表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/285

173話:捕獲からファンサービスが始まりそうです

 翔矢とユリアは病院の中庭で、サングラスのようなものを装備し、更に虫取り網を持っていた。

 かなり異質な格好だが、幸いなことに今は他に誰もいない。

 どうやら、これが魂の捕獲に必要な装備らしい。



 「ユリアさん……やり方、本当にこれで合ってます?

 後でバチとか当たらないですか」


 「大丈夫よ!! 魂単体って人間みたいなハッキリした意思はないから。

 一番強い想いと、自分の名前くらいは分かるけどね」


 「やるしかないですね……」


 「どっちが早く始君の魂を捕まえるか競争よ!!」


 

 乗り気じゃない様子の翔矢に対して、ユリアは虫取り網をブンブン振り回しヤル気を見せている。



 「まぁ、やるしかないですね……」


 「位置に着いて……ヨーイ……ドン!!」



 ユリアの合図で、翔矢も魂を捕まえに掛かる。



 「ヨシッ!! 捕まえた!!」



 数秒で翔矢の虫取り網にはテニスボールサイズの光の玉が入った。

 魔法のサングラスを掛ける事で見える、これこそが魂らしい。



 「さすが翔矢君、手が早いわね。

 でも残念、それは始君のじゃなくて、お婆さんの魂ね」


 「そうなんすか? ごめんなさい」


 

 魂に言葉がどの程度通じるのかは分からないが、翔矢は一言お詫びをして魂を開放した。



 「次行ってみよーーー!!」


 「あのぉユリアさん、やる前に言えば良かったんですけど、少し数が多くないですか?」


 「病院だからね、亡くなった人の魂は多いのよ」


 「それって成仏してないって事なんじゃ……」


 「亡くなってから49日は、魂はその場に留まるのよ。

 だから、そういう心配はいらないわ」


 「なんか、魂捕まえてると思うと精神に負担が……」



 気を落としながらも、翔矢は次の魂を捕獲した。



 「翔矢君、上手!!」


 「こんなの褒められても嬉しくないですよ」


 「そう? じゃあ翔矢君イケメン!!」


 「じゃれてる場合じゃないでしょ……

 判定お願いします」


 「この魂は……惜しい!! 赤ちゃんの魂」


 「惜しいとかいらないです……

 あと何か心に来るので判定は正解か不正解かでお願いします」


 「了解!! 近くでジッと見ないと分からないのよね。

 普通の天使なら、すぐに見分けれると思うけど!!」



 ユリアも手を動かし、魂を捕獲する。

 しかし、始の魂では無かったようで、すぐに開放した。


 

 「っていうか、本当にこの中に始の魂が、あるんですか?」


 「生きてる人間の魂は肉体から大して離れられないわ。

 病院の中で、ここが魂が一番多かったから、可能性は高い!!

 あっ、それ全部ハズレね」



 翔矢も腹をくくったのか、3つほど魂を捕まえて、まとめてユリアに見てもらっている。

 この作業を30分近く繰り返したが、始の魂を見つける事は出来なかった。



 「はぁ……はぁ……」

 

 「おかしいわね……この中に無いのかしら……」



 疲れ果てた2人は座り込んでしまい、背中合わせで支え合い呼吸を整えている。



 「翔矢君、始君と会話したって言ったじゃない。

 聞いたりできないの?」


 「実は、さっきから試してるんですが応答無くて……」



 ここで2人同時に力尽き、中庭で寝転んでしまった。

 体は疲れているが、動き回ったからか、心は落ち着いていた、

 その体勢で空が視界に入ったが、そこに光輝く1つの魂が2人の目に入る。



 「魂って、形ないだけあって、どこまでも上に行けるんですねぇ」


 「あはは、人の手に届く範囲までしか登れないわよ?」


 「じゃあ、あの魂は?」


 「多分、生きた人間の魂ね。

 肉体の半径何メートルとかしか動けないの。

 この場合は、肉体の近くなら、上下関係ないわ」


 「へぇ……色々と細かいんですね」


 「私は、ほとんど日本暮らしだから、うろ覚え」



 なぜか心が澄み切った2人は、同時にため息を憑いた。

 その後、数秒沈黙して、同時に飛び上がった。



 「「絶対アレじゃん!!」」



 よく見ると、魂のある位置は、始の病室の近くだった。



 「今までの苦労、何だったんすか!?」


 「ゴメン!! 後で何でも言う事聞くから許して!!」



 2人は猛ダッシュで始の病室に向かった。

 無我夢中な上に、トラブルも無かったので、体感的にではあるが、すぐに到着することが出来た。



 「お邪魔します!!」


 「翔矢君!! そこの窓よ!!」


 「ヨッシャーーー」



 ここまでの全力疾走でハイになっていた翔矢。

 勢いよく窓を開けて、無事に魂を捕獲した。


 

 「ユリアさん!!」


 「うん、始君の魂で間違いないわね。

 あとは体の中に戻すだけよ!!」



 ユリアの指示通り、翔矢は魂の入った虫取り網を、始の体に被せた。



 「あれ?」


 「おかしいわね……」



 数秒が経過した後で網をどけたが、そこには光輝く魂がフワフワと浮かんでいた。



 「また何か間違えたんじゃないっすか? 手順とか」


 「確かに私は天界学校に通ってないから知識は浅いけど、こんな大事な事は間違えないわよ!!」



 翔矢に疑いの眼差しを向けられ焦るユリア。

 その時、翔矢の頭の中に声が響いた。


 

 「えっ?」


 「どうしたの?」


 「また始の声が聞こえて……

 『戻りたくない』って」


 「魂が肉体に戻るのを拒否した?

 そんな事例聞いた事が無いわね……

 そもそも魂単体に、そこまでの意志は無いはずなんだけど……」


 「でも確かに聞こえたんです」


 「うーん、じゃあ何で戻りたくないか聞いて見たら?」



 ユリアに言われた通り、翔矢は始に心で話しかける。

 それで返事が無いので、今度は声に出して、入院中の始に向かって大きめの声を出した。



 「おい!! さっき普通に話しただろ!?

 急に黙ってるんじゃねえぞ!!」


 「ちょっと翔矢君!! 相手は重症の病人だから!!」



 普段の印象と、あまりにかけ離れた翔矢の口調にユリアは戸惑いながらも羽交い絞めで彼を止めた。



 「すっすいません、つい昔の癖が……

 始もゴメン!!」


 「昔の癖? まぁともかく話せないみたいね。

 何か条件でもあるのかしら?」


 「まともに話せたの、俺が初めてって言ってたので、なんかあるかもですね」


 「魂は、ここから遠くに動けないし……次はどうする?」


 「ペネムエちゃんとかも、どっか行っちゃったし……

 俺はスカイタワーに戻ってみます。

 ゼロが話を聞いてくれれば何か分かるかも」


 「そっか……戦闘あるかもって考えると私は戦力外かな」



 今後、何をするべきかユリアが頭を抱えていると、コツンコツンと、こちらに向かってくる足音が聞こえた。



 「また看護師かしら?」


 「早く隠れないと!!」



 2人は慌てて、奥のクローゼットに入ろうとした。

 だが今回は幸か不幸か、間に合わずに足音の主に見つかってしまった。



 「誰だい!?」


 「誰ニャ!?」


 「「こっここれは……ニャ?」」



 看護師が来たと思いパニックになった2人だったが、すぐにその独特の語尾に気が付いた。



 「あれ? グミ……とドクターのおっさん!!

 どういう組み合わせ?

 こんな所で何してるんだ!?」


 「それは、こっちのセリフニャ!!」


 「まぁ彼を探すのも目的だったし良いじゃないかー

 それにしても彼女は……」



 ドクターはユリアの方はズイズイと近寄る。

 


 (ドクターって北風エネルギーの人工魔力を作ったっていう?

 まさか……私の正体に気が付いて?)



 ユリアは焦りを見せるが、持ち前の演技力で必死に隠す。

 だが正体がバレている場合、どうする事もできない。



 「せっせっせ声優の天道ユリアさんですよね?

 さっさサインと写真と……握手とかダメですか?」


 「ふぁ?」


 「は?」



 ドクターの意外な反応に腰を抜かすユリア。

 翔矢も、知っているドクターとあまりに様子が違うので目を点にした。



 「だっだダメですよねーーー」


 「だっダメじゃないわ!! ファンサービスは私のモットーよ!!

 こういう状況で頼まれると思わなかったから驚いただけー」



 ユリアの方からドクターの右手を両手で握りブンブンと激しい握手をする。

 ドクターは顔を真っ赤にして固まってしまった。



 「サインは何にすれば?」

 

 「この白衣に!! 『ドクちゃんへ』って書いてもらえますか?」


 「はいはーい!!」



 続けて肩を組み、スマホで写真撮影を済ませ、ご満悦のドクター。

 その様子を翔矢とグミは、頭を抱えてながら、ただ待つのだった。 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ