166話:契約から別行動が始まりそうです()
避難所も兼ねている病院のペットを預かっている倉庫。
ここでペネムエ達は30分ほど休憩を終えて、再びスカイタワーを目指す準備をしていた。
「翔矢様は……」
「まだ目を覚まさないニャ。
なんか、すごい怪我をしたって聞いたけど、本当なのニャ?」
翔矢の容態を確認していたグミは、そのシャツをスッと捲った。
「ちょっわっばっ」
ペネムエは慌てて両目を手でふさいだが、指の隙間から、しっかり様子を見ている。
「そんな古典的な反応は、しなくていいニャ。
ってか見慣れてるだろ……」
グミは呆れてため息をついてしまった。
「だいたい見る覚悟が出来ているか、それどころじゃない状況がほとんどですので」
「怪我は傷跡すら分からないくらい治ってるニャ。
服に血がベットリで激しい戦闘の後なのは分かるけどニャ。
いったい、どんだけ上級の回復アイテム使ったニャ?」
「わたくしのは使い切ってしまって、ゼウ様のを使って頂いたのですが……」
ペネムエとグミの視線が同時にゼウへと向かられる。
「俺のは1銅貨ショップで買った安物だ」
「1銅貨ショップですか?」
「それ気休めというか、使わないよりマシ程度ニャ……」
「よく、それで“俺のを使え”とか言えましたね……」
「治ったんだから良いだろ?」
ペネムエとグミは呆れて何も言えなくなってしまったがゼウは特に気にした様子は無い。
この話を聞いていたドクターは興味を示し翔矢を観察した。
「宮本翔矢の怪我の治りが早いというのは今回が初めてかい?」
「いえ……何度かありました。
厳しい戦闘のたびに、翔矢様の怪我の治りは早くなっている……気がします」
「天使も魔法でのダメージからの回復は早いが、実体のある魂だからというのが理由だからな。
肉体のある生命体が回復魔法も無しに、この回復は以上だ」
「ちなみに悪魔族は多少の怪我なら、我慢すれば動けるニャ」
ペネムエ、ゼウ、グミの説明をドクターは大きく頷きながら、珍しく静かに聞き入っていた。
「なるほどねぇ」
「おっと、そろそろ出発しなければですね」
「翔矢は、動かすわけにはいかないよニャ?
ニャーは残って見てるニャ、悠ニャもいるしスカイタワーにも行く訳に行かないニャー」
「悪魔族が、いてくれたら頼もしかったんだが……
俺もスカイタワーに向かうか」
「僕は……スカイタワーの映像は、ここで確認できるし残るよ。
一番強いのと一緒にいた方が安全だからね」
ドクターは視線をグミに送った。
「言っとくけど、直接的なボディーガードはできないニャ。
悪魔族は基本的に対価と契約制だからニャ」
「じゃあ、これあげるからボディーガード頼むよ!!」
ドクターはどこからともなく鉄の錆びた剣を取り出した。
「なんニャこのナマクラは?」
「これって……ちょっと見せてください!!」
ペネムエはドクターから剣を取り上げた。
「これ聖剣ですよ?」
「それも、かなり大きな力を持っているな……」
「聖剣!? ってこんなナマクラがニャ?」
「聖剣は悪用を避けるために、選ばれた者以外には、この状態なのです。
かなり古い代物なのは代わり無さそうですが」
「何故、お前が聖剣を持っている?」
「さっき博物館に展示しているのを見かけてね。
魔力を検知したので持ってきたのさ!!」
「そんな勝手に……」
ペネムエは頭を抱える。
「あの展覧会は北風エネルギーの主催。
展示物を掘り出したのも、ウチの会社だから問題は無い。
しかも博物館は、一部崩壊しちゃったからね」
「いや、聖剣は受け取れないニャ。
ほかの世界に持ち出しできない代物だから悪魔族の取引には価値がニャイ」
「グミ様、今は聖剣でドクター様の護衛を引き受けて頂けませんか?
聖剣は事件が解決した後で、わたくしが対価を払い引きとりますので」
「それなら問題ないけど、どうしてニャ?」
「ノーマジカルに聖剣など生まれる訳がないので調べたいのです」
「じゃあ契約成立ニャ!!」
グミが黒い本に何かを書くと、ペネムエとドクターに寒気が走った。
「ってことで、いってらっしゃーい!!」
ドクターはゼウとペネムエに手を振った。
「この男……調子が狂う」
「わたくしも同じ意見ですが、今は先を急ぎましょう!!」
ペネムエとゼウは、駆け足で倉庫を出て行った。
***
ペネムエとゼウは駆け足で病院敷地の出口へ向かっていた。
「雷鬼の力を使えばすぐに付けるんだがな」
「さっき、それでバテテタじゃないですか。
今回ばかりは敵を甘く見ない方がいいです、あのリールが倒されてしまうほどの相手ですので」
ここまで走ったところで、ようやく病院出口を示す門が見えた。
「ここまで来れば人目も無いのでマジックラウドで……」
ペネムエが大声でマジックラウドを呼ぼうとした、その時、ゼウが彼女の口をふさいだ。
「待て!! 誰か来る」
「何処かから怪我をされた方が搬送されたのでしょうか?」
病院の方へと向かってくる団体を物陰から見ると、その集団は白装束を纏っていた。
遠めなので、一瞬白衣のようにも見えたが、あれは転生教の信者の服だとペネムエには分かった。
「転生教? この病院に来るつもりでしょうか?」
「悪魔族に知らせるか?」
「グミ様は、悠菜様の側を離れたくないでしょうし、ドクター様の護衛を依頼してしまいましたからね。
様子を見て、わたくし達で対処しましょう」
「2人で行く必要があるか?」
「まだセブンスクラスの実力者がいるかもしれません。
単独行動は控えましょう」
「了解」
2人は向かってくる転生教に備えるのだった。
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