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221話:到着から説教が始まりそうです

 翔矢とゼウは、放送室で、ペネムエが到着するのを待っていた。

 だが、すでに10分以上も経過しており、2人はソワソワと落ち着きを無くしていた。


 

 「ペネちゃん、まだ学校に着いてなかったのかな?」


 「それか、放送を聞いても無限ループを脱出出来なかったかだな。

 どうする? 放送室から出てみるか?」


 「うーん、ペネちゃんと行き違えになっても嫌だしな」


 「じゃあ、どっちかが放送室で待機するか?」


 「こういう時は、単独行動しない方が良い気がするけど仕方ないか」


 

 どちらが行くのか話した訳でもないのに、なんとなく翔矢は率先して立ち上がった。

 その拍子に、ゴチャゴチャと物の置かれた机の上から小さな箱が落ちてきた。


 

 「翔矢、これは?」


 「トランプ……って言っても分からないかな? カードゲームだ」

 

 「ゲーム!!」


 

 その言葉にゼウは目の色を変え、輝かせている。


 

 「じゃあ、せっかくだから少し遊んでみるか?」


 「これは……カードバトルで決着という奴だな!!」


 「あはは、負けた方がペネちゃんを探しに行くルールにするか!?

 ババ抜きは……実は2人じゃ出来ないんだよな」


 

 今の状況を忘れてしまったように、2人はトランプで頭がいっぱいになったのだった。

 


 

 ***



 

 翔矢の放送を聞いたペネムエとグミは、引き続き、放送室へと向かっていた。

 

 

 「ペネムエ、これ無限ループに入ってるニャ?」


 「それが……放送室に見覚えはあるのですが、入る機会が無かったので……」


 「天界図書館の本の内容は全部覚えてるのに、たった1つの教室の場所は覚えていないって訳ニャ」


 

 グミの容赦ない指摘にペネムエは恥ずかしくなり耳まで赤く染めてしまう。

 

 

 「だって!! わたくしが学校に来ているのは、授業を受けノーマジカルの文化を学ぶのが目的ですし!! 通り過ぎる教室まで一々覚えていませんよ!!」


 「分かったニャ分かったニャ、そう怒ると将来シワが増えて翔矢に嫌われるニャ!!」


 「翔矢様を持ち出せば、わたくしが引き下がると思ったら大間違いですよ!!」

 


 少し強い口調で話していたペネムエだったが、その目は一瞬にして冷静になった。


 

 「どうしたニャ?」


 「今、一瞬ですが魔法が発動した気配が」


 「魔法? ノーマジカルで、そんな馬鹿ニャ」


 「そう……ですよね?」

 

 

 悪魔族であるグミは自分よりも魔法への感覚や直感は優れている。

 その知識が邪魔をしたと言うべきか、ペネムエは今のは気のせいだと納得してしまった。

 

 

 「あっ、校舎の案内がありました、これで放送室に行くことが出来ます」


 「デパートとかならともかく、校舎で地図なんて見る奴いるのかニャ?」


 「今、ここにおります」


 「まぁ……来客くらいはあるかニャ」

 

 

 2人は校舎案内に目を通し現在地を確認する。

 


 「なるほど……西側の階段から降りないと入れないエリアでしたか。

 どおりで見当たらないはずです」

 

 「同じような間取りの教室並べて、同じ階の場所に行けないとか不親切な建物だニャ」


 「確かに親切とは言い難いですが、異世界のようにワープパネルはありませんからね」


 「あぁ……あの初見じゃ絶対に、何処にワープするか分からない奴ニャ……苦手ニャ」


 「得意な方なんていませんよね」

 

 

 異世界の建物を思い出しながら談笑している内に、西側の階段前へとたどり着いた。

 地図が間違っていなければ、ここから降りれば放送室前へ行けるはずだが、2人の足は止まっていた。

 

 

 「おいペネムエ、さっきの話は何処に行ったニャ?」


 「わたくしに聞かれましても……」

 


 2人が困惑するのも無理は無い、目の前にあるのは、今しがた話していたワープパネルなのだ。

 


 「この魔力、恐らく本物ニャ。

 悠ニャの話では怪異を発見したら引き返すのが最近のトレンドらしいニャ」


 「翔矢様も、そんな動画見ていましたね。

 ですが、ここを通らなければ放送室へは行けません」


 「まぁ、こんなパネル、飛び越えるだけニャ!!」


 

 グミは黒猫へと姿を変え、大ジャンプを披露した。

 

 

 「ニャニャニャ!!」

 

 

 しかし見えない壁のようなモノに阻まれ、ビタンと張り付いてしまい、そのまま体が落ちワープパネルまで落下しそうになる。 

 


 「これは、飛び越えるのは無理ですね」

 

 

 間一髪の所でペネムエがグミの首輪をつかみ、彼女がワープパネルに触れる前に体を持ち上げた。

 

 

 「助かったニャ……虫の知らせで猫になってて良かったニャ」

 

 

 再び人型へと変わったグミを尻目に、ペネムエは、パントマイムの様な動作で見えない壁のチェックをしている。

 


 「わたくしとグミ様の体型であれば、体を横にして壁伝えに歩けば通れそうですがその前に……」

 

 

 ペネムエはブリューナクから生み出した氷の玉をワープパネルに向かい投げ付けた。

 その氷は、ワープパネルに吸い込まれ何処かへ消えてしまう。

 ペネムエは、そこに耳を澄ませるように近づけた。

 


 「冷たーーーーー!! 何これ!!」

 

 

 ワープパネルから聞こえてくる大声で、ペネムエは驚き尻餅を付き倒れてしまう。


 

 「今の声、なんニャ?」

 

 「急な大声で特定は出来ませんが、状況から考えて、この先に今回の事件の黒幕がいると見て間違いないかと」


 「じゃあ、カチコミに行くニャ?」


 「必要あると思いますか?」


 「……今の攻撃で大声出して騒ぐようじゃ、知れてるニャ」


 「そういう事です、翔矢様やゼウ様と合流して学校を元に戻し余裕があったら見に行きましょう。

 ボスを倒したら元に戻るタイプの異変……という訳では無さそうなので」


 「ここは後回しだニャー」

 

 

 2人はワープパネルの横を壁伝えに歩き、階段を下っていった。

 その姿が見えなくなった頃、そこから1人の女が出現した。

 

 

 「転校したばっかで学校を見学してたら何なのよ!!

 急に出られなくなるわ、ワープパネル見つけたと思ったら氷で攻撃されるわ……

 誰の仕業か分からないけど絶対に許さないわ!!」


 

 そこから現れたのはペネムエの推理通りの黒幕……ではなく“本当に”転校し、早々に事件に巻き込まれてしまったリールなのだった。

 

 

 

 ***



 

 自分の推理が正しいと信じて止まないペネムエは、階段を駆け足で下り、放送室の前にたどりついていた。

 

 

 「色々あり、想定より遅い到着となってしまいました」

 

 「翔矢心配してるかもニャー」


 「先ほどの件で、黒幕の実力は知れていると判明していますが、翔矢様からしたら未知の敵が潜伏している状況ですからね」

 

 

 ペネムエが放送室のドアノブに手を掛けると、中から翔矢とゼウの声が漏れて聞こえてきた。

 

 

 「こうなったら……手加減なしだ!!」

 【コネクト・アクセル】


 「俺も全力を出すほか無いな……」

 

 

 その直後、何かと何かが高速で衝突する音が、何度も聞こえて来た。

 

 

 「そんな!! 中から感じる魔力は翔矢様とゼウ様の分だけなのに!!」


 「しかも苦戦してるっぽいニャ!! とにかく早く中に入るニャ!!」


 

 ペネムエは壊れそうなくらい勢いよくドアを開け、中に突入する。

 

 

 「翔矢様!! だいじょう……」


 「はぁ……」

 

 

 翔矢とゼウの様子を見たペネムエはフリーズし、グミは呆れたように頭を抱えていた。

 

 

 「あっペネちゃん、もう来たんだ」

 

 「少し待ってくれ、今決着が着くところだ!!」

 


 ゼウは何かを激しく机に投げるとパシンと大きな音が鳴る。


 

 「あっゼウきたねぇぞ!!」

 

 「勝負中に隙を見せた翔矢が悪い」


 

 ペネムエはゆっくりと机まで歩き、ゼウが投げた物を確認する。

 

 

 「これは……トランプ?」

 

 「放送室にあったの見つけて、ゼウとスピードで勝負し……」

 

 

 悪びれる様子も無く事情を説明しようとした翔矢だったが、ペネエムの怒りの表情が目に入ると、無意識で正座をしてしまう。

 

 

 「翔矢、どうした?」


 「ゼウ、お前も正座だ、普通に考えたら色々とアウトだ」

 

 

 翔矢に言われるままにゼウも、その隣に正座をした。

 その後、2人はペネムエから厳しい説教を受ける事となる。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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