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161話:情報から映像が始まりそうです

 翔矢とペネムエは北風エネルギーの研究員であるドクターと、お互いの持つ情報の共有を続けていた。


 

 「さっきも言ったけど流星雨については心配しなくていいね。

 特効薬は都の職員が総出で配っている!!

 身動きの取れない年寄り何かも大丈夫だろう」


 「その特効薬というのを打てば100パーセント命は助かるのですか?」


 「うむ、こういう人工的な兵器への特効薬は絶対だと言い切れる!!

 自国の兵士が、大量に巻き添えを食らって死にました!!

 なんてシャレにならないからね、そういう風に作ってあるのさ!!」


 「なるほど」



 科学については、まだ知識の浅いペネムエだがドクターの説明で一応の納得はできた。



 「本当だ!! 黄色い斑点が、もう薄くなってる!!」



 ペネムエとドクターの話を聞きながら、自分の体の斑点を確認していた翔矢の腕を、ドクターはガシッと掴んだ。



 「いやいやいや!! 早すぎる!!

 僕のを見てごらんよ!!」



 急にドクターのテンションが上がり驚いた翔矢だったが、言われた通り、ドクターが自らまくった腕を見た。


 

 「まだ、黄色いっすね」


 「君よりも2時間以上は早く打ったが、まだ、この程度!!

 受けた量の差か? それとも君が何度も“その力”を使ったせいで体質が変化したか?

 これは研究のしがいがある!!」

 


 ドクターは、どこからともなく取出したノートパソコンを地べたに置き、高速でデータを打ち込みだしている。

 これは自分の世界に入っているという奴だろう。



 「あんた本当にテンション高いな。

 一緒に行動するの疲れそう」


 「はっはっはーーー!! よく言われるよ!!

 だいたい夜更かしして研究しているのが原因かなぁ?

 常時深夜テンションというやつさ!!」



 ドクターはタイピングをしながら話を続けた。



 「あー、そうそう。

 流星雨は問題ないと言ったが、これは特効薬を打ったらの話だ?」


 「? 数は足りているのですよね?」


 「うむ、全国民分を確保して東京で保管していたようだ。

 これだけ人がいないのだから、運搬も支障はないだろう」


 「ならば問題ないのでは?」


 「自ら死を選ぼうとする者にとって、今回の事件は絶好の機会だと思わないかい?

 3日ほど待てばポックリだからね?」



 ドクターは、パソコンの画面を翔矢とペネムエに向けた。

 そこに表示されていたSNSには『ちょっと異世界行ってくる』『もう働かなくていい』『転生教最高かよ』

 など死を受け入れているとも言えるような書き込みが数えきれないほど並んでいた。



 「そんな……」


 「ちなみに聞くけど、これで死んだら異世界に行けるのかい?」


 「……確かに異世界転生の方法は、いくつか存在します。

 しかし今回の流星雨で命を落としたとしても、病気や怪我で亡くなったのと変わりません。

 それだけでは条件は満たせません」


 「なるほど、この書き込みをしてるやつは、ただ死ぬだけという訳だねぇ」


 

 この後、ドクターはツボに入ったように大笑いをした。



 「大勢の命がかかっているのですよ!!

 何が可笑しいのですか!?」



 ペネムエは、思わず怒鳴ってしまった。

 今にも手が出てしまいそうだったが、それだけはグッと堪えた。



 「『絶対に助かりますよ!!』って言ってるのに死を選択する奴らの命だよ?

 これ以上どうしろと?

 しかも、この非常時に面識もない奴らの心配なんてしてる暇は無いねぇ!!」


 

 ドクターの言動は間違いとは言いきれない。

 だがハイテンションでヘラヘラした態度が、この状況に相応しくないのは確かだろう。

 ピリピリとした2人の会話に、翔矢は恐る恐る入って来た。



 「全員を助けれるかどうかは別にして、異世界に行きたいって人だけでも何とかならないんすか?

 今、死んだら異世界転生出来るって思ってても、それは騙されてるって事っすよね?

 それが分かれば、特効薬を打つんじゃ?」


 「確かに死んで異世界に行けるなら行く、と思ってる方は騙されているのと同じですからね。

 そもそも、あの演説だけで異世界の存在を……信じるとは思えないのですが」


 「蓮っておっさんも、そう言ってたな」



 ペネムエは一瞬、言葉が詰まった。

 今の翔矢は自分の事を忘れてしまっている。

 なので、スカイタワーでの会話や出来事については、あまり触れるべきではないのだ。



 「いや、異世界の存在なら信じる人は信じたと思うよ?

 もしかして君たち、あれを見なかったのかい?」



 ドクターは再びノートパソコンをカタカタと操作し画面を2人に見せた。

 今度は今の時代なら誰でも利用しているような動画投稿サイトだった。

 

 その動画では、スカイタワーの上に巨大な魔法陣が展開されていた。

 その中には、日本人が異世界と言われて想像するようなファンタジーな世界が映っている。



 「これって……」



 ペネムエは翔矢の方をチラリと見て口を閉じた。

 彼の使う“コネクト”の魔法にあまりに似ていたからだ。

 だが今の翔矢の前では、それを口にする訳にはいかない。



 「俺が力を使うときのにソックリ……

 どういうこと?」


 「動画だと断言はできませんが、これは恐らく幻術ですね」


 「幻術って、どういう事だってばよ?」


 

 全く理解できていない翔矢の質問に答えたのはドクターだった。



 「つまり、この魔法陣はただの映像。

 実際に異世界へのゲートが開いた、という訳ではないということだ!!」


 「なるほど、完全に理解した」


 「恐らく幻術を使う際に、翔矢様との戦いを参考にしたのかと」


 「ゼロも異世界の存在を確信していても、実際に見たわけではないだろうからね」



 ここまで話した所で、3人の情報は、概ね共有された。



 「で? これからどうする?

 さっきも言ったけど、僕は戦う力はないからね。

 できれば君たちの側を離れたくない。

 データさえ取れれば満足だし、行先は任せるよ?」


 「あんたの仲間がいるスカイタワーは気にならないのか?」


 「君たちが行くというなら行くが、かなり時間がたってるからね。

 心配とか気になるという理由だけで向かっても無駄足になる可能性は高い。

 2人はおろか転生教もいなかったら、疲れるだけだよ?」



 やはりドクターは、人の命より研究なのだと感じペネムエはムッとした。

 だが、深呼吸をして自分の気持ちを落ち着かせる。



 「鈴様は……スカイタワーは任せてと言ってくださいました……

 その気持ちと彼女を信じて……今は、この付近で絶ったリールを探します」


 

 「だな!!」



 翔矢とペネムエは博物館内部へと駆け足で向かった。



 「チョイチョイチョイ!!

 戦えない奴を置いていかないでくれたまえ!!」



 その後を、運動神経皆無のドクターは必死に追うのだった。



 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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