表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/273

169話:呼び名から目的が始まりそうです

 水瀬始の病室で、双葉サヤと遭遇した翔矢。

 警戒して距離を取りながら、相手の目的を探ろうとする。



 「お前……何でここにいるんだ?」


 「ちょっと私なりに調べてたんですよ。

 転生教の教祖ゼロについて。

 息子さんが入院してると聞いて話を聞こうと思ったのですが……

 無理そうですね」



 サヤは面会用のイスに腰を掛け始の顔をジッと見つめた。



 「えっ……話ならでき……」


 『ダメ!! 僕とまともに会話できるのは君だけだ。

 それに、こいつは母さんたちに能力を配ったやつだよ!?』


 

 サヤに、うっかり話しそうになった所を始に止められて、翔矢はハッとした。

 敵対するような雰囲気を出していないだけで、彼女の目的などは一切不明のままだったのだ。



 (あれ? でもさっき美人な人が病室にいるって言ってたよな?)



 始はサヤを敵視しているが“美人な人”が病室にいると言っていた。

 サヤは美人なのだが、敵視している相手に、褒めるような表現をした事に翔矢は違和感を持っていた。



 「ダーリン? どうしました?

 話なら何とかで固まっちゃいましたけど」


 「あぁ、おっ俺も話に来たんだけど、厳しいなぁて」


 「でもさっき、誰かと話してましたよね?」


 「それは……電話だ!!」



 先ほどの会話を聞かれていたなら、この回答には無理がある気がした。

 それでも、あの状況の言い訳を他に思い付かなかった。



 「ふぅん、誰とですか?」


 「個別の案件については、お答えできません」


 「ダーリンは政治家か何かか?

 誤魔化すのヘタすぎでは?」


 「……あんたが能力配ってる目的を正直に話せば教えてやる」


 「交渉は上手なんですね、教えたくないので、諦めます」


 「それはそれで残念だ、で?

 あんたの配った能力で、とんでもない事件が起こってる訳だが?」



 恐らくサヤは悪事をさせようと能力を配っている訳ではない。

 以前問い詰めた際も「銃工場で働く者は悪人か」と返された。

 それでも悪用される可能性が高いことは承知なはず。

 翔矢は嫌味の意味も込めて訊ねた。



 「私だって……ここまでの事になるなんて……

 想定外なんです……だから……こうやって調べて……」



 翔矢の予想に反してサヤは泣き出してしまった。

 彼女の素性が分からない以上、演技の可能性も捨てきれない。

 しかし、翔矢は彼女の涙が演技とは思えなかったし思いたくなかった。



 「泣かれてもな……能力配るの止めれない事情でもあるのか?」



 サヤは1回だけコクリと大きく頷いた。



 「だったら……せめて悪いことに使った奴は止めないとな?」


 「ダーリン!!」



 翔矢の真意を察したサヤの表情はパッと明るくなる。


 

 「……その呼び方は止めてくれ、仲間だと勘違いされる」


 「そうですね、仲間以上に親密な関係ですもんね」


 「いや、ほぼ話した事ないだろ」


 「まぁ、翔矢君からしたら、そうですよね」


 「君付けで呼びやがったな」


 「ダーリンは止めろと言われたので」


 「素直だな」


 「言いたくない事が多いだけで、友達の頼みは聞きますよ?」


 「友達って……」


 「まぁ、そう嫌そうな顔をなさらず!!

 さぁ!! 行きますよ!!」


 「えっ? 行くってどこに?」



 抵抗する間も無く翔矢はサヤに手を引かれ、病室の外に連れ出されてしまった。

 始の方を振り向いたが、彼が話せる事を隠してほしいと言っている以上、何もできない。



 『もっと、お話ししたかったけど……

 母さんの事は頼んだよ!!』



 その声に翔矢はコクリと頷いた。




 ***




 病室を出た翔矢とサヤ、何故か2人はコソコソと隠れながら、病院の廊下を進んでいる。


 

 「なんで隠れてるんだ? ってか何処に行くの?」


 「さっき病室に男の子いたじゃないですか」


 「おう」


 「あの子、医学的には生きてるんですけど、天使の解釈的には亡くなってる状態なんです」


 「と言うと?」


 「治療を受けている体は、ただの抜け殻です。

 魂が入ってませんでしたからね。

 どんな医療を受けても、彼が目を覚ます事はありません」


 「分かんないけど、この世界でも、そんな事あるんだな」


 「いいえ、ありえません。

 肉体が生きている状態で魂を切り離すのは相当上位の魔法です。

 翔矢君に分かるように言うと170キロのストレートくらいの難易度です」


 「なんで俺が野球好きな事まで知ってるんだ?

 まぁいい、じゃあ始は何で、そんな状態に?」


 「どの道、この世界で魔法は使えませんからね。

 何か悪い偶然が重なってしまったのかもしれません。

 カルテを少し見ましたが、頭を相当強く打ったのが入院の理由みたいです」


 「……事故とか?」


 「そこまでは書いてませんでしたね。

 おっと看護師が近いです、隠れて!!」



 サヤに手を引かれて、大きな観葉植物の裏に隠れる。



 「だから、何で隠れるんだ?

 病室ならまだ分かるけど」


 「わたし、こんな格好ですし」


 

 観葉植物の陰で体勢を低くしたまま、サヤは自分のスカートをヒラヒラさせた。

 サヤのスカートはかなり短く、中の布までチラリと見えて翔矢は固まってしまう。



 「ちょまままま何やって?

 ってか気にしてるんならそんな短いスカートで出歩くな!!」


 「ちょい!! 大きな声出すと見つかりますよ!!

 というかスカートの長さではなく単純に服装を言ったんです!!

 なんで病院に占い師がいますか?」


 「自分で言うなよ……

 なら俺は普通に歩いても大丈夫じゃねぇか」



 翔矢はサヤを無視してドンドンと前へ進んでいった。



 「ちょっと!! 翔矢君!!

 行き先は、分かってるんですか!?」



 サヤがそう叫んだ頃には、翔矢の姿が見えなくなってしまっていた。

 節電の為か病院の廊下が、やや暗めなので、どこで曲がったのか分からない。

 看護師がいないのを見計らって、サヤは駆け足で翔矢を追う。



 「えっ?」



 しかし、翔矢はすぐに引き返してきた。



 「翔矢君、どうしました?」


 「悠菜がいた!! 東京にいるの見られたらマズい!!」


 「悠奈ちゃん? 東京に来てるって言ってましたね。

 まぁ慌てなくても、病院は広いので、下に降りるルートは、いくらでもあります」


 「下に向かおうとしてたのか」


 「いや、本当に何処に向かおうとしてたんです?」


 「どこだろ?」


 「……もしかして頭悪いです?」


 「否定はできないね。

 ってかサヤさんは、どこに向かおうとしてるの?」


 「始って子の魂を探そうかと。

 骨は折れますが、探す方法はあるのです。

 肉体が生きている以上、魂は、この世界の何処かにあるはずなのです」


 「分かった、ペネムエちゃん見当たらないし、サヤさんに付いて行くよ」


 「私と一生を共にする?」


 「言ってねぇよ……」


 

 2人がようやく目的を共有したその時だった。



 「キャーーー!!」



 病院中に響き渡るような女性の悲鳴が聞こえた。



 「今のは……悠菜の声だ!!」



 翔矢は一目散に悲鳴の方へ向かう。



 「ちょい翔矢君!! 見られたらマズいって言ってませんでした?」



 その後をサヤも慌てて追うのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ