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180話:隠れ身から連絡が始まりそうです

 病院から飛び出したグミは、黒猫の姿で、東京の街中を駆け抜けていた。



 (こっちから、匂いがするニャ!!

 あいつらの白装束、独特の匂いが付いてて助かったニャ!!)



 その匂いは次第に強くなり、いつ接触してもおかしくない状態。

 グミは気を引き締め、自然とその歩みは早くなる。

 

 

 (いたニャ!! 魔力は感じニャイ!! ただの雑魚ニャ)



 グミは素早く建物の間の隙間に入り敵の様子をうかがう。



 (こっちに気が付いてニャイ。

 この姿だし当たり前か……でも思ったより敵が多いニャ)



 ゼロの息子である始の命を狙う転生教信者は集団で行動している。

 敵は自分の相手にならない程弱いが数が多い。

 この状況で、誰の命も奪わずに、相手を止める自信がグミには無かった。



 (2、3人を圧倒すれば逃げていくかニャ? そうしよう!!)



 人間の姿に変わり、攻撃の体勢に入ったその時だった。



 「そこまでだ!!」



 黒い服の特殊部隊が転生教を取り囲んだ。

 彼らは、北風エネルギーではなく、警察の特殊部隊。

 悠奈の好きなドラマで、グミには見覚えがあった。

 特殊部隊は、次々に転生教を拘束していく。



 「ちくしょう!!」


 「離せ!!」


 「暴れるな!! お前たちの無線は傍受した。

 別部隊はすでに病院に向かっている。

 目的までは聞こえなかったが、ここで捕まった方が身のためだ」


 「くっそ!! ここまで来て!!」


 

 信者たちは拘束されても、なお抵抗を続ける。

 すると1人の信者の白装束の長い袖が捲りあがり、流星雨の黄色い斑点が、その腕に見えた。



 「やはり、死ぬつもりだったか」


 「隊長!! 他の信者にも流星雨の斑点が」


 「よし今すぐに、特効薬を投与する!!」


 「「「了解!!」」」



 特殊部隊の乗って来た特殊車両のトランクが開けられると、その中には大量の特効薬が積まれていた。

 隊員たちは手際よく、信者全員に特効薬を打っていく。



 「それだけは止めてくれーーー!!」


 「こんな世界で生きたくない!!」



 今までで一番の抵抗もむなしく、1分程度で、全員特効薬を投与される。



 「この世界の騎士団みたいなもんかニャ?

 ドラマで見たけど優秀な部隊がいたんだニャー」



 ビルとビルの隙間から、その様子を見入っていたグミは、ついつい関心の声が漏れてしまった。



 「まだ誰かいるのか!?」



 特殊部隊は、その声を聞き漏らす事無く、一斉に、銃を向ける。



 「ニャ……ニャー」


 「何だネコか」


 「ここは危ないから、どっかに逃げなさい」


 「ネコが分かる訳ないでしょう?」


 「ニャニャーーー」


 「ちゃんと逃げて行きましたよ?」


 「人を見て逃げただけでしょう?」


 「何も無かったんなら、さっさと病院に向かうぞ」


 

 特殊部隊の隊員たちが、黒猫姿のグミを怪しむわけもなく、すぐに警戒は解かれた。

 特殊車両に全員が乗り込み、間もなく出発した。



 「ふぅ間一髪だったニャ、普通の人間は、この世界の部隊に任せて大丈夫そうだニャ。

 病院には翔矢もいるし、ニャーの仕事は、残飯さがししかニャイかー」



 中層ビルの上からその様子を見守っていたグミ。

 隠れている信者がいないか、この付近の捜索を始める事にした。



 

 ***




 同時刻、スカイタワーの、中ほどの階。

 ゼロの裏切りを知ったシックスは、床に泣き崩れ動こうとしない。



 「おーい、他の奴はゼロに復讐しに行ったぞ?」



 幻術から完全に解放された健吾は、シックスにおどけながら話しかける。



 「君は私に、どうして欲しいのよ……」


 「えーっとデートして欲しいかな?」


 「ふざけないでよ!!」


 「したいのは、本当だぜ?

 何があったか知らないが、この世界で嫌な事があったから転生教に入ったんだろ?

 せめて俺が出来る範囲で、楽しい思い出でも作れればなって」


 「変わってるね、さっきまで戦ってたのに」


 「世界を憎む気持ちは、痛い程、分かるからな。

 でも全部を憎むって、悲しすぎるじゃねぇか」



 その健吾の瞳に、シックスは自分以上の何か大きな悲しみを見た気がした。



 「ほらよ!!」


 「これは?」


 「流星雨の特効薬だ。

 あんたらの異世界転生の可能性は否定されたらしいな。

 でも辛くて死にたいってのは変わらないだろ?

 無理に打てとは言わないが、選択肢として渡しておくよ」


 「私は……どうしたら……」


 「人に聞くな!! とは言わねぇよ?

 でも今日会ったナンパ野郎に聞くのはオススメしない」


 「ギリギリまで考えるわ」


 「おう、ちなみに俺の連絡先も、ラベルに書いといたから、デートしたくなったらヨロシク」


 「ナンパは本気だったのね」



 シックスは、ようやく笑顔を見せた。



 「ナンパ野郎も、良い所あるのね」


 「だが、このまま放置はできない。

 身柄は拘束せねば……」


 「鈴ちゃんは手厳しいなぁ、ナンパだってコミュニケーションの1つだぜ?

 そして兄貴は頭が固いな、ボスに裏切られたんだ、そっとしておいてやろうぜ?」



 自然に会話をしてしまったが、健吾は顔が青ざめながら固まってしまう。



 「って2人とも気絶してたんじゃなかったのか!? いつから聞いてた?」


 「特効薬を渡した辺りから、正直体力は限界だけど、意識はハッキリしてるわ」


 「かなり長時間気絶してしまったか……なにやら状況の変化が大きいようだな」


 「鈴ちゃんはともかく、兄貴に説明するのは骨が折れそうだ……

 うんぬんかんぬん!!」


 「なるほど、ゼロは信者を裏切ったのか」


 「裏切られた信者はキレながら、病院に向かってるらしい」


 「特殊部隊が動いているはずだ、能力者以外は問題ないだろうが……」


 「確か都立病院は避難所にもなってるはずよ」


 「戦いの舞台になるのは不味いな……」



 健吾、蓮、鈴の3人は頭を抱えていた。

 すると蓮のガラケーから着メロが鳴った。



 「ドクターからだ」


 『ヘイヘイヘイ!! 蓮!! 久しぶりだねぇ!!

 宮本翔矢から重症だって聞いたけど、元気そうで嬉しいよ!!』


 「声だけで、良くそこまで判断できるものだな」


 『いや、声だけじゃないよ? スカイタワーの監視カメラはハッキングしたからね。

 僕からは、そっちの様子は丸見えだよ!!』


 「そういう事か」



 蓮は、キョロキョロと辺りを見渡して、監視カメラの位置を確認した。

 その動きついでに、ガラケーの操作をしてスピーカーに切り替えた。



 『映像を巻き戻したんだが、イカにカラスの羽が生えたみたいな化け物と接触しなかったかい?』


 「いや、俺は見てないが……」


 

 鈴と健吾にもアイコンタクトをしたが、二人とも首を横に振った。


 

 「そいつは新たな能力者か?」


 『いや、そいつの正体は能力を強化する能力という単体じゃ無意味なファーストという幹部だぁ。

 今朝、僕のパソコンがハッキングされた痕跡があるって言っただろ?

 どうやら、ゼロ以外にも科学者がいたみたいでね。

 僕の設計図を元に“変わるんブレス”を完成させたらしい。

 なかなか強力なモンスターへと姿を変えたようだぁ!!』


 

 悪びれる様子の無いどころか楽しそうに話すドクター。

 蓮、健吾、鈴は揃って頭を抱えた。



 『だいたいドクターのおっさんのせいじゃないか!!』



 電話の向こうから、怒鳴り声と共に、恐らくドクターが殴られたであろう鈍い音が聞こえた。



 「他に誰かいるのか?」


 『あぁ!! 宮本翔矢と……

 驚くなよ!? あの超人気声優の天道ユリア様がいるのさぁ!!』


 「……誰だ?」


 「ポリキュアの追加戦士の、ポリクレンセントの声優さんよ。

 ……中の人ってあまり気にしないけど、サイン欲しい……」


 『喜んでぇ!!』


 

 今度は、電話の向こうから明るい女性の声が聞こえてきた。



 「おい、一般人を巻き込んでいるのか?」


 『あっ、私は異世界転生系のアニメにも出させてもらってるから、お気になさらず!!』


 「なら良いか」


 「いいの?」

 「ダメだろ!?」



 蓮が、真面目に返事をしていたので、鈴と健吾は珍しく息の合った発言をしてしまう。



 『蓮のおっさん、始……ゼロの息子が信者に命を狙われてる。

 あんたの考えを聞いてる時間は無いが、入院しっぱなしの始には何の罪もない。

 ここは、俺が全力で防衛する!!』


 「宮本翔矢……やる気満々だな。

 前に言ったはずだ、この世界の人間であれば、俺は善悪問わずに守ると」


 『まさか、そのポリシーに助けられる日が来るとはな』


 「そっちで戦えるのは、宮本翔矢だけか?」


 『みんな、病院の外に、うんぬんかんぬんで出て行ったからな』


 『はいはーい!! 私格闘技なら色々できまーす』


 『ちょ……ユリアさん、くっつきすぎ……』


 『うっ羨ましい!!』


 「おい!! 電話の向こう緊張感なさすぎだろ!!

 こっちは鈴と健……」



 蓮が自分の名前を出そうとしたのを、健吾は肩を叩いて止めた。

 よく見ると、彼は帽子を深くかぶり、ドクターや翔矢が見ているであろう監視カメラから顔を隠していた。



 『蓮のおっさん、どうした?』


 「いや……鈴は敵の策略で体力を奪われている。

 ここでシックスという幹部の見張りをしてもらう。

 病院には、俺も加勢しよう」


 『おお、助かる!! その白装束のお姉さんがシックスだとして、後ろの帽子の奴は?』


 「……逃げ遅れた一般人だ、気にするな」


 『ちょいまち!! そっちのメンバーには頼みがある!!』



 方針が決まりかけた所でドクターが大声を出し話に入って来た。



 「なんだ?」


 『北風エネルギーの本社の私の研究室に行ってもらいたいんだぁ。

 そっちに出現したカラスっぽいクラーケン、そいつはゼロ以上の再生力があるハズだからね。

 遠隔で停止しないと、止まらないと思うよ?

 ハズレ能力もある能力者より、止める方法があるけど厄介なのの対処を優先しようじゃないか!!』



 このドクターの話のあと、また鈍い音が聞こえた。

 恐らくドクターが翔矢のゲンコツを喰らったのだろう。



 「……了解した、全員で行く必要があるのか?」

 

 『極秘の研究なのでね、1人で行くには、セキュリティが強力なのさ。

 機械音痴だろうが、蓮の力も必要になると思うよ!!

 あっ!! なんか魔力が近いっぽい、ヨロシク!!』


 「おい!! ドクター!! それは、そういうセキュリティだ!?」



 ここで一方的に電話に切られてしまっていた。



 「……言われた通りに動くしかないか」


 「うん、会社まで歩ける程度の体力は回復したわ」


 「あぶねぇ……監視カメラの画質なら翔矢に顔バレしてないよな?」

 

 「私も……行く!! パソコンは得意な方よ。

 どんなセキュリティか知らないけど、役に……立てるかも」



 シックスの申し出に、蓮は疑いの眼差しを向ける。



 「女性相手に怖い顔するなって!! だから兄貴はモテないんだぜ?」


 「私は……蓮がモテない方が嬉しい」



 鈴の超小声の独り言は、恐らく誰にも聞こえていない。



 「……どの道、敵の幹部を放置は出来ん、妙な真似をしたら斬る!!」



 蓮は健吾から、人工魔法の剣ソルへと変化するネクタイピンを取り上げた。



 「うん覚悟しておく」



 こうして北風エネルギーの3人とシックスは、本社へ向かう事になるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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