150話:レスバから黄色い雨が始まりそうです()
スカイタワーで買い物をしている翔矢とペネムエ。
待ち合わせの時間を決めて、お互いに好きな店を見ていた。
一足早く買い物を終えた翔矢は、待ち合わせ場所のベンチに座ってペネムエを待っている。
「やっぱり、女の子は買い物に時間かかるよな」
ペネムエの性格なら、時間前に待ち合わせ場所に来ていてもおかしくない。
しかし今回は時間バッチリになっても姿が見えなかった。
「翔矢様!! お待たせしました!!」
5分もしないうちに紙袋を持ったペネムエがやってきた。
「別に急ぎじゃないから大丈夫だよ、時間は足りた?」
「はい、おかげさまで!!」
ペネムエの持っている紙袋のブランドのロゴが翔矢の目に入った。
「それって……」
少し離れた、場所にそのショップは見える。
翔矢の顔は少し赤くなってしまった。
「ちょっと高かったですが、下着を購入しました!!
服のデザインは自由に変えられても、下着は別ですからね」
「そそそ、そうなんだ」
満面の笑みを浮かべるペネムエ。
新しい物を買ってテンションが上がっているのか他の感情なのか翔矢には分からない。
「すごいんですよ!! この下着は横が布じゃなくて……」
ペネムエは紙袋から購入した物を取り出そうとした。
「ストップ!! ストップ!! ストップ温暖化!!
見せなくていいよ!! 人も少なくないんだし」
「冗談ですよ、買ったのは本当ですが。
翔矢様、動揺しすぎです」
あまりにも翔矢が動揺したのでペネムエも笑いが堪えられなくなってしまっている。
「この夏で一番焦ったよ……
まさか本当に横が布じゃないやつを?」
「……やっぱりご覧になりますか?」
「……そういうのは好きな人にしか見せちゃだめだよ?」
「御意です」
ペネムエは再び紙袋に手を入れた。
「いや、なぜ出そうとする!?」
「さっき翔矢様、見るか迷ってましたし……」
「あは……俺も男だから即答はできなかったんだよ。
せっかくの東京だしタピオカでも飲もう」
翔矢は誤魔化すように、タピオカの店に駆け足で向かった。
「本当に好きな人相手だから、見せても良かったのですが……
別に身に着けている所を見られる訳でもないですし……」
タピオカを買いに行った翔矢の背中を見ながらペネムエは寂しそうに声を漏らしていた。
「お待たせ!! なんか種類がいっぱいで分からなかったから、ベターなの買ってきた!!」
「ありがとうございます!! 早かったですね」
「なんか全然人がいなかったんだよね」
しかしその表情も楽しそうな翔矢を見ると、一瞬で笑顔に変わる。
ペネムエは、その表情でタピオカを受け取った。
「うんめー!!」
「おいしいです!!」
2人同時にタピオカを飲み、同時に感想を口にする。
こういう姿は、やはり周りから見るとカップルより兄妹に近いかもしれない。
だが楽しくタピオカを飲む2人に、怪しい人影が近づいてきた。
「お前ら、こんな所で何をしている?」
声の主は、さっきまで戦闘していた蓮だった。
その隣には鈴もいる。
「お前らこそ、何でいるんだよ?
スカイタワー見に来たってさっきも言っただろ?
展望台行く前に買い物してタピオカ堪能してたんだよ」
楽しかった空気を壊されて、翔矢もペネムエも不機嫌な表情になる。
「流行に敏感な世代のお前が、時代遅れのタピオカなど飲むわけもない。
何を企んでいる?」
この一言で翔矢に頭に血が上りスイッチが入ってしまった。
「あん!? タピオカのどこが時代遅れだコラー!!」
「必死になる所がますます怪しい」
「だいたいガラケー使ってる奴に時代遅れとか言われる筋合いはねぇよ」
「はい出たー、どうせ大した機能も使ってないのにスマホ持ってるだけでマウント取るヤツー」
「今の時代、大多数の人はスマホなんですー。
友達との連絡はメールよりメッセージアプリが主流だし絶対に支障でるでしょ?
あーごめん、友達いない人には支障ないですねー」
「話変えるの止めてもらっていいですか?
田舎の高校生が、わざわざスカイタワーでタピオカ買ってるのが怪しいって言ってるんですー。
それなのに、スマホでマウント取るとか頭悪いんですか?」
翔矢と蓮の言い争いはヒートアップし、このままでは永遠に続きそうな勢いだ。
他の客の視線も少しずつ集め始めた。
「ちょっと翔矢様ストップです!!
なんで戦いの時よりも喧嘩腰なんですか!?」
「蓮、さすがに大人げない。
それに恐らく田舎の人なら東京のタピオカは珍しくて飲みたくなる。
出身が同じなんだから蓮も分かるでしょ?」
ペネムエと鈴に宥められて、2人は落ち着きを取り戻した。
「ぺネちゃん、ごめん。
昨日の夜ネットで見た何かが乗り移った……」
「俺は……何をやっていたんだ?」
なぜ、こんなにもヒートアップしたのか本人たちにも分からない様子。
ペネムエも鈴も、お互いに好きな人の事ではあるのだが、呆れて何も言えなくなってしまっている。
「あの、お二人は何をしにここに?
わたくし達を怪しんで後を付けたという訳ではないですよね?」
ペネムエは、まだ飲みかけだったタピオカを飲みながら話を進める。
「……まぁ、お前たちが関係している可能性は低いか。
こんな服装の奴らを見かけなかったか?」
蓮は1枚の写真を胸ポケットから取り出した。
その写真には、怪しげな仮面に怪しげな白装束の人物が写っていた。
「あぁ、こんな格好の人なら」
「買い物中に、チラホラ見かけましたね。
この方々が何か?」
「お前たちは、こんな怪しい奴らが歩いてて何とも思わなかったのか?」
「東京だからな」
「東京ですので」
仲よく返事をする2人に、蓮と鈴は頭を抱えた。
「君たちは、東京をなんだと思ってるのよ……」
「まぁいい、この集団は、今日東京各地で目撃情報があった。
そして今は、このスカイタワーに集まっている。」
「こいつら、なにか悪い奴なのか?」
「この集団の、ごく一部だが、能力者だ。
我々の魔力を感知するシステムが、今さっき分析を終えたんだ」
「分析と言いますと?」
「お前のように元から魔力を持った生命体なのか、この世界の人間が魔力を持ったのかは識別可能だ。
話すぎたな……そんな連中が集まっているんだ、この場で事を起こすに違いない」
「そう言われると、上の方に魔力を感じるような気が……
建物が高すぎて、ちょっと自信がありませんが……」
「ペネちゃんが高すぎて分からないって事は展望台とか?」
まだ、事の大きさが分かっていない翔矢は、会話をリラックスして聞きながらタピオカを飲んでいる。
「可能性は高いですね」
「展望台だけに?」
「クスクス、お上手です」
「お前らなぁ……」
「俺達も、これから展望台に行く予定だったから、手を貸そうか?」
「え?」
翔矢の提案に、ペネムエの表情が少し暗くなった。
「あっ勝手に決めてゴメン」
「いえ、そうですね、少し気になりますし、行ってみましょう」
リールが1人行動してまで、場を作ってくれたデートだったので申し訳なく思った。
しかし、この状況では諦めるしかない。
(リールにも連絡した方がいいですかね?)
ペネムエは、魔法のポーチに手を伸ばし、リールへ繋がる通信用の魔法石を手にした。
そのタイミングで、頬に何か冷たい物が当たった。
「これは……」
「雨?」
「ここは室内だぞ!?」
「それに、この雨、黄色いわ」
弱い小雨程度ではあるが、気が付くと、室内であるにも関わらず、フロア全体に雨が降っている。
「なんか、そういう能力者か?」
「少なくとも、この雨に魔力は感じられません」
他の客も、慌てているが、猛暑だった事もあり涼んでいる者がいたり、イベントか何かだと思っていたり、パニックは起こっていない。
服が汚れるのを嫌った客の中には、外に出ていく者もいた。
「なんだ!? 外も変な雨で土砂降りだぞ!?」
そんな声が翔矢たちにも届いた。
「いや……マジでどうなってるんだ!?」
「こんな事もあろうかと1本なら傘があります」
ペネムエは、魔法のポーチからビニール傘を取り出した。
「どんな事もあろうかと? 悪いけど一緒に入れてくれる!?」
「もちろんです」
翔矢が傘を持つと、ペネムエと相合傘状態になった。
(こんな幸せ……今日中にバチが当たらないでしょうか?)
ペネムエは顔を真っ赤にして、この状況を楽しんでいる。
「蓮、この雨、東京23区中で振っているみたい」
鈴は、特に濡れるのを気にすることなくスマホでニュースをチェックした。
「全く状況が分からない……今は展望台にいる集団の状況を確認する」
「なに仕切ってるんだよ!?」
翔矢は眉間にシワを寄せたが、全員で展望台に向かう事に決まった。
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