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154話：玉から急所が始まりそうです（）

　「これは、私じゃあ、どうしようもないはね……

　サード！！　ファースト！！　後は任せたわ」

　ゼロの合図で、白装束に赤いラインの入った2人が前に出てきた。

　顔は他の信者と同じく仮面で隠されているが、2人とも男なのは体系で分かった。

　特にサードと呼ばれた男は、プロレスラーかと思うくらい大柄だ。

　「やはり、他にも能力者がいたか……」

　蓮は何とかソルを構えているが、火傷のダメージは大きく今にも倒れそうだ。

　「おい！！　おっさん、無茶するな！！」

　「お前はゼロの動きを止める事に専念しろ。

　まだ能力者がいるかも分からん、信者の動きも観察しながらな」

　「でも、その体で戦えるのかよ？」

　「この状況でゼロにまで動かれては、勝機は無い……

　2人が来るまでの時間稼ぎくらいはしてみせる」

　蓮は大柄のサードをギロリと睨みつけた。

　「あぁあ、可愛い魔法少女とか痛めつけたかったのになぁ。

　なんで、ボロボロのおっさんとガキの相手をしなきゃいけねぇんだ……

　ファースト！！　さっさと終わらせるから、お前の能力で俺の能力を最大まで引き上げろ！！」

　「分かりました」

　ファーストが静かに返事をすると、サードから翔矢のファイターに似た濃い赤のオーラが現れた。

　「俺の能力は、筋力強化！！

　そしてファーストの能力は、能力を強化する能力だ！！」

　サードは蓮に向かって、思いっきり拳を振り下ろした。

　蓮は、見るからにフラフラだが、最小限の動きで回避した。

　だが、床には大きなクレーターが出来てしまう。

　「パワー系の能力か……

　それでその巨体という訳か？」

　「この筋肉は自前だよ！！」

　再び強烈な拳が蓮に向かうが、蓮は再び回避した。

　「筋肉の付けすぎか、俊敏さに欠けるな。

　あと自分の能力やスペックはペラペラ話さない方が良い。

　お蔭でファーストという男は戦闘要員でない事が分かった」

　「おい、おっさん！！　ボロボロなんだから余裕かますなよ……」

　あの体で、攻撃を回避しているのは素直に感心した。

　それでも、煽る余裕は絶対にないはずなのだ。

　「話しすぎか……そういや、そっちのガキは動けないって言ってたな！！」

　「やばっ！！」

　サードが自分に狙いを変えたのが分かった。

　それでも今はゼロを自由にする訳にはいかない。

　この場を動くことはできなかった。

　ドゴン！！

　鈍い音が、展望台中に響いた。

　「いってーーー！！」

　「なに？」

　しかし、翔矢は頭に出来た大きなタンコブを押さえているだけ。

　痛みはあるが大きなダメージにはなっていないようだった。

　「そういえば、このメタルを発動している間は、体が鉄みたいに固くなるってぺネちゃん言ってたな」

　「だが頭を押さえる程度には痛いんだろ？

　何発耐えられるのかなぁ？」

　仮面をしていても分かるくらい表情筋を動かし、サードは笑っていた。

　「えっと……男を痛めつけても、面白くないって言ってませんでした？」

　「面白くないとは言ってない、女の子の方がいいだけだ」

　「そっそうですかぁ……」

　確かに、サードの一撃は耐える事が出来た。

　だが、今のが何発も来ると思うと、ゾッとする。

　「させるかぁ！！」

　必死に起き上がった蓮が、サードを止めようとする。

　その時、背中に強烈な痛みが走った。

　なんとか体制は崩さずに、後ろを向くと、自分の背中にナイフが刺さっていた。

　「くっ……」

　「油断しましたね、確かに俺の能力は、他人の能力の強化。

　単体じゃ意味は無い、ですが能力が無いのは戦えない理由になりません。

　ボロボロの、おじさん1人くらい仕留めるのは訳もありません」

　蓮を刺したのはファーストだった。

　その手には、何本もナイフが握られていた。

　「おっさん、俺は何とか耐えれる。

　あんたは自分の心配だけしてろ！！」

　口では、そう言っているが、翔矢もサードの攻撃を何発も受けている。

　腹を、集中的に殴られていて、そろそろ意識が飛びそうだった。

　「そうさせてもらおう、リーチの短いナイフが相手なら、俺の方が有利だ」

　「武器の性能は、そうかもだけど、さっきも油断して……

　ん？　待てよ？　ナイフ？」

　ここで翔矢は、この状況を突破する一手を思い付いた。

　「くらえ！！」

　その間にファーストは、両手に持ったナイフで、勢いよく蓮を刺そうとする。

　蓮は、相手へのダメージを最小限にしようと、ソルを鞘に納めた状態で応戦した。

　「ちょっとまった！！」

　翔矢はファーストの方に向かって手を伸ばした。

　すると彼の持っていたナイフの刃はドロドロに溶け液体金属に変わった。

　こうなると、もう殺傷能力は無い。

　「でかした！！」

　蓮は鞘に納めたままのソルで、ファーストの腹部に強烈な一撃を入れた。

　たまらずファーストは気絶してしまう。

　「やるじゃねぇか、おっさん！！

　じゃあ、俺もそろそろ痛くなってきたし、こいつを片付けるか」

　「あん？」

　翔矢はサードの巨体を見上げながら、不敵な笑みを浮かべた。

　「平気そうに見えるかもだけど、殴られ続けて結構痛いからな……

　いい加減、頭に来てるんだよ！！」

　翔矢は、ファーストのナイフから変化させた液体金属を、今度は玉に変えた。

　それをサードの“玉”に思いっきり直撃させた。

　「おぉぉぉぉお」

　サードは悶絶しているが、翔矢は構わず2回目3回目と何度もぶつけた。

　この様子に、他の信者達は思わず自分の玉を押さえる。

　5発くらい当てた所で、サードは立っていられなくなった。

　「おい、もういいだろう」

　同じ男として見かねたのか、蓮が止めに入った。

　「でも前に狼男の能力を持った奴を倒した時みたいにガチャのカプセル出て来ないんだよ。

　ってことは、まだ、能力を持ってるし危ないよ。

　そのファーストって言うのも、カプセルでてないよな？」

　こんな事を話しながらも、翔矢はサードに2発ほど追撃をしている。

　「お前は鬼か……確かに気になる所だが、とりあえず戦闘不能にすれば問題ないだろう？

　このままでは、そいつの他の所が不能になってしまう……」

　「それもそうか」

　とどめに、鳩尾に強烈な一撃を入れると、サードは完全に伸びてしまった。

　「これで、ひとまずは鈴と銀髪が来るのを待つだけか」

　「それはどうかしら？」

　戦闘を終えて、少し安心したところに、鉄で拘束されたゼロが待ったをかけてきた。

　「その状態で、何かできんのか？」

　「この場にいる能力者は、私と、そこの2人だけです。

　でも信者は100人もいるのよ？

　そっちのサラリーマンは満身創痍だし君は動けない。

　これは、私たちの方が、まだ有利では？」

　信者たちは今の戦いで飛び散った瓦礫などを手に、翔矢と蓮に向かって来る。

　「くっ……」

　「くっそ、ここにもっと金属があればな……」

　翔矢は自分の身だけなら、守れる自信はあった。

　だが、ボロボロの蓮をこの状況で守るのは不可能に近いと察してしまったのだった……

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