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178話:乗り込みから防衛ラインが始まりそうです

 ペネムエは、ゼロをマジックラウドに乗せ、何とかスカイタワーから脱出に成功した。

 しかし、ゼロはファーストから特殊な銃弾を食らい、左胸から酷い出血をしていた。 



 「大丈夫ですか?」


 「そう見える?」


 「その口が利けるのなら、大丈夫ですね」



 ゼロの出血を押さえながら、ペネムエは都立病院に向かってマジックラウドを飛ばす。



 「この細胞は、元々、ある難病治療の為に開発したの。

 そもそも、戦闘だとか不死身が目的じゃないのよ。

 細胞同士の結合を崩壊させる銃弾……単純な造りだけど、効果は覿面ね」



 余裕があるようにも聞こえるが出血は収まる気配がない。

 そもそも、この特殊な肉体が出血多量で、命を落とすのか。

 ゼロにも分からなかった。



 「こんな事なら、グミ様から、予備のポーションを買って置くのでした……

 急ぎますので……気をしっかり保って下さいよ!!」



 ペネムエはマジックラウドの最速を出し、始の元へと向かう。



 

 ***




 その頃、スカイタワーでは、ゼウがファーストと睨み合っていた。



 「どうする? 俺に勝てそうか?」


 「随分と余裕そうですね、その上、美少年!!

 ムカつきます!!」



 仮面越しでも、ファーストが腹を経てているのがゼウにも伝わる。

 何秒か硬直が続いたが、すぐに1発の銃声が鳴った。

 その銃弾は、ゼウの頬ギリギリをかすった。



 「そうカリカリしたら、当てれる物も当たらんぞ?

 そもそも日本人は銃に不慣れだろう?

 ゼロに当てれたのは偶然だ、諦めろ」


 「異世界の怪物だと思ってたが、日本の事に詳しいですね。

 しかし残念!! これでも何年か入隊歴があります。

 アドバイス通り、カリカリせず狙えば……」



 再び銃声が鳴る、ゼウは、しゃがみ込み、この銃弾を回避した。



 「狙いは悪くなかったでしょう?」


 「やるな……だが所詮は能力も無いに等しい人間。

 俺に勝てると、本気で思っているのか?」



 雷鬼の右手からバリバリと雷を発生させ威嚇する。



 「脅しですか? 最初に銀髪の少女がゼロと戦った時。

 貴様らの種族は、人間の命は奪ってはいけないと聞いるので」


 「ペネムエ……敵に余計な情報を……」


 「それに、さっきも言ったが能力だけが、戦う手段じゃない」



 ファーストが勢いよくローブを捲ると、その両腕には銀色のバングルが填められていた。

 そのバングルにつけられている白い水晶からゼウは魔力を感じた。



 「それは……人工魔力? いや違う。

 本物の魔法石だ……」


 「北風エネルギーのパソコンをハッキングしたさい、設計図が見つけまして。

 人工魔力の製造は、俺の科学力では不可能でしたが、運良く本物の魔法石を入手できまして。

 自分の能力が、他人任せだったので、念の為に作ったが正解でしたね」


 

 ファーストが左右のバングルをクロスさせ合わせると、足元に魔方陣が発生した。。



 「何だか分からんが……させない!!」



 ゼウも強力な雷を発生させたが、魔方陣が結界のように働き、攻撃は通らない。



 「そう急ぐな、変身中の攻撃はタブーですよ?」 

 【カラス+クラーケン……ダウンロード】



 魔方陣がファーストの中へと、その肉体は黒いクラーケンへと変わった。

 その頭上は、ゼウの知っているクラーケンとは異なり、黒い翼が生えている。

 これは、この世界でも、よく見かけるカラスの翼に似ているが、比べ物にならない程、巨大だ。



 「そんな姿になってまで、何がしたいんだ?」


 「ゼロの言っていた醜い世界の浄化……これには俺も賛成です。

 まずは、我々を裏切ったゼロを粛清する!!」


 「暴走して暴れまわるパターン化と思ったが、意識はハッキリしているのか。

 というか、人間の原型が残ってないが、体自由に動かせるのか?

 俺は使えないが、女神アルマ様のような変身魔法と思えば可能か?」



 ゼウは異世界でも見たことの無い、目の前の魔物の姿に、興味と関心を持ってしまい、攻撃に出るのが遅れてしまった。

 その隙にファーストは事を起こす。



 「全信者に告ぐ!! ゼロは我々信者を裏切っていた!!

 転生するのは信者ではなく、奴のガキだ!!

 ガキの名は水瀬始!! 都立病院に入院中で意識不明だ!!

 こいつを始末し、ゼロの野望を打ち砕く!!」 


 

 ファーストの演説は、小型の通信機で信者たち全員に伝えられた。

 もちろん、この場にいる信者の持つ通信機からも流れており、ゼウは状況に気が付いた。



 「チートを持てる異世界に逃げ混もうとしている、しかも無能力の信者が、わざわざ動くと思うか?」


 「確かに今思えば、我々は醜い存在と言われても仕方がなかったかもしれません。

 だが“無敵の人”という言葉を知っていますか?

 我々は元々、この世界に居場所がない人間の集まり。

 異世界転生は、事を起こす鍵にすぎない。

 すでに、この世界から離れる手段は手に入れている」


 

 ファーストの言葉に、信者たちは腕をまくり、流星雨の跡を確認する。



 「お前たちは異世界転生は出来ない。

 だが特効薬を打てば、この世界で生きる事は出来る。

 これ以上、罪を重ねるな!! 直接の被害を出していない信者は、大きな罪にならないはずだ」



 ゼウは悪い予感がして、必死に信者に呼び掛ける。

 だが、その声は、誰にも届かなかった。



 「そうだ!! 異世界転生できなくても、俺たちは、この世界から離れれるんだ!!」


 「異世界が無くても、俺は命を絶ちたいと思ってたんだ」


 「でもゼロは、そんな俺たちの気持ちを利用したんだ」


 「生きるのが辛かっただけなのに、犯罪者にさせられた」


 「だったら最後に、ゼロの希望を絶つ!!」



 信者達の士気は、みるみる上がり、次々にスカイタワーから降りていく。


 

 「よせ!! 行くな!!」



 必死ななったゼウは、雷を飛ばし威嚇する。

 だが、クラーケンとなったファーストの触手のような足に防がれてしまう。



 「ネットで声を挙げるだけだったような俺たちが、自分たちで行動できるようになった。

 止めるのは野暮ですよ!!」


 「お前から、やるしかないか……」



 都立病院には、ペネムエが向かった。

 その上、翔矢とグミも待機しているので、ゼウは、この場で奇妙なクラーケンの相手に専念する事に決めるのだった。



 

 

 ***




 その頃、幻術の能力を持つシックスにより、両目が潰れた感覚に陥っていた健吾。

 しかし、いつの間にか、その感覚は止まり、視界が開けてきた。



 「あれ? なんで止まった?」



 状況が飲み込めない健吾の前には、泣き崩れるシックスの姿があった。



 「おい、お嬢さん、どうした?」

 


 敵とはいえ、健吾は人間がここまで大きく泣き崩れる姿を見るのは久しぶりだった。

 たまらず駆け寄ってしまうが、シックスは泣くばかりだった。



 「仕方ないな……」



 健吾はポケットからハンカチを差し出した。



 「なんで?……私は敵なのに……」



 差し出されたハンカチを仮面越しに眺めシックスは固まる。



 「敵って言うのは、向かってくる意思のある奴のことだ。

 動揺して能力を使えなくなった上に、女相手じゃ戦う気は起きねぇよ」 


 「ありがとう……」



 シックスはハンカチを受け取り、仮面を外した。



 「おっ今回は幻じゃなかったな。

 ってか美人じゃねぇか、仮面するなんて勿体ないぞ」


 「美人? 私が? お世辞でも初めて言われた」


 「見る目の無い奴って多いんだな」



 健吾の言葉に、シックスは泣きながらも、今度は笑顔になる。



 「君みたいな子が近くにいたら、こんな事しなくて済んだのに……」


 「止めとけ止めとけ、俺は結構な女好きだから、近くに置くのはオススメしないぜ」



 ここでドタドタと何人も階段を下に降りるような足音が聞こえた。



 「なんだ?」


 「ゼロは……私たちを裏切ってたの。

 流星雨で皆殺しにするつもりだったの……

 恐らく、みんなゼロの息子を始末しに向かったわ」


 「マジか……」



 恐らく現在エレベーターは止まっている。

 遠目にだが、信者たちがゾロゾロ下に降りるのが見えてきた。



 「おい!! 鈴ちゃん!!」



 健吾が大声で呼びかけるも、鈴の体力は、とっくに限界を迎え気を失っているのだった。



 

 ***



  

 さらに同時刻、都立病院では、翔矢達は逃げた能力者のファイブを見つけ取り押さえていた。

 もう一人の無能力の信者は先に捕まえ、ロープで縛ったのをグミが担いでいる。

 その2人の持つ小型の無線機からは、ファーストの演説が流れ、翔矢・グミ・ドクター・ユリアにも聞こえていた。



 「どどどどうしよう? この病院に信者が大勢来るのか?」


 「もちろん体が弱い人もいるから、避難なんて間に合わないし……」



 翔矢とユリアは、あわあわと慌て出しているが、ドクターとグミは冷静だった。



 「ユリア様、落ち着いてください!!

 元は、こんな奴らですよ? 一応の警備体制もあるココに、乗り込む勇気があるとは思えません」



 ドクターは、ボールペンでファイブと無能力信者を交代でツンツンとつついた。



 「でも2人とも、女の子に悪さするつもりで、ここに乗り込んでるじゃない!!」


 「他にも15人位いましたよね!!」


 「流石に人の命を奪うのはハードルが違うと思うけどねぇ」



 珍しくドクターが真面目に回答しても、ユリアと翔矢のパニック状態は収まらない。



 「仕方ニャイ……翔矢、病院の守りは任せたニャ」


 「グミは!?」

 

 「病院に向かってる信者を見つけて、片っ端からやっつけるニャ!!」


 「なるほど……任せた!!」



 グミは猫の姿となり、窓から飛び降り外に向かうのだった。 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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