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208話:吸い寄せから破壊兵器が始まりそうです

 翔矢たちの上空から迫りくる、惑星のように巨大な青い球体。

 あまりに巨大で、どれくらいの距離にあるのかも分からないが、目を凝らして見ると黒い点のような何かが大量に吸い込まれている。



 「何が起こってるんだ……」


 「あれは……ゴブリンや魔物が、吸い込まれているようで……キャッ」


 

 話しの途中で、ペネムエの体は、宙にフワッと浮いてしまった。

 遠くに黒い点のように見えるゴブリンと同じように、青い球体へ吸い寄せられているのだ。



 「ぺネちゃん!!」



 翔矢は、何とか両手を伸ばし、ペネムエの右手を掴み、彼女が引きずり込まれるのを喰いとめた。

 しかしペネムエの体は、尚も青い球体に吸い寄せられている。


 

 「健吾先輩!! 手を貸してください!!」


 「悪い……こっちもだ!!」



 健吾の方に目線を向けると、状況は同じで青い球体に吸い寄せられ宙に浮くシフィンの手を掴み、必死に食い止めていた。



 「これって……魔力を吸い寄せているのか?」


 「翔矢のベルゼブラスターとか、その他武器は無事みたいだけどな。

 それより、これ以上は体力が持たねぇぞ」


 「俺も……さっきの女の子が逃げたの見て、コネクトを解除しちゃったんで……」



 翔矢も健吾も、腕は限界を迎え、気力だけで握っている状態。

 いつ手を離してもおかしくはなかった。

 


 「翔矢様!! いつまでも、こうしている訳には行きません!!

 わたくしの手を離して下さい、健吾先輩様は何とか30秒ほど耐えて下さい」


 「わかった……信じるよ?」


 「俺も、本当にそれ以上持たないからな!!」



 翔矢は、そっとペネムエの手を離し、健吾はシフィンの手を残っている力の全てを出しきる気持ちで握り占める。

 ペネムエの体は、タンポポの綿毛のように宙に浮き、青い球体に、ゆっくりと吸い寄せられる。



 「思った通り……このペースで上昇であれば、アレに接触するまで、時間に余裕はあります!!」


 「ペネムエちゃん、俺の腕に余裕はないからな!!」


 「分かって……おります!!」



 ペネムエは魔法のポーチから、ブリューナクを取り出す。

 その矛先に、ありったけの冷気を集中させ、巨大な氷の球体を生み出した。

 今まで宙に浮いていたペネムエの体は、氷の球体の重みで、地上へと落下する。



 「思った通りです、重量を重くすれば、地上へ降りられます。

 あとは……こうです!!」


 

 ペネムエは、再び体が浮き上がってしまう前に、自分の足と地面を凍らせる事で、体を地上に固定した。


 

 「ぺネちゃん、大丈夫なの?」


 「体が上へ引っ張られている感覚はありますが、しばらくは持つかと思います」


 「いや……そうじゃなくて足……冷たいのは大丈夫そうだね」


 「ちょっと!! ペネっち!! ウチはどうすんの?」


 「もう限界……うわっ!!」



 ペネムエが地上に降りた事で安心したのも束の間。

 シフィンの体は、今までよりも強く引き寄せられ、手を握っていた健吾諸共、体が浮き上がってしまった。



 「大丈夫、遅れは取りましたが想定内です!!」



 ブリューナクを振るうと、巨人のような氷の腕が生み出される。

 氷の腕は、シフィンをガッシリ握り、そのまま地上に下ろした。

 ペネムエは、すかさず、シフィンの足を凍らせ地面に固定させる。



 「かなり冷たいでしょうが、辛抱してください」


 「ウチだって、そこまでワガママじゃないよ、ありがと」



 何とか状況がひと段落し、安心した所で何かがドサッと落ちる音がした。



 「さすがに、これは怒るぞ……?」



 シフィンと共に宙に浮いていた健吾は、青い球体に吸い寄せられる事無く、そのまま地面に落下したのだ。



 「健吾先輩様、申し訳ありません、状況が飲み込めず対応が間に合いませんでした」


 「セクハラっちは健康体だし、あの高さなら、頭から落ちなきゃ平気だよ。

 医者のウチが保障する!!」


 「普段の行いのせいで、罰が当たったんすかね?」



 健吾は体に異常を感じた訳ではないので、渋々と自力で起き上がる。



 「何? 俺を少しでも心配してくれるのはペネムエちゃんだけか?」


 「そんな事より、あの青いの何すかね? さっきより近くなってるような……」


 「そんな事って……北風エネルギーは、ここの調査を、そこそこ長い事やっている。

 が、あんなのが発生したって記録は見た事ないな」


 「でも、なんか見覚えがある青さなんすよね。

 もうちょっと離れてみれば分かる気がしなくもないっす」


 「翔矢もか? 俺もなんか見覚えがある。

 だが、あんなデカいの、知ってるならピンときそうだけどな」



 翔矢と健吾の会話を、ペネムエとシフィンは首を傾げながら聞いていた。



 「え? 2人とも何か知ってるの?

 ウチは、これが何なのか想像も付かないんだけど……」


 「俺と健吾先輩が見覚え合って天使が知らない謎現象ってなんだ?

 ぺネちゃんは、何か心当たりある?」


 「見覚え……あるのかないのかも断言できないモヤモヤがあります。

 ですが……天界学校の神話の抗議で、習ったモノに似ているのが1つ」


 「ウチ、神話なんて渋い抗議受けてないからなぁ」


 「恐らく……シフィン様も名前くらいは知っているかと。

 神話ですし、実在するとは思いませんでした。

 青い球体に生物の魔力は吸われ、最後には世界そのモノが消滅する……」


 「ちょいちょい、それは流石に……」



 シフィンは、いつものように軽いギャル口調で否定する。

 しかし顔は青ざめ、大量の冷や汗、体は動揺を隠しきれていない。



 「ちょっと、ペネちゃん、今世界の消滅って……」


 「えぇ、天界や多くの異世界に共通して存在する神話。

 【青の破壊神アウス】です」


 「おいおい、ペネムエちゃん。

 あの青いの、そんなにヤバいのか?」


 「あくまで神話ですが、アレがわたくしの知識に存在するモノであるならば、他に該当するモノはありません」


 「ちなみにペネちゃんは、天界の図書館の本の内容をほとんど記憶しているらしいです」


 「話聞く限り、十中八九正解じゃねぇか!!」


 「とにかく、元の世界に戻ろう!!

 本当にアウスなら、ウチらの力じゃ……生き物の力じゃ対応できないよ!!」



 シフィン、ペネムエ、健吾は六香穂支部の地下に続いている遺跡の扉の方に振り向く。

 しかし翔矢は、この場を動こうとはしなかった。



 「翔矢!! 急げ!! 今の話を聞いてなかったのか?」


 「健吾先輩……北風エネルギーの調査隊の人って全員東京に戻ってますかね?」 


 「あっ? 定時を少し回った所か……

 たぶん全員帰ってる思うが……」


 「たぶん……ですよね?」


 「オイ、何を考えてるんだ!?」


 「ペネちゃん、大魔王ベルゼブも、世界を簡単に滅ぼす力を持ってるんだよね?」


 「そうですが……まさか翔矢様!!」


 「俺が何とか止めてみるよ、さっきの女の子みたいに、他にも人がいるかもしれないし……」

 【コネクトリニティ】



 翔矢は3色のマントを纏い、さらにベルゼブラスターを構える。



 「転生教の時と違って、相手は人間じゃないし、最大出力を試せる!!

 大魔王2人分の力なら大丈夫……!!」



 ベルゼブラスターを銃の形に変えると、凄まじい速度で魔力が溜まっていく。



 「いくら何でも無茶です!! 逃げましょう!!」



 ペネムエは翔矢の手を両腕で引っ張り、何とか扉まで連れて行こうと説得をする。

 しかし、翔矢は応じる気配はない。



 「お願いします!! お願いですからやめて下さい!!」


 「……健吾先輩!! 2人をお願いします!!」


 「分かった、信じるぞ!!」



 健吾はペネムエを無理やり肩で担ぎながら走り、そのままシフィンの手も引っ張り、遺跡の扉へと向かう。

 ペネムエはジタバタと暴れて、翔矢を止めようとするが、体勢が悪いせいか、健吾の肩から降りることはできなかった。

 そのまま3人が、この世界から脱出したのを確認すると、翔矢は少し気が抜け笑みをこぼした。



 「世界を滅ぼす兵器アウスか……

 あんなデカいのが近づいてるってのに、全然怖くない……

 大魔王の力を2つも持ってるからかな?」



 心は静まったまま、翔矢はベルゼブラスターの窪みに赤メリをセットする。



 【トリニティ・ワールド・セットアップ】



 「あれを破壊……までは出来なくても、この世界との衝突くらいは防いで見せる!!」



 【トリニティ・ワールド・フィニッシュ】



 銃型のベルゼブラスターから、赤・青・銀の3色のエネルギー波が螺旋状に放たれる。

 エネルギー波は、アウスに衝突し続けて押し出そうとしている。

 しかしアウスがあまりに巨大で、この力が通用しているのか、人の目では分からない。



 「くっ……トリニティの全力でもダメなのか?」



 翔矢は、この世界と運命を共にする覚悟を決めてしまった。



 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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