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149話:探りから赤が始まりそうです()

 双葉サヤを博物館の外へと逃がしたリール。

 彼女は逃げ遅れた人がいないかを確認しながら、転生教がいたフロアへと向かっていた。



 「建物がボロボロなのは……このさい目を瞑るしかないわね」



 転生教はサヤを探すために暴れまわっていたのだろう。

 展示のガラスケースは無残に切り裂かれている。

 価値の高そうな展示品が破壊されていないのが不幸中の幸いと思うしかない。



 「何をしている!!」



 あちこち確認して歩くリールを数人の警官が取り囲んだ。


 

 「うわぁ……日本の警察は優秀ってドラマで見たけど流石に早すぎでしょ……」



 別に拳銃など向けられている訳ではないが、ドラマの知識で、反射的に両腕を上げる。



 「ここは危険だ、早く逃げなさい!!」



 警察が1人でいる10代の女性を疑う訳もなく出口を指差してきた。



 「えっと……ごめんなさい!!」



 リールはそう叫びながら体をクルリと1回転させ、赤い粉を振りまいた。

 警察は何か分からず困惑しながら、次々と倒れていく。



 「おっと」



 何人か頭から倒れそうになったので、優しく抱きかかえた。



 「6時間くらい絶対に目が覚めないと思うけど……

 たぶん、このまま行ったら間違いなく返り討ちだから許してね!!」



 他に警官が向かってこない事を確認すると、リールは再び転生教の元に向かった。



 「ここまで来れば、もう逃げ遅れた人はいないわよね?

 というか、転生教とも出くわさないって、どういう事?」



 もうすぐ転生教と遭遇したところまで戻るが、ここに来るまで警察としか会っていない。

 つまりリールとサヤが逃げてから今まで、転生教は移動していない事になる。


 

 「いた!!」



 ようやく転生教の白い装束の集団が視界に入った。

 すぐに戦闘態勢に入れるように双剣を構える。


 だが転生教のフォースはすでに何者かと戦っていた。

 リールは、見つからないように物陰に隠れて様子を見る事にした。



 「あいつ……確か翔矢の剣道部の先輩の渡辺健吾って言ったかしら?

 翔矢を……転生させる任務の時に身辺調査してて見た気がする。

 なんで東京に? ってかあの魔力、北風エネルギーの開発してる人工魔力の武器よね?」



 健吾は赤いビームサーベルのような武器を鞭のように振るってフォースを攻撃している。

 自分も助太刀しようか迷ったが、このまま様子を見る事にした。



 「あぁ……やっぱ男が男に鞭で攻撃しても絵図ら的にキツイよな……」


 「だったら見逃して欲しいんだがな」



 健吾の鞭を、フォースはパンフレットを刀のように丸めたもので防いでいる。



 「面倒くさいが、まぁ仕事ってのは、やりたくない事の方が多いもんだしな!!」



 武器を鞭からサーベルに変化させ、フォースに切りかかる。

 フォースは丸めたパンフレットで受け止め鍔迫り合いになった。



 「無駄だぜ!! 俺は生き物以外なら触れた物を刃物に変化させれるんだ!!」


 「そりゃ厄介な能力だこと……」



 健吾はフォースから目をそらさずに鍔迫り合いを続ける。



 「フォース様!! 加勢します!!」


 「来るな!! 能力のない奴じゃ恐らく相手にならねぇ」



 何人かの信者が健吾の方に向かおうとしたが、フォースは静止した。



 「じゃあ、私たちは転生の儀に向かうから」


 「おい!!」


 「私も戦闘員じゃないし、転生の儀に間に合わなくて“こんな世界”に残るなんて嫌だから」


 「それは俺も同じだよ」


 「じゃあ、早くやっつけてね」



 セカンドは20人の信者を引き連れて、博物館を出ようとした。



 「じゃあ、最後に教えろ!! 俺はこいつに勝って転生の儀に間に合うか?」


 「それは……答えたら面白くないと思う、まぁ頑張りなよ」


 「ちっ」



 それだけ言いのこし、セカンド達はこの場を後にした。


 

 

 ***



 

 リールは物陰越しにセカンドたちとすれ違った。

 見失わないようにしながら、自分はどう動くべきか考えた。




 「こいつら相手に北風エネルギーがどう動くのか気になる。

 けど転生教の狙いはまだ分からない……

 まぁ北風エネルギーは基本的には、この世界の人間を守ろうとしている。

 戦って傷つけたとしても、命までは奪わないはず。

 となれば今は転生教の狙いを探る方が懸命ね」



 今は味方と判断して良いか怪しい健吾に加勢するよりも、セカンドたちを追う事にした。



 「尾行するなら久々に、これの出番ね」



 リールは魔法のバックから、ローブを取り出した。

 翔矢を異世界転生させる任務で使っていた透明人間になれるローブだ。


 ローブを羽織っている間にセカンドたちは博物館の外に出てしまったようだった。



 「いけない!! まぁあんな目立つ連中、見失う訳ないけどね!!」



 速足で出口に向かうと、すぐに転生教の姿が見えた。



 「ほら追いついた!! 透明人間なら走って堂々と追跡が出来るもんね!!

 双葉サヤは……逃げ切れたみたいね」



 双葉サヤの目的も依然として不明のままだ。

 それでも、転生教に捕まるというのが恐らく今の最悪のシナリオと思って間違いない。

 今は彼女が逃げ切った事に安心する。



 「あれは……誰?」



 気が付くと、セカンドが崩したスーツを着た男と話し込んでいる。

 さっきまで見た転生教は白い装束を着ていたので彼もメンバーなのかは判断できない。

 


 今は透明人間のリールは堂々と近寄って会話を盗み聞きする事にした。



 「セブンス、あなたの任務は、ゼロ様の護衛のはず。

 ここに何しに来たの?」


 「お前らが、あんまり遅いから手伝いに来たのさ」


 「だったら手遅れ、占い師には逃げられたわ」


 「だからフォースの能力じゃ向かない任務だって言ったんだがなぁ」


 「あなたの能力なら捕まえれたか……答えはノーよ」


 「お得意の問いに答えられる能力か? そりゃあ質問がよくねぇ。

 俺は捕まえるんじゃなくて殺すからなぁ」


 「それだと意味が無いから、この任務に呼ばれなかったんでしょう?

 あの占い師は“何かから”人間に能力を配るように言われている。

 殺してしまえば黒幕に近づけないもの」


 「面倒くせぇなぁ」

 

 「どうでもいいけど、セブンスは装束も仮面も付けないの?」


 「俺は、この力で強い奴と戦いたいだけだ。

 なんか幹部に昇格しちまったが、異世界行きなんかに興味は無い」


 「まぁ、人それぞれだし勝手にしなよ」


 「所でフォースが戦ってる相手は1人か?」


 「えぇ」


 「そいつの仲間が隠れてる可能性はないか?」


 「その答えはノーよ」


 「そうかぁ……じゃあこいつは、その仲間じゃないってことか?」


 「え?」


 

 

 透明人間になっているはずのリールは、セブンスと呼ばれていた男と何故か目が合った。

 気が付いた時には、リールの腹部を中心に直径5センチ程の穴がいくつも開いた。


 透明になれるローブも穴だらけになり、その効力を失う。



 「この女、いつの間に?」


 「お前の能力は便利だが頼りすぎだ。

 問い以外への答えが出せないから、想定してない事態には対処ができねぇ」


 「くっ……なんで私が見えて……」



 リールは倒れこんでしまい、意識もどんどんと薄れていく。



 「セブンス、こいつどうする?」


 「本番前に、あまり力を使いたくないからな。

 心臓に1発穴を開けて、後は放っておく。

 フォースが戦ってるやつも気になるしなぁ」



 そう言いながらセブンスは、リールの左胸に手を触れた。



 「さわんな……変態」


 「腹に穴が空いて喋れるとか、やっぱり人間じゃねぇ。

 だが、鼓動はあるな。

 それなら心臓に穴空ければ死ぬだろ」



 セブンスは感情を表情に出さず、リールの左胸にポッカリと真円の穴を開けた。

 辺りは大量の血しぶきが舞い、信者たちの白い装束を赤く染める。


 都会の様子は一変し、そこらじゅうに悲鳴が響き渡り、心臓を失ったリールはピクリとも動かなくなる。



 「セブンス……ここまでしなくても……」


 「どうせ、これから東京は死体の山だろ?

 人外を殺しても、何の問題もねぇ。

 あと10分もすれば、ゼロのスカイタワーでの演説が始まるしなぁ」


 「もう……そんな時間なのね、今からだと演説には間に合わないな……

 まぁ転生の儀さえできればいいか」



 かなり動揺していたセカンドだが、ゼロの名前を聞き、少し冷静になる。



 「俺は、その転生の儀に興味はねぇからフォースを見てくる。

 セカンドは信者連れて、スカイタワーに行ってな」


 「ありがと」



 セカンドは20人の信者を引き連れ、ゾロゾロと歩き始めた。




 ***



 そのころ博物館内では、健吾とフォースが互角の戦いを繰り広げていた。

 しかし、体力の消耗は健吾の方が激しかった。



 「どうやら北風エネルギーの発明より、俺の能力の方が上みたいだな」


 「んな事まで知っているのかよ」


 「俺の仲間には、数字かイエスかノーで答えられる問いに答えが出せる奴がいるんでね。

 “敵になりそうな組織はいるか”って聞いて、絞り込んだのさ」


 「そりゃあ、気が遠くなる作業だったろうな!!」



 お互いに探り合いながらも、攻撃の手は緩めない。



 「俺の能力は、触れた物を刃物に変化させる。

 単にそれだけ、パンフレットの重さは変わらない。

 だが、お前の武器は少し重そうだなぁ」



 フォースは健吾の疲労を見逃していなかった。



 「筋トレはやっておいた方が女にモテるぞ?

 紙切れを振り回して偉そうにするんじゃねぇ!!」


 「お前の言う筋トレは、命の危険が伴うのかい?」



 止まることの無いフォースの連撃を、健吾はギリギリで受けきっている。



 「これでも剣道部の部長やってるんだ。

 これくらいのハンデで勝てないと、後輩に示しがつかねぇ」


 「そうか、確かに俺は剣とかは素人だ

 だから“勝ち方にこだわりはない”

 何でも刃物に変えれる俺が、何故パンフレット1つで戦っていると思う?」


 「まさか……!!」



 フォースの左手は健吾の服に触れていた。

 その服は、一瞬で赤く染まり、健吾は体に力が入らなくなった。



 「武器を作るのが、この能力の本質じゃないんでね!!」



 倒れた健吾の腹にフォースはパンフレットを突き刺した。



 「なんだ、もう終わっちまったか」



 このタイミングで、入って来たのはセブンスだった。



 「セブンスか、何しに来た?」


 「俺は異世界転生に興味は無いんで様子見にな。

 フォースは異世界転生したいんだろ?

 そろそろ、ゼロの演説が始まるぜ」


 「任務未達成だけど仕方ないか……」



 フォースは慌てて博物館を後にした。



 「ん? これは……」



 セブンスは血まみれの健吾のポケットから羅針盤を見つけた。



 「こいつと武器はもらっておくか。

 まだ強い奴がいるといいなぁ」



 セブンスも、不敵な笑みを浮かべながら強者を求め外へ出るのだった。

 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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