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エピローグ(治療)

 空海山から翔矢が帰宅すると、一足先きに戻っていたペネムエがマジックラウドに乗って横になり眠っていた。


 (さすがに今日は疲れたみたいだな……俺もだけど)


 あの後の下山では、ヘトヘトでペースが落ちて班の足を引っ張る形になってしまった。


 事情があったとはいえ登山のときの瑠々の事を言えないくらいのペースになってしまった。


 (一番最後に出発したって言ってた健吾先輩の班にも追い抜かれたっけな……)


 荷物を片付けたりしていると、音が大きかったのかペネムエを起こしてしまった。


 「あっ、お帰りなさいませ。

 申し訳ございません。わたくしとした事が、またうたた寝をしてしまいました」


 「気にしなくていいよ。今日はもう転生させられる心配はないんだろ?」


 目を覚ましたペネムエは、また申し訳なさそうにしていたので俺は話題を変えた。


 「はい。マキシム行きのゲートは、すでに人間が通れないくらいまで閉じていますので心配ありません」


 「そっか。ちょっと思ったんだけど、俺がゲートくぐってベルゼブ倒して、こっちに戻って来るってのはダメなの?」


 「ダメというより不可能ですね。ゲートを通れるのは魂だけです。

 魂は1度肉体を離れると、同じ世界に存在することはできないのです」


 「わかったようなわからないような……」


 「天界でも原理は解明されてない現象ですので無理もないです。

 1つの世界で1回の人生しか送れないと言えば少しは分かりますかね?」


 翔矢はザックリとしか話を理解できなかったが、とりあえず行ったら帰ってこれないってのは分かった。


 「あっあのリールって子からもらった傷薬? 的な奴、俺が持ったままだった」


 翔矢はリュックに入れていた傷薬をペネムエに手渡した。


 「こっこれは……ありがとうございま……す」


 しかしペネムエは受け取ったまま固まって使おうとしない。


 「あっごめん。俺がいると塗れないよね。

 夕飯作ってるから、その間にやってて」


 ペネムエの傷は細かいのも含めると全身に広がっている。


 服を脱がなければ濡れないので、男の自分がいると使えないのだと思い翔矢は部屋から出て行こうとした。


 「いえ……そうではなく……

 ガマガマ油は繊細なので特殊な魔法でしか加工できず……その際の副作用的なものがあり……」


 かなり話しにくそうにしながらもペネムエは話を進めていく。


 「じっ自分で塗ると効果がないんですーーー!!」


 「……マジかよ」


 今度は翔矢がペネムエの手に持っている瓶を見て固まってしまった。


 「マジでございます。

 お見苦しいものを見せてしまうと思いますが塗っていただけますか?」


 「いやまぁいい……いいんだけど……いいのか?」


 倫理的に問題がある気がしたが、登山の時の状況などから察するに、ペネムエは自分に自信がなくてモゴモゴすることが多い。


 今回も恥ずかしいというより、申し訳ない気持ちで見苦しいなどと言っているのだろうと思った。


 自分の為にケガをしたのだし、女の子に傷跡を残す訳にもいかないので塗るしかないと翔矢は腹を括った。


 (仕方ない。仕方ない事なのだ)


 「仕方ない……やはり、お目汚しだったでしょうか?」


 気が付くとペネムエがすでに服を脱いで白い下着姿になっていた。


 自分の気持ちを落ち着かせる為の心の独り言だったがやはり心の声が少し聞かれてしまったようだ。


「いや、見苦しくない見苦しくない。むしろ見ていたいからこそ目を伏せたいといいますか……(何を言っているんだ俺は)」


 嘘ではないがそれはそれで問題あるだろう。


 気が動転してとんでもない事を言ってしまったと、自分の言葉に後悔をした。


 しかし見たいと言っても見たくないと言ってもおかしくなる。


 こういう場合の正解を誰かに教えて欲しいものだ。


 「それでは、お手数おかけしますがよろしくお願いします」


 ペネムエがマジックラウドにうつ伏せになっている。


 うつ伏せなら、目が合ったりする心配はないし、少しは心臓の負担は少ない……


 と思ったが下着姿なので思春期の男子の目には刺激が強かった。


 確か天使は近くにいたり触れたりしていると、心の声が鮮明に聞こえると言っていたので気を付けよう。


 だが、どう気を付ければいいのか分からない。


 「それでは失礼して塗らせていただきやす」


 なんかすでに言葉遣いがおかしくなってきているが自分では気づいていない。


 翔矢は瓶から、素手でガマガマ油をすくう。


 手がポカポカしたりピリピリしたり妙な感覚に襲われた。


 すくった油を、とりあえずペネムエの背中の1番傷の深そうなところに塗ってみる。


 と言ってもほとんどの攻撃を正面から受けたのか背中の傷はそんなに多くないし深くもなさそうだ。


 「ひゃっん」


 塗った瞬間にペネムエが、これまた思春期男子には刺激の強い声を出した。


 もし誰かに聞かれたら通報されてしまうかもしれない。


 「重ね重ね申し訳ありません。

 この薬は、細胞や神経に働きかけて傷を治すものなので体の反応が敏感になってしまうのです」


 その情報は聞かない方が良かったと翔矢は思った。


 変に意識してしまいペネムエの方を直視できなくなった。


 別に直視しなくても薬は塗れるが、一応塗り残しがあるといけないので確認した方がいいだろう。


 という事で基本は目を閉じながら。時々チラチラと目を開けて傷を確認しながら薬を塗り続ける。


 ペネムエの時々発する色々と危うい声は無視……するのはできそうになかったので、マッサージしているようなものだと思うことにした。


 オイルマッサージとか、ほぼ裸で行うイメージあるしツボ押しで痛かったら声を出す人もいるだろう。


 似たようなものだ。マッサージの知識などないが、そう自分に言い聞かせた。


 無心のようで全く無心でないまま作業は続き、何とか背中は塗り終わった。


 「ふぅ」


 数分の出来事だったはずだが、2人は強い疲労感に襲われた。


 「ありがとうごじゃいましゅ」


 ペネムエも色々と我慢してたのか呂律が回っていない。


 息遣いも荒く見える。


 本当に犯罪者になってしまったかのような罪悪感を翔矢はかんじた。


 「それでは、正面もお願いいたします」


 「A面でごじぇーますか?」


 「A面? 正面でございます。

 お腹や胸のあたりを、少し深く切られてしまって……」


 ペネムエが起き上がってこっちを向いたので俺は思わず目を覆った。


 「あの……ポーション飲みましたしそこまでグロテスクな事にはなってないと思うのですが?」


 「そういう問題じゃないでしょうがーーー!!」

 

 ※この後めっちゃ悪戦苦闘して塗った。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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