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210話:救済から任務が始まりそうです

 転生教との戦いでセブンスに敗れ行方不明となっていたリール。

 彼女は気が付くと、真っ白な部屋のベッドに横になっていた。

 起き上がると異常な脱力感と頭痛に襲われながら、セブンスとの戦いが脳裏を過る。



 「私……体に穴を開けられて……何もできなくて……

 それで……何で無事なの!?」



 脱力感を気合で跳ねのけ立ち上がると、体中の魔力が活性化しているのが分かった。



 「ここって異世界? いや……天界よね?」



 天界な事に間違いはないだろうが、この部屋に見覚えはない。

 状況が飲みこめず、ただだだウロウロしていると、振り向きざまに紫髪の女性が立っていた。

 その天使の名はアイリーン、十二神官の1人であり、ペネムエを“造りだした”張本人でもある。


 「うわっ!! いつの間に!?」


 「随分と早い回復ね、流石の魔力量といった所かしら。

 “何で無事なの!?”はコッチのセリフ。

 並みの天使なら即死しているわよ、リールさん」


 「あなたは……十二神官のアイリーン……様!?」


 「はじめまして、なのだけど流石に知られていたわね」



 アイリーンが指をパチンと鳴らすとテーブルと2つのイスが出現した。



 「どうぞ?」


 「……失礼します」



 警戒しながらリールはゆっくりと腰を下ろした。



 「ちょうどいい所で起きてくれたわ。

 中途半端に時間が空いてて、どうしようかと思ったのよ。

 聞きたいことがあれば、時間の許す限り答えるわ」


 「あなたが……私を助けてくれたんですか?」


 「えぇ、天使を救うのは十二神官として当然の事ですから」



 微笑みながら紅茶を飲むアイリーンをリールは警戒するように睨み付ける。



 「初対面なハズだけど、私は既に嫌われているみたいね。

 まぁ言いたいことは分かりますけど、天使としては人形と仲良くできるあなたの方が、よっぽど異質よ?」



 アイリーンの言葉にリールは怒り任せに魔力を開放した。

 テーブルはガタガタと震え、アイリーンの持っていたティーカップは粉々に割れてしまった。



 「あらあら、もったいないじゃない?」



 それを気にする様子もなく彼女は雑巾でテーブルを拭き始める。



 「私の前で……ペネムエを人形って呼ぶな!!」



 まだ気持ちの収まらないリールはテーブルの上に立ち手の平をアイリーンに向けた。



 「私を前にして臆する事無く、その態度。

 デタラメな魔力ゆえの自信? それともお馬鹿さんなだけかしら?

 私が十二神官と言うのを抜きにしても、命の恩人よ?」


 「どうせ死んでたって思えば諦めも付くわ!!」


 「命の恩人をそう捉えますか、まぁ私も頼みごとのある身。

 リールさんの前では、銀色とでも呼んでおく、それが妥協ラインね」


 

 リールにとっては飲みがたい条件ではあったが、自分の命を本気で捨てたい訳でもなく、渋々とイスに座った。



 「まぁ助けて頂いたので、話しを聞くくらいなら……」


 「助かるわ、私は今、大魔王ベルゼブと異世界マキシムについて調べているのよ」



 予想外の言葉にリールの体はピクリと反応してしまう。



 「体は正直ね、ノーマジカルの宮本翔矢という人間を殺してマキシムへ送る計画を女神アテナ様が立案した、という所までは調べが付いているわ」


 「調べが付いてる……ですか? 私のこの妙な頭痛……記憶を覗きましたよね?」


 「ごめんなさいね、でも必要な部分しか見ていないわよ?」


 「記憶の改変とか、してませんよね?」


 「どうだったかしら?」



 とぼけるようなアイリーンの顔をリールは再び睨み付ける。



 「冗談よ、怖い顔しないでちょうだい。

 それに記憶改変なら、本人が疑問を持った地点で解除されてしまうわ。

 そんなに万能じゃないのよ。」


 「……話を続けてください」


 「マキシムのゲートは現在封印されている。

 表向きの理由は、天界が介入しなかった場合の人間の動きを見守るため。

 時の流れが遅いマキシムが選ばれた。

 けど本当の理由は正義感に溢れた天使が大魔王ベルゼブの存在を知り無謀に挑まないようにって訳ね。

 まぁ大魔王ベルゼブは、存在自体が隠ぺいされているのだけど」


 「でも……マキシムは平和そのものだった」


 「えぇ、これはゼウ君から報告を受けているわ。

 マキシムには入れなくて確認は出来ないけど、間違いないでしょうね」


 「で私の記憶も盗み見たんですよね?」


 「さっきから目が怖いし人聞きが悪いわねぇ。

 察しの通りよ、あなたが宮本翔矢を殺して異世界転生をさせようとした実行犯。

 というのは覗かせてもらったわ」


 「その計画は今は止まっています……

 再開したとしても……私とペネムエが阻止します!!」


 「そうカッカしないでよ、その計画に対して私に怒っても仕方ないでしょ?」


 「うぅ……」



 過去の話で翔矢に許されたとはいえ、人間を殺すなどという計画を受け入れた自分が許される訳は無く、リールは返す言葉が見つからなかった。



 「マキシムが平和である以上は、この計画は再開する意味も可能性も無い。

 でも状況を考えて、2人の女神のどちらか、もしかしたら両方が何かを企んでいたのかもね?」


 「女神様を疑っているのですか!?」


 「まぁそれが天使としては普通の反応よね?

 派閥こそあれど、普通は疑うなんて概念すらない。

 気持ちは分かるけど、リールさんも真実は知りたいでしょう?」


 「……私に何をさせる気ですか?」


 「思ったより察しが良くて助かるわ。

 恐らくだけど、命がけの事態になるかもしれないから強制はしないけどね。

 ゼウ君と違って、女神に仕えているあなたの方が動きやすい事もあるはず」


 「まだ引き受けるとは言ってませんけどね」


 「警戒は大事よ? でも私は腐敗してる今の天界ではまともな方よ?」


 

 アイリーンがなにを言おうが信じない、リールの目は、そう訴えているようだった。



 「まともな人は自分をまともとは言わないって言うけど、じゃあ自分で訴える場合は何といえばいいのかしらね?

 あっ!! 日本には“怪しい者ではございません”って言葉があったわね!!」


 「……引き受けるつもりです、でも条件があります」


 「言ってみなさい」


 「もう……ペネムエを殺そうなんて考えないで下さい!!」


 「いいわよ?」


 「……えっ?」



 ここまであっさり受け入れられるとは思っていなかったのだろう。

 リールはかえって困惑した様子だった。



 「私の考えが正しければ、ベルゼブの件に銀色は大きく関係している。

 もちろん宮本翔矢を護る任務という意味でなくもっと根幹に関わるような。

 恐らくアレを殺してしまう“リスク”が相当大きいわ」


 「あのペネムエが何か隠しているとでも?」


 「いいえ、恐らく本人も想像できないような関与の仕方ね。

 銀色は存在としては忌まわしくても、任務は真面目にやるもの。

 まぁ元々が私の造った式神だものね」


 「最後の言葉は聞かなかった事にしてあげます。

 でも私が任務を引き受けるのはペネムエが大切な家族と暮らせるようにするため!!」


 「任務を引き受けてくれるなら何でもいいわよ?

 あとこれプレゼントしておくわ」


 

 アイリーンは小さな異空間から赤い剣を取り出した。



 「これは?」


 「“冥界剣閻魔”ある世界で発見されたんだけど力が大きすぎて、現地の人間が奪い合いの戦争を始めてね。

 天界で回収したのよ、危険な力だけど、リールさんの魔力なら制御できると思って。

 ノーマジカルは魔法が使えなくて戦いにくいでしょう?」


 「戦い……そうだ!! 転生教は!?」


 「今更ね、宮本翔矢が強大な力を手に入れて解決したわよ。

 一般人に犠牲は出てしまったけど、リールさんが名前を知っている人は無事ね」



 リールは一瞬だけ安堵したが犠牲者が出たという事で素直には喜べなかった。



 「誰のせいでもないわ、今回の犠牲者は自ら命を絶ったようなモノだもの……」


 「この閻魔という剣は頂いて行きます!!

 私は……大切な親友が、大切な人と過ごせる為に戦う!!」


 「それで結構、詳しい依頼は後で送るから、ノーマジカルに戻りなさい」



 リールは言われるまま足早に、この部屋を後にした。



 「銀色……もう人形って言って大丈夫ね?

 人間の10倍生きる天使が、個の人間を大切に思うのがどういう事か分かっているのかしら?」



 この時のアイリーンの表情を知るモノはいない。

 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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