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205話:尋問から再開が始まりそうです

 遺跡の扉を開けると、ペネムエの見立て通り、ゴミ屋敷と言うにふさわしい部屋に繋がっていた。

 誰がいつ、咳やクシャミをしても不思議でない衛生環境。

 しかし翔矢は、この状況が目に入らないほど頭が混乱していた。

 

 いま目の前にいるのは、剣道部の先輩の渡辺健吾。

 少し……イヤかなりスケベな所がキズだが、翔矢にとって気の良い、たまに頼りになる部活の先輩だ。



 「健吾先輩……なんでここに?」


 「ええっとだな……夏休みの自由研究で遺跡の調査をしていたら、たまたまここに……

 イヤー、フシギナコトガ、アルモンダナ」


 「セクハラ野郎……もう誤魔化すのは無理よ、白状しなさい」


 「……だな、立ち話もなんだから入れよ」


 「うわ……何ココ!? きたねぇ」


 「翔矢様、今更ですか?」


 「入っただけで、ウチ病気になりそう……

 肺にに効く薬なんてあったかな?」



 鈴と健吾の案内で、扉の中に入ると、テレビで紹介されるようなゴミ屋敷。

 靴下を履いていたら真っ黒に汚れていただろうが、遺跡から直通だったので、その流れで全員土足で足を踏み入れる。

 しかし、ペネムエだけは丁寧に靴を脱いで室内に入ろうしていた。


 

 「あっペネムエちゃん、ここは土足で大丈夫だぜ?」


 「ありがとうございます……アレ? 何故わたくしの名前を?」


 「これから白状する事だし、もう気が付いているだろうが、俺は北風エネルギーに協力している。

 君と翔矢の事を、ちょいちょい見張っていたのさ」


 「なるほど……以前一緒に野球をした時、妙な動きをしていたので、もしかしてと思っていましたが」


 

 ここまでの話を聞いた所で、翔矢は、その時のワンシーンを思い出した。



 「健吾先輩……まさかぺネちゃんが、俺に化けてたのに気が付いて……胸触ったんすか?」


 「あーいやーそれしか確かめる方法が思いつかず……」



 言い訳を探す健吾の目は泳ぎに泳いでいた。

 それ以上の言い訳を探すことは許されず、翔矢の鉄拳制裁が顔面に炸裂。

 健吾は痛みのあまり、地面をゴロゴロと転がっている。



 「翔矢様……先輩相手によろしいのですか?」


 「先輩だろうが神だろうが、悪い事は悪い事だからね」


 (嫉妬で手を出してしまった訳ではないのが残念です)



 ペネムエは心の声を押さえながら、一応健吾を気遣う仕草を見せた。



 「宮本翔矢、私は会うたびに、このセクハラ野郎に体を触られているわ。

 私の分もお願い出来るかしら?」


 「鈴さん、さっきも触られてましたねもんね!!」



 翔矢は腕をブンブン回し、やる気満々の様子。

 ペネムエは、被害を受けたのが自分だから怒った訳ではないのだと、少し複雑な気持ちになり下を向いている内に、再び鈍い音が聞こえた。

 迷うことなく、翔矢の鉄拳制裁が炸裂したようだ。



 「真にゴメンナサイ」



 両頬を腫らし地面に頭を擦り付ける健吾。

 しかし、翔矢は女性陣以上に冷ややかな目で彼を見ていた。



 「謝る相手が違いますよね?」


 「……ペネムエさん、鈴さん。

 真にゴメンナサイ」



 再び頭を地面にこすり付ける健吾。

 ペネムエはもちろんだが、鈴も流石にこれ以上責める気にはならなかった。

 ここで、健吾はようやく頭を上げる事を許された。



 「そういや健吾先輩は、気の良い先輩のフリして俺の事監視してたんですか?」



 翔矢は、またもや腕をブンブン振り回したので、健吾は冷や汗を流しながら後ずさりをする。



 「ちょい待て!! ちょい待て!! 殴るにしても後日改めてにしてくれ!!

 もう腫れる場所が残ってない!!」


 「翔矢様、さすがにストップです!!」


 「それに関しては北風エネルギーの責任だから!!」



 ペネムエは右腕を、鈴は左腕をガッチリ掴み、翔矢を押さえ宥める。



 「いや、冗談だよ?」


 「冗談に聞こえないわ!!」

 「冗談に聞こえませんでしたよ!!」

 「冗談に聞こえねぇよ」



 思わず声をそろえてしまった3人、ペネムエと鈴は、その相手が健吾だったので複雑そうにしている。



 「はぁ落ち込むぜ……」



 肩をガクッと落とした健吾が横目を向くと見慣れないギャル竹ぼうきで掃除をしている。

 健吾の記憶ではこの部屋は、いつも清掃員のおばちゃんが掃除していたはず。

 新入りは、こんなに若く可愛い子なのかと、女好きの彼の心は踊った。



 「お嬢さん、今度食事でもいかがですか?」



 健吾が掃除していたギャルの腰に手を回そうとした。

 あと数ミリで手が触れようかという瞬間、彼の体は宙を舞い地面に背中が付いていた。

 あまりに見事な動きに、翔矢、ペネムエ、鈴は拍手を送った。



 「シフィンさんすげぇ!!」


 「見事な背負い投げでございます!!」


 「私に教えて欲しい……」


 「あっ……掃除に夢中で咄嗟に……

 きみ大丈夫?」


 「あっ無視して大丈夫ですよ?」


 「え? 翔矢っち冷たくない?」



 掃除に夢中だった上に健吾と初対面だったシフィンは、彼のセクハラ癖を知らないのでキョトンとしている。

 その後、ようやく場が落ち着き、5人は会議用のテーブルを囲い話し合う事になった。


 

 「とりあえず話し合い出来るレベルには綺麗に掃除したよ!!」


 「シフィン様、さすがの女子力です」


 「ペネっちは、掃除苦手?」


 「苦手意識は無いのですが、部屋の掃除は翔矢様に止められているので、最近は機会がないのですよね」


 「あぁ……」


 「なるほどな」



 その理由をシフィンと健吾は察したようだった。



 「こんな可愛い子と暮らしてるなんて、翔矢羨ましいぜ」


 「そんなことより、ここって東京の北風エネルギーですよね?

 なんでゴミゴミした部屋が?」


 「あぁ、ここはドクターの研究室だからな。

 社内って言っても自由に使ってるから、この有様さ」


 「ドクターのおっさんは謹慎中なんでしたっけ?」


 「あぁ、転生教の件で色々と状況をややこしくしやがったからな」


 「健吾先輩が北風エネルギーに協力してたのは分かりますけど、なんでドクターのおっさんの部屋に?」


 「俺も転生教とは戦ってたんだが、フォースとかいう奴に負けちまってな……

 その時に武器を亡くしちまったんだ、んでドクターが新しいのは謹慎前に作ったって言ってたんでテストにな」



 健吾は小型の光線銃のようなモノを翔矢に見せた。

 鷹野の使っていたフュージョントリガーと似た形状だが、別物に見える。



 「健吾先輩、何やかんや剣道強いですし刀とかの方が様になったんじゃないっすか?

 蓮のおっさんとか日本刀の武器でしたけど」


 「先輩相手に何やかんやって……剣道はあくまでスポーツだからな。

 人間と戦うとも限らない環境じゃ多少得意だからって生かしきれん。

 あと兄貴と似たスタイルで戦うのは、何か嫌だ」


 「兄貴?」


 「言ってなかったか? 渡辺蓮は俺の兄貴だぜ?

 そういう縁でも無かったら、会社の手伝いなんてしてねぇよ」


 「えっ!? ってことは蓮のオッサンと兄弟!?」


 「健吾先輩様、失礼ながら血の繋がってるタイプの兄弟でしょうか!?

 それとも盃を交わしたタイプの兄弟でしょうか!?」



 翔矢とペネムエは、そろって目を丸くして健吾を問い詰める。



 「おい、何で俺が北風エネルギーの協力者って事実より興味湧いてるんだよ!!

 血の繋がってる、一般的な兄弟だよ!!」


 「仕方ないわ、セクハラ野郎と蓮……主任だと似ても似つかない」


 

 鈴の漏らした言葉に、翔矢とペネムエは、そろってウンウンと頷いた。



 「あぁ……確かにこの2人が兄妹って方が、まだ納得できるかもな」


 「それは私も思うけど……」



 ペネムエは、翔矢と兄妹よりも恋仲になりたいはずなので、この表現は良くないだろうと鈴は思った。

 しかし、当の本人をチラッと見ると満足そうな表情をしている。



 「そろそろ俺からも質問良いか?」


 「なんすか?」

 「何でしょうか?」



 翔矢とペネムエの反応は、又もや一致したが、今回は触れる事無く話を続けた。



 「最初から気にはなってたんだが、そいつ何?」


 健吾が指さしたのは拘束されたボロボロの男だった。

 その質問には鈴が答えた。


 「六香穂支部の鷹野よ」

 

 「え? あの鷹野さん!?」


 「そっか、六香穂支部の人なんで、うらぎ……協力者の健吾先輩と面識あるんすね」


 「さすがは翔矢様、セクハ……健吾先輩様は、頻繁に東京に出入りしてたとは限りませんものね」


 「2人とも……俺の事、相当根に持ってる?」



 健吾の、その質問には答える事無く、4人は遺跡の扉の中で起きた事を話した。



 「なるほど……ザ・ホールの本格的な調査は始まったばかりだからな。

 安全な地帯を調査しているとはいえ、レーザー吐く恐竜がいるとは……

 戦闘能力のない調査隊は、撤退させた方がいいかもな、兄貴に連絡しとくわ」


 「セクハラ野郎、頼んだわ、私は今日は休みだから仕事の連絡は出来ない」


 「鈴ちゃん、人にもの頼む態度じゃなくて草だぜ。

 俺が言ったことだし連絡はするけども……」



 健吾はすぐにスマホを取出しメールを打ち始めた。



 「おい、俺はいつまで、こうしてりゃいいんだ?」


 

 ここまで比較的おとなしくしていた鷹野だったが、縛られたまま放置という状況に耐えかねたのか、口を挟んできた。



 「兄貴は今、外回り中だからなぁ。

 処分を決めれる奴がいないんだよね」


 「日曜なのに珍しいわね」


 「……あれは何かをやらかした顔だったな」


 「あぁ……」



 鈴は、その一言で全てを納得したような表情をした。

 翔矢とペネムエは、蓮が戦闘センスは抜群だが仕事は出来ないとドクターに指摘されていたのを同時に思い出していた。

 


 「仕方ない、蓮が戻るまで、転生教と同じ牢屋に拘束しておくわ」


 

 このホコリだらけの部屋にいたくないのは、全員同じ意見だったのか、特に話し合った訳でもなく、全員が鈴に同行する。

 6人が乗ると、少し窮屈なエレベーターに乗り込み、鈴は地下三階のボタンを押した。

 ちなみに今いるのは地下一階だったようだ。



 「地下って、また遺跡じゃないですよね」


 「ちゃんと北風エネルギーの本社内よ」


 「地下に牢屋がある日本国内の会社とは?」


 「翔矢様、ガッツリ武器を開発してる会社に対し今更でございます」


 「まぁ一般社員にはもちろん極秘、地下がある事すら知らないわ。

 調査隊を含めても……30人くらいね」


 「前に百貨店で狼男と戦った時、能力のカプセルを回収してった奴らもいましたね」


 「彼らも、その調査隊よ、最低限の装備は支給してるけど、あくまで護身用。

 戦闘訓練する環境も無いから、自衛隊経験者を抜擢したわ」


 「百貨店かぁ、あの時、カプセルを回収したのは俺だ。

 虎谷と八田の治療の為に、志願したなぁ」


 

 百貨店での戦闘も夏休みの事で、対して日にちは経っていない。

 しかし最近は、色々な事が起こりすぎて、翔矢は遠い昔の事のように思い出していた。

 鷹野に具体的に何があったか知らないが、人格が別人のように変わってしまったので、彼には更に昔の事のように思えているのかもしれない。



 『キンコーン』



 目的の地下3階に到着し、ようやくエレベーターの扉が開いた。



 「なんか、やけに時間かかりましたね」


 「地下は一部しか知らないって言ったでしょう?

 おおっぴらに電気は通せなくて人口魔力を試験的に導入しているわ」


 「なるほど」


 「地下3階までの電力を賄えるほど人工魔力を製造していたとわ」



 ペネムエは興味心身に設備を見渡す。

 すると、ある人物と目が合った。



 「久しぶりね」


 「ここは牢屋を兼ねた施設……あなたがいるのは当然でしたね」



 そこにいたのは牢屋に囚われている、転生教教祖のゼロだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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