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174話:消臭剤から衝突が始まりそうです

 「ドクターのおっさん……気は済んだか?」


 「うむ、これ以上推しに時間を取らせる訳にはいかないからねぇ」


 「あはは、私はファンが喜んでくれるなら光栄なんだけどね」


 「天道ユリア……思い出したニャ!!

 悠ニャが海水浴で美人さんと一緒になったって言ってたニャ」


 「悠奈ちゃん、可愛い子よね。

 猫を飼っているって聞いたけど、悪魔族とは思わなかったなぁ」


 「ニャーも天使と人間のハーフが、この世界で生活してるとは思わなかったニャ」



 始の病室で談笑し終始空気は和やか。

 だが翔矢は、このままではいけないと思っていた。



 「取りあえず話すべき事が割と多いと思うんだが……」


 「その通り!! 宮本翔矢!!

 君はユリア様と、どういう関係だい?

 黒猫君が海水浴とか言っていたが!?」


 「だから、そういう場合じゃないって言ってるんだが……」


 「こういう関係です!!」



 呆れている翔矢の隙を付いて、ユリアは左腕にギュッと抱き付いた。



 「そそそそそそそんな!!」


  

 床に崩れ落ちるドクター。



 「嘘つかないで下さいユリアさん……

 何、ファンの心をへし折ってるんすか」


 「ファンサービスはするけど、あくまで好きなのは男子高校生なのでー」



 ユリアは悪びれる様子もなく、翔矢の左腕に頬をスルスリする。



 「ドクターのおっさんも、ポジ的には、ユリアさんが天使とハーフって所に興味持つべきでしょうが!!

 いつもの『いいデータが取れる』ってハイテンションは何処に行った?」


 「あはは……私も一応、魔力はあるから、正体隠すのは無理だったかな?

 まぁ先にグミちゃんにバラされたし」


 「ユリア様の美しさは人外の域!!

 天使とやらのハーフという方が辻褄が合う!!」


 「そっそうかぁ……

 でも、あんたら魔力を持つ生命体は最終的に全滅させるのが目的じゃないのか?」


 「蓮は、それがこの世界の為だと信じているようだが……

 私は、そんな極端な考えはしていない!!

 万が一の時は蓮は私が倒すぅぅぅ!!」


 「あっありがとう……」



 ファンの前では常に笑顔のユリアも、このドクターの前ではドン引きするしかなかった。



 「で? 結局、ドクターのおっさんとグミが何でここにいるのか聞けてないんだが」


 「うんぬんかんぬんだ!!」


 「かくかくしかじかニャ」



 ドクターとグミは、今までの出来事を詳細に説明した。



 「なるほど、ペネムエちゃんはゼウとスカイタワーか。

 だったら、そっちは任せて俺らは病院で逃げたままの2人の信者を探すか」


 「その……鷹野って人、病室に放置で大丈夫なの?」


 「ユリア様!! 私の調合した薬に間違いはありません!!

 3日は目は覚まさないし、病室も入院中の友達と一緒。

 満足でしょう!!」


 「もうキャラ変に突っ込まないからな……

 今一番の問題は、まだ病院に逃げてる2人の信者か。

 ペット場所に縛ってる信者は本当に大丈夫なのか?」


 「普通の人間だからね、一応恐怖を与えないように、入院用のパジャマには着替えさせた。

 さらにマッスル大学のラグビー部に場所の移動と見張りをお願いした。

 抜かりはないのさーーー!!」


 「んじゃ4人で探すか」



 この場から去ろうと、翔矢が病室のドアに手を掛けた瞬間、グミが大声を出した。



 「ちょっと待つニャ!! もう1つ大きな問題があるニャ!!

 ニャーの、この体を見るニャ!!」


 「まぁ、最初から少し気になってたが……」


 「正直、少し匂いもするわね……」



 グミの体は、鷹野との戦いで体に浴びたスライムでベチャベチャと汚れていた。

 


 「私の発明“チートリガー”魔力は使い切り、粘着力は無くなっている。

 だが生み出した液体は消えないようだねぇ」


 「今まで我慢してたけど限界ニャ……

 鼻がツンとして匂いも感じニャイ……」


 「病院のどこかに風呂ならあると思うよ?」


 「ニャーは猫ベースの悪魔ニャ。

 体が濡れるのは苦手ニャ」


 「基本思考は猫か、一応データとして記憶しておこう」


 「わがままな奴だな、魔法の体洗う泡の奴とかないのか?

 前に……誰か使ってるの見た気がするけど、あれなら服ごと洗えるだろ」


 「持ち合わせあったかニャー」



 グミは魔法のカバンを漁り、持ち物を確認した。 

 しかし、体を洗えそうな道具は見つからなかった。



 「これが全て魔法の道具とは興味深い!!

 私の発明には及ばなそうだがね」


 「売り物だから対価を払えば交換する……

 いや、お前とは契約したくないニャ!!」



 体の汚れを落とす方法が見つからず肩を落とすグミ。

 そんな彼女の元に、ユリアが病室の奥から小さなボトルを持って来た。

 そのボトルには“消臭用ファボリージュ”と書かれていた。

 服やソファーに、みんなが使っているものだ。



 「ねぇ、これ使ってみたら?」


 「ヘイヘイ!! よく思いついたね!!

 さすがユリア様!!」


 「いや……それ、そこまで万能じゃないでしょ?」


 「馬鹿にしてるのかニャ?」


 「え? 匂いがキツイって言ってたから、とりあえずと思ったのに……」


 「おい宮本翔矢に黒猫君!! ユリア様の好意を無駄にするとは、今日中にバチが当たるぞ!!」


 「まぁ気休めにでもなれば……」



 グミが両腕を横に広げたタイミングでユリアはシュッシュとスプレーを吹きかける。

 すると不思議な事が起こった。

 彼女の体に付着していたスライムが見る見る溶け出し綺麗サッパリと消え去ったのだ。



 「ほらね!!」


 「流石ユリア様!!」


 「俺、帰りにファボリージュ買っていくかな」


 「あっありがとニャ……

 ファボリージュ臭いのは仕方ニャイけど、綺麗に落ちたニャ」



 予想外の結果に唖然とするグミだが、彼女にとって一番の問題は解決したのだった。



 「それじゃあ、宮本翔矢!! 黒猫君!!

 転生教を見つけたらボコボコにしてくれよ!!

 僕とユリア様の護衛も忘れなく!!」



 そして、ドクターは魔力を感知する羅針盤を持ち、足早に病室から去るのだった。



 

 ***




 その頃、東京スカイタワーの中部では、北風エネルギーの斎賀鈴が、蓮を背負ったまま円形の通路をグルグルと歩いていた。

 ペネムエが翔矢を追ってから4時間は経過している、その間ずっと同じ場所を疑問も感じずに歩いているのだ。

 成人男性を背負っているにも関わらず、疲れはほとんど感じていない。



 「ペネムエ……そろそろ翔矢に追いついたかな?

 私も早く、ゼロの場所に戻らないと……

 天井は崩れたけど、どこか登れる場所はあるはず!!」



 疲れるどころか鈴の歩みはさらにペースを上げた。

 


 「おい!! さっきから何やってるんだ!?」



 しかし聞き覚えのある声に呼び止められ、不機嫌そうな表情とともに振り向いた。

 そこにいたのは、蓮の弟であり、北風エネルギーの協力者でもある渡辺健吾だった。



 「……さっきからって、何?」


 「様子が変だから黙って見てたが、鈴ちゃん、この通路、3週目だぞ?」


 「何を言っているの? さっきゼロって奴に展望台を崩されて、上の戻り方を探してるのよ?

 この広い通路を短時間で3週も出来る訳がないじゃない。

 健吾こそ……転生教の幹部……フォースとかいうのに倒されたって聞いたけど。

 ショックでおかしくなった?」


 「ドクターに貰った武器と羅針盤は奪われたみてぇだ。

 腹は刺されて痛いが……まぁ傷は浅い方だな。

 ってか、あの兄貴が負けたのか? 俺が運ぶよ!!」


 「うん、さすがに歩きにくかった。

 武器が無くて戦えないなら、変わってもらうのが得策。

 ペネムエがポーションを使ってくれて怪我は治りかけてるけど、目は覚まさない」


 「強さだけしか取り柄の無い兄貴が……」



 健吾は慎重に鈴から蓮を受け取り背負った。



 「あー状況が逆なら鈴ちゃんを背負って、ちっぱい堪能できたのになぁ」


 「……気絶しなくて良かったと心から思う」


 「で? 状況は?」


 「ゼロって奴が、かくかくしかじか。

 今、上に戻ろうとしてる」


 「爆破に再生、超運動能力……

 なんでもコザレだな、兄貴でもダメだったか。

 何か作戦とかあるのか?」


 「私のクラッシュダマーで再生が嫌になるほど粉砕する!!」


 「中々の意気込みだが……ゼロはまだ上にいるのか?」


 「健吾は常に変だけど今日は特に変よ?

 まだ数分しか経過してないし、建物がこの状態じゃ降りれるハズない」


 「……これ見えるか?」



 このままではラチが空かないと感じた健吾は自分のスマホの画面を見せた。

 ただのホーム画面だが、そこにはデカデカと現在の時刻が表示されている。



 「え? おかしいだってゼロと戦ったのは昼過ぎで……」

 


 時間の感覚に疑問を持ったと同時に、鈴の体をドッと疲労が襲う。

 倒れこんでしまった鈴の元に健吾は慌てて駆け寄ろうとするが、蓮を背負っているため、支えるのは間に合わなかった。



 「おい!! 大丈夫か」


 「はぁ……変なところ触るな……痴漢」


 「まだ触ってねぇよ!! ってか触るつもりねぇよ!!

 俺だって状況くらい弁えるは!!」



 とはいえ、膝を付く形で鈴は自分の体を支えている。

 その上、減らず口も叩けているので、ひとまずは安心した。



 「可愛そう……あのまま私の幻術に掛かったままなら、ボロボロに疲れる事も無かったのに」


 「誰だ?」



 聞き覚えのない女の声に反応し声の主を確認すると、背が高い女が立っていた。

 不気味な仮面にダボッとした白い装束、それでもスタイルの良さが分かる。



 「私は転生教幹部……シックス。

 足止めだけが任務だったけど……戦ってみる?」


 「おぉ!! スタイル良い姉さんとの戦い!!

 変なところ触っても不可効力だよな?」


 「まぁ……触れるものなら……

 でも私の事なんて触っても楽しく無いと思うわ」


 「健吾待って……武器がないのに、余裕見せてる場合じゃない!!

 ここは私が……」



 鈴はけん玉型の武器、クラッシュダマーを巨大化させ、杖のようにして立ち上がろうとする。

 しかしフラついてしまい、立ち上がる事は出来なかった。



 「余裕ないのはお前だ!! 兄貴置いておくから一緒に休んでろ!!」



 背負ったばかりの蓮を鈴の隣に寝かせるように下ろす。

 そして蓮のネクタイピンを外した。



 「それは……蓮の……」


 「いや、こいつは誰でも使えるように開発されている。

 俺も剣道部だし、何とかなるだろ?」

 【リアライズ】



 ネクタイピンは、日本刀型の武器、ソルへと形を変えた。



 「お待たせしました!! 御嬢さん!!」


 「御嬢さん……顔隠してるけど、私がだいぶ年上……」



 スカイタワー中部で健吾とシックスの戦いが幕を開けるのだった。


 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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