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1話:登校から事故が始まりそうです

 ジリジリジリ


 ここは日本の田舎町の一軒家の一室。部屋に間覚まし時計の音が鳴り響く


 「んーーーーーー朝か。」


 高校2年、宮本翔矢は寝起きの目をこすりながら起床する


 「休み中に、こいつを一気見したせいか痛い夢を見てしまった」


 翔矢の机の上には『異世界転生大戦』というタイトルのアニメのBlu-rayが置かれている。去年の冬くらいに流行ったアニメで事故死してしまい異世界に送られた主人公が、世界を征服した魔王を倒す為に冒険するという話だ。


 「確かに面白かったが、アニメ最終回の先っぽい場面を夢で見るとかどんだけハマってしまったんだ俺は……」


 翔矢は頭を抱え落胆する。というのも翔矢はオタクではないのだ(自称)。部屋にフィギュアもラノベもない。大ヒットシリーズのゲームを少々持っている程度だ。

 『異世界転生大戦』のBlu-rayは、クラスメイトの大久保卓夫から借りたものだ。うっかり卓夫のスマホ待ち受けのヒロインキャラを可愛いと言ったらすごい勢いで布教された。見ないで返すのも悪いと思い少しだけ見るつもりが土日でワンクール分、すべて見てしまった。



 翔矢は学校へ行く支度をして一回のリビングへと下りる。


 「おはよう。父さん。あれ???もう仕事行くの?」


 「あぁ取引先に行く用事ができてな。今日は早めに出る。帰りも遅くなる」


 「俺が朝食当番の時に早く出発するときは、前の日に言えって何回も言ってるだろ」


 翔矢は不機嫌そうに父に迫る。小学5の時に母は病気で他界しており現在は父と2人暮らし。家事は当番制にしているのだが、工場を経営している父は多忙で家に帰ってこない日も少なくなく、今ではほとんど翔矢が家事担当になっている。


 「すまない。しかし仕事とはいえ、あくまで私の都合だから不規則な時は私の朝食まで気にするな、行ってくる」


 「って言われても気にしちまうんだよなー。いってらっしゃい」


 父を見送った後、翔矢は自分の朝食を済ませ学校へ向かう。






 *****






 「翔矢どのーーーーー。お貸しした聖書は見ていただけましたかな?」


 登校中、オタクのお手本のような男が翔矢に話しかける。彼こそが自他ともに認めるオタクの大久保卓夫である。


 「見たよ。借りたの本じゃなくてブルーレイだし、ましてや聖書じゃないが確かに面白かった。俺が知ってるアニメじゃないような展開で驚いた」


 「我々の業界では展開自体は王道なのでござるが、万人受けするような生ぬるい作品しか見ていない翔矢殿には新鮮でござったかー」


 「なんか言い方に引っかかるところはあるが、反論はない。アーベルが最後負けるとは思わなっかったがな」


 「アーベル? 負ける? そんなキャラも展開もないでござるよ?」


「あっいや、すまないこっちの話だ」


 翔矢の見た夢は卓夫に借りた異世界転生大戦とは内容が少し異なるものだったが、うっかり夢のほうの内容を話してしまった。



 「まぁアニメは原作の半分にすら届いていないでござるからなぁ。続きが気になって妄想するのも無理はないでござるよぉ」


 卓夫は馬鹿にしたような、いや明らかに馬鹿にした顔で翔矢を見つめる


 「断じて違う」


 だが翔矢は特に慌てずに否定する。ここで慌てたら余計に馬鹿にされるのは分かり切っている。


「翔矢くーーーーーん。おはよう」


 そんなことを卓夫と話していると自転車に乗った少女が後ろから元気な挨拶をしてくる。彼女は幼馴染の一ノ瀬悠菜だ。


 卓夫も悠菜も翔矢の幼馴染で仲はいいが、3人が特別一緒にいるという訳ではない。田舎町の高校なので、ほかの高校に通おうとすると駅まで自転車で行きそこから電車で1時間近くかかってしまう。今は5月半ばなのでまだいいが、冬になると電車が止まるだの遅れるだのトラブルも多い。なので翔矢と同じ中学出身で特にこだわりがなければ、多くの生徒はこの、六香穂高校に進学する。


 小学校からの顔なじみを幼馴染というなら学年の半分以上に幼馴染という言葉が当てはまるだろう。



 「おはよ」


 「おはようでござる」


 「あっ。翔矢君の友達ですか? 初めまして。一ノ瀬悠菜といいます」


 悠菜は翔矢と卓夫の近くに来ると自転車を降りて、手で押し、卓夫に挨拶をした。


 「悠菜どの…酷いでござる。小学校からクラスまでほとんど一緒でござるよー」


 「あはははは、ごめんごめん」


 悠菜はおなかを抱えて笑いながら謝る。彼女は特にオタクも卓夫も毛嫌いしているわけではないのだが、卓夫のことがイジリやすいのか、オタクは馬鹿にされることも多いという認識からか、卓夫をからかうことが多い。


 「悠菜、あんまり卓夫をからかってやるなよ」


 と言いつつ翔矢は笑いをこらえている。3人は待ち合わせている訳ではないが、毎日だいたい同じような場所で合流するので、たわいもない会話をしながら一緒に登校するのが日課となっている。



 この日も、いつもと変わらない日常が始まるはずだった。しかしこの日は違った。


 「ん???あの子???」


 翔矢たちの前に4、5歳くらいの女の子が歩道で一人でボール遊びをしている


 「親らしい人も見当たらないし、今時あんな場所でボールなんて珍しいというか危ないな」


 田舎町とはいえ、平日朝の忙しい時間帯。そこそこの交通量はあるし万が一、ボールを車道のほうに落として、女の子が慌てて拾いに行ったタイミングでトラックなんて来たら……という自動車教習の1場面のような状況を3人とも想像したが、その状況はそのまま現実のものとなる。


 「危ない!!!!」


 翔矢はとっさに車道に飛び出し女の子を強く推して反対車線のほうに突き飛ばした。勢いよく転がってしまったが、反対車線に車はいない。おそらく大けがはしていないだろう。


 (自分を冷徹とまで思ったことはないが、まさかとっさにこんなことができる人間だったとはな)


 トラックにひかれる寸前というのに翔矢はいたって冷静だった。


 この日を境に俺、宮本翔矢の日常の世界は全く異なるものになった。


 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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