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147話:博物館から悲鳴が始まりそうです()

 翔矢とペネムエが、蓮・鈴と対峙していた頃、リールはすでに博物館に到着していた。

 季節や時期によって、展示される物はガラリと変わるようだが、現在は『ギーツァ国古代遺跡展』という展示会が開かれていた。


 

 日本の博物館の客入りが、どの程度なのかリールは知らない。

 だが、それなりに人が多いので、話題になっている展示会なのだろうと思った。



 「親友の恋路の為とはいえ、旅行みたいな感じで遊びに来てボッチは寂しかったけど……

 これは1人で良かったかもしれないわね」



 これだけの人数がいれば、ワイワイガヤガヤ賑やかでも不思議ではないが、ここはシーンとしていた。



 「私の見て来た世界の文化だと、こういう所は、色々と感想を言い合ったりする場なのよね。

 知らない人と話すのも珍しくは無いんだけど……そういう空気じゃないわね」



 夏休み中だからか、小学生くらいの子供の姿もあるが騒いだりはしていない。

 人の観察はここまでにして、リールは展示品を観察することにした。



 

 「古代遺産ってノーマジカルだと粘土とかミイラかぁ……」



 ガラス張りのケースに、棺が開けられた状態のミイラにリールは10秒ほど手を合わせた。



 「レプリカじゃなくて本物なのね、ご遺体を見世物にするのは天使的には複雑……

 装飾品とか、他を見て回るかなぁ」



 天使の文化として、ミイラは少し受け入れがたい所があったので、すぐに他の展示品を見る事にした。

 リールには合わなかったが、ここがメインだったらしく、離れれば離れるほど、人通りはまばらになった。



 「これくらいの込み具合なら落ち着いて見られるし、何よりミイラがないわね!!」



 気を取り直すように、リールは発掘された装飾品に目をやった。



 「3000年も前で魔法も無いのに、中々の食器ねぇ。

 魔法なしで、これだけ形が完璧に残っているなんて……

 ペネムエがいたら、なんか解説とか聞けたかしらね?

 そうだ!!」



 リールは思い出したように自分のハンドバックをゴソゴソと漁る。

 ちなみにこのハンドバックは、この世界でバイトをして貯めて購入したものだ。



 「スマホにカメラ付いてたわよね?

 これで撮影して2人に見せて……」



 リールは不慣れな操作で、何とかカメラを起動した。

 それを展示物に向けてシャッターを切ろうとすると、ある張り紙が目に入った。



 『館内での撮影はご遠慮ください』



 「ケチ……」



  口に出すつもりは無かったが、はっきりと口にしてしまったのが自分でも分かった。



 「あと1周したら帰ろう……あっ2人と合流しないと帰れないんだったわ……」



 自分で言い出したとはいえ、見知らぬ土地で1人なのが、だんだんと心細くなってきた。

 だが、1人で何とか時間を潰すしかない。



 外のビルがショッピングモールのように見えたので、そこに行ってみようかと、トボトボと館内を歩く。

 まだ、見ていない展示品も視界に入っているが、頭には入ってこない。


 

 だが、1つの棚に飾られている展示物に意識がスゥっと吸い込まれて行った。

 なぜ、その展示物に惹かれたのかはすぐに分かった。


 

 「これって……聖剣じゃない!?

 なんで、こんなものがノーマジカルに?」



 誰も見向きもしないほど錆びつき、見る人によっては棒と答えそうな展示物。

 だが、中からは強大な魔力を感じ、天使であるリールには一目で聖剣だと分かった。


 展示物の説明には、当然が『当時の武器と思われる』という旨の説明しか記載されていない。


 

 この世界の人間が聖剣など知るはずがないので当然と言われれば当然だ。



 リールは、天界学校で習った聖剣のルールを必死に思い出した。

 ペネムエならばスラスラと言えただろうが、自分はそういう訳には行かない。



 ①聖剣は武器であるが他の世界への移動はできない。

 ②聖剣の真の力は勇者のみが使える。

 ③聖剣は、その世界の危機に現れる。

 ④聖剣の力は、その危機の大きさに比例する。

 ⑤聖剣は危機を脱した時に消滅する。



 「これで全部だったかしら?

 ……ちょっと待って、聖剣がまだ存在するって事は、この世界の危機は脱していない?

 これだけの魔力の聖剣が生まれる危機ってなによ?

 そもそも魔法の存在しないノーマジカルに聖剣なんて生まれるの?」



 当時の授業を必死に思い出しているが、お世辞にも授業を真面目には受けていないリールの記憶はここまでで限界だった。

 だが、このルールに間違いはないはずだ。


 

 「だめだ……私の頭じゃ何も分からないわ……」



 頭が混乱し、目がグルグルと回るような感覚に襲われたリール。

 そんな彼女の脳に、さらなる負荷がかかる事になる。



 「ん? 隣にも何か展示されてるわね……」



 聖剣の強大な魔力のせいで気が付かなかったが、隣のガラスケースに展示されているキューブからも、魔力が感じられた。

 そのキューブは“マモンキューブ”翔矢が使用する赤メリが今の形へと変わる前の物と全く同じだった。



 「前に翔矢とペネムエが戦ってた……北風エネルギーの斎賀鈴だっけ?

 その子のは、けん玉みたいな武器に変わったって聞いたけど、これ何個あるのよ?」



 展示されているのは見たところ1つだけだが、この分だと、この世界にまだあってもおかしくはない。



 「これは、お手上げね……

 まぁ日本の博物館の警備は厳重だし、展示されてる分には悪用される心配はない……かな」



 自分が、これ以上考えても何も分からない事だけは分かっているが、どうしても気になり、この場に立ち尽くしてしまう。


 

 「このまま、ここにいたら頭がパンクしそう。

 まぁ見たことを、ありのまま後でペネムエに報告しましょう。

 これは決して押し付けではないわ、適材適所という奴よ」



 自分に言い聞かせるように独り言を言い、今度こそ、この場を後にすることにした。

 また何かに目を奪われないように、頭をからっぽにして出口に向かう。



 ドン!!



 「あっごめんなさい、大丈夫?」



 頭を空っぽにしすぎたせいか、誰かにぶつかってしまった。

 慌てて相手に謝ると、その女からは僅かだが魔力が感じられた。

 そして、その恰好は占い師のようだった。


 頭を空にしていたリールでもピンと来た。

 この女は、この世界の人間に魔法の能力を与えているという双葉サヤだ。



 「あなた!! なんでこんなところに!?」



 出来るだけ騒ぎにならないようにサヤを取り押さえようとしたリールだが、彼女が怪我だらけな事に気が付いた。



 「え?」



 それでも、とりあえず今は取り押さえようとしたのだが、サヤはリールに抱きついてきた。



 「リールちゃん……助けて……

 ここまでの事態は想定していなかったの……」


 「え? ってか何で私の名前を知ってる?」



 サヤが何が言いたいのか。

 そして、何故自分の名前を知っているのか。

 これを問いただす前に博物館内は人々の悲鳴に包まれた。


 リールは、とりあえずサヤの事は後回しにして悲鳴の出所に向かった。

 すると、そこには白い装束に身を包んだ怪しげな集団がいた。


 白い装束の衣装に赤いラインの入った物を着ている2人からは魔力が感じられる。

 リールは直感で能力者だと分かった。



 (この悲鳴はあいつらのせい?

 いや……でも見た目で判断するのもなぁ……)



 相手がいかに怪しくても、この集団が何かした所を見た訳ではない。

 ゼウのときに思い込みで動き失敗した事を思い出してしまったリールはすぐには動けなかった。


 

 なにやら赤いラインの2人が話し込んでいるので、今は聞き耳を立てる事にした。

 


 「おいセカンド、能力配り占い師は、本当にここにいるのか?」


 「答えはイエスよ、フォース」


 「じゃあ、どこにいるんだ?」


 「わからないわ、私の能力はイエスかノー。

 もしくは数字で答えられる問に答えを出せるってだけだもの」


 「結構めんどうだよなぁ……

 じゃあ、こういう問いならどうだ?

 “俺様が暴れれば能力配り占い師を炙り出せるか?”」


 「イエスよ!!」



 その会話が終わった時、リールの背中に寒気が走った。



 (この魔力は……ヤバい)



 とっさに魔法のポーチに手を伸ばしたが、相手がどんな方法で攻撃してくるのかは不明。

 しかも、今すぐにポーチから取り出せそうなのは、剣のみ。

 恐らくだが、これでは館内にいる多くの客を守る事は出来ないだろう。



 「おらよ!!」



 リールが手をこまねいている内に、フォースと呼ばれていた男は、ご自由にお取りくださいと書かれた館内の案内のパンフレットを全て手に取った。

 それをバラまくように投げると、パンフレットは、まるで風の魔法のように、照明やガラスのケースを引き裂いていった。



 「キャッ」



 予想を超えた広範囲の攻撃に、リールは、できる限りの回避で自分の身を守るのが精いっぱいだった。

 先ほども、遠くから聞こえたが、人々の悲鳴が聞こえる。

 この力を館内のどこかで使ったのは間違いないが、なにぶん広いので、あまり知れ渡っていないのかもしれない。



 「ほかの人を逃がさないと……」



 何とかパンフレットの斬撃を回避しているがフォースに近づく事はできない。



 「いや……パンフレット多いな。

 どんだけバラまいてもなくならないじゃない……」



 それでも、動きを観察しながら少しずつは接近出来ている。

 剣を投げれば届きそうだが、逃げ惑う人に当たりそうで、それはできない。



 「助けを求めたのは、私の方なんですが……

 仕方がありません」



 気が付くとリールの隣には、置いてきたはずのサヤがいた。



 「おい!! 転生教!! 私はここだ!!

 関係ない人を巻き込むのはやめなさい!!」



 サヤの一声で、パンフレットは、ただの紙のようにヒラヒラと落ちて行った。



 「ほらね、イエス」


 「はっはっはっー見ぃつけた!!」



 そんなサヤをセカンドとサードはギロリと睨み付けるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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