18話:会話から反撃が始まりそうです
「……時間稼ぎ……ねぇ。多彩な魔法が使えるあなたなら、超天才の私相手でもできたかもしれない。
だけどこのノーマジカルで私相手にどうやって時間稼ぎするつもり?
時間を止める時計を使うなら、自分の回復より私に攻撃の一つでもするべきだったわね。
やっかいな時計だけど、次使うのに1日以上待つ必要があるはず……」
かつての……いや今でも友達と思っているリールにまともに反撃ができないペネムエだったが、なんとか時間稼ぎをしようと奮闘していた。
しかしリールの態度は依然として冷たく、天界にいた頃にペネムエに温かくしてくれた面影はない。
「そう……ですねノーマジカルでは魔法は使えません。
ですがリールは『魔法が使えない』という状況をどの程度理解していますか?」
「実力では時間稼ぎもできないから、会話で時間を稼ぐつもり?
どの程度理解って……文字通り今まで天界や他の世界で習得した魔法が発動しないって事でしょ?
なぜか道具は普通に効果発動してるけど」
時間稼ぎと見破りつつもリールは話に乗ってきた。
「正解……なんですが、それだけではおかしいですね。
天使も人間も、動くだけで無意識に魔法を使っているものです」
「そんな授業もあったわね。重い荷物とか持つと無意識に魔力で補助してるとか聞いた気がするわ」
「実技専門なリールも覚えていましたか。
ではなぜ、あなたはノーマジカルで天界にいた頃と変わらぬ剣術が使えるんでしょうか?」
「えっ? んーーー」
リールは少し考えこんだ。完全に魔法が使えないなら武器が重く感じたりして、いつものようにサーベルを扱うことはできないはず……
「どうやら『魔法を使用できない』というのは『魔力を消費できない』といった方が正しそうですね
天使が人間の心の声が聞こえるのも特殊な魔力による作用と言われていますが発動していますしね」
「なるほどね……無意識行動は魔力を手に少し集めたりしているだけで、魔力を消費している訳ではないからね」
「まぁ天使の環境適応の高さがあってこそ。
異世界の人間をノーマジカルに連れてきた場合は、まともに活動できるとは思えませんがね。
他には適正魔法の高さや覚えている魔法が体質に影響したりしますよね?」
「あーーー。高速移動系の魔法を鍛えたら何もしてなくても足が速かったりするあれね」
「はい……わたくしの場合、適正魔法の一つに氷の最上級魔法『絶対零度』がある事をアイリーン様に見抜いて頂いて鍛えましたので、魔法が無くても寒さにはとても強いんです」
「それがどうしたって言うの?
何がしたいか分からないけど、おしゃべりはおしまい」
リールは再び反撃に出るためペネムエに近づいてきた。
「……魔法の適正とか関係なく、体を動かしてれば暖かくなってきますよね?
気が付きませんか? この場が、どんどん冷えて来ているのに」
「はっ? 山なんだからそりゃあ気温はひく……」
言葉を言い終える前にリールは異変に気が付いた。
確かに寒い……というより空気かとてつもなく冷たい。
「時間を止めている間に、もう一つ仕掛けさせて頂きました」
ペネムエがリールの後ろの方を指さしたので、リールが振り返ると、地面に槍が突き刺さっている。
「あれは……『神槍ブリューナク』???」
天使の使用する魔法の道具は、武器も生活用品も人間社会に存在するものを使用している。
しかし天界にのみ存在する物質で神が製作した『神器』と言われる武器が存在する。
その1つが『神槍ブリューナク』槍から凄まじい冷気が発生していて、突き刺したとことから徐々に氷結させる武器だ。
発せられる冷気は使用者にも、ダメージを与え並の人間などは持っただけで凍結すると言われている。
生物に突き刺せば体内の血液まで凍る。
今のように地面に突き刺せば、刺した場所を中心に辺りが凍り始める。
「全くアルマ様は、人形にとんでもないもの渡してくれたわね……」
氷はすでにリールの足元にまで広がっていて靴が凍り始めている。
ブリューナクの氷は、凍った所からさらに広がる効果がある。
リールの体は足元から氷はじめ、あっという間にひざ下まで凍ってしまった。
生足のリールには寒さというより痛みが襲う。
「くっ戦いたくないとか言っておいて私よりエグイ攻撃してくれるじゃない……」
「あなたの『ホーリージュラフ』の皮でできた服なら、広がった氷程度、解けてしまえば体にダメージは残らないでしょう。
現に凍結する速度も極端に遅くなってきていますしね。
それでも……友達にこんな事したくありません……
リールだって本当は……」
「しつこいわね……友達なんて……あなたが勝手に思ってるだけよ」
リールは少し声を詰まらせながらも強く言い返す。
「……いずれにせよ、ブリューナクの凍結を解除する手は無いはず
今日は翔矢様を異世界に送ることは不可能です」
ペネムエは地面に刺したブリューナクに札を貼った。
これで、氷の進行は止まる。と言っても氷が溶けるわけではない。
「すいません……マキシムへのゲートが閉じる頃に、また来て溶かしてあげますから」
ペネムエはマジックラウドを呼び出しこの場を後にしようとした。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練って執筆しております。
少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。
下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。




