217話:連絡から急行が始まりそうです()
原因不明の現象により、同じ場所をループする空間と化した学校の廊下を、翔矢とゼウは脱出の手がかりを探し探索していた。
「ゼウー、何か魔力を感じます的な奴で、探せないのか?」
「無理だな、何かに邪魔されて、魔力を感じ取れない。
ペネムエみたいに、魔力を肉眼で確認する修行をしていれば別だったかもしれないが」
「こういうのって、目で見ないで感じる方が凄いんじゃないのかよー」
「本来見えない物を見れる事の強みもあるという事だ」
「なるほどなー」
そのペネムエと連絡を取るための通信用の魔法石は、生徒会室に置いてきたまま。
ゼウも、持ってくるのを忘れたらしく、彼女と連絡を取る手段は無いのだ。
「せめて何か、形とかヒントないのかよー」
「見つければ、何となく分かる形状をしているとは思うがな」
壁を叩いたり、入れる教室の机の中を見たり、思い付く限りの場所を探しているが何も見つからない。
そんな中、翔矢のポケットに入っていたスマホからピロンと通知音が鳴った。
「あっユリアさんからだ“今日ソシャゲの生配信のゲストで出るから良かったら見てね”かぁ。
さすがに夜までには脱出したいよなぁ」
「おい、翔矢」
「ゴメン、真面目に探すよ……」
「そうじゃない、メッセージが届いたという事は、そのスマートフォンとやら、外部と連絡ができるのか?」
「スマホなんだから当たり前だ……あっ!!」
最初はゼウがスマホのことを知らないだけだと思っていた翔矢も、自分の言葉で彼の質問の意図を理解した。
「スマホで連絡できる人で助けてくれそうなのは……
ユリアさん……夜生放送だと厳しいか……
リール……は本当に転校して来た訳じゃないのか……」
スマホの連絡先一覧に映るリールの文字に翔矢は悲しそうな表情を見せた。
朝、彼女と確かに会ったはず……だがそれは、今回の奇妙な現象の一部に過ぎないようだ。
「翔矢……?」
「あっ悪い、家に電話してみるよ。
家電でも着信相手は表示されるから、俺からならペネちゃんは出てくれるはず」
翔矢は誤魔化すようにスマホを操作し家に電話を掛けた。
7コール程した所で不安になったが、ようやく誰かが受話器を取った。
『翔矢様? 何かありましたか?』
「ペネちゃん!! 出てくれて助かった!!
実は、うんぬんかんぬんで!!」
『また妙な事件に巻き込まれてしまったようですね!!
分かりました!! すぐに向かいます!!』
「ペネちゃん……何か嬉しそうじゃない?」
『ゴホン、気のせいでございます!!
お2人なら大丈夫かと思いますが油断は命取りですからね!!』
ペネムエの、やけに早口な言葉を最後に電話は切られてしまった。
「翔矢、どうだった?」
「よく分からないけど、とりあえず来てくれるって」
「よく分からないけど?」
翔矢とゼウは目を合わせながら、同時に首を傾げるのだった。
***
翔矢からの連絡を受けたペネムエは今までよん、空を飛ぶ雲“マジックラウド”に乗り六香穂高校へと向かっていた。
「全く、次から次へと事件が続きますね。
マジックラウド、修復が終わったばかりで申し訳ありませんが最高速度でお願い致します」
そう呟くペネムエの表情はニヤニヤとして嬉しそうだ。
「ふふふ、ゼウ様が付いていながら、頼って頂けるとは……
やはり、わたくしがいなければダメなようですね」
独り言を口にする度にペネムエの表情の筋肉は緩んでいく。
「おっと行けません、この非常時に心が躍ってしまうとは天使失格です!!」
ペネムエは自身の頬をパンと叩き気合を入れなおした。
目を開けると数百メートル先に六香穂高校が見えて来たがペネムエは言葉を失った。
「何ですか……あの禍々しい魔力は……」
魔力を視覚で捕らえる事が出来るペネムエには、六香穂高校の校舎の形は見えず、ただ黒い建造物が建っているようにしか見えなかった。
「思ったより事態は深刻なようですね……」
一刻も早く六香穂高校に辿り着こうとするペネムエだったが、高速で飛んで来た何かが後頭部に直撃し、マジックラウドから落とされコンクリートの地面に直撃してしまった。
「うっ……」
痛みを堪えながら何とか立ち上がると、そこにいたのは数百もの鋼鉄の鎧の騎士だった。
「なっ……飛んでいたとはいえ、こんな大群に何故今まで気が付かな……」
考える間もなく鋼鉄の騎士たちはペネムエに向かって弓矢を放つ。
「予想はしていましたが、会話をする気も無いようですね」
体勢を低くしギリギリで弓矢を回避したペネムエは、魔法のポーチからブリューナクを取り出す。
「誰の差し金かは分かりませんが、田舎でも誰かに見られたら大騒ぎですよ!!」
ペネムエはブリューナクから氷の球体をいくつも生み出し鎧の騎士たちに放った。
次々に頭部に命中すると、鎧の兜が外れ、ゴロゴロと転がり出した。
「やはり鎧の中は空洞でしたか、となれば……」
この数秒の間に、鎧の兜は磁石の様に胴体に引き寄せられ、再び動き始めた。
「やはり操っている者を倒さなければ再生するタイプの敵ですね……
六香穂高校からの妙な魔力のせいで、黒幕の位置を探せない……
倒しながら、何とか見つけ出すしかありませんか!!」
ブリューナクを振るい、次々に鎧の騎士を倒していくが、倒したそばから再生していく。
「やっぱり疲れますね……やめましょう」
一瞬動きを止めたペネムエは、ブリューナクを地面に叩きつけた。
そこから発せられる冷気で、鎧の騎士は凍り付き動かなくなってしまった。
「再生できても動けなければ意味はありません」
ペネムエは鎧の騎士の機能が停止したのを確認し、辺りを見渡す。
「姿を見せる気は無いようですね」
ペネムエは警戒しながらマジックラウドに乗り込み、再び六香穂高校へと向かうのだった。
***
ペネムエが飛び去った後、その戦闘の跡地を、1人の老人が、ゆっくりと見渡し観察していた。
「鎧の騎士への対処としては満点。
と言いたいところだが、人目に付く状態で放置。
これは大きな原点じゃな」
老人が剣を振るうと、ブリューナクの氷もろとも、戦闘の痕跡は消え去ってしまった。
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