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185話:出社からコンピュータが始まりそうです

 ファーストとの戦いで瓦礫の中に埋もれてしまい、身動きの取れないペネムエ。

 それでも意識はハッキリしており誰かが自分の体の上の瓦礫を、少しずつ、どけている感覚があった。

 その全てが、どけられる前に、ペネムエは自力で立ち上がれそうになったので、踏ん張るように力を入れて立ち上がる。



 「よいしょ!! やはりグミ様でしたか。

 ありがとうございます、助かりました」


 「ぎゃ!! 急に起き上がられるとビックリしたニャ」


 「申し訳ありません、しかし、あの状況からよくぞご無事で」


 

 クラーケンの怪物と化したファーストの異常な速さの攻撃をペネムエは思い出していた。



 「あの攻撃なら、ニャーは避けれたニャ」


 「え? しかし一緒に瓦礫の下敷きになってしまった記憶があるのですが」


 「攻撃は確かに避けたのニャ、しかし足元に、これがあったのニャ」



 グミはバナナの皮を、摘まむようにして持ち、恥ずかしそうな表情でペネムエに見せた。



 「まっまさか……」


 「そうニャ!! これで滑って転んで瓦礫の下敷きニャ!!悪いかニャ!?」


 「いえ、攻撃を目で追う事すら出来なかった、わたくしに笑う資格はありません。

 しかし、それで合点が行きました。

 グミ様は、奴の攻撃に当たっていないので、ダメージを受けていないのですね」



 ペネムエは、グミの体を何カ所かチェックしたが、擦り傷以上の怪我は無いように見えた。



 「いや……ペネムエ気が付かなかったニャ?

 誰の仕業か、今さっき、この病院全体に回復魔法が使われたニャ」


 「回復魔法!? このノーマジカルでということは能力者?」


 「さぁ? ニャーの見立てだと、悪人でも瀕死の奴は命を落とさない。

 しかし動けない程度の回復、善人は全回復。

 こんな指定は万全な状態の天使でも難易度高いんじゃニャイか?」


 「悪人以外を回復させたという事で今は味方と思っておきましょう。

 お蔭様で、わたくしの体も万全です。

 何も分からない状態で、考え事を増やしても、仕方ありません」


 「だニャー!! あのイカ怪人探さニャイと」


 「目的は、始様の病室だと分かっています。

 今現在、騒ぎは起こっていないようなので、人間の姿に戻っているのかもしれません」


 「騒ぎで人ごった返したら、相手からしたらターゲット探しにくいもんニャ」


 「病院ごと破壊と言う手段もありますけどね」

 

 「怖い事いうニャ……」


 「どんなに悪人でも、そのレベルでの無差別攻撃は、躊躇してしまうという事でしょう」


 「始の病室なら、あの窓の病室ニャ」


 

 グミは建物の上の方を指差すと、ペネムエは始の病室の位置を理解した。



 「誰か病室にいますか?」


 「翔矢とドクターと天道ユリアって声優さんが残ってるはずニャ」


 「ユリア様? ここは避難所にもなっているのでしたね。

 そのメンバーですと、実質戦闘が可能なのは翔矢様だけですか……

 急ぎましょう!!」


 「ニャ!!」



 2人が病院の内部に入ろうとすると、何人かの医者と看護師が大慌てで出てきたので、横に避け道を開けた。



 「先生!! 外はテロリストが……危険です」


 「怪我人が何人も出たとの目撃があったんだ!!

 医者として放っておけない!!

 知っている情報を教えてくれ!!」


 「……大柄の男性が3人、女子高生が1人……

 その女子高生は逃げたペットを探している所を……」



 看護師の話がここまで聞こえた所でグミの顔が青ざめる。



 「行って下さい!!」


 「でででも、この状況ならペット探すJKって何人か、いるかもニャ。

 悠ニャって限らニャニャニャニャニャ」


 「いくら強くても、そのレベルで動揺している者と共闘しろと?」

 

 「言ってくれるニャ」


 「それにグミ様は、敵の冷気には打つ手が無いようですし……」


 「分かったニャ!! ペネムエ……絶対に皆で生きて帰るニャ!!」


 「はい!!」



 ペネムエは黒猫の姿になったグミを笑顔で見送った。



 「さて、ダメージを受けているゼロ様が気になります。

 始様の病室に急ぎませんと……」



 病院の出入り口に、人がいないのを確認し、駆け足で病室を目指す。

 今日、何度も戦闘で怪我を負ったと思えない程、体は軽かった。



 「戦闘の音が全くない……

 ファーストは本当にどこへ行ったのでしょう?」



 静けさを不気味に感じながら、ペネムエは病室へ急ぐのだった。





 ***





 時間はペネムエとグミが、ファーストと戦っていた頃まで遡る。

 蓮・鈴・健吾そして彼らに手を貸すことになったシックスは、スカイタワーから北風エネルギー本社に向かおうとしていた。


 

 「ファーストってのが怪物になって暴れるなら、私たちがセキュリティプログラムを発動させる間に被害が広がる可能性がある」


 「鈴ちゃんの言うとおりだな、地下鉄は動いてないだろ?

 歩きだと30分以上は掛かるぜ」


 「車があれば……」


 「兄貴、免許持ってないけどな」


 「東京に住んでいれば珍しい事ではない」


 「あの……車なら私、運転できる。

 近くの駐車場に停めてるわ」



 そのシックスの申し出に健吾は目を輝かせた。

 しかし、蓮と鈴は彼女を信用していいかい疑っているのが表情で分かった。



 「大丈夫だって!! 疑ったって被害は広がる一方だぜ?」


 「頼る他ないか……」


 「私は蓮に従うわ」


 「ってことだ!! シックスちゃん!! 頼んだ!!」


 

 健吾の言葉にシックスは静かにうなずいた。

 そのまま、彼女の案内で駐車場に辿り付き、その車に乗り込んだ。



 「思ったより早かったね、お邪魔してるわ」



 車の扉を開けると、1人の可愛らしい少女が、後部座席に先に乗り込んでいた。

 その服装から、転生教の幹部だと分かった。



 「誰だ!?」



 蓮・鈴・健吾の3人は警戒を強め、臨戦態勢に入る。



 「セカンドちゃん?」


 「うん、やる事もやりたい事も分からなくなったから、ここに来た……

 私の能力を応用して、待ってれば、4人来るまでは分かってたわ。

 まさかシックスが敵と一緒に来るとは思わなかったけど」


 「こんな可愛い嬢ちゃんもいたのか? まだ子供じゃないか……」


 「中学生も高校生も、対して変わらないと思う。

 私の事は気にせず、目的地に行くといいよ。

 私は何したらいいか分からなくなったし……

 とりあえず付いていくわ」


 「シックス、こいつは信用していいのか?」


 

 蓮の問いに シックスは沈黙し考え込んだ。

 その間に、セカンドが先に口を開く。



 「答えはイエスよ」


 「……自分で言う奴を信用できるか!!」


 「待て!! 落ち着け兄貴!!

 まだ中学生だぞ!! 刃物を向けるな!!」


 「蓮、健吾、普通は大人相手でも刃物はダメ」


 「そう思うなら、鈴ちゃんも兄貴止めるの手伝ってくれ!!」


 「セカンドって言ったよね?

 この子の能力は、イエスかノー、または数字で答えれる質問に答えが出せるはず」


 

 刃物を向けられ、あわあわしているセカンドは、コクコクと首を高速で縦に振る。



 「ドクターのセキュリティは、私たちも、どんなのか分からない。

 能力が役に立つかもしれないし連れて行きましょう。

 戦闘に使える能力じゃないし、妙な動きをしたら、私が潰すわ」


 

 鈴は、けん玉型の武器、クラッシュダマーを巨大化させ、ハンマーの部分をセカンドに向けた。



 「私は、乗る車を間違えた……?

 答えは……ノーなの?」



 怯えたセカンドも乗せ、一行は北風エネルギー本社を目指す。

 大きな道を通り、10分ほどで、目的地に到着した。



 「到着だ!! 降りろ!!」



 セカンドとシックスに交互に日本刀型の武器ソルを向け、蓮は2人を誘導する。



 「兄貴、警戒しすぎだろ……どっちが悪か分からん」


 「まるで罪人……まぁ罪人に違いは無いのだけど……

 信頼していたボスに裏切られたのよ? もう少し丁重にさ……」


 

 健吾と鈴の冷ややかな視線を感じ、蓮はようやくソルを下した。


 

 「……鈴、ドクターからのメッセージは?」


 「とりあえず、地下の研究室に向かってって」



 今日は平日だが事件のせいで誰もいない社内を5人は進み、エレベーターに乗り地下にたどり着いた。

 地下の研究室には、何台ものモニターやパソコンが設置されている。

 ここへの入室が初めてのセカンドとシックスは茫然と設備を眺めていた。

 


 「まずは、このパソコンを……」


 

 メインコンピューターに触ろうとする機械音痴の蓮を健吾は無言で静止し、代わりに鈴がパソコンの操作を行う。

 鈴はパソコンは得意な方だが、ドクターの作成した複雑なプログラムを操作するには、操作法の支持が書かれたメールと睨めっこしなければならず、時間が掛かりそうなのは明らかだった。


 

 「ちょっと貸しなさい!!」


 「なっ何?」


 

 急に操作に割り込んできたシックスに鈴は警戒したが、彼女の操作の手際から、このまま任せた方が良いと察っする。


 

 「なるほど……ファーストが装着した魔物のように肉体を変化させるデバイス。

 本体の構造はともかく、制御してるプログラムの構造は、そこまで複雑じゃない。

 といっても私の知識じゃ30分程度の一時停止が限界だけど」

 

 「うん、ドクターからのメッセージにも、このパソコンからじゃ、それが限界って書いてある」


 「え? ここがメインコンピュータじゃないの?」


 「答えはノーね……たぶんだけど、完全停止には物理破壊が必要」



 話に入ってきたセカンドの考えを聞き、蓮は無言でソルを取り出しメインコンピュータを一刀両断にしようとした。

 そんな蓮を、弟でもある健吾は羽交い絞めで止める。



 「健吾、手を放せ!!」


 「何をしようとしているか言ったら場合によっては放してやるよ」


 「メインコンピュータを破壊すれば良いのだろう?」


 「そういう破壊じゃない!! というか、多分ここのコンピュータじゃない!!

 そうだろ? 鈴ちゃん!!」


 「うん、ドクターからのメッセージ長くて読むの時間かかったけど……

 ドクターの言ってたセキュリティって“ザ・ホール”の事。

 本当の制御装置は、そこにあるみたい」



 そのワードに蓮と健吾の表情は険しくなる。



 「ドクター……何を考えているんだ?」


 「誰も入れないって意味では優秀なセキュリティだけどな」


 「鈴!!」


 「うん、制御装置までの地図も添付されてた」


 「怪物となり暴れだしたファーストを止めるには……行くしかないか」


 

 不安を抱えながら、どこかに向かって歩き出した3人。

 セカンドとシックスも何が何だか分からないまま、その後に続くのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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