165話:病院から再開が始まりそうです
「さすがに、ここまで来れば大丈夫だろう」
ゼウ、ペネムエ、ドクターそして気絶したままの翔矢の4人は、何とかセブンスから逃れ、大きな建物の敷地内へと入っていた。
「ビリビリハンド君、それはフラグだから言わないでくれたまえ!!
振り向いたら後ろにいる敵がいるパターンだ」
「ドクター様、冗談でも言わないでください」
ペネムエはゼウに背負われていた翔矢を受け取り、ゆっくりと受け取り近くに合った石のベンチに寝かせた。
「ところで、ここはどこだい?」
「夢中になって逃げたし俺に土地勘は無い。
場所までは気にしなかった」
「ドクター様は東京にお住まいなのですよね?」
「いやいや、あの速度で移動されたら分かる訳ないだろう?」
ドクターはスマホの地図アプリを開き現在地を確認した。
「ふむ大学病院に来たようだ」
「病院……翔矢様を休ませてあげられるとよいのですが……」
「俺もせめて雷鬼……ライカの魔力が回復する程度は休みたい」
「僕も、さすがに蓮と鈴君が気になって来たね。
データの打ち込みも落ち着いたし、ちょっとスカイタワーの監視カメラでもハッキングしてみるかな?
病院内は流星雨の特効薬やら、テロの怪我人も運ばれてるだろうね。
大忙しだろうが、逆に人ごみに紛れこめるだろう」
今、横にしたばかりの翔矢をすぐに動かすのも気が引けたが、日が落ちると少し気温が下がっていた。
ペネムエとゼウも建物の中に入った方が賢明と判断し動き出そうとした時だった。
近くの木がガサガサと揺れた。
「魔力!? 新手ですか!?」
今日は戦闘続きだったので特に気が張っていたペネムエは、物音の方を鋭く睨む。
“新手”というワードに反応したゼウは反射的に、その方向に雷を打ってしまった。
「ニャニャニャニャニャ!!」
その攻撃を受けビリビリと痺れたのは1匹の黒猫だった。
「なんだ猫か」
「なんだじゃないですよ!! 動物虐待は大罪です!!」
「僕は人間は、どうなっても構わないが、動物は大事にするべきと思っているよ?」
冷や汗をかいているものの、謝罪の言葉がないゼウをペネムエとドクターは冷ややかな目で見つめながら黒猫の方へ駆け寄った。
「猫様、大丈夫ですか!?」
「すっすまなかった!!」
「筋肉が痙攣しているって事は生きてるねぇ」
ドクターが猫の腹に手を当てようとした、その時だった。
「いきなり電撃打つ馬鹿がどこにいるニャ!!
おまえは電気ネズミか?
こんニャろうめ!!」
黒猫は少女の姿へと変わりゼウに殴りかかった。
ゼウの顔面に強烈な一発が入り倒れてしまった。
「あれ? グミ様ではないですか?
なぜ東京に?」
「おぉペネムエ!! ゆうニャに連れてこられたのニャ。
パパさんは医者だからニャ、流星雨の特効薬を打つのに借りだされたのニャ」
「なるほど、悠菜様もこの病院に?」
「この病院は避難所も兼ねてるからニャ。
ゆうニャは、子供の面倒見たりしてるニャ」
「悠菜様らしいですね、しかし顔見知りがいると、ここにはいずらいです。
東京に、わたくしや翔矢様がいるのが見られたら、言い訳できません」
もともとペネムエたちが東京に来たのは悠菜からのメッセージがきっかけだった。
なので東京にいる事は知っていたが、まさか出くわすとは思わなかったのだ。
「ゆうニャの居場所は、常に把握できるようにしてるニャ。
今はパパさんも3階にいるから下にいれば大丈夫ニャ」
この一言でペネムエはとりあえず安心し、人間状態のグミに案内され病院の中に入っていった。
「おいそこの金色、いつまで寝てるニャ」
「くっ……このパワー、悪魔族か」
巨大なタンコブが出来てしまったゼウは、頭を押さえながらゆっくりと起き上る。
「この方は、グミ様。
お気づきの通り悪魔族で仲間です。
悠菜様と言う人間に猫のペットとして飼われているのです」
「人間態で、尻尾や耳まで人間と同じとは……
悪魔の中でも、相当上位じゃないか」
ゼウは、今受けた一撃でグミの力を理解したようだった。
「天使は位みたいなの気にするよニャー。
悪魔は天使みたいにA級とかないし、個人事業みたいな感じだから、自分がどれくらいとか気にした事ないニャー」
「まぁ、おのおのの事情は落ち着ける場所で話すとしてだ。
君も戦力にカウントしていいのかな?」
ドクターはグミにズイズイと詰め寄っている。
「こいつ……前にペネムエをさらった、北風エネルギーじゃニャイか!!」
「今は味方と思って大丈夫そうです」
「そうそう、今は言い合ってる時じゃないよ!?
過去の事は水に流そうじゃないかぁ!!」
「それ……こっちのセリフニャ……」
ひと悶着はあったが、グミの案内で、小さな資材置き場に来る事が出来た。
そこで、本日何回目かの情報交換を行った。
「人目に付かない場所で思い付いたのはここくらいニャ。
避難した人のペットを集めているニャ。
見回りの人は、1時間おきだけど、さっき来たばかりニャ」
避難所とはいえ、ここは病院、ペットを中に入れる訳には行かないので、資材置き場に預けられているようだ。
といっても中には空調もあり比較的過ごしやすそうだった。
中の犬や猫たちは、飼い主から離れ、少し不安そうにも見えるが、吠えたりせず寝たり気ままには過ごしているように見える。
「わんわん!!」
1匹のポメライアンがソファーベットに横にした翔矢に寄ってきてペロペロと頬を舐めて来た。
「お犬様、翔矢様はお疲れなので、休ませてあげてくださいね」
ペネムエはポメラニアンを優しく抱きかかえ翔矢から離した。
「ポメ座衛門は、大人しい子だから、ゲージに入れられニャかったんだけど翔矢が心配なのかニャ?」
グミからポメ座衛門と呼ばれたポメラニアンは、離しても翔矢をジッと見ている。
「面識はないでしょうに、ポメ座衛門様ですか?
お優しいでございます、怪我の回復は、済んでるので大丈夫ですよー」
「くぅーん」
ペネムエも、動物に囲まれると精神的に癒され、ポメ座衛門の頭を撫でた。
「さて動物がたくさんで癒されたことだし、ハッキングしますか!!」
ドクターは、そこら辺に転がっていた段ボールにノートパソコンを置き、すごいスピードでタイピングを始めた。
「大企業に勤めてる癖にさらっと犯罪するニャ」
「法律守って対抗できる相手じゃないしね?」
ものの数分で、ドクターのパソコンにはスカイタワーの監視カメラの映像が映る。
「録画映像の確認は、何時間分もあるし大変だぁ
とりあえずライブ映像で、蓮と鈴君がいるかだけでも探すか。
あの状況で、まだスカイタワーにいるなら、もう死体かもだが」
「鈴様は、わたくしと翔矢様の為に、あの場に残ってくれたんです!!
侮辱はやめてください!!」
「僕は、一番可能性の高い状況を考察したまで!!
まぁハズレだったみたいだから、謝罪するよ」
ドクターはパソコンを、ペネムエの方に向けた。
ゼウとグミも一緒に覗き込む。
そこには、蓮をおぶり、スカイタワーをグルグル回る鈴の姿があった。
「え? これライブ映像ですよね?
何時間も転生教を探しているのでしょうか?」
「ライブ映像だけじゃ事情は分からないが……
ここのカメラを巻き戻してみるか」
映像を逆再生してみたが、鈴は同じ場所を、ずっとグルグル回っているようだった。
それも蓮を背負ったまま。
「うーむ、天使と悪魔が合計3匹もいるんだ。
何か見解はないかい?」
「鈴様は、人口魔力を投与しておりましたが、それで何時間も蓮様を背負って動けるのでしょうか?」
「いや人工魔力は、スタミナと言う面では、むしろマイナスに作用する。
とっくに倒れてなきゃおかしいね」
「この映像だけでは何が起こってるか分かりませんが……
能力者から何らかの攻撃を受けているのは間違いありません。
普通に考えれば、足止めが目的かと」
その話を聞き、ゼウとグミも大きく首を縦に振る。
「俺も同じ意見だ」
「私も同じ意見ニャ」
「君たち、何も考えてないね!?」
「ペネムエは、天界一の知識人だ。
俺が何か意見を述べても意味は無い。
状況もペネムエの方が理解しているだろうしな」
「悪魔族は、そもそも魔法の系統が独特だからニャ。
天使の意見のほうが当たってる可能性が高いニャ」
こんな事を言っているが、ドクターの目には、この2人が考えているようには見えなかった。
「転生教は、まだスカイタワーにいるのですか?」
「うーむ、ぱっと見で映像に映っているのは50人ほどかな?」
「わたくしが、いた時よりも、減っているようです。
やはり、何処かに移動してしまいましたか」
「だが、事件の黒幕、ゼロはまだスカイタワーにいるようだ」
「ならば、体力の回復を待ってスカイタワーに向かいます。
鈴様も心配ですし、たいていはボスを倒せば戦いは終わります。
先ほどは撤退を余儀なくされましたが、次は確実に……」
「だと……いいいがね」
次の目的地を決めたペネムエ達は、少しだけ休むことにしたのだった。
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