示したか分からない掲示物があったようでな、それが謎解きじみていたので、1年生総出で考えておったのだ」


 「謎解きみたいな掲示物?」

 

 

 ここは1年生の教室が並んでいる廊下なので、人だかりのほとんどは1年生だった。

 上級生であり、一部では不良と思われている翔矢に気がつくと、自然と人だかりの中に道が出来る。

 翔矢は複雑な気分だったが、その道を進み、ペネムエと共に掲示物の見える所まで来た。

 この人だかりなので、ペネムエとの会話が聞かれないよう、久々に心の声で話すことにした。

 


 (ペネちゃん、これ分かる?)

 

 「少々お待ちください……」

 

 

 そこにあったのは、田んぼの絵、その下には手術中の医者の絵が、いずれもネットのフリー素材で雑に作られたポスターだった。

 どう見ても、誰かの悪戯で、大した意味はないだろうし、まして人だかりができるような事態ではないのだが、翔矢は、このポスターが妙に気になってしまった。

 

 

 「翔矢様、このお医者様が持っている刃物、何という名前でしたっけ?」

 

 (えっ? メスの事?)

 

 「試す……?」


 (えっ?)


 「田んぼの田とメスで、続けて読んで“試す”では無いでしょうか?」


 「うわっ……試す、メッチャ単純じゃん。

 この暗号が解けるのか試すって意味かな?」


 

 思わず心の声で話すのを忘れ、大きな声で話してしまった翔矢。

 その声は、人だかりを作っていた1年生達にハッキリと聞こえていたようで、瑠々を筆頭に翔矢に対して大きな拍手が送られた。

 最小は照れながら、拍手に応じていたが、次第に恥ずかしくなり、この場を早足で去って行く。

 

 ペネムエとは心の声だけで会話が出来るのだが、何となく気持ちが落ち着かず、階段の下の誰も来ないであろうスペースまで移動した。

 

 

 「ペネちゃん、さっきに話しの続きなんだけど……」


 「言ったままの意味です、私の見立てではあの暗号は“試す”と書かれているのかと」


 「誰が何を試すの?」


 「それは分かりません、昨日のルーシィ・ザ・ワールドというおかしな集団が残していったのか、他の誰かか」


 「まぁネットのフリー素材で作ってるみたいだし、学校の誰かの悪戯って可能性が高いからな。

 昨日色々あったし、何もかも気にしすぎてるかなぁ」


 「えぇ、わたくしも今は、そこまで気にするべき事ではないかと思います」

 

 

 ここで何となく翔矢がスマホを確認すると、ホームルーム開始する数分前だった。

 

 

 「あっそろそろ教室に行かないと」


 「色々とありましたが、とにかく平和そのもので何よりです」

 

 

 2人同時に、ヨッコイショと立ち上がると、ちょうど翔矢と同じ目線で目の前に人が立っていた。

 


 「うぉっ!! 健吾先輩!?」


 「翔矢、そんなに驚くこと無いじゃねぇか?」


 

 バランスを崩しそうになった翔矢の背中をペネムエは両手を伸ばして支えた。

 

 

 「ペネちゃん、ありがと」


 「何だか今日は驚かれる方が多い日でございますね」


 「ペネちゃんって、あの子が学校に来てるのか?」

 

 

 首を傾げる健吾の言葉で、彼には自分の姿が見えていない事に気がつき、少し慌てながら魔法のブレスレッドを外した。

 


 「健吾先輩様、おはようございます」

 

 「おぉ!! ペネムエちゃんおはよ!!

 そういや姿を消せるんだったな」


 「はい、学校に来るときは、これを使って見学させて頂いております」


 

 ペネムエは外したブレスレッドを、摘まむように持ち、健吾に見せる。

 そのとき、健吾の手には、羅針盤のようなモノが握られているのに気が付いた。

 

 

 「それは、魔力を探知出来る羅針盤でしたっけ?」


 「あぁ、昨日は帰った後で面倒だったが、学校の方で大きな魔力が発生したらしくてな」

 

 

 その話に心当たりのある翔矢とペネムエは目を見合わせた。

 健吾に昨日の出来事を説明しようとした、まさにその時だった。


 

 「おい!! 鬼が出たらしいぞ!?」


 「鬼? んなもんいる訳ないだろ」


 「何か出たのは本当だって!!」


 

 この2人の生徒の会話は、翔矢達の耳にも入って来た。

 冗談や悪乗りの類いだと思い、真に受けてはいなかったが、このタイミングで『キンコンカンコーン』とアナウンス前のチャイムが鳴る。


 

 『生徒の皆さんは、速やかに近くの教室には入り、合図があるまで外に出ないでください』

 

 「おい!! やっぱ事件だ……って2人ともどうした!?」



 この放送が流れた途端、翔矢とペネムエは、疲れた顔をして肩を落としいた。

 昨日の事情を知らない健吾は、らしくない2人の様子に動揺するのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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