212話:持ち物検査から暴走が始まりそうです
生徒会長による抜き打ちの持ち物検査で赤メリが見つかってしまった翔矢。
言い訳も出来ず、おとなしく没収されるつもりだったが、ゲームなどと違い武器は、注意だけでは済まなかった。
生徒会長は翔矢の顔に竹刀を突き付けて来たのだ。
見ている者からすれば、どちらが手出してもおかしくない状況。
ピリピリとした空気が校門に流れていた。
「えっと……これ赤くてキラキラした石が付いてるじゃないっすか?」
「それがどうした?」
「オモチャっすよ!! 夏休み中に従弟が遊びに来たんで、カバンに紛れ混んだんだと思います!!
ほら!! 一緒に入ってた石とも色味が似てるじゃないですか?」
「貴様が中学時代に品行方正であれば、その話を信じたんだがな」
これ以上、自分はどうすればいいのかと固まっていると、一瞬空が眩しく光るのを感じた。
すぐ後にゴロゴロと音が鳴り、翔矢と生徒会長の間に雷が落ちたのだ。
翔矢は眩しさで目を右手で覆い、生徒会長は腰を抜かし尻餅をついてしまった。
「なに今の?」
「雷!?」
「こんな暑くて天気もいいのに!?」
幸い怪我人は出ていないようだが、周りの生徒たちはザワザワと騒ぎだし、持ち物検査どころでは無くなっている。
翔矢も、自然発生した雷だと思っていたが、ふと上を向くと近くの民家の屋根の上に、ゼウが立っているのが見える。
しかも、こちらの方向に手を向けた体勢だ。
「ゼウの奴……何のつもりだよ!!」
通信用の魔法石でゼウを体育館裏まで呼び出し、生徒たちにの騒いでいるドサクサに紛れこの場を抜け出す。
「翔矢!! ぶじだっ……」
言葉を言い終える前に、翔矢からのただならぬ殺気で、自分が大きな勘違いをしてしまったのだと察する。
「なるほど……俺が負けて赤メリを取られるように見えたのか」
「はい……誠にゴメンナサイ」
「人に当たらなかったから良かったものの!!」
「確実に直撃させたハズなんだがな」
「オイッ!!」
ゼウが反省してないと受けった翔矢は、思わず手が出そうになった。
だがそういう意味じゃないと言わんばかりに、ゼウは両手を挙げ首を横に振る。
「何か他に言い訳が?」
「あの距離なら俺は攻撃は外さない!!
誰かに攻撃を反らされたんだ!!」
「えっ?」
驚きが怒りに勝り、翔矢の表情から殺気が消えた。
「学校にいる中で、ゼウの攻撃防げそうなのって……
健吾先輩かな? そういや新しい武器ドクターのおっさんに作ってもらったらしいけど、見る機会なかったな」
「健吾先輩……あの男、翔矢の先輩だったのか」
「あれ? 知り合いだったの?」
「以前、一度うんぬんかんぬんで手合わせした」
「あー魔力持った生き物を探すバイトしてたらしいからな」
「それをバイトという翔矢も相当毒されてるな」
「そうか? まぁとにかく!! 見つからなければ自由に見学していいけど学校で雷は禁止な!!」
「了解……」
そう言い残し翔矢は学校の方に戻って行った。
「怒られてしまった……まぁこの世界では魔力の存在を知る者すら少ないからな。
流石に気を張り詰め過ぎたか……アレ? 魔力の存在知る奴、少数で合ってるよな?」
最近大きな事件が続いた事があり、ゼウは頭が混乱してしまう。
「……アレ? 俺ペネムエから借りたブレスレット付けてるよな?
何で翔矢には、俺の姿が見えたんだ?」
混乱に加え新たな疑問が生まれたゼウは、その場に固まってしまうのだった。
***
翔矢が校舎の方に戻ると、ゼウの雷とは別であろう騒ぎが起こっていた。
だが人だかりが出来ており、翔矢の目には何が起こっているかまでは確認が出来ない。
「悠菜、何かあったのか?」
「翔矢君!! どこに行ってたの!?
大変だよ!! 隣町のヤンキーが攻めてきたの!!」
「はっ?」
いつもの悠菜の悪ふざけかと思ったが、言われてみるとバイクのエンジン音のようなものが聞こえてくる。
人だかりの隙間から、何とかグランドが見えると、バイクに乗った10人ほどの男が、バッドを片手に暴れまわっていた。
「今日は何の日だ? 俺は世紀末の世界にでも迷い込んだのか?」
「翔矢君!! 出番だよ!!」
「いや……幼馴染ポジは俺が戦うのを止めるとこだぞ?」
「だって他に、あんな怖い人たちを止めれる人いる?」
「……仕方ないか」
翔矢は渋々と不良グループの方に足を向けた。
「待って下さい、翔矢の兄貴が出るまでもありません!! ここは俺に任せて下さい!!」
名乗りを上げたのは3年のモヒカンだった。
何度か交流がある程度だが、何故か翔矢を兄貴と呼ぶ。
「待って下さい!! ここは勇者の力を持つ我がいく!!
こんな変な髪の先輩に、学校の命運を任せれれるか!!」
続いて名乗りを上げたのは翔矢の剣道部の後輩である阿部瑠々だ。
彼女が本当に勇者の力を持っている事は、まだ誰も知らない。
「変な髪型……」
「はいはい、瑠々ちゃんは危ないから、あっちでお人形さん遊びしましょうねぇ」
「うわっ!! 悠菜先輩!! 我を子ども扱いするな!!」
そんな瑠々は悠菜に弱いらしく、簡単に制服を掴まれ、取り押さえられてしまった。
「ふん!! 野次馬やヤンキー被れは下がっていろ!!
学校の治安を守るのは、生徒会長である私の仕事だ!!」
さらに生徒会長まで不良グループ討伐に名乗りを上げた。
すでに朝からずっと手に持っていた竹刀を構えている。
「生徒会長、俺の竹刀壊すなよー」
「無論だ!!」
「その竹刀、健吾先輩のだったのかよ!!」
以前から生徒会長イコール竹刀というイメージは翔矢の頭にあった。
その認識は他の生徒も遅らく同じだろうが、それが借り物だと知り何だか残念な気持ちになってしまった。
「なんだ? やはりヤンキーの宮本翔矢は戦い足りないのか?」
「怪我人出ても後味悪いし、気は進みませんが喧嘩の経験ある俺が行った方が良くないっすか?」
翔矢は何故だか右手をビシッと挙げる。
「いやいや、翔矢の兄貴は喧嘩から足を洗った身。
あんな奴ら俺1人で十分っす!!」
続いてモヒカンが右手をビシッと挙げる。
「いいや、勇者の力を持つ我が行けば一瞬で解決する!!」
さらに瑠々も右手を挙げる。
「いいや生徒会長である俺の仕事だと言ってるだろ!!」
「「「どうぞ、どうぞ、どうぞ!!」」」
「言われると思ったよ!! 変わり者同士、仲いいなお前ら!!」
生徒会長は頭から湯気が出るように怒りながら不良グループの方へと向かっていく。
「翔矢君、生徒会長大丈夫かな?」
「心配ないだろ、たぶんな」
悠菜と話しながら、翔矢はコッソリと手荷物検査で没収された品の中から赤メリを手に取り後ろに隠していた。
***
「貴様ら!! 何が目的で我が校に来たのかは知らんが、六香穂高校生徒会長が相手だ!!」
グランドをバイクで爆走するヤンキーに向かい勇敢にも啖呵を切る生徒会長。
10人以上のヤンキーグループが一斉に彼を睨み付ける。
「んだコラーーー!!」
「ツーリングの邪魔するなコラー!!」
ヤンキーグループは躊躇なくバイクを爆走させ生徒会長に狙いを定める。
「生徒会長!!」
そのキャラの濃さと正義感から一部には人望があった生徒会長。
他の生徒から心配の声と悲鳴が上がる。
「なっ!!」
「どうなってる?」
「急にバイクが!!」
しかし不良グループのバイクは、急に鉄の部分が液体のように溶けだし走行不可能となる。
「ちくしょう!!」
それでも金属バットを握り向かってくるが、それもドロドロと溶けだし使いものにはならない。
「ヘッド!! どうしますか?」
「くっ猛暑だとバイクも金属バットもダメになるのか……
知らなかったぜ!! お前ら逃げるぞ!!」
武器を失った不良グループたちは、そのまま一目散に逃げだした。
「翔矢、メタルの力を使ったな?」
「健吾先輩、バレました?」
「そりゃ能力の存在を知ってればな、猛暑の影響は無理があるだろ?」
「アハハ……」
後の始末は、少数の学校に出勤出来た教師達と生徒会が必死に行ったという。
***
この騒ぎを、上空から見下ろし観察する青く幼い少女がいた。
「あれが宮本翔矢か、あの程度の人間を何人操っても勝負にならないよねぇ。
せっかくだから楽しいゲームになるといいなぁ」
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