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197話:砂漠からレーザーが始まりそうです

 6人が遺跡地下に広がる森林を歩き続けてから約30分。

 アークゴブリンとの戦闘以降は、何かに襲われる事もなく順調に歩みを進めていた。



 「鈴様、この森林をわたくし達に見せたかった、というのは察せるのですが、どこを目指しているのでしょう?」


 

 地下遺跡の現状を見せたかったのであれば、すでに魔物とも遭遇しているし、様子は十分に伝わっている。

 にも関わらず鈴はスマホで地図を見ながら、歩みを進めている。

 これは何処かを目指しているか、他に見せたいモノがあるかの二択だ。



 (しかし、この得体の知れない空間で地図とは……

 北風エネルギーは、いったいどれだけの期間、この遺跡で発掘を……)


 

 周囲の警戒に集中しているのか、鈴は目的地を答える事無く無言だった。

 しかし、数歩歩いた所で左腕を横に伸ばし全員を制止する。



 「鈴さん、また敵ですか?」


 「静かに……全員陰に隠れて」



 鈴の指示通り、出来るだけ物音を立てずに、茂みの中に身をひそめる。



 「ちょっと……なんで全員そろって同じ茂みに入るのよ……

 狭いでしょ!!」


 「いや……さっきまでの場所と違って、デカい木が見当たらなくて」


 「翔矢様に釣られてしまい……」


 「ウチは、またアークゴブリンとか出たら死ぬし!!

 強い人にくっついておかないと無理ポヨ」


 「鈴先輩の側を離れたら命は無いと思って……」


 「ワシは皆を護る責務を負っているでゴワス。

 離れる訳にはいかぬ」



 ワルパが口を開くと同時に、視線が一斉にそちらに向く。



 「ワシが何かしたでゴワスか?」


 「ちょい!! 狭いのワルパのおっさんせいじゃん!!

 ウチもペネっち鈴っちもスレンダーなのに妙だと思ったよ!!」


 「「スレンダー……」」



 ペネムエと鈴は狭い茂みの中で自らの胸を確認する。



 「ペネムエさん、鈴先輩、私と違って成長の余地あるから大丈夫よ」


 「シックス様!!」


 「シックスさん」


 

 ペネムエと鈴はシックスに尊敬と感謝の眼差しを向けた。



 「あのぉ……隠れてるのに騒いだら不味いのでは?」


 「「「「「あっ!!」」」」」


 「流石は翔矢様!! 冷静でございますね」


 「俺が言うのもアレだけど皆、気を抜きすぎでは?

 というか何から隠れてるの? ここじゃ前見えないんだけど」


 「北風エネルギーの調査部隊よ、日曜だから休みだと思ったんだけど……」


 「なぜ北風エネルギーから隠れなければならないのですか?」


 「今回、私は独断で動いたのよ……蓮にも内緒で」


 「え!? 鈴先輩お仕事じゃなかったんですか!?

 私、外に出て大丈夫なんですかね? 収監中の身なんですけどぉ」


 「言ってなかった? だって他に運転頼める人いなかったし」


 

 茂みに身を隠しているとはいえ、相当騒いでしまったが、北風エネルギーの調査団はこちらに気が付く気配がない。

 仕事に集中している事に加え、重機が動いているので、離れた人の声までは聞こえないのだろう。



 「いつもの道は使えないか……なぜか魔物が出ないエリアで楽なんだけど」



 鈴はスマホのマップを再び確認する。

 翔矢は、その画面を横からチラッと見たが、今通ろうとしているルート以外は真っ白だった。

 恐らく安全が確認できたルートしか地図に載ってないのだろう。



 「ペネムエ……ここにいる戦力で、太刀打ち出来ない魔物は異世界に存在する?」


 「それは、これからかなり危険なエリアに足を踏み入れるという意味でしょうか?」


 「それが分からないの」


 「なるほど未知数と、何が来ても対抗できる、とは言い切れません。

 しかし、そのレベルの危険であれば、事前に気が付く事は可能です」


 「なら大丈夫そうね」


 「ちょい待ち!! よわっちいの差し置いて、危険なエリア行く相談しないで」


 「鈴先輩、死刑ならハッキリ宣告してください!!」


 

 戦う力を持たないシフィンとシックスは大泣きしながら2人にしがみついている。


 

 「わたくしも、目的も分からず危険地帯を進むのは賛成しかねます。

 鈴様、何を目指しているのか話して頂けますか?

 しかも、今回は独断での行動なのですよね?」


 「……分かったわ、でも目で見ないと伝わらない部分は大きい。

 北風エネルギーが何故、魔力を持つ生命体全てを敵視しているのか、それが分かるモノを見せたい。

 転生教の事件で……いいえ、その前からペネムエ自信が危険じゃないなんて分かってる。

 それでも、君たちを排除するべきと上は考えているわ。

 だから調査隊からも隠れなきゃいけない」


 「上は、という事は鈴様自身は?」


 「少なくとも理由も告げずに敵対するのはダメだと思っているわ」


 「鈴さんの上って事は、蓮のおっさんは、考え変わってないのか?」


 

 その問いに、鈴は静かにうなずいた。


 

 「力を貸してくれた事には感謝していた。

 だけど……魔法が現実世界に広まる脅威も実感したと言っていたわ」


 「ぺネちゃん達が居なかったら、今頃東京がどうなってたか分からないのに……

 頭の固いおっさんだ!! 乗り込んで文句言ってやる!!」


 「魔力を持つ生命体の善悪や真意に関わらず、わたくし達がこの世界にいる以上、魔力が人目に触れる可能性がある。

 それこそが、この世界の脅威であると考えているのでしょう」


 「ごめんなさい」


 

 鈴は、その一言と共にシュンとしてしまう。



 「でもさ、魔法が本当にありますよ!! って知ったからって何が起こるんだ?

 転生教みたいに、誰かから力を貰うとかしないと、結局何も変わらないよ?

 テレビのUFOとか宇宙人いますよ!! っての信じてる人も多いだろうけど、別に何も起こってないし」


 「でも今回は、流星雨で死を選ぶ一般人が現れた。

 その結果を蓮は重く受け止めている」



 ペネムエは頭が上がらなくなってしまう。

 確かに天使がノーマジカルに来なければ、この犠牲は生まれなかったかもしれない。



 「どんだけ頭硬いんだ、あのおっさん!!

 車は交通事故の危険があるので排除しましょう、とか言っちゃうタイプか?

 ……ぺネちゃん? なんで、さっきから俺の手を握ってるの?」


 「翔矢様は、いつも、わたくしの気を楽にして下さるので……」


 「思った事を言ってるだけだけどね」


 「だから嬉しいのです!!」


 「という訳で、回り道をするわ。

 このルートは、調査の為に飛ばしたドローンが行方不明になっている。

 まぁドローンの墜落なんて珍しくないから、気を引き締めていきましょう」


 

 全員納得しているとは言い難い状況だが、話しは危険かもしれないルートを通る事で一致してしまう。

 北風エネルギーの調査隊が、いなくなる気配は無いので、進むとなると他に道はない。

 調査隊を左から大きく周るように遠回りをして先に進む事になった。



 「森の外側が砂漠とは、奇怪な場所でございますね」


 「砂漠になった途端に、この日差し、どう考えても室内でなく外でゴワスな」



 森の中は背の高い木々の陰で、そこまで熱さは感じられない。

 しかし、この砂漠は、夏の東京に負けないくらいの熱さだ。



 「おっ!! 見て見て翔矢っち!! 日本じゃ中々見れないんじゃない?」


 「何かあったんですか? デカいゴブリンいたんで、何見ても驚きませんけど」


 

 そう返した翔矢だが、シフィンが手に持っているモノを見た途端に、顔を真っ青にしてペネムエの後ろに隠れる。


 

 「翔矢様? らしくもなく怯えて、いったい何が……

 あぁ、なるほど、サソリでございますね、なかなかの大きさと立派なハサミです」


 「翔矢っち? サソリの毒くらいなら怖がらなくても、ウチの持って来た薬で何とかなるから!!

 ってか持ち方とか気を付ければ、刺されないし平気平気!!」



 シフィンはサソリの持った手を容赦なく伸ばす。

 だが翔矢は、見ようともせずペネムエの後ろに隠れたままだ。



 「シフィン様、勘弁してあげてください。

 翔矢様は虫が大の苦手なのです」


 「え? マジ? 翔矢っち可愛すぎるんだけど!!」


 

 シフィンはサソリをソッと砂の中に逃がすと、翔矢の頬を指でツンツンと突いた。

 その手を、ペネムエが強く掴み、翔矢から離した。


 

 「そういうのは……ダメです!!」


 「あはは……ペネっち目が怖いよ……」


 「うん、ペネちゃん、ありがとう。

 虫触った手で触られるのも、正直辛かった」


 「翔矢っち……今までよく田舎で暮らしてたね……

 じゃなくて本当にゴメン」


 

 シフィンは深々と頭を下げたので、これ以上は誰も攻める事ができなかった。



 (しかしサソリですか……魔力が全く感じられない。

 つまりゴブリンなど異世界の魔物と、ノーマジカルの生き物が同じ場所で生きていると)


 

 「そこの3人、暑い中元気なのは凄いけど、気を抜かないで」


 「鈴殿の言う通り、危険な可能性の高いエリアと説明を受けたばかりでゴワス」


 「鈴先輩、この人たち何かあったら本当に頼りになるんですかぁ?」



 シックスは自分より背の低い鈴の足に、しゃがみながらしがらしがみつき離れようとしない。



 「さっきの宮本翔矢の戦いは、シックスさんも見たでしょう?

 それに、こんな見通しの良い砂漠、何かあったらすぐに分かるわ」


 「森と違って不意打ちを受ける危険はありませんからね。

 遠くにプテラ、トリケラ、ティラノが見えますが、この距離なら安全です」


 「ん? ペネちゃん、今なんて?」


 「ですから、プテラ、トリケラ、ティラノが……あれ?」


 「「「「「「恐竜!?」」」」」」



 全員が声をそろえ驚いたのも束の間。

 3匹の恐竜の内のティラノが大きく息を吸っている。



 「あれ、口から火を吐いたりしない?」


 「恐竜は火を吐かないかと思います」


 「私も恐竜は初めて見たわ、でも恐竜は火は吐かない」


 「ウチもそう思う」


 「ワシも同じ意見でゴワス」


 「火を吐くのは……恐竜じゃなくて怪獣」


 「みんなの火を吐かないという絶対の自信は何!?

 そして何故アークゴブリンの時より冷静なの?」


 

 異世界以上に現実味を感じない光景。

 そのせいか誰も恐怖や焦りはなかった。

 だが、それも束の間、ティラノの口から何かが発射された。



 「おい!! レーザー出したぞ!!」


 「やはり火は吐きませんでしたね」


 「ペネムエ……言ってる場合じゃないわ!!」



 6人に向かって発射されたレーザーは砂漠の砂を吹き飛ばす爆発を起こすのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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