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189話:再会から新たな力が始まりそうです

 ペネムエはクラーケンとカラスの怪人と化したファーストと戦っていた。

 ブリューナクの冷気が通用しない上に、敵は飛行能力に高速移動、更に爆破の能力まで持っている。

 それに加え、身体能力にも圧倒的な差があり、ペネムエは劣勢。

 いや敗北寸前の状態だった。



 「素晴らしい!! この力があれば、異世界転生などしなくても、この世界を支配する事が出来ます」


 「はぁ……はぁ……世界を支配なんて今時、特撮でも流行りませんよ!!」


 「ここまでやって生きているとは、流石は人外ですね」



 触手のような脚がペネムエの両腕に巻き付く。

 腕の関節とは逆方向に力が加えられ、ミシミシと音が鳴り、いつ折れてもおかしくない。

 その痛みに耐えかね、ペネムエはブリューナクから手を離してしまった。


 

 「ぐっ」


 「それさえ無ければ、あなたに対抗策は無いでしょう。



 ファーストのウネウネとした脚からは冷気が発せられ、ペネムエの体はゆっくりと凍らされていく。


 

 「まさか、このわたくしが寒さに凍えるなんて……

 察してはいましたが、相手の能力をコピーもできるのですね。

 錬度は、まだまだですが、強力な能力です。

 怪物から怪人の姿になったのはグミ様の力のコピーでしょうか」


 「分析が好きなようですね。

 確かに初めての力に慣れない体、元の使用者には、及ばないでしょう。

 しかし、これはどうでしょう?」



 ファーストは拘束していたペネムエを、ゴミのように投げ捨てた。

 その体が、地面に触れた瞬間、地雷のような爆発が発生する。

 何度も爆発音を鳴らしながら、ペネムエはトランポリンに乗っているように、意思とは関係なく体が宙に浮く。


 

 「ゼロからコピーした触れた物を爆弾に変える能力。

 これは、私自身の“能力をコピーする能力”の対象。

 あいつのより効くでしょう?」


 「今は力ずくで触れてしまいましたが、わたくしには設置場所が見えています!!」



 ペネムエは爆発の勢いで宙に浮いたまま、マジックラウドに飛び乗った。

 そのまま、高速で低空飛行しブリューナクを拾い上げ、自身の体の凍結を解除した。



 「戦慣れとは、こういう事を言うのですね。

 見事ですが、あれだけの爆発を受けて、体が無事な訳は無いでしょう?」



 ファーストの10本の脚が一斉に襲い掛かる。

 ペネムエは何とか攻撃を見切って回避しながら飛行する。

 


 (勝てない……それは仕方がない事です。

 今は少しでも時間を稼ぎ、病院の方々が多く避難できるようにしなければ……)


 

 ファーストは、恐らくゼロと始の命を奪ったつもりでいる。

 強くなったが故の油断、彼はペネムエを倒した後で、ゆっくり死体の確認をするつもりなのだ。

 目的を達成した気でいるファーストに、もはや決着を急ぐ理由はない。


 しかし、決着が永遠に着かない訳では無い。

 ファーストの脚がマジックラウドを引きちぎり、ペネムエは3階ほどの高さから落下する。



 (ここまで……ですか……)



 全てを諦め、もはやトドメを刺されるのを待つだけのペネムエ。

 その体は、いきなり何かに抱きかかえられ、自然と安心感が心を満たした。



 「……翔矢様!!」


 「お待たせ、ぺネちゃん」



 翔矢は少し気まずそうな表情を見せながら、綿毛のように、ゆっくりと着地した。

 ペネムエの目頭は熱くなり、こみ上げるモノが押さえきれない。



 「ごっゴメン、その怪我……痛いよね……」


 

 ペネムエは首を横に振る。



 「今……“ペネちゃん”って」


 「うん、『ごめんなさい』『ありがとう』

 いっぱい言わなきゃいけないんだけど、今はアイツを倒さないとね」



 ペネムエをお姫様のように抱きかかえたまま、翔矢はファーストを睨み付ける。


 

 「貴様、ゼロとやり合った人間だな?」


 「そういうアンタは……人間ってカテゴリーでいいのか?」


 「えぇ、しかし、この力で世界を支配しようと考えは変わっているので……

 いずれは神でも名乗りますかね」


 「イカに支配されるのは、人間の尊厳的にアレだな。

 ペンキ塗るゲームにでも参加してろ」



 翔矢の挑発にファーストは動じない。

 いつでも殺せる相手に興味はないと言っているようだ。


 

 「翔矢様!! あやつの力は本物です。

 舐めてかかっては……」


 「ぺネちゃんが苦戦してるんだもん、強いのは分かってる。

 でも、俺だってタダで帰って来た訳じゃないから!!

 ぺネちゃん1人で立てる?」



 ペネムエがコクリと頷いたのを確認して、翔矢は彼女を優しく下ろした。



 「じゃあ悪いけど待ってて」



 翔矢は赤メリを右手に装着し、その拳を左手に当てる。



 「3つの世界、その力、この世界を守る為に貸してくれ!!」

 【コネクトリニティ】


 

 翔矢の頭上には、ファイター・アクセル・メタル。

 3つの世界が映る魔法陣が同時に展開される。

 それらが合わさると、赤・青・銀の三色からなるマントが出現し翔矢の身を包む。

 風でマントがフワリと広がると、服装も、その3色からなる見慣れないモノに変わっていた。



 「うわっ!! 何この服!? マント? ダサッ!!

 戦いが終わったら、元に戻るよな!?」


 「わたくしはカッコいいと思います!!

 翔矢様なら、どんな服装でも……」



 ペネムエは、その姿に痛みを忘れるほど見とれてしまった。

 最後の一言だけは、翔矢に聞こえないように必死に声を殺している。



 「締まらない人ですね、戦いの後の事なら心配する必要はありません。

 責任を持って殺してあげますから!!」


 

 10本もの脚が一斉にムチのように翔矢に襲いかかる。

 その衝撃で砂埃が舞い、地面にはクレーターが発生していた。

 しかし、そこに翔矢の姿は見当たらない。



 「消えた?」



 ファーストは、神経を集中しながら辺りを見渡すが、翔矢の姿は見当たらない。



 「上だぞ」


 「なっ……」



 その声に反応し、上空を見上げると、翔矢の右手に金属が集まり、まるで合体メカの拳のような形に変化していくと、凄まじい速度で落下しながら、ファーストに向かって来る。



 「わざわざ攻撃のタイミングを教えるとは舐められたものです」



 一瞬だけ驚いた表情を見せたファーストだったが、すぐに10本の脚を網のように絡めて防御の体勢に入った。



 「くらえ!! えっと、メタル落下パンチ!!」



 上空からの重さの乗った強烈な一撃。

 しかし、ファーストの網に阻まれ、バウンドしてしまい攻撃は届かなかった。



 「くっそ……イケたと思ったんだけどな」


 「はぁはぁ……そんなダサい名前の技に負けては、末代までの恥ですよ」


 「叫びたくなる何かがあったんだけど、咄嗟に思いついた技名って、こんなもんだろ」



 2人は穏やかに話しているだけに見えるが、その瞳には闘志が感じられる。



 「はっ!!」


 「受けて立ちましょう!!」


 

 今度は、拳と拳が、常人には視認不可能な速度でぶつかり合う。

 ファーストは10本の脚で殴りかかって来ているが、翔矢は腕2本で渡り合っていた。

 速度は上がる一方で、ペネムエの目ですら追えなくなっていた。



 「ファイターの武術、アクセルの速度、メタルの金属操作。

 “コネクトリニティ”という名称で予測はしていましたが3つの力を合わせ、単体の時以上の性能を発揮している……」



 2人の戦いを前に、ペネムエは参戦しようという気は起きなかった。

 自分が行っても足手まといになるからか、翔矢の勝利を信じているからかは分からない。



 「まるで、ぺネちゃんの超高速の腕輪みたいだな……」


 

 拳をぶつけ合いながら漏れた翔矢の言葉。

 それを聞き逃さなかったファーストは何かを思い出し、不敵な笑みを浮かべる。



 「そうでした、何も殴り合いが得意そうなあなたに、付き合う必要は無いのでした」


 「ひゃけ!!」



 拳に異常な冷気を感じ、翔矢は思わず後ろに跳び距離を取った。

 恐る恐る手を確認すると、両腕は凍ってしまっていた。



 「翔矢様!! こちらに!!」


 「ぺネちゃん!! これって……」


 「えぇ、あの者は、相手の魔法をコピーする能力を手に入れたようです」


 「今のはやっぱりブリューナクの冷気だったか……」



 ペネムエはブリューナクを振って翔矢の凍結を解除する。



 「厄介だけど、ぺネちゃんがいるなら大丈夫か」


 「リスポーン地点になった気分ですね。

 しかし、厄介なのは、これだけでなく……」



 これ以上、話しはさせまいと言わんばかりに大量の瓦礫が飛んできた。

 翔矢は、マントを大きく広げ、全ていなして見せたが、瓦礫1つ1つが次々に爆発する。

 衝撃は強いがコネクトリニティとなった翔矢を傷つける程ではなく、マントの壁の中にいるペネムエも無傷だ。



 「これってゼロの爆破か」


 「はい、しかも彼自身の能力を強化する能力が有効なようです」


 「まぁゼロが厄介だったのは、スライムみたいな体だったのもデカいからなぁ」



 スカイタワーでのゼロとの戦いを思い出し、シミジミと干渉に浸る余裕が翔矢にはあった。



 「馬鹿にするなよ!! ゼロの細胞ごとき、今の私に及ぶはずがない!!」


 「それは、お前の体が動けばの話な」


 「なっ……」



 攻撃を仕掛けようとしたファースト、しかし10本の脚はピクリとも動かない。

 下を向くと全ての脚の先が液体金属がへばり付き拘束されていた。



 「貴様!! 貴様!! 貴様!!」



 怒り任せに体に力を込めると、ブチッという鈍い音と共に、10本の脚は引きちぎられ緑の液体はあふれ出るが、図らずも拘束は解除される。



 「その度胸があれば、テロリストにならなくても、異世界目指さなくても、十分やっていけたと思うけどな」


 「舐めるなよぉ!! 脚などいくらでも再生させられる!!」



 その言葉の通り、ファーストな脚は少しずつウニョウニョと伸びてきていた。



 「キリが無さそうだな……中身は普通の人間だけど、キッチリ倒すしかないのか……」


 『宮本翔矢、魔力には魔力をぶつけるんだ。

 この世界の人間は、本来は魔力を持たないのだろう?

 奴の姿を変えている核のような部分があるはず、そこに魔力をぶつければ分離が可能なはずだぜ』


 「ファイターのおっさんか?

 魔力の核に魔力ぶつけろって言われても……核とか分からないし。

 鉄を操ってズバッじゃダメなんだよな?」


 「翔矢様、独り言でございますか?」


 「えっ? ぺネちゃんに聞こえてないの?」


 「そういった話をしている場合では、なさそうですね。

 魔力の核なら、わたくしは見る事ができます。

 しかし魔力を当てて破壊するだけの放出は、ノーマジカルでのわたくしには不可能です」


 「えっと、今の俺には魔力があるんだよね?」


 「もちろんです、赤メリから供給されているようです。

 ファイターの時にオーラを操作して、拳に込めておりますよね?

 その容量で可能なはずです」


 「あれ、結局物理攻撃みたいなもんだしな……」



 コネクトリニティの力は強大だ。

 もし、失敗すればファーストは、どうなってしまうのか。

 最悪の事態が翔矢の脳裏に過る。



 「翔矢様!!」


 「ペッぺネちゃん!?」



 ペネムエは翔矢の左をギュッと両手で握った。



 「大丈夫ですよ!! 翔矢様ならできます!!

 でも……少しでも不安なのでしたら、気休めでも……えっと……」


 「ありがとう、うん、あいつを放っといても被害は出るだけだ。

 俺にしか出来ないなら、俺がやらなきゃいけないんだ!!」


 「核は左肩にあります」


 「分かった!! ……いや分からない!!

 あいつの左肩ってどこだ?」



 ファーストは人型とはいえ怪人になっている。

 それも10本の脚の引き千切れた痕が紛らわしく場所が分かりずらい。

 こうしている間にも、再生は半分以上終わっているようだ。



 「左肩が直線に来たタイミングで、わたくしが合図いたします。

 翔矢様は、それまで正面から視線を逸らさないよう注意してください」


 「分かった」


 

 ペネムエは、右手で翔矢の左手を握ったまま、ファーストの動きを見定める。

 その間に翔矢は、右手の赤メリに魔力を集中させる。



 「なにをゴチャゴチャと!! 今に見てろ!!

 この再生力と無限に等しい体力があれば最後に勝つのは俺だ!!」

 


 怒りで理性を失い、再生しきっていない10本の脚を鞭のように無作為に振り回すファースト。

 その脚は病院に向かい、窓に直撃しそうになる。



 「ヤバ……」



 思わず視線をファーストから逸らしそうになった翔矢だったが、ペネムエの言葉を思い出し、踏みとどまった。

 その攻撃からは、ペネムエが氷の壁を造り、病院を護る。



 「翔矢様、攻撃はわたくしが防いで見せます。

 なので、どうかそのままで」



 こう話している間にも、何度も攻撃は病院に向かっていったが、言葉通りペネムエは防ぎきっている。

 翔矢も、その頑張りに応え、ファーストをジッと眺める。

 その状況が何秒か続いた時だった。

 10本の脚の内の1本が完全に再生し、そのまま翔矢とペネムエの方に向かって来た。



 「これは……助かりますが引きの悪い方です、翔矢様!!」


 「おう!! 俺にも何かボヤっとだけど見えるぜ!!」

 【トリニティ・オーラ・バースト】



 赤・青・銀の三色のオーラが螺旋状に混じり合い、ファーストの核を砕いた。

 その姿は怪人から元の人間へと戻り、そのまま膝を着く。



 「ぺネちゃん!!」


 「お見事です!! 相手の肉体を傷付ける事無く、核を破壊できました!!」


 「っしゃぁ!!」



 2人はハイタッチをし、勝利を喜び合うのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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