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213:自習から転校生が始まりそうです

 2学期そうそうに事件が起こり、翔矢は既に気疲れしていた。

 1時間目は持ち物検査とヤンキーグループの事件で潰れ、これから2時間目に入るところだ。



 「悠菜、先生たち牡蠣の食あたりで休んでるんだろ?

 テキトーに自習しときゃいいよな?」


 「さぁ? 私に聞かれましても-」


 「いや、こういう場合はクラス委員の悠菜に聞くしかないだろ?」


 「そっか!! 私クラス委員だった!!

 職員室に聞きに行かなきゃいけないのか!!」


 悠菜は、なるほどとばかりに手をポンと叩く。


 「しっかりしてくれ……どうせ自習だろうが」


 「翔矢君、随分と自習に拘るね?

 さては、この機に乗じてサボりにサボった夏休みの宿題を終わらせるつもりだな!!」


 「今回はちゃんと終わってるよ!! 夏休み明けと、さっきの事件でヤル気が無いだけだ」


 「正直、私も初手数学は勘弁願いたいけどねー!!

 じゃあ、そろそろ職員室に聞きに行きますかー」



 悠菜が重い腰を上げ立ち上がると同時に、教室のドアが開き担任が入って来た。



 「遅くなってすまん、みんなー席に着けー」


 「「「もう着いてまーす」」」



 この起源は定かでないが、翔矢のクラスで担任が遅れたと時の定番のやり取りだ。

 いつもと変りなく見えるが、担任は腹を抑えている、これが遅れた原因だろう。



 「先生!! 腹痛いなら休んでた方がいいすよー!!」


 

 六香穂高校の治安は比較的良い方だ。

 クラスメイトは揃って担任を心配する。



 「そのつもりだが、どうしても……今言っておかねばならん事があるんだ……」



 腹を抑えたまま真剣な表情を見せる担任の姿にクラス全員が息を飲む。



 「きょきょきょ今日は転校生を紹介するぞ!!」


 「転校生?」


 「公立高校で!?」


 「実在したのか!?」

 


 担任の腹の心配などすっかり忘れクラス中が歓喜のムードに包まれる。

 翔矢も例外ではなく、表には出さないがテンションが上がり切っていた。



 「翔矢君!! 可愛い女の子だと良いね!!」


 「あんまハードル上げるなよ、ってか女子ならイケメンを期待しろ!!」


 「そういうの、今の世の中的にいけないんだぁ!!」


 「それはゴメンって」


 

 このように騒いでいるのは翔矢と悠菜だけではない。

 クラス中で転校生に期待する声が上がっている。



 「静かにー!! 俺の腹が限界だ!!

 じゃなくて転校生が入りにくいだろ……

 リールさん、どうぞ入って!!」



 「嘘……だろ?」


 「喫茶店の美人な店員さん!!」

 

 

 その名と特徴的な髪を見た瞬間、驚きの声を隠しながら翔矢は固まってしまう。

 隣の席の悠菜は、リールのバイト先の喫茶店で面識のあるので単純な喜びで、身を乗り出して気持ちを隠しきれないでした。



 「なんだ一ノ瀬、知り合いか?

 だったら席は隣で……後は自習でよろしく!!」



 担任の腹は、とうとう限界を迎えたのか、転校生のリールを放って教室を猛スピードで出て行ってしまった。


 

 「わーい!! リールちゃんと隣だ!! よろしく!!」


 「よっよろしく……お願いします」



 翔矢はすぐ話しかけようとしたが、悠菜がリールが席に着くよりも早く話しかけてしまったので、あえなく断念した。

 そして自習と言われた時間は、当然それどころでは無くなってしまう。



 「リールさん、何処から来たの?」

 

 「海外の人だよね? 日本語どれくらい話せる?」


 「リールさん、どっかで会ったことある?」


 「おい、お前、さっそくナンパか!?」


 「ちげぇよ!! 本当にどっかで会った気がするんだよ!!」


 「リールさん、駅前の喫茶店でバイトしてたんだよ!!

 それでしゃない?」


 「あぁ!! テスト勉強喫茶店でやるのに憧れて1回だけ行ったことあったわ」


 (おいおい、質問しておいて、リールが一言も話せてないじゃねぇか)



 クラスメイトの爆上げなテンションで冷静になった翔矢は、リールに話したい気持ちを抑える事ができた。



 (色々聞きたい事はあるが、無事で良かったし逃げる訳じゃないんだ。

 とりあえず通信用の魔法石でペネちゃんには教えてあげないと)



 いつも制服のポケットに入れている魔法石に手を触れようとするが、ゴソゴソと漁っても見つける事が出来ない。



 (あー赤メリとゼウの魔法石はドサクサで回収したけど、ペネちゃんの魔法石は生徒会に没収されたんだった……)



 ゼウの魔法石は、ロッカーのカバンに入っていて今は取りにいけない。

 翔矢は仕方なく、この場で誰かに連絡する事は諦めるのだった。



 (ってかゼウは何してるんだ? アレ? あいつ俺のクラスの場所知ってたっけ?)


 

 クラスメイトがザワザワとリールに話しかけるのをよそに、翔矢は数学の問題集を出し、勉強するフリをするのだった。




 ***



 

 その頃、ゼウは翔矢を探し学校をさ迷っていた。

 ペネムエから借りたブレスレットの効果で、たまにすれ違う教師も、ゼウを気にする様子は無かった。



 「ぐっ……翔矢に魔法石で連絡が着かない……

 まさか、さっき雷を落としたのを、まだ怒っているのか?

 いや、そんなハズは……仕方ない、ペネムエにクラスの場所を聞くか」


 (ゼウ様!! 聞こえますか?)


 「ペネムエ、まだ俺は連絡してないぞ?」


 (何かボケておられますか? それより天界から届いた資料に、少し気になる事が)


 「気になる事?」



 ペネムエのトーンから、ゼウの気は自然と引き締まる。



 (天界の罪人ルーシィが脱獄したらしいのです)


 「それは……大事件だが、俺たちに何か関係が?」


 (それが……対峙した天界騎士団からの情報では、ノーマジカルのゲートをくぐったそうなのです)


 「なにっ!? って事は既に世界に!?」


 (ノーマジカルと言っても広いですからね、捜索の命令が出た訳ではありませんが念のため)


 「そうだな、あれだけ事件が続いたんだ。

 気には留めておくが、俺たちが接触する可能性は、天文学的という奴だろう」


 (わたくしも同じ意見です、学校が始まり忙しい翔矢様には黙っておきましょう)


 「賛成だ……あとペネムエ」


 (何でしょうか?)


 「翔矢の教室の場所を教えてくれ」


 (え? 一緒じゃなかったんですか?

 いえ確認しないでルーシィの事を話した、わたくしも軽率でしたが)

 

 「色々あってな……」



 先ほどまでの緊張感と一緒に2人の頭からルーシィの話は抜けてしまうのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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