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202話:衝突から限界が始まりそうです

 睨み合う鈴と鷹野、その均衡を破ったのは鈴だった。


 

 (視力を失っているなら、匂いや音、魔力を頼りにしているはず、それなら!!)



 けん玉型の武器、クラッシュダマーの玉の部分を小型に変化させ、弾丸のように飛ばす。

 この攻撃も、鷹野は紙一重でかわして見せる。



 「悪くない攻撃だが、ここに長く居たもんで、魔力も感じられるんだぜ」


 「えぇ、天使を倒したって言ってるんだから、これくらいは想定済みよ」



 すでに鈴は、鷹野をハンマーで捉える射程範囲まで接近していた。

 最大まで巨大化させたハンマーを、落下させるように勢い良く振り下ろす。



 「物騒な攻撃だねぇ、同じ会社勤務なんだから仲よくしようぜ?」


 

 鷹野はスーツの袖からレーザー銃のようなモノを取り出し、そのまま連射する。

 放たれた光弾は、巨大なハンマーに全弾命中し、そのまま後ろに倒れてしまった。



 「くっ……ドクター、いつの間に、こんな武器の開発を……」


 「俺も詳しくは知らんが、都立病院で俺が使った試作機の“チートリガー”

 それに加え転生教幹部ファーストが、ドクターのパソコンをハッキングして完成させた“フュージョンブレス”

 2つを合わせた新兵器らしい、名前は“フュージョントリガー”って所かな?」


 「新しい方が語呂が悪いわね」


 「はははは、ってかドクターは本社の人間だろ?

 何であんたは知らないんだ?」


 「ドクターは転生教の事件以来、謹慎処分だもの。

 その2つの武器を悪用された罰でね」


 「そういやそうだったな、ファーストってのにハッキングされたのは確かにドクターのミスだ。

 でも俺は試作機を勝手に持ち出して戦ったのはグミとかいうウィザリアンだけだぜ?

 その処分も入ってるってのはブラック企業だぜ」


 「ブラック……は否定出来ないけど、あの状況で転生教以外と戦うのは悪手だったわ。

 何で、ここにいるか分からないけど、あなたにも罰を受けてもらう!!」



 鈴は再びクラッシュダマーを構えた。


 

 「あはは、あんたとは戦う理由は無いと思って手加減してたんだがな。

 どうしてもってなら殺す気で……いや殺すぜ?」



 鷹野は2つの魔法石をポケットから取出し、フュージョントリガーにセットした。



 【イーグル×ケルベロス・フュージョン】



 引き金を引くとともに電子音が流れ漆黒の魔法陣が展開される。

 鷹野の姿は、鷹の翼の生えたケルベロスのような怪人に変化した。



 「転生教幹部ファーストの使用していたモノの強化版だもの。

 それくらいは出来ると思っていたわ」


 「宮本翔矢や銀髪天使が苦労し倒したファースト。

 その遥か上を行く俺に、あんたと、そこのギャル天使で勝てるとでも?」


 

 鷹野はシフィンの隠れている方を鋭く睨み付ける。

 恐らくフュージョントリガーを使用している今の状態は目が見えていると鈴は判断した。



 「まぁウチも天使だし、いくら弱いからって人間の陰に隠れるのは、気が引けてた所よ」



 シフィンは気丈に振る舞っているが、声も体も震えている。

 天使と言えど、いや実体のある魂であり転生すら不可能な天使だからこそ、死の恐怖を感じずにはいられないのだ。



 「無理しなくていいわ、戦えないなら足手まといよ」


 「ウチの攻撃は通用しないだろうけど、隙とか時間を作るくらいはできるって!!

 それに、あれ相手に逃げれる気がしないし」


 「好きにすれば? でも私の助けは期待しないでね。

 自分の身だって守れるか怪しいんだから」


 「オッケー!!」


 

 返事こそ軽いが、鈴はシフィンから確かな覚悟を感じた。



 「作戦会議でも終わったか?」



 油断したつもりも目を離したつもりもない。

 だが気が付いた時には鷹野は目の前で、鋭い爪を振り下ろそうとしていた。

 シフィンは驚くばかりで何も出来ない、しかし鈴はこの状況を予期していたようだった

 


 「えぇ、勝ち筋は薄いけど、十分掴みとれる範囲内よ」


 「がはっ!!」



 鷹野が爪を振り下ろすより早く、鈴はその背後からクラッシュダマーの玉を直撃させたのだ。

 その勢いで体制を崩している間に、2人は下がり距離を取った。



 「やるじゃねぇか」


 「それ程でもないわ。

 変身前のあなたなら回避できた攻撃だもの」


 「はぁ?」


 「気が付いてないのね、変身による肉体強化と視力の回復。

 本当はメリットばかりだけど、あなたの場合は、人間の状態の方が感覚を研ぎ澄ませていたのよ。

 強化による慢心と、視覚からの情報が増えた事、あなたにとって変身はプラスだけでなく大きなマイナスもある」


 「なるほどなぁ、親切に解説どうも」



 鷹野の姿は元の人間へと戻った。



 「使いこなせないと悟って人間に戻ったの?」


 「いやいや、こいつは燃費が最悪でな30分に10秒くらいしか使えないんだ。

 まぁ今の話を聞く限り、あんたにはこっちの方が相性良さそうだな!!」



 鷹野はフュージョントリガーの引き金を何度も引き、光弾を放つ。

 鈴は、クラッシュダマーの玉とハンマーを両方振るい、攻撃を捌くが、止むことなく放たれ続ける光弾の前に、体力も集中力も長くは持たなかった。

 


 「ぐっ……」



 一発の威力は小さいが確実に鈴に命中し始め、ダメージを与え続ける。



 「おっ? そろそろ限界か? じゃあちょっと強めに調整してと」



 フュージョントリガーの左のダイヤルを調整する数秒の間、攻撃の手は止まった。

 しかし鈴が体勢を立て直すにも息を整えるにも、十分な時間では無かった。



 「操作関係は目が見えないと、どうにもならんな。

 まぁ、たぶん合ってるだろ?」



 引き金が引かれると、先ほどよりも大きく速い光弾が放たれる。

 防ぐ手も回避する手も思い浮かばず、鈴は立ち尽くし迫る光弾に意識を取られた。


 

 【超高速】



 諦めたその時、鈴の体をシフィンが体当たりで押し出す。



 「え?」



 我に返ると、鈴に迫っていた巨大な光弾はシフィンに直撃していた。

 シフィンの体は焼き焦げ、その場に力なく倒れ込んでしまう。

 鈴は慌てて立ち上がり彼女の元に駆け寄った。



 「シフィン!! ……なんで? どうして?」

  

 「天使って、そういう生き物なのよ……

 理由……なんてないわ……ウチ足手まといにはならなかったでしょ?」


 

 シフィンは満足そうに微笑んでいる。

 鈴は声が出ず、その質問に何度も大きく頷く。



 「さっきのデカいオッサンは失敗して苦しませたからな。

 俺は同じ失敗はそうそうしないぜ?」



 非情にも鷹野は、2人の会話の声を頼りにフュージョントリガーを向けていた。



 「やめ……やめろぉぉぉぉぉ!!」



 感情任せに鈴はクラッシュダマーを握り鷹野に向かって行く。



 「なに勘違いしてるんだ? あんたも俺の獲物だぜ?」



 今までで一番巨大な光弾が鈴に向かっている。

 それでも、お構いなしに鈴は突き進み、巨大な光弾に力いっぱいハンマーを振り、弾き返そうとする。

 衝突した光弾とハンマーのエネルギーは均衡を保ち激しいエネルギーのぶつかり合いとなる。

 


 「ん? 爆発はしないが、魔力の嫌な匂いがプンプンする……

 良く分からんが、頑張ってるみたいだな」



 状況を匂いや音のみで感じ取っている鷹野が、どこまで理解しているかは定かではない。

 しかし自分の攻撃が止められているのは理解しているようだ。



 「私だって魔力は憎かった……でも違う!!

 魔力があったって無くたって関係ない……

 そこに悪い奴がいるだけよ!!」



 鈴は限界以上の力を入れ、ついに巨大な光弾を打ち返した。

 その攻撃は、真っ直ぐと鷹野に向かう。

 打ち返されるとは思っていなかったのだろう、鷹野に直撃し辺りに爆風が広がる。



 「はぁ……はぁ……ドクター、何でこんな奴に新兵器を……

 いや、あの人なら誰に何を渡しても不思議じゃなかったわ」



 全ての力を出し切った鈴は、その場に座り込む。

 立ち上がる事も出来ないが、自らの勝利を確信していた。

 すぐにでもシフィンの元に駆け寄りたいが、体が言う事を聞かない。

 満身創痍の鈴に絶望が振りかかる。


 

 「あぶねぇ……今のは死ぬかと思ったぜ」


 

 爆風で遮られていた視界が晴れると、そこには鷹野が立っていた。

 彼の服は元からボロボロだったので、恐らく今の攻撃は通っていない。



 「そんな……当たったはずなのに……」


 「悪いな、このスーツは特注で、それなりに魔力を弾くんだ。

 って、こんなボロくなってたら説得力ねぇか。

 物理攻撃には無意味なんで、恐竜どもにやられて、この様さ」


 「そんな装備が完成していたなんて……」


 「ゴムが電気を通さないみたいな感じで簡単に作れたらしいぜ?

 そうは言っても過信が出来るレベルじゃないんだけどな。

 って事で戦いで相手を苦しめるのは趣味じゃねぇ。

 ギャルウィザリアンと一緒に消えな」



 鷹野が感情を感じられない表情で引き金を引くと、再び巨大な光弾が放たれた。

 鈴には、再び弾き返す事はもちろん、立ち上がる体力すら残っていない。

 シフィンと共に、最後を迎える事を覚悟した。



 【コネクトリニティ】



 その時だった、音声と共に現れた、翔矢の纏うマントに光弾は防がれ消滅した。


 

 「ごめん……じゃ済まない状況だけど遅くなった」


 「本当に何してたのよ……」



 絶体絶命の状況で現れた翔矢の姿に、鈴は安堵し、いよいよ体に力が入らなくなった。

 後から駆け付けたペネムエが、その体を優しく抱きかかえる。


 

 「まさか翔矢様が、あんな事になっている間に、これほどまで状況が悪化しているとは」


 「これ俺が責められる流れか? 遅れた分はキッチリ働くから勘弁してよ」


 「2匹増えたか? 魔力の中でも、飛び切りドス黒いのを感じるぜ」


 

 翔矢と鷹野は、睨み合い硬直している。



 「鈴様!! 今すぐにポーションを出します」


 「私は平気よ、先にシフィンを!!」



 目の前の状況に夢中になり気が付かなかったが、離れた所には、体中が焼き焦げ重傷を負ったシフィンがいた。

 翔矢の表情が激しい怒りに染まる。



 「ぺネちゃん!! コイツは俺に任せて、2人をお願い!!」


 「かしこまりました、翔矢様も油断なされぬよう」


 

 ペネムエは、2人の戦いに巻き込まれぬよう、ブリューナクで氷のドームを張った。



 「即席では気休め以下でしょうが、今のうちに治療を」



 命に別状はない鈴を、少しでも安全そうな場所に移動させ、ペネムエはシフィンの元に向かう。

 その、わずかな間に翔矢と鷹野の攻撃がぶつかり合う、激しい爆音を背に受けるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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