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175話:幻術から皆殺しが始まりそうです

 「んじゃ遠慮なく行かせてもらいますよ!!」



 健吾は兄の武器であるソルを構え、転生教幹部のシックスに斬りかかる。

 シックスは体制を低くして、これを回避した。



 「物騒な子、よく女の顔を躊躇なく斬りかかれるわね。

 どんな治安の悪い国出身なの?」


 「一応日本人だぜ、ってか治安悪くしてるのは、お前らだ!!」


 

 回避されたことに動じる事なく健吾は攻撃を続けるが、当たる気配はない。



 「女好きって言ってたから、女に手加減するタイプかと思ったけど容赦無さすぎじゃない?」


 「容赦してないのに当たらないから、どうしようもないぜ。

 でも傷物にしちゃったら……責任位は取るぜ」



 この戦闘の様子に鈴はデジャブを感じていた。



 (これって……ゼロの回避と同じ?

 じゃあ、このシックスもゼロと同じ人間じゃない何か?)



 ペネムエとゼロの戦闘を思い出したが、今は確証がない。

 その上、体も感じたことの無い疲労で動かせないので、鈴は観察に専念する事にした。



 「回避も続けたら、いつかは当たってしまう。

 という訳で、こっちの番」



 シックスは指をパチンと鳴らした。

 健吾は、何が起こっても対応できるよう、後ろに大きく飛び距離を取った。



 「素晴らしい判断力。

 普通に生きてたら戦闘経験を詰めない日本人とは思えないわ。

 でも……無意味」


 「なっ……」



 体中に暖かく濡れたような感覚を覚え自分の体を見ると、体から血が吹き出し衣服は赤く染まっていた。



 「なっなんの能力だ!?」



 噴き出す血を止める術は無く、体に力も入らなくなる。

 健吾はソルを杖のようにして立っているのが精いっぱいになった。



 「健吾!!」



 尋常でない事態に、鈴は自分の体に鞭を打ち立ち上がり、クラッシュダマーのハンマーでシックスを狙う。



 (どんなに回避能力が高くても……これなら!!)



 クラッシュダマーを極限まで巨大化させ遠心力を使い大きくフルスイング。

 広範囲で逃げ場のない攻撃は確実にシックスを捕えたはずだった。



 「嘘……何で?」



 しかし、その攻撃はシックスの体をすり抜けて彼女は無傷だった。



 「必死に動いたのに残念だったわね」



 再び鳴るパチンという音と共に、鈴の体からも血が吹き出し始めた。

 ただでさえ体が悲鳴を挙げていた鈴が、再び動く事は不可能に近い。



 「なるほど!! そういう事か!!

 サンキュー鈴ちゃん」


 「へぇ……もしかして気が付いた?」


 「気が付くも何も、あんたは最初に“幻術”って言ってたな」


 「口が軽かったわ、反省」



 血が吹き出し続けているにも関わらず、健吾は平然と立ち上がり、話までしている。

 その姿を見ると、鈴の体まで楽になって来た。



 「幻術? この痛みが?」


 「あぁ、五感全てに作用するタイプだろうな。

 だが幻術と見破れば楽になった気がする。

 熱くないアイロンを目隠しした人間に当てると火傷するって実験を思い出したな。

 そういう類で大げさに痛みを感じてるだけだ。

 タネが分かれば、何てことはない」


 「見破ったからって、そんな平気でいられるなんてね」


 「当たり前だろ? 鈴ちゃんはさっき“時間が経ってない”って思い込んでたから何時間も歩いてた。

 気が付いたら一気に疲れが来たらしいが、要は自分が、どう思ってるかがポイントだ」


 「つまり私が、もう一回、時間が経過してないと思い込めば戦える!!」



 鈴は自分に気合を入れるように頬をパンパンと叩く。



 「いや……どんなに思い込んでも、もう無理だと思うぞ……」


 「その通りよ、君はさっきの一撃で私の存在が幻だと気が付いた。

 でも、私の事は今もハッキリと見えている、体から噴き出す血もね。

 幻術と見破っても見えるモノは見えるのよ」


 「ついでに血が流れてる感覚もあるし気持ちは悪いな。

 待てよ!! 幻に感覚があるって事は……

 あんたに触れれば感触は伝わるんじゃないか!?

 胸とか!! おっぱいとか!! バストとか!!

 しかも幻なら合法!!」


 「18歳未満が、そういうコンテンツを使うのはNG。

 高校生に触らせたら、私の方が捕まる」


 「どのみちテロリストだろ?」


「それもそうだったわ。

 でも私の担当は、大勢に幻を見せる事。

 『幻術を使っちゃいけません』なんて法律は聞いた事がないわ」


 「そんなの、ある訳ないだろ……

 そうか、スカイタワー上空に異世界っぽい映像の映った魔方陣があったのは、お前の能力か」


 「ええ」


 「お前らの目的は異世界転生なんだろ?

 流星雨を自分たちに使って、勝手に引きこもってれば良かったんじゃね?

 能力使って暴れまわったりする必要あったか?」


 「……それもそうね」


 「気が付いてなかったのかよ!!」


 「でも……ゼロ様が言うなら正しい事のはず!!」



 シックスの激昂とともに健吾に目が潰れたような感覚が襲う。

 両目から血も噴き出しているのも伝わって来た。



 「どうしたの? 幻って分かっているでしょう?」


 「くっ……」



 頭の中では幻と分かっている。

 それでも健吾の中で、確かに視力は失割れてしまっているのだった。



 

 ***




 健吾がシックスと対峙している頃、ペネムエとゼウはスカイタワーまで、あと数百メートルと言う所まで近づいていた。

 ペネムエは空を飛ぶ雲マジックラウド、ゼウは体の一部を雷に変えて飛行している。



 「ゼロは、まだ展望台にいるようですが……」


 「あぁ、スカイタワーの真ん中あたりでも魔力。

 恐らくは戦闘中だな、加勢するか?」


 「……いえ、誰が誰と戦っているかも分かりません。

 ここは2人で確実にボスであるゼロを叩きましょう!!」


 「了解した」



 2人は高度を上げて、展望台を目掛け速度を上げた。

 窓は、午前中の戦闘で大きく割れており、外からでも中に入る事が出来た。



 「ゼロ!! これ以上、あなたの好きにはさせません」


 「ここでボスを確実に倒す!!」



 2人は展望台に入ると、すぐに臨戦態勢に入った。

 ゼロは誰かが来ることが分かっていたかのように、ゆっくりと椅子から立ち上がる。



 「流石に3日間、ここにいるのは退屈だったし、ちょうど良かったわ。

 そっちの、お兄さんは初めましてね?」



 ゼロはゼウに優しく微笑んだ。



 「あぁ、そこのペネムエと同じ天使のゼウだ。

 お前がテロリストの親玉と思って間違いないか?」


 「宗教団体なんだけど、まぁ、これだけ色々と壊したしテロリストでも良いわ」


 「そうか……ペネムエに聞いた通り人間でもないようだし遠慮はいらないな!!」



 ゼロの頭上に強烈な雷が落ちる。

 その眩い光に、信者だけでなくペネムエも目を覆い隠した。



 「ちょっとゼウ様……容赦無さすぎでは?」


 「俺が容赦して解決する事件なら、翔矢とペネムエで解決してるだろう?」


 「評価して頂いてるのは嬉しいのですが……」



 ゼロの体は液状化し、その辺に飛び散っている。

 だが10秒も経過しないうちに、元の人の形へと再生してしまった。



 「ビックリしたわ、耐熱と耐冷はテストしてたけど電は検証してなかったのよ」


 「そうか、で? テストの結果は?」


 「ちょっと痺れたけど、問題無さそうね」


 「という事らしい、ペネムエ、後は頼んだ」



 ゼウは落ち着いた態度のまま、ペネムエの後ろに下がる。



 「攻撃するのも諦めるのも早いですね」


 「今のが俺の最大攻撃、電以外の攻撃手段は無い。

 消耗もあるのに、ダメージにならない攻撃をしても仕方ないだろう?」

 

 「わかりました……信者の方々の動きの見張りをお願いします」


 「任せろ!!」



 今度はペネムエがブリューナクを握り前に出る。


 

 「またあなた? リベンジしに来たのかしら?」


 「リベンジとは敗北した相手に対して使う言葉です。

 わたくしは負けていません!!」


 「そういえば、味方のお兄さんが暴走したんだったわね。

 彼は生きているのかしら?」


 「……ご無事ですし、あなたには心配される筋合いはありません」


 「それもそうね」



 ゼロは瓦礫を拾い、ペネムエに投げつける。

 その能力で瓦礫は爆発したが、ペネムエは氷の盾を作り出し防いだ。



 「そんな弱い爆発じゃないのに、ずいぶんと硬い氷ね」


 「頑張って特訓しましたので、本当はもっと余裕を持って防ぎたいのですがね」



 今度はペネムエが、ゼロとの間合いを高速で詰めブリューナクを突き刺そうとした。

 だがゼロは紙一重で回避した。



 「妙ね?」


 「何がでしょうか?」


 「自分で気が付かない? 攻撃に殺気が無いわ」


 「確実に仕留めようと思っていますが?」


 「何か引っかかってる事があるなら言ってごらんなさい?」



 この一言でペネムエの攻撃の手は止まってしまう。



 「では言わせて頂きますが、あなたを含めて転生教の方々は全員、異世界転生を希望されているのですよね?」


 「えぇ、異世界こそ地球人が本来の力を持てる世界ですもの」


 「それが目的なら、何故テロ行為を?」


 「選別の為よ、異世界で地球人は例外なく強大な力を得る。

 極悪人まで異世界に行くのは厄介なだけですもの」


 「なるほど、ではハッキリ言わせて頂きましょう。

 テロ行為で犠牲になった方がいるとして、その方々は異世界転生はできません。

 そして!! あなた方、転生教も流星雨で命を落としても異世界には行けません!!」



 この一言で戦いを静観していた転生教がザワツキ始めた。



 「ゼロ様!!」


 「どういう事ですか!?」


 「我々は選ばれたのですよね?」


 「醜い世界を浄化し、異世界へと行くのですよね?」



 他にも疑問や失望の声が、次々とゼロに向けられる。



 「そうだ!! セカンド様!!」


 「あなたの能力なら、真実が導けるはず!!」


 「ゼロ様は……我々を騙していたのですか?」



 信者たちの注目が、幹部であり能力者の少女セカンドに集まった。



 「答えは……イエス……

 ゼロ様は、ゼロは私たちを騙していた……」


 「わっ我々を流星雨で、皆殺しにするつもりだったのか!?」


 「そっそれは考えすぎでは?」


 

 その問いに対してのセカンドの回答は信者たちにとって残酷な物だった。



 「答えは……イエスよ」 



 崇拝していた教祖からの信者への裏切り。

 彼らに残った感情は、怒りか哀しみか憎しみか。

 ここから何が起こるのかは、この場の誰にも予測する事は出来ない。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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