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204話:連行から観察が始まりそうです

 何とか翔矢は怒りを抑え、ペネムエ、鈴、シフィンと共に鷹野を頑丈なロープで拘束した。

 鷹野は、最初こそ抵抗したが、フュージョントリガーを翔矢に取り上げられると、それ以上の抵抗は見せず人が変わったように大人しくなった。


 

 「どう見ても光って鳴るタイプのオモチャだけどな」



 翔矢が上に試しに1発だけ放つと、光弾は数百メートルほど上空を飛び、そのまま消滅した。



 「俺をどうするつもりだ?」


 

 鷹野はギロリと翔矢達を睨み付ける。

 その質問には鈴が答えた。



 「転生教の一件で、我々北風エネルギーはウィザリアンよりも、魔法や能力を悪用し明確な危険のある案件の対応を優先する事にしたはず。

 罪を犯したと言え協力を約束してくれたシックスさんと、天使のワルパさんは対象外よ」


 「優先するってだけだろ? 渡辺蓮とかいう、そっちの主任だって、この世界のウィザリアンは、いずれゼロにするつもりらしいじゃねぇか」



 返す言葉が思い付かず、鈴は黙り込んでしまう。

 翔矢は、蓮の名字が自分の剣道部の先輩である健吾と同じ事が引っ掛かったが、渡辺とは珍しい苗字でもないので、深くは考えなかった。


 

 「いずれにしても、ドクターは転生教の事件、解決直後から謹慎中。

 新兵器の開発も、あなたに支持を出す権限もないわ。

 社内の規定により、罰則を受ける事になる」


 「とんだブラック企業だぜ、俺はダチが目を覚ますまで、立ち止まる訳にはいかねぇ」


 「魔力なら……これから集める機会なんていくらでもあるわ……たぶんね」


 

 鷹野は、それ以上口を開かなかった。

 足だけは自由にされ、両手は縛られた状態で連行される。


 

 「結構回り道をしたけど、とにかくドクターに事情を聴きに行くわ」


 「え? ドクターって東京にいるんじゃないの?」


 「まぁ着いて来なさい、最初に見せたいモノがあるって言ったでしょ?」


 

 だまって鈴に付いて行く事、約30分。

 と言っても、ここの地帯は鈴のスマホの地図には載っていない。

 遺跡の門をくぐり一番最初に来た森林のエリアまでは、方向を把握しているペネムエが案内した。


 

 「鈴さん、何とか最初の場所に戻れましたけど、当然まだ歩くんですよね?」


 「うん、コイツを連行しながらだと、あまり早くも歩けないし」


 「いてぇな!!」



 鈴は鷹野を拘束している縄をワザとらしく強く引っ張った。



 「いや……ウチは、もう体力の限界で今のペースでも厳しいんだけど……

 翔矢っち、おんぶして?」


 「いいですよ」


 

 翔矢は今は赤メリの力を何も使っていない状態。

 だが体力は十分に残っていたので、ファイターを発動すれば、シフィンをおぶって歩くくらいは朝飯前だった。

 しかし、この中にそれを許さない人物がいた。

 ペネムエが、とてつもない威圧感でシフィンを睨み付けたのだ。

 翔矢は気が付いていないが、シフィンはその視線を感じ鳥肌がたった。


 

 「あっやっぱり大丈夫!! 歩ける歩ける!!」


 「別に遠慮しなくていいですよ?」


 「本当に大丈夫だから!!」


 「無理しないでくださいね?」


 

 この後、シフィンは、体力の限界を超え、誰よりも必死に歩き続けた。

 そして、さらに1時間近く歩くと、入り口で見たのと同じような門が、ツルに覆われた状態で見えてきた。



 「これが鈴様の見せたかったモノでございますか?

 遺跡に入ってから、この空間に繋がっていた方が、よほど不思議なのですが」


 「はぁ……はぁ……ウチは、歩かなくていいなら、もう何でもいい……」



 ペネムエは遺跡の門をグルリと観察し、シフィンはその横で肩で息をして限界を迎えていた。



 「シフィンさん、ポーションで回復したって言っても、あれだけの火傷の後じゃ無理しない方が良かったんじゃ?」



 そんなシフィンを見かねて、翔矢は彼女の背中をさすろうとした。

 あと数ミリで、手が触れようかというタイミングで、シフィンは先ほどのペネムエの殺気を思い出し、体が思わず動いてしまい翔矢の手をパシッっと弾いてしまった。


 

 「あっゴメンナサイ……そういうつもりじゃ無かったんですが軽率でした……」


 「あっそうじゃない!! 別に嫌だから払った訳じゃなくて……!!」



 どこかへ歩いて行く翔矢を引き留めようとするが、疲労から、あまり大きな声が出せず手を伸ばすのが精いっぱい。

 その手も翔矢には届かず、ペネムエは遺跡の扉の観察に夢中で、鈴は早く遺跡の扉を開けたそうに彼女を待っている様子。

 2人とも、こちらには見向きもしなかった。

 無理矢理体に力を入れ、翔矢に追いつこうとしたが、今度はツルに足を取られつまずいて転んでしまう。



 「いてっ!!」


 「大丈夫ですか?」



 すぐに引き返して来た翔矢の伸ばした手を、今度はしっかりと握り立ち上がる。



 「翔矢っちありがと……」


 「ここまで来たら安全みたいですし、もう休んでた方が良いですよ?」


 「そうする……」



 シフィンは、そこにあった椅子にするのに丁度いい石に腰を下ろした。

 すると、ペネムエが小走りで、こちらに向かって来た。

 また翔矢と話していたことを嫉妬されたかと身構えるシフィン。

 その予想は外れペネムエの視線は、シフィンの座った石に向いていた。



 「ペネっち……どうした?」


 「少々気になる事が、座ったままで構いませんので、端によって頂けますか?」


 「ほい、これでいい?」



 先ほどのような殺気を感じない事に安心しながら、言われた通りに、お尻を端に寄せた。



 「ありがとうございます、では失礼して」


 

 ペネムエは、椅子のような石を手で、ホコリを払う様に摩り始めた。

 すると、灰色のホコリが、まるで煙幕のような勢いで舞い出したのだ。



 「ゲホッゲホッ……ちょい!! ウチこんな汚いのに座ってたの!?

 気が付いたなら、早く教えてよ!!」



 シフィンは咳き込みながらも立ち上がり、汚れているであろう自分のお尻を手で払いだした。



 「そこの遺跡の扉は、恐らく、わたくしたちの世界の何処かに繋がっているのでしょう。

 いえ、ここに遺跡はないので、遺跡のような扉と言っておくべきでしょうか?

 それも、あまり衛生的とは言えない場所の様ですね、森林にホコリなど、あるはずがないので。」



 ペネムエは手に付いたホコリをパンパンと払った。



 「ぺネちゃん、つまりどういう事?」


 「恐らく北風エネルギーは、この扉を何度も開けているのでしょう。

 扉を開けた際、外のホコリが吸い込まれ、この石に付着して固まってしまったのです。

 最初は、調査隊の方は六香穂支部から出入りしていたのかと思いましたが、違うようですね。

 恐らく、この扉は東京に繋がっています」


 「さすがぺネちゃん!!」



 翔矢からパチパチと拍手を送られながら褒められ、ペネムエはまんざらでもない様子。



 「でもさ、それって、たぶん鈴さんが教えてくれようとした事だとね?」


 「あっ……」



 ペネムエは気まずそうに鈴に視線を送る。

 鈴は、待ちくたびれてしまったのか、日陰でしゃがみ込みウトウトしている。



 「鈴様!! 申し訳ございません!!」


 「いいわ……気が済んだなら、もう扉開けていい?」


 「はい!!」



 翔矢、ペネムエ、シフィンが整列した所で、鈴は扉を押そうとした。

 だが、その手が触れる前に、扉は開いてしまい、鈴はバランスを崩し転んでしまった。

 扉を開けた人物は、鈴を抱きかかえ、どさくさに紛れ、尻を撫でてきた。

 



 「あれ!? 鈴ちゃん今日休みじゃなかった?」


 「……セクハラ野郎!!」



 鈴は、自分にこんな事をするのは1人しかいないと、相手の顔も見ず思いっきりゲンコツをかます。



 「いてぇ!!」



 たまらず鈴から離れ頭を抱えて、右往左往する男。

 翔矢にも見覚えのある人物だった。



 「健吾先輩!?」


 「……げっ翔矢!?」



 北風エネルギーと、自身の剣道部の先輩である健吾の関係を知らない翔矢は首を傾げるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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