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209話:脱出から監視が始まりそうです

 健吾はペネムエを抱え、シフィンの手を引っ張りながらも、何とか遺跡の扉を潜り、六香穂支部の地下へと戻って来た。

 青の破壊神アウスの影響は、ザ・ホールの外までは及ばないようだが、扉の隙間から、少しだけ光が漏れている。

 それも、10秒もしない内に、ボンヤリと薄くなり消えてしまった。



 「ふぅ……間一髪だったな」



 気が抜けた健吾は、扉に寄りかかり、一呼吸おいていた。

 しかしペネムエは、充血した目で健吾を睨みなが、彼の胸ぐらを掴んだ。



 「ちょい、ペネっち!!」


 「なんだい? 今回はセクハラはしてないぞ?」


 「どうして!? 翔矢様を止めなかったんですか!?」


 「止める必要が無いからなぁ」


 「それは……どういう意味でしょうか?」


 「心配なら行って見ろよ、光が収まったって事は、もう入って大丈夫じゃないか?」



 ペネムエは健吾を睨みながらも手を離し、再び遺跡の扉を開けた。

 その後にシフィンも続いたが、健吾は、この場から動かなかった。



 「まぁアウスってので人間が死ぬ訳はないんだよなぁ」



 健吾の呟きは、すでザ・ホール内部に突入した2人の耳には入らなかった。



 ***



 「翔矢様!! 翔矢様!!」


 「ちょい、ペネっち落ち着いて!!

 ザ・ホールの中に世界が広がってる事は、アウスの世界破壊は不発って事でしょ?」


 「落ち着くのはシフィン様の方です、辺りをご覧ください!!」


 「え? 見渡す限りの綺麗な原っぱ……あっ!!」


 「ここは森林が広がっていたエリア、付け加えると、ゴブリンなども生息しておりました。

 これだけ見渡しが良いにも関わらず見当たらないということは……」


 「ちょいちょい!! 考えすぎだって!!

 ザ・ホールっていうのが、他の場所に繋がっただけかもしれないじゃん?

 元々、何一つ理解できない空間だったし、翔矢っちなら、どっかに刺さってるって」


 「そう……ですね、翔矢様は絶対に無事です!!」



 ペネムエは目を服の袖で拭い、当てもなく進みだした。



 「ペネっちはさ改めて、このザ・ホールってなんだと思う?」


 「天使が魔法を使えない以上、ノーマジカルなのは間違いないでしょう。

 ですが衛星などの技術が発達している地球で観測できない場所はないはずです。

 とすれば……パラレルワールドと説明する他ありません」


 「パラレルワールド、女神アテナ様の“確定未来氏視のジレンマ”って奴かぁ」


 「天界でも、パラレルワールドを観測したという話は聞いたことはありません。

 ですが、存在するのは間違いないと言われておりますからね」


 「アウスなんて見ちゃったら、もう何があっても驚かないけどね」


 「今考えても答えは出ないでしょう。

 早く翔矢様を見つけ出さなければ」


 「だね!! 今日は探したり歩いたりしてばっかりだなぁ」



 青の破壊神アウスは、神と呼ばれてはいるが、神話の中では破壊兵器だ。

 ただただ強大な兵器に、世界は成す術がないという、単純な話。

 こんな神話が、何故さまざまな世界で広まっているのかは不明だった。

 その答えは“アウスが実在するから”なのかもしれない。



 「翔矢様!!」


 「え?」



 アウスのせいか視界をさえぎる物が無く、地平線が見える程、見渡しの良い草原。

 その端の方にボンヤリと見える人影のような何か。

 ペネムエは、それを見るなり迷うことなく全速力で進みだす。

 シフィンの目には、人なのか木なのかも分からない小さな点なので、ただただ驚くだけだった。



 「何でだろう……ペネっちが言うなら間違いなく翔矢っちなんだろうなって確信しちゃう……

 愛の力って奴なのかな? 天使の視力なんて個体差そんなに無いよね?」



 シフィンは呆れたような感心したような妙な感情になったが、翔矢が無事だったことに安心し、後を追う。

 しかし、地平線の端まで歩くとなれば、相当な距離がある上、翔矢は恐らく2人の存在に気が付いていないので、こちらが一方的に向かっている状態。

 中々距離が縮まらず、流石のペネムエも、だんだんと進むペースが落ちてきていた。



 「そうだ!! ペネっちぃ、通信用の魔法石で連絡したら?」


 「実は先ほどから試みてはいるのですが、調子が悪くて……」


 「まさかアウスの影響?」


 「否定はできません、明確には生物ではない魔物が見当たらない以上、道具も無効化される可能性はあります」


 「またアウス出て来たりしないよね?」


 「それは、対抗した翔矢様に、どうなったか聞いてみませんと……」



 ペースは落ちてしまったが、何とか止まることなく歩みを進めると、ようやくシフィンの目にも、遠くに見えるのは人間だと確信の持てる程に距離は縮まっていた。



 「翔矢っち!! こっちだー!! 気が付け!!」


 

 隣にいるペネムエがビックッとするほどの大声を出すシフィン。

 しかし、まだ距離はあるので人間の耳で気が付くのは厳しいかと思われたが、翔矢はこっちに向かって手を振り返しているように見える。



 「やったねペネっち!! こっちに気が付いたっぽい!!」


 「……そーですねぇ」


 「なに、その心のこもって無さすぎる返事は……私また何かやっちゃった?」


 「何でもねぇですよ」


 「絶対に何か気に触ったよね?」



 何故だか機嫌を損ねたペネムエは、そこから返事をすることなく、早歩きで翔矢の方へ向かう。

 今度は、お互いに、向かっているので、離れていた割には早く合流出来た。



 「翔矢様……ご無事で良かった……です」



 ペネムエは、かなり前から翔矢の無事を確認していたはずだ。

 それでも、その姿を目の前で見ると涙が止まらなくなり、気が付くと翔矢に抱き付いていた。



 「ゴメン……心配かけて」


 「せめて……あの瞬間、一緒にいたかったです」


 「アウスは魔力を吸うって話だったし、大魔王の力もあるし、俺なら大丈夫かなって……」



 言い訳をしながら、翔矢はペネムエの頭を撫でる事しか出来なかった。



 「あのぉ……話しに入って行きにくいんだけどさ……アウスはどうなったの?

 まさか破壊しちゃった?」


 「えっと俺にも分からないというか……気が付いたら消えてて、周りはこの通り見晴らしのいい草原に変わってたんすよ」


 「今更、このザ・ホールに付いて考えるのも答えは出ないかぁ」


 「翔矢様が無事だったので、一件落着と言う事に致しましょう」


 「天界にはウチから報告しとくよ、一応ペネっちと同じA級天使だし」


 「シフィン様、ありがとうございます」


 「いや、今回ウチ、騒いでばかりで役に立ってないしそれくらいわね」


 「では本当にアウスの影響を受けていないか翔矢様の健康診断も、お願いいたします」


 「それは、お安い御用!!」


 「あの触手の健康診断は嫌だよ?」


 「翔矢っち!! 世界を破壊する兵器に耐えたんだから触手くらい平気平気!!」


 「兵器を耐えただけに平気って、やかましいわ!!」


 「翔矢様……今のは、わたくしでも寒いです……」


 

 3人は、アウスにより変わり果ててしまった、ザ・ホールを進み、今度こそ元の世界に戻るのだった。



 

 ***




 北風エネルギーの謹慎中の科学者ドクターは、汚らしい部屋で、モニターを眺めていた。



 「健吾の奴!! 宮本翔矢から目を離すなと言ったのに!!

 まぁ謹慎前の僕の頼みなんて守る気は無いのかな?

 彼のスマホに仕込んだアプリで、だいたいの出来事は把握出来ているが……

 ザ・ホールに残った宮本翔矢が、何をするのか非常に気になる!!」 



 ドクターは、モニターまで数ミリという所まで顔を近づけ、健吾のスマホに記録されている音声や映像を巻き戻して確認している。



 「健吾の『アウスで人間が死ぬ訳ない』という言葉……何か知っているのは間違いないなぁ。

 蓮と違って何を考えているか分からないから聞き出すのは難しいか。

 まぁ私の頭脳なら、もう少し情報があれば解明は時間の問題だけどね!!」



 これ以上、巻き戻して確認しても、大した情報は得られないと判断したドクターはライブ映像に切り替える。

 そこにはドクターの想定通り、ザ・ホールから無傷で帰還する翔矢、ペネムエ、シフィンの姿があった。



 「ちなみに調査隊は定時前に、とっくに帰還。

 北風エネルギーはホワイト企業だからねぇ……

 まぁ誰が何を考えていようが僕には関係ないけど」



 ゴミか機材か部品か分からないモノが散乱する部屋に、真新しい1冊のラノベのような本だけが作業台の上に置かれている。



 「チートなんて大半は、何かからタダ同然で貰っただけの力。

 ……それらを解析し科学で作り出す僕こそが……チートオブチート!!」



 そのラノベを開き、ドクターは不気味に笑うのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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